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「グオオッ!」
トロールの一撃を受けて、地面が大きく陥没する。
「ぐあっ!」
「きゃあぁぁ!」
あまりの衝撃に立っていることもままならない。
それでもなんとか立ち上がると、トロールの猛攻が続く。
「くそっ!なんて馬鹿力なんだ!」
攻撃を受ける度に吹き飛ばされそうになる。
「ぐふぅっ!」
「お兄ちゃん!?」
ユスティの声に反応して振り返ると、エルドレッド王の腹部から血が流れ出していた。
「ちぃ、かすり傷だ!気にするな!」
そう言いながらも苦悶の表情を浮かべる。
このままじゃ皆やられてしまう……。何か手は無いのか? 必死に考えを巡らせるが、焦りと恐怖で頭が働かない。……だが、その時ある言葉を思い出す。
―――困っている人がいたら助けたいと思うだろう?それが人間ってものさ。
その通りかもしれない。僕は今まで自分より弱い人達を見下してきた。
自分が強ければそれでいいと思っていた。……でもそれは間違いだ。だって僕は今、目の前にいる人を救えないでいる。
僕は……僕はもっと強くなりたい!!
「……おい、坊主。まさか諦めたんじゃないだろうな?」
ボロックさんが険しい顔をして問いかける。
「……いや、まだです」
「ならどうするつもりだ?言っておくが俺はこれ以上何もできないぞ」
「分かっています。でも……」
「でも?」
「でも……守ります!」
「……ほう、どうやって守るって言うんだ?」
「分かりません……」
「はあ?分からないだと?」
「はい。……ただ、守れるようになります!」
「……ははははっ!面白い小僧だな!気に入ったぜ」
「お兄ちゃん……」
ユスティは心配そうな目で見つめてくる。
「大丈夫だよ、ユスティ。僕を信じてくれるかい?」
「うん……分かったよ!」
「よし、じゃあいこうか!」
「グオォォ!!」
トロールが拳を振り下ろすと、すかさず剣を抜いて受け止める。
「ぐぬぬぬ……!」
しかし、あまりの力に押し潰されてしまいそうになる。
「リク、頑張れ!」
「お兄ちゃん、負けないで!」
二人の応援を受け、歯を食いしばって耐え続ける。
「うおおぉーーーーー!!!」
徐々に押し返していくと、トロールは驚いたような声をあげる。
「グオオォッ!?」
「はあぁーーーーーーーっ!」
そのまま弾き返すと、トロールはバランスを崩した。
「お兄ちゃん!今の内に!」
「ああ!任せろっ!」
僕は再び剣を構え直す。
『聖なる光に集いし精霊達よ』

詠唱を始めると同時に体から光が溢れ出す。
『我が呼び声に応え』
すると僕の周囲に複数の魔法陣が現れた。
『今こそ力を解放せよ』
全ての魔法陣から光の矢が出現し、一斉にトロール目がけて飛んでいく。
「グオオォォ!!」
次々と命中していき、苦しんでいる様子が見える。
「いけぇ!リクっ!」
「頑張ってください!」
二人も懸命に応援してくれている。
「これで……とどめだぁっ!」
最後の一射を放つと、その矢は大きな光を放ちながら突き進む。
「グオアァァ……!」
その眩しさに目を開けていられないほどだ。……やがてその輝きも消えていくと、そこには倒れたトロールの姿があった。
「はあっ……はあっ……」
「やったぞ!流石は勇者だ!」
エルドレッド王が駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん!すごい!やっぱり勇者様だったんだね!」
ユスティは興奮気味にはしゃいでいる。
こうして僕らは、トロールから国を守ったのであった。
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