野生児少女の生存日記

花見酒

文字の大きさ
上 下
3 / 51
一章 森の少女と獣

森の生活

しおりを挟む
 ローニャは手帳を読み終え、家の中を探索し始めた。
 ローニャがまず最初に見つけたのは食糧だった。

「やった!これ食べ物だよね!」

 と喜んだが、死体がある所で食事など出来ず、何より死体は白骨化していた為、かなり放置されて居たと考えられる。その為、食料が食べられる状態かも怪しかった。なのでローニャは空腹ではあるものの先に土を掘り起こせる道具類を探した。
 そんなこんなで家の中を散策して行き、その中で見つけた物は、生活できる程の家具類、数々の本が棚に列べられた小さな書斎しょさい、森で暮らす為の道具類が置いて有る物置部屋、そして食べれるかどうか分からない食糧が少量ある食糧箱、小さな寝室やキッチンなんかもあった。

「この家、外から見たときよりひろいような。」

 と不思議に思ったが、考えても仕様が無いので今は置いておく事にした。
 そうして家の散策が終わり、ローニャが最初に行ったのは、死体の埋葬まいそうだった。
 自分より大きなシャベルを物置から持ち出し、小さく、何より、空腹と疲労で弱った体で一生懸命家の側の少し開けた場所に穴を掘る。

「私がこの家をもらったんだ、がんばらないと。」

 そうして人が入れる程の穴を掘り、其処に先程の死体を持ってくる。

「うー、くさい…」

 そう愚痴ぐちこぼしながら慎重に運び入れた。骨を穴に入れ、そして穴を埋め、もう一度お礼を述べた。

「ほんとうにありがとう。この森を出るかはわかんないけど、ぜったい生きてみせるから。」

 そう言ってローニャは墓を後にした。それからローニャは先程の食料を調べた。

「これ、だいじょうぶかなぁ?」

そう考えるや否や『ぐうぅぅー』とお腹から音が鳴る、かなり空腹だったが、箱の中の食料は諦めて仕方なく近くにあった低木の実を食べる事にした。匂いを嗅ぎ、意を決して木の実を食べる
 どうやらローニャが食べたのは、安全な木の実のようだった。

「おいしくない…」

 そう言い、久しぶりの食糧に涙を溢しながら、掻き集めた実をゆっくりと食べた。
 食事を終え、奇跡的に先程とは違う水路が近くにあったので、そこで喉をうるおした後、何をしようか考えていた。ふと書斎が在る事を思い出す。眠りたいが、まだやる事があるような気がして眠れない為、まず本を漁る事にする。

「よくわかんない。」

 難しい本が並ぶ。そんな中、幾つか気になる本があったので手に取った。その内の二冊は手帳の様な本で、表紙も手書きだった。
『サバイバルのすゝめ』『エイプでも分かる魔法本』二冊目は何故かムカっとしたが、取り敢えずボロボロの椅子に座って読む事にした。

 数時間後 サバイバル本は今後生きて行く為に必要な技術が幾つも載っていたので、とても為になった。
 魔法本は【無色】のローニャには殆ど読んでも意味は無かったが数ページはローニャにとっては重要な物だった。それは、【無属性魔法】だった。
【無属性魔法】とは、他の【属性魔法】とは違い、適性が無くとも簡単に使える。
 【無属性魔法】に攻撃系の魔法は無く、肉体を強化する【身体強化】だけであり。通常、【属性魔法】を扱える者は、自身の属性を中心に鍛える為【無属性魔法】は、おまけ程度、有れば便利程度の物、しかし、森で暮らす上で【身体強化】は必須の魔法だった。

「よし!あしたは魔法のれんしゅうしよう」

 そう決意してローニャは椅子に座ったまま眠ってしまった。
 翌日

「んんー、なんかひさしぶりにねた気がする」

 昨日よりも回復したローニャは軽く伸びをし、魔法の特訓を始めた。

「えっと、まずは」

 本を読みながらその通りに進める。

「魔法をつかう前にじしんの魔力りょうをはかるってかいてるけど」

 無理である。本には専用の道具が載っている為、自身で測る事は出来なかった。

「むりだし、とばそ」

 まず《身体能力上昇》を覚える事にした。
 あれから数時間、最初は中々コツが掴めなかったものの、何とかイメージする事が出来た。
 「『あとは慣れ』か…」

 そして同時にある事に気づく、

「私って魔力多い?」

 何故そう思ったのかと言うと、本には『なお、【無属性魔法】は【属性魔法】よりも魔力の消費が多い為十歳以下の子供は三回までが限界と思われる。』と書いてある。
 あれから数時間ずっと特訓して居た。ローニャはもう十回以上は魔法を発動しているが、多少の疲れはあるものの、倒れる程では無い。自分は本当は凄いのでは?と思いつつも、少し怖くなったので、その日の練習はそこで終了した。
 練習は終わったが、まだ昼時、やる事は無いかと考える。すると「ぐうぅー」と小さくお腹が鳴る。
 その日は朝は何も食べて居なかった為、唐突に空腹が襲う。

「おなかすいた…」

 そう言いながら周りを見渡す、が、前に食べた様な実は多くは無く、見た事の無い実ばかり。かと言って同じ実ばかり食べる訳にも行かない。

「食べ物をあつめないと」

 そうは言ったものの、狩りなどした事が無い。仕方なく。同じ実を少しだけ食べた。食べている最中高い木を見上げる。そこに所々生えている実を見つけふと思った。

「魔法をつかえばいけるかな」

 先ほど練習した《身体能力上昇》の魔法を使えば木を簡単に登れるだろうか、そう思い、練習通りに魔法を発動する。

「なんか体がかるい」

 そう感じた。そして木によじ登る。すると

「すごい」

 想像以上に簡単に上へと登る事が出来た。魔法に感動しながら、目的の木の実を取って行く。
 そして次々と同じ方法で色々な木の実を手に入れた。

「思ってたよりいっぱいとれた」

 と喜びながら少しずつ家に持ち帰った。
 食糧となる木の実は取れたものの、問題が有った、それは、その木の実が食べて良い物かどうかだ。
 というのも此処は森の中、毒の木の実も当然有るだろう、その為、ローニャはまず、どの木の実が食べられるのか、そうで無いのかを本で調べる事にした。
 本を漁る。しかし木の実について載ってそうな本中々見当たらなかった。長いこと探していると、一冊だけ植物に関する本があった。ローニャはその本を手に取り読む事にした。
 難しい言葉が多く、分からない所も有ったが。幾つかは調べが付いた。そしてある程度読み進めて、木の実の項目を読み終わり、先程取った木の実の仕分けを始めた。
 仕分けが終わった。それなりに木の実は残り、後の残りはサバイバル本の通り、罠や撒き餌に使うことにした。
 そうこうして、食糧問題は一時的に解決した。

「よし、つぎは狩りだ。」

 ローニャは次の目標を決めた
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

処理中です...