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一章 森の少女と獣
三年後
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ローニャは光の発生源、焚き火の有る場所へと辿り着いた。そしてローニャはその光景を目にし、そして絶望した。
其処に人は居なかった、其処に居たのは焚き火を囲み、楽しそうに踊り騒ぐゴブリンだけだった。
〈【ゴブリン】とは【魔物(又はモンスター)】という分類の種族の一種であり、その見た目は子供の様に小柄で、全身は緑色の体色をしており【エルフ】のように尖った耳を持っている。性格はかなり凶暴、彼ら自体は然程強くは無いが積極的に人族を襲い、物を奪い、そして人族を喰らう事もある。〉
ローニャはその光景を見た瞬間、膝から崩れ、絶望し涙が溢れた。どれだけ生き抜く事を決意しても、どれだけ考えない様に気を紛らわせ様としても、ローニャはまだ子供、人が恋しく無い訳が無かった。
「は…はは…ははは…何考えてるんだろ…私…こんなところに人なんているわけ…ないよ…」
と悲観の言葉を呟いていると、ゴブリン達がローニャに気付いた。ゴブリン達はゆっくりとローニャに近付く、それにローニャも気付きローニャは剣を抜いた。
「ごめんね…たたかう気はなかったんだけど…しかたないよね。わるいけど、やつあたりに付き合ってもらうね。」
と呟いた途端、直ぐそこまで迫っていた一匹のゴブリンが棍棒を振り上げ襲い掛かる。ローニャはそのゴブリンに向かって剣を横に振る。するとゴブリンは持っていた棍棒と共に真っ二つに割れた。それを見た途端、ローニャは嬉しそうに笑う。
「あはは、いい練習台になりそう!」
と嬉しそうに残りのゴブリン達を薙ぎ倒して行った。
ゴブリンを倒し終え戦利品を回収し、いざ帰ろうという頃には、もう殆ど何も見え程暗く成っていた。
「もう、こんな時間か」
ローニャは急いで家へ帰った。
家へ入るとローニャはとんでもない事に気が付いた。全身が血塗れだった、これでは眠れない、なのでまず体を洗ってから眠りに就く事にした。
翌日 早朝 七時頃
(ローニャ)「まだ疲れ…のこってるな。けどやることやらないと。」
昨日の疲れはまだ残っている、だがやる事が沢山有る、魔法と剣と弓の特訓、それに食糧の調達もしなければならない。それら全てを一人で熟さなければなら無い、この森で生き抜く為には。
そして…三年後
暗い森 北方 一本道
暗い森の唯一の道、其処に冒険者数名を乗せた一台の馬車とそれを追い掛けるスラッシュベアが走って居た。
「おい!もっと速度出せないのか!追い付かれるぞ!」
「これ以上は無理です!馬が持ちません!」
「なんでこんな道選んだんだよ!迂回すれば良かっただろうが!」
「お前が急げって御者に頼んだんだろうが!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!まずあれの足止めが先でしょう!」
「そう言うお前がやれば良いだろう!」
「もう魔力無いって何回も言ってるでしょ!」
「まずい!もう追い付かれる!」
その瞬間何処かから飛んで来た何かがスラッシュベアの首を両断した。
「え…?」
「は…?」
冒険者達は何が起きたのか分からなかった。冒険者達は馬車を止めてスラッシュベアの元に向かった。其処には綺麗に首を切られたスラッシュベアと地面に刺さった剣のような物。冒険者達はその状況を見ても、やはり何が何だか分からず困惑して居た。すると茂みから『ガサガサ』と音が鳴る。咄嗟に構えた冒険者達だったが茂みから出て来たのは、一人の【子供】だった。
「は?こ…子供?」
十歳位だろうか、マントを羽織りフードで顔を隠している為、性別は分からないが、子供なのは確かだった。こんな危険な森に子供が一人で居るはずが無い、迷子だろうか?そう思い子供に声を掛ける。
「えーと…君は?此処で何を?お父さんとお母さんは?」
が返事は帰って来ない。すると子供はこちらに近付いて来た。
「動くな!こっちに来るんじゃない!」
しかし子供は止まらない。すると子供は冒険者達を通り過ぎて剣を拾い上げた。
「それは君のなのかい?て事はこの熊は君が?」
そう質問するがやはり返事は帰って来ない。すると子供は自身の何十倍もの大きさに熊をいとも容易く持ち上げてしまった。
「!?」
驚く一行、すると子供は
「邪魔…」
と呟いた。咄嗟に引いてしまった一行、そのまま一行を気にする事無く子供は熊を持ったまま森に入って行こうとする。そこで咄嗟に
「待ってくれ!君は…いったい」
そう質問するが子供は無視して森の中へ消えて行ってしまった。冒険者達は追い掛けようとしたが、御者に止められてしまった。
「おーい!あんたら!早くしてくれ!とっととこんな所抜けたいんだ!」
そう言われて冒険者達は追い掛けるのを諦め、急いで馬車に乗って去って行った。
三日後 王都 冒険者ギルド
暗い森から東に側に有る、レオンハール王国の冒険者ギルド。其処で暗い森を通った冒険者達が、その時で見た物をギルドマスターである男に事細かく説明していた。
「成る程…暗い森に子供ね…余り信じられる話じゃ無いな。」
「本当なんです!嘘じゃ無い!」
「そうだよ!全員見てる!熊の頭をザ!っと切ってそれを持ち上げて消えてったんだ!」
「分かった分かった…取り敢えず冒険者は荒っぽいから騎士にでも依頼をしとく、それで良いだろ。」
「だったら俺らが!」
「お前らじゃ、あの森では生きて出られない!諦めろ。その子供の事は騎士に任せろ、言いな。」
「はい…」
「良し、じゃあこの話は終わりだ、解散!」
報告を済ませると冒険者達は部屋を出た。
早朝 暗い森の家
あれから三年の月日が流れ、ローニャは十一歳、森の暮らしにも慣れ、もうすっかり半野生児と成って居た。この三年間でした事は、魔法、剣術の修行、狩り、そして探索。魔法に関しては外に居る時は【強化魔法】を常時発動しても何の問題も無く過ごせる様に成り、剣術と狩りに関してはスラッシュベアを簡単に倒せる程に。森の探索は森の外までの全方位の探索が進んだ、例の【怖い何か】が居る場所以外は。
後は細かな部分だけ。そんな三年間を過ごしていたローニャは今も何時もと同じ一日を過ごす。そして出掛ける前の日課である墓参りをしている。
「おはよう【先輩】。今日も探索に行って来ます。」
【先輩】と呼ぶようになった先駆者に手を合わせローニャは探索へ出た。
家から少し離れた時、森の北方から何かを感じローニャは西方に向かって移動した。木と木の間を飛ぶように移動して、気配のした方へ向かうと、この森にある唯一の道を馬車とそれを追い掛けるスラッシュベアが走って居た。その光景にローニャは
「またやってる。懲りないな。」
と呆れて居た。しかし助けない訳にも行かない為、ローニャは仕方無く助ける事にした。
ローニャは出来るだけ近くに行き、狙いを澄まし、そして熊目掛けて思い切り剣を投げた。剣は縦に回転しながら飛んで行き、見事熊の首を切り落とした。仕留めた事を確認して、剣と熊を回収しに向かうと其処には馬車に乗って居たと思われる人間が武器を構えて居た。すると一人がローニャ向かって
「えーと…君は?ここで何を?お父さんとお母さんは?」
と問い掛けて来た。ローニャは無視して剣に近付こうとすると、もう一人が
「動くな!こっちに来るんじゃない!」
と威嚇して来た。それでもローニャは無視して人間達の間を通り抜け、剣を回収した。するとまた一人がローニャに話し掛けて来た。
「それは君のなのかい?て事はこの熊は君が?」
その質問にもローニャは無視した。
ローニャは《筋力強化》を強めて仕留めた熊の死体を持ち上げて帰ろうと、人間達の方を見ると、人間達はとても驚いて居た、がローニャには関係無かった。構うこと無く進もうとしたが、人間達が進路に居た為
「邪魔…」
と人間達に一言言うと、人間達は咄嗟に避けた。そのまま帰ろうとするとまたしつこく話し掛けて来た。
「待ってくれ!君は…いったい?」
と言う質問に対してもローニャは答える事無く、森へ帰った。
仕留めた熊を家に持って帰ったローニャは少し悩んでいた。
「これどうしよう…食糧は間に合ってるし…まぁ、肉を少しと爪…あと皮だけ貰って…後は小分けにして餌とかにしよ。」
と意外と早く解決してローニャは作業に取り掛かった。解体に時間が掛かってしまい作業が終わる頃にはすでに暗く掛けて居た。ローニャはやる事を済ませて結局その日は家で過ごす事になった。
四日後
ローニャはいつも通りの一日を過ごす。顔を洗い、朝食を取り、支度をし、【先輩】に挨拶をして探索に出る。そんな何の変哲も無い朝を過ごした。
昼頃、ローニャは週一の楽しみであるブラックウルフ達への餌付けをして居た。
ローニャは幸せそうに狼達と戯れて居る。一頻り狼と戯れ、満足してから地図作りの為、森の探索に出る。
夕方頃、探索を終えて家に帰還した。
集めて来た木の実を食料箱に詰めると、疲れ果てて椅子に座り休憩を取る。其処で、ふと壁の方を見る。壁には大きな地図が貼ってあった。それは自分で作った森の地図では無く、偶々な見付けた先輩の物と思われる、この大陸の地図。ローニャはその地図を眺めながら考える。
(森の外って今はどうなってるんだろ…物心付いた頃には村に居て…其処から出た事も無かった。今も同じだし、外がどんな世界なのか…少し見てみたい気もする。)
それから数分間眺め続ける。と突然立ち上がる。
「ま!考えてもどうせ此処から出無いんだし!外の世界にどんな危険が有るかも分かんないし、私に取ってはこの森の中が1番安全だ!」
吹っ切れた様に伸びをしながら言う。がそれでも壁に掛かった地図を見てしまう。出来るだけ考えない様にしながら夜を過ごした。
翌朝、何時もの朝を過ごして居る。そして何時もの様に【先輩】の墓参りをして居ると、ふと先輩の手帳に書いて有った言葉を思い出す。
『君が生きて居られる様に、そして生きて出られる様に。まぁ出来れば生きて出て欲しいけどな!』
「…うん…そうだね…先輩は此処から出られる様に、この場所、此処に有る物を、見付けた人に託したんだよね…なら…私は先輩の為にも、此処から出ないとね。それに、この森でずっと居てもしょうがないし、私がやる事はももう残ってない。だから外に出るのも良いかもね。うん!そうしよう!」
ローニャは森を出る事を決め家に入って支度を始めた。
二日後
しっかりと荷物の確認をし、外に出る準備をする。
剣は勿論、自作の木の杭や解体用のナイフ等の武器類。食料、念の為の素材と数冊の本、それと一冊の手帳。
それらを鞄に詰めて、家を出た。
家を出て、森の外へ出る前に先ず、先輩の墓参りをする。
「先輩、私は森を出ます。先輩のお陰で私は今まで生きて来れました。本当にありがとう御座いました。もしかしたら直ぐに戻って来るかも知れないけど、でもこれで…さようならです。行って来ます。」
墓に一礼をし、ローニャはその場を後にした。
その後、ローニャは地図を頼りに森の出口を目指す。
そして一時間後、遂に出口に到着した。
木々の間から光が差し込む。その光に向かって歩き続ける。
(今まで理由が無かったから、気にしないようにしてたけど、今は違うこれから私は…外に出るんだ…)
そして遂に森を抜けた。
三年越しの外の世界。その場所は森では見た事の無い光景が広がっていた。
何処までも青い空、鮮やかな緑の草原、そして眩い陽の光。とても美しい光景だった。光に弱くなってしまっている為、フード越しではあるが、それでもローニャはその光景に目を奪われ、感動した。
しっかりとその光景を目に焼き付けて、ローニャは目的地を指さした。
「いざ!王都のリオネル!」
其処に人は居なかった、其処に居たのは焚き火を囲み、楽しそうに踊り騒ぐゴブリンだけだった。
〈【ゴブリン】とは【魔物(又はモンスター)】という分類の種族の一種であり、その見た目は子供の様に小柄で、全身は緑色の体色をしており【エルフ】のように尖った耳を持っている。性格はかなり凶暴、彼ら自体は然程強くは無いが積極的に人族を襲い、物を奪い、そして人族を喰らう事もある。〉
ローニャはその光景を見た瞬間、膝から崩れ、絶望し涙が溢れた。どれだけ生き抜く事を決意しても、どれだけ考えない様に気を紛らわせ様としても、ローニャはまだ子供、人が恋しく無い訳が無かった。
「は…はは…ははは…何考えてるんだろ…私…こんなところに人なんているわけ…ないよ…」
と悲観の言葉を呟いていると、ゴブリン達がローニャに気付いた。ゴブリン達はゆっくりとローニャに近付く、それにローニャも気付きローニャは剣を抜いた。
「ごめんね…たたかう気はなかったんだけど…しかたないよね。わるいけど、やつあたりに付き合ってもらうね。」
と呟いた途端、直ぐそこまで迫っていた一匹のゴブリンが棍棒を振り上げ襲い掛かる。ローニャはそのゴブリンに向かって剣を横に振る。するとゴブリンは持っていた棍棒と共に真っ二つに割れた。それを見た途端、ローニャは嬉しそうに笑う。
「あはは、いい練習台になりそう!」
と嬉しそうに残りのゴブリン達を薙ぎ倒して行った。
ゴブリンを倒し終え戦利品を回収し、いざ帰ろうという頃には、もう殆ど何も見え程暗く成っていた。
「もう、こんな時間か」
ローニャは急いで家へ帰った。
家へ入るとローニャはとんでもない事に気が付いた。全身が血塗れだった、これでは眠れない、なのでまず体を洗ってから眠りに就く事にした。
翌日 早朝 七時頃
(ローニャ)「まだ疲れ…のこってるな。けどやることやらないと。」
昨日の疲れはまだ残っている、だがやる事が沢山有る、魔法と剣と弓の特訓、それに食糧の調達もしなければならない。それら全てを一人で熟さなければなら無い、この森で生き抜く為には。
そして…三年後
暗い森 北方 一本道
暗い森の唯一の道、其処に冒険者数名を乗せた一台の馬車とそれを追い掛けるスラッシュベアが走って居た。
「おい!もっと速度出せないのか!追い付かれるぞ!」
「これ以上は無理です!馬が持ちません!」
「なんでこんな道選んだんだよ!迂回すれば良かっただろうが!」
「お前が急げって御者に頼んだんだろうが!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!まずあれの足止めが先でしょう!」
「そう言うお前がやれば良いだろう!」
「もう魔力無いって何回も言ってるでしょ!」
「まずい!もう追い付かれる!」
その瞬間何処かから飛んで来た何かがスラッシュベアの首を両断した。
「え…?」
「は…?」
冒険者達は何が起きたのか分からなかった。冒険者達は馬車を止めてスラッシュベアの元に向かった。其処には綺麗に首を切られたスラッシュベアと地面に刺さった剣のような物。冒険者達はその状況を見ても、やはり何が何だか分からず困惑して居た。すると茂みから『ガサガサ』と音が鳴る。咄嗟に構えた冒険者達だったが茂みから出て来たのは、一人の【子供】だった。
「は?こ…子供?」
十歳位だろうか、マントを羽織りフードで顔を隠している為、性別は分からないが、子供なのは確かだった。こんな危険な森に子供が一人で居るはずが無い、迷子だろうか?そう思い子供に声を掛ける。
「えーと…君は?此処で何を?お父さんとお母さんは?」
が返事は帰って来ない。すると子供はこちらに近付いて来た。
「動くな!こっちに来るんじゃない!」
しかし子供は止まらない。すると子供は冒険者達を通り過ぎて剣を拾い上げた。
「それは君のなのかい?て事はこの熊は君が?」
そう質問するがやはり返事は帰って来ない。すると子供は自身の何十倍もの大きさに熊をいとも容易く持ち上げてしまった。
「!?」
驚く一行、すると子供は
「邪魔…」
と呟いた。咄嗟に引いてしまった一行、そのまま一行を気にする事無く子供は熊を持ったまま森に入って行こうとする。そこで咄嗟に
「待ってくれ!君は…いったい」
そう質問するが子供は無視して森の中へ消えて行ってしまった。冒険者達は追い掛けようとしたが、御者に止められてしまった。
「おーい!あんたら!早くしてくれ!とっととこんな所抜けたいんだ!」
そう言われて冒険者達は追い掛けるのを諦め、急いで馬車に乗って去って行った。
三日後 王都 冒険者ギルド
暗い森から東に側に有る、レオンハール王国の冒険者ギルド。其処で暗い森を通った冒険者達が、その時で見た物をギルドマスターである男に事細かく説明していた。
「成る程…暗い森に子供ね…余り信じられる話じゃ無いな。」
「本当なんです!嘘じゃ無い!」
「そうだよ!全員見てる!熊の頭をザ!っと切ってそれを持ち上げて消えてったんだ!」
「分かった分かった…取り敢えず冒険者は荒っぽいから騎士にでも依頼をしとく、それで良いだろ。」
「だったら俺らが!」
「お前らじゃ、あの森では生きて出られない!諦めろ。その子供の事は騎士に任せろ、言いな。」
「はい…」
「良し、じゃあこの話は終わりだ、解散!」
報告を済ませると冒険者達は部屋を出た。
早朝 暗い森の家
あれから三年の月日が流れ、ローニャは十一歳、森の暮らしにも慣れ、もうすっかり半野生児と成って居た。この三年間でした事は、魔法、剣術の修行、狩り、そして探索。魔法に関しては外に居る時は【強化魔法】を常時発動しても何の問題も無く過ごせる様に成り、剣術と狩りに関してはスラッシュベアを簡単に倒せる程に。森の探索は森の外までの全方位の探索が進んだ、例の【怖い何か】が居る場所以外は。
後は細かな部分だけ。そんな三年間を過ごしていたローニャは今も何時もと同じ一日を過ごす。そして出掛ける前の日課である墓参りをしている。
「おはよう【先輩】。今日も探索に行って来ます。」
【先輩】と呼ぶようになった先駆者に手を合わせローニャは探索へ出た。
家から少し離れた時、森の北方から何かを感じローニャは西方に向かって移動した。木と木の間を飛ぶように移動して、気配のした方へ向かうと、この森にある唯一の道を馬車とそれを追い掛けるスラッシュベアが走って居た。その光景にローニャは
「またやってる。懲りないな。」
と呆れて居た。しかし助けない訳にも行かない為、ローニャは仕方無く助ける事にした。
ローニャは出来るだけ近くに行き、狙いを澄まし、そして熊目掛けて思い切り剣を投げた。剣は縦に回転しながら飛んで行き、見事熊の首を切り落とした。仕留めた事を確認して、剣と熊を回収しに向かうと其処には馬車に乗って居たと思われる人間が武器を構えて居た。すると一人がローニャ向かって
「えーと…君は?ここで何を?お父さんとお母さんは?」
と問い掛けて来た。ローニャは無視して剣に近付こうとすると、もう一人が
「動くな!こっちに来るんじゃない!」
と威嚇して来た。それでもローニャは無視して人間達の間を通り抜け、剣を回収した。するとまた一人がローニャに話し掛けて来た。
「それは君のなのかい?て事はこの熊は君が?」
その質問にもローニャは無視した。
ローニャは《筋力強化》を強めて仕留めた熊の死体を持ち上げて帰ろうと、人間達の方を見ると、人間達はとても驚いて居た、がローニャには関係無かった。構うこと無く進もうとしたが、人間達が進路に居た為
「邪魔…」
と人間達に一言言うと、人間達は咄嗟に避けた。そのまま帰ろうとするとまたしつこく話し掛けて来た。
「待ってくれ!君は…いったい?」
と言う質問に対してもローニャは答える事無く、森へ帰った。
仕留めた熊を家に持って帰ったローニャは少し悩んでいた。
「これどうしよう…食糧は間に合ってるし…まぁ、肉を少しと爪…あと皮だけ貰って…後は小分けにして餌とかにしよ。」
と意外と早く解決してローニャは作業に取り掛かった。解体に時間が掛かってしまい作業が終わる頃にはすでに暗く掛けて居た。ローニャはやる事を済ませて結局その日は家で過ごす事になった。
四日後
ローニャはいつも通りの一日を過ごす。顔を洗い、朝食を取り、支度をし、【先輩】に挨拶をして探索に出る。そんな何の変哲も無い朝を過ごした。
昼頃、ローニャは週一の楽しみであるブラックウルフ達への餌付けをして居た。
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集めて来た木の実を食料箱に詰めると、疲れ果てて椅子に座り休憩を取る。其処で、ふと壁の方を見る。壁には大きな地図が貼ってあった。それは自分で作った森の地図では無く、偶々な見付けた先輩の物と思われる、この大陸の地図。ローニャはその地図を眺めながら考える。
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それから数分間眺め続ける。と突然立ち上がる。
「ま!考えてもどうせ此処から出無いんだし!外の世界にどんな危険が有るかも分かんないし、私に取ってはこの森の中が1番安全だ!」
吹っ切れた様に伸びをしながら言う。がそれでも壁に掛かった地図を見てしまう。出来るだけ考えない様にしながら夜を過ごした。
翌朝、何時もの朝を過ごして居る。そして何時もの様に【先輩】の墓参りをして居ると、ふと先輩の手帳に書いて有った言葉を思い出す。
『君が生きて居られる様に、そして生きて出られる様に。まぁ出来れば生きて出て欲しいけどな!』
「…うん…そうだね…先輩は此処から出られる様に、この場所、此処に有る物を、見付けた人に託したんだよね…なら…私は先輩の為にも、此処から出ないとね。それに、この森でずっと居てもしょうがないし、私がやる事はももう残ってない。だから外に出るのも良いかもね。うん!そうしよう!」
ローニャは森を出る事を決め家に入って支度を始めた。
二日後
しっかりと荷物の確認をし、外に出る準備をする。
剣は勿論、自作の木の杭や解体用のナイフ等の武器類。食料、念の為の素材と数冊の本、それと一冊の手帳。
それらを鞄に詰めて、家を出た。
家を出て、森の外へ出る前に先ず、先輩の墓参りをする。
「先輩、私は森を出ます。先輩のお陰で私は今まで生きて来れました。本当にありがとう御座いました。もしかしたら直ぐに戻って来るかも知れないけど、でもこれで…さようならです。行って来ます。」
墓に一礼をし、ローニャはその場を後にした。
その後、ローニャは地図を頼りに森の出口を目指す。
そして一時間後、遂に出口に到着した。
木々の間から光が差し込む。その光に向かって歩き続ける。
(今まで理由が無かったから、気にしないようにしてたけど、今は違うこれから私は…外に出るんだ…)
そして遂に森を抜けた。
三年越しの外の世界。その場所は森では見た事の無い光景が広がっていた。
何処までも青い空、鮮やかな緑の草原、そして眩い陽の光。とても美しい光景だった。光に弱くなってしまっている為、フード越しではあるが、それでもローニャはその光景に目を奪われ、感動した。
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