リゼの悪役令嬢日記

風野うた

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24 衣装部屋

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6月12日 くもり

今日は緑茶と羊羹がマーゴット様のお茶会で出て来た。ベルファント王国は日本的要素が多い。それと今日は頑張り過ぎたので明日はゆっくりしたい。



 王都を出て2晩目、ブランド領までは、あと2日あれば着くだろう。

野営をしながら、次期王宮筆頭魔術師シータから渡されたリストを元に、私は捕縛計画を練っていた。

横には隣国の近衛騎士リチャードが座っている。

「リチャード殿、貴殿は姫からの密命があるのか?」

どうせ答えることなど出来ないだろうが、念のため問う。

「はい、ヘミングウェイ団長。そうですね、、、特に王女殿下から口止めもされておりませんのでお話しいたしましょうか?」

は?そんなに簡単に話すのか?

「そうか、出来れば計画を立てる前に聞いておきたい」

「まず、我が国で先月起きた事なのですが、、、」

私は彼の複雑過ぎる話を聞かなければ良かった。

これは一度ルイス殿下に至急お伝えして指示を仰がなければ、、、。



「ルイス様?王宮の案内というのは、、、、思っていたのとはだいぶん違ってました。冒険の旅みたいですね」

「リゼ、油断してはダメだ。この通路を使う事がないのが1番良いが、連日狙われているだろう。備えておいて損はない!」

それは分かりますけどね、もう1時間以上狭い通路と階段の登り降りで、筋肉が笑っていますよ。

「笑うのか?」

「何だか、開き直って私の心の声を聞いていますよね?私のプライバシーや、如何に、、、」

「誤解のない様に言っておくが、何でも聞こえて来たりはしない。何故か面白いところだけが聞こえてくるんだよ」

言い訳しながら、ルイス様の声は笑っている。

「私はいつからそんなに笑われる面白い令嬢になっちゃったのでしょう」

私は不服な気持ちを言い放つ。

「最初からリゼは面白かったぞ!」

ルイス様は一層大きな笑い声を立てる。

私は立ち止まって、ジト目でルイス様を見つめた。

と、その時。

「ん、シータが呼んでる。何か重要な話らし、、、」

ルイス様が話している途中で、私たちは何か見えない力に引っ張られた。

ドッシーン!!

「痛ったーい!」

私はお尻から落ちた。

横を見るとルイス様は着地成功している。

ムカつく!!

「ごめん、リゼ!間に合わなかった」

「うううっ・・・」

ルイス様に手伝ってもらって、ゆっくり起き上がる。

「姉様!!ごめんね。僕がルイス殿下と念話で話している途中に、爺ちゃんがまた強制的に召喚したんだ」

何ですって!私もシータの気持ちが良く分かったわ。

これはダメよ!

「ええ、痛いけど、大丈夫よ。シータ」

心配そうなシータに何とか返事をする。

王宮筆頭魔術師ルータ、危険だわ。


「で、お前たちは何の用事で、オレ達を呼んだんだ」

「昨日、ルイス殿下が急いで用意した部屋のことなんだ。あの部屋を用意したのは誰?あの部屋はガーデンパーティーの日に犯人がナイフを投げた部屋なんだよ」

「何だと!?」

シータの話にルイス様が驚く。

「あの部屋は女官長が用意したと聞いた。で、あの部屋に何かあるのか?」

「もしかすると、、、。また今日あたり襲撃とかありそうな気がしたから呼んだんだ」

シータはあっけらかんと答える。

「また襲撃か?で、部屋は5つあるが、、、お前はもう何か分かっているのか」

「とりあえず衣装部屋は怪しいよ。あの部屋は前回調べたとき魔法陣の痕跡があったんだ。表向きは、すっかり消されていたけど」

「リゼ、衣装部屋に何か怪しい点は無かったか?」

えええ、展開の速さに付いて行けない、、。

うーん何かあったかなぁ、、。

「そうですねぇ、私はルイス様に最初にお部屋の紹介をしてもらって以来、衣装部屋には入っていないので分からないです」

「入っていないって、その服は?」

「ミミがサッと入って取ってきました」

ルイス様が腕を組んで何か考え始める。

すると、ずっと後ろで黙っていた王宮筆頭魔術師ルータが口を開く。

「ミミは何処から来たのかい?」

ルイス様が嫌そうな顔をする。

「まさか身内が怪しいと思ってませんでした。ご指摘ありがとうございます。早急に調べます」

「いやいや、ルイス坊大丈夫じゃよ。どうせなら、まとめて捕まえようぞ」

王宮筆頭魔術師ルータの顔が悪い顔になっている。

「爺ちゃん!!僕も参加したいー!」

シータまで盛り上がってる、、、。

「そうですね。そうしましょう」

ガーン、あっさりルイス様も乗っちゃった!!

「あのー、言うまでもなくー、私が囮ですよね?」

3人が揃って頷いた。

今日の予定がまた増えた。それも格段にベビーなやつが、、、。

その後、私達は簡単な打ち合わせをした。

3人とも自信があるのか策略も何もなく隠れて待ち構えるらしい。

大丈夫なの?

そして、私とルイス様は再び、元の場所に戻された。

「ルイス様、逃走経路は次回にしません?もう襲撃に備えて体力温存したいです」

泣き言をいう私。

「そうだな。今回はまぁ事前準備も出来たし、大丈夫だろう」

ルイス様が太鼓判を押してくれたので、マーゴット様とのお茶会までは自由時間となった。


 「お招きありがとうございます!マーゴット様」

 私は前世最推しのマーゴット様が滞在している離宮へ招かれた。

「エリーゼ様、お忙しい中ありがとうございます。今日はベルファント王国のお茶とお菓子をご用意しました」

マーゴット様、相変わらずお美しいし、サラッとパンツスーツ姿でかっこいい!

そして、テーブルを見て更に驚いた。

「これは豆をお砂糖でじっくり煮込んで練ったもので、羊羹というのです。お口に合えば嬉しいのですが」

ええ知ってますとも!!和菓子、大好きです!

私は大声で叫びたい気持ちを抑える。

「そうなのですね。初めて見ました。豆のお菓子なんて!楽しみです」

柔らかな笑みを添えて、マーゴット様へ嬉しい気持ちを伝えた。

ほら、私もちゃんと淑女らしいことも出来るんですよ!ルイス様!!

私は案内された席に座り、マーゴット様も着席した。

アレ?

「マーゴット様、リチャードさんは今日もいらっしゃらないのですね」

「ええ、リチャードはヘミングウェイ団長のお手伝いに出してます。
しばらく帰って来ないと思います」

んんん?ヘミングウェイはランドルの王国騎士団長なのにベルヴァント王国の騎士リチャードさんがお手伝い?

「ええっと、すみません。両国で何かしているのですか?」

何か大きな争い?それとも共同訓練?私はその話を全く知らなかったので聞いてみた。

「そうですね。ヘミングウェイ団長の故郷のお手伝いと言ったところでしょうか。私も駆け付けたかったのですが、こういう時は身分が邪魔をしますね」

残念そうな表情のマーゴット様。

「マーゴット様はもしや戦場がお好きなのですか?」

恐る恐る聞いてみた。

「そうですね、白黒付けるのは好きです」

人は見かけに寄らないのね、、、。

急にルイス様が言っていた、いばら姫と言う言葉が頭を過ぎった。

「マーゴット様が戦場に行かれたら、ロイ王太子殿下は心配されませんか?」

思わず出た言葉にマーゴット様の表情が一瞬曇った。

「兄は戦いを好まないタイプなので、心配というより嫌がるかもしれません」

遠くを見つめながら、マーゴット様は仰った。

そのタイミングで、侍女がお茶のポットを持って来た。

素早く、素敵な茶器もテーブルに用意される。

「エリーゼ様、このお茶は緑茶と言います。渋味はありますが、後味はサッパリしているので甘いお菓子と良く合うのです。良かったら飲んでみてください」

説明し終えると、マーゴット様が私にウィンクをした。

うぉー!可愛い!!素敵!

私もにっこりと頷く。

「はい、初めて飲むので緊張します。いただきます」

私はカップにそっと口を付けた。

ああ、ルイス様、計画、、、。

私は暗い闇に飲まれるように地面へと倒れ込んだ。
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