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第一章 帝都の賢者
第77話 直球勝負だ
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紹介されたのは、メイヴィスが “友” と呼ぶには少々違和感のある若い者であったにゃ。
メイヴィス「死にかけの老人とはなんじゃ! まぁ間違いではないがの!」
「人間の賢者には心を読む能力があるにゃ?」
メイヴィス「思い切り口に出ておったぞ」
「おっと、森の中と違って独り言は危険にゃな」
まぁ別に、若者と老人が友人になってもおかしい事はないかも知れないが…
若者と言うか少年? まだ子供っぽさも残す、大人になりかけの年齢の少年という感じだ。
…少年でいいんだよな? 一瞬女性かと思うような美しい顔立ちで、かつ、服装や髪型、装飾品等その装いも少々―――いやかなり女性的であった。
そしてこの少年、その女性的なファッションは別としても、そこはかとなく上品な雰囲気がある。女性的で上品だが、決して弱々しくもない。ある種の風格さえも感じさせるものがあった。
「なるほどにゃ…」
ピンと来た俺はメイヴィスをジト目で見る。
メイヴィスは目を逸らして誤魔化す。
どうも…老獪というか、ずる賢いというか。注意しないと、きっと上手く乗せられ嵌められてしまうだろう。
堀川部長は前世でも俺より長く生きた老獪で優秀な営業マンであったし、さらにその後、この世界でも百年以上を過ごしているのだ。もともとの営業トーク技術だけでなく、人間としての経験値が違う。おそらく悪巧みや駆け引きでは叶わないだろう。
正直、前世ならともかく、この世界でまで、誰かの思惑通りに動かされるのは好きではないなぁ。まぁ相手が堀川部長だから悪いようにはしないと思うが。(前世のホリさんにはそれくらいの信頼感は持っていた。)
ただ、今後、帝都で人間と関わる事が増えるなら、もっと注意が必要だな。中には頭の良い詐欺師のような人間もいるからな。
おっと、なんか帝都に長居する方向で考え始めているな、いかんいかん、乗せられ始めている…?
―――まぁ、経験値が足りないのは、注意してどうなるものでもないし。説得の話術を教わったといっても、それを使いこなすほど俺は面の皮が厚くない。むしろ変に駆け引きをするよりは、俺は俺らしく居るようにしたほうがいいだろうな。
よし、直球勝負だ。そのほうが俺らしい。
「カイトにゃ……はじめまして、次期皇帝陛下? 今は皇太子というところかにゃ?」
マルス「え、どうしてそれを……」
メイヴィス「おっとカイト、むやみに人を【鑑定】するのは失礼だぞ? 前の世界でもそうだったろう? 勝手に人の個人情報を見るものではない。
特に、この世界では個人の能力などの情報が命に関わる事もある。場合によっては勝手に鑑定すれば殺されても文句は言えない事態になるぞ?」
「鑑定などしてないにゃ。色々な情報から総合的に判断しただけにゃ。護衛を連れている一般人はあまりおらんしにゃ」
かなり離れた位置にいるが、護衛騎士と思われる者が二人、部屋の隅に立っていて、しかも俺を睨んでいるからな。
というか、人間はむやみに鑑定すると良くないのか。魔物はそんな事気にしないからな……憶えておこう。
森の中の魔獣や野獣は鑑定されて怒ったりはしないからな。人間はやはり面倒だ。
メイヴィス「貴族なら護衛くらいつけてもおかしくないじゃろ?」
それもそうか。
だが…
「…賢者の屋敷のお茶の間まで護衛を入れるのか? 賢者が護衛をつけていにゃいのに? ああ、俺を怪しんでるにゃ…?」
メイヴィス「…まぁ、それだけ儂が信用されていない、という事じゃよ」
マルス「失礼いたしました! お前たち、下がっていなさい。控えの間で待っていて下さい」
護衛騎士「しかし…」
マルス「お前達、まさか本気で賢者様が信用できないと言うつもりではないですよね?」
騎士二人はそれ以上反論できず、渋々部屋を出ていった。
マルス「改めまして…」
近づいてきてマルスが手を差し出してくる。
なんだその手は? ああそうか、握手をしたいのか。この世界で初めて握手を求められたな。というか日本でも握手などした記憶がないな。
いや、猫だから握手とかしないぞ? なんだその純真な子供みたいな期待に満ちた目は?
……やれやれ。
仕方なく、俺は手を握らせた。自分から握手はしないが、握らせるくらいはできる。
こりゃ、肉球を揉むにゃ!
俺はすぐに手を振り払った。
だが、マルスは引き下がらず、好奇の眼差しで俺の顔を見つめ続けている。
「……何にゃ?」
マルス「…え? あ! すいません!」
「まぁ、目の前に立って喋る猫が居たら、じっと見てしまうのも分かるけどにゃ…」
マルス「獣人…なのですよね…? 街でよく獣人は見かけますが、耳と尻尾があるくらいで、みな人間と大差ない姿をしています。所謂先祖返りというタイプですか?」
メイヴィス「マルスも。先祖返りというのは獣人の間では蔑称として使われる事もある言葉だ。失礼じゃぞ?」
マルス「え?!」
メイヴィス「死にかけの老人とはなんじゃ! まぁ間違いではないがの!」
「人間の賢者には心を読む能力があるにゃ?」
メイヴィス「思い切り口に出ておったぞ」
「おっと、森の中と違って独り言は危険にゃな」
まぁ別に、若者と老人が友人になってもおかしい事はないかも知れないが…
若者と言うか少年? まだ子供っぽさも残す、大人になりかけの年齢の少年という感じだ。
…少年でいいんだよな? 一瞬女性かと思うような美しい顔立ちで、かつ、服装や髪型、装飾品等その装いも少々―――いやかなり女性的であった。
そしてこの少年、その女性的なファッションは別としても、そこはかとなく上品な雰囲気がある。女性的で上品だが、決して弱々しくもない。ある種の風格さえも感じさせるものがあった。
「なるほどにゃ…」
ピンと来た俺はメイヴィスをジト目で見る。
メイヴィスは目を逸らして誤魔化す。
どうも…老獪というか、ずる賢いというか。注意しないと、きっと上手く乗せられ嵌められてしまうだろう。
堀川部長は前世でも俺より長く生きた老獪で優秀な営業マンであったし、さらにその後、この世界でも百年以上を過ごしているのだ。もともとの営業トーク技術だけでなく、人間としての経験値が違う。おそらく悪巧みや駆け引きでは叶わないだろう。
正直、前世ならともかく、この世界でまで、誰かの思惑通りに動かされるのは好きではないなぁ。まぁ相手が堀川部長だから悪いようにはしないと思うが。(前世のホリさんにはそれくらいの信頼感は持っていた。)
ただ、今後、帝都で人間と関わる事が増えるなら、もっと注意が必要だな。中には頭の良い詐欺師のような人間もいるからな。
おっと、なんか帝都に長居する方向で考え始めているな、いかんいかん、乗せられ始めている…?
―――まぁ、経験値が足りないのは、注意してどうなるものでもないし。説得の話術を教わったといっても、それを使いこなすほど俺は面の皮が厚くない。むしろ変に駆け引きをするよりは、俺は俺らしく居るようにしたほうがいいだろうな。
よし、直球勝負だ。そのほうが俺らしい。
「カイトにゃ……はじめまして、次期皇帝陛下? 今は皇太子というところかにゃ?」
マルス「え、どうしてそれを……」
メイヴィス「おっとカイト、むやみに人を【鑑定】するのは失礼だぞ? 前の世界でもそうだったろう? 勝手に人の個人情報を見るものではない。
特に、この世界では個人の能力などの情報が命に関わる事もある。場合によっては勝手に鑑定すれば殺されても文句は言えない事態になるぞ?」
「鑑定などしてないにゃ。色々な情報から総合的に判断しただけにゃ。護衛を連れている一般人はあまりおらんしにゃ」
かなり離れた位置にいるが、護衛騎士と思われる者が二人、部屋の隅に立っていて、しかも俺を睨んでいるからな。
というか、人間はむやみに鑑定すると良くないのか。魔物はそんな事気にしないからな……憶えておこう。
森の中の魔獣や野獣は鑑定されて怒ったりはしないからな。人間はやはり面倒だ。
メイヴィス「貴族なら護衛くらいつけてもおかしくないじゃろ?」
それもそうか。
だが…
「…賢者の屋敷のお茶の間まで護衛を入れるのか? 賢者が護衛をつけていにゃいのに? ああ、俺を怪しんでるにゃ…?」
メイヴィス「…まぁ、それだけ儂が信用されていない、という事じゃよ」
マルス「失礼いたしました! お前たち、下がっていなさい。控えの間で待っていて下さい」
護衛騎士「しかし…」
マルス「お前達、まさか本気で賢者様が信用できないと言うつもりではないですよね?」
騎士二人はそれ以上反論できず、渋々部屋を出ていった。
マルス「改めまして…」
近づいてきてマルスが手を差し出してくる。
なんだその手は? ああそうか、握手をしたいのか。この世界で初めて握手を求められたな。というか日本でも握手などした記憶がないな。
いや、猫だから握手とかしないぞ? なんだその純真な子供みたいな期待に満ちた目は?
……やれやれ。
仕方なく、俺は手を握らせた。自分から握手はしないが、握らせるくらいはできる。
こりゃ、肉球を揉むにゃ!
俺はすぐに手を振り払った。
だが、マルスは引き下がらず、好奇の眼差しで俺の顔を見つめ続けている。
「……何にゃ?」
マルス「…え? あ! すいません!」
「まぁ、目の前に立って喋る猫が居たら、じっと見てしまうのも分かるけどにゃ…」
マルス「獣人…なのですよね…? 街でよく獣人は見かけますが、耳と尻尾があるくらいで、みな人間と大差ない姿をしています。所謂先祖返りというタイプですか?」
メイヴィス「マルスも。先祖返りというのは獣人の間では蔑称として使われる事もある言葉だ。失礼じゃぞ?」
マルス「え?!」
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