パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】(※タイトル変更-旧題「天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す」)

田中寿郎

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第一章 帝都の賢者

第74話 賢者メイヴィスは勝ち組?

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過去の話は暗くなるので、気をとりなおし、未来の話をする事にした。

もう決して戻れない過去世の事をいつまでも言っていても仕方がない。

生きたまま転移してきて、なんとか元の世界に戻ろうとする、なんて展開はラノベの異世界転生モノによくある展開だが、俺は(メイヴィスも)あちらの世界で死んで転生してきているので、今更戻る事もできないし、メイヴィスはともかく俺は前世に良い思い出はほとんどないので戻りたいとも思わない。こちらの世界のほうがよほど自分らしく自由に生きられており幸せなのだから。

メイヴィスに関しては、前世でも今世でも充実した人生を送っており(ある意味勝ち組だと思う)、再びあちらの世界に生まれ変わるとしてもあまり気にしていないようだが。

そもそも、日本からこっちに転生してくる事があるなら、逆にこちらの世界の人間が日本(あるいは地球)に転生するパターンはないのだろうか?

地球でも前世の記憶があるという人の話は聞いた事はあるが、みな同じ地球での前世の記憶で、異世界の記憶を持っていてそれが役に立ったなどという話は聞いた事がないので、逆パターンはないのかも知れない。(そもそも、地球より進んだ文明から地球に転生するならいざ知らず、地球の中世レベルの文化の世界から現代の地球に転生しても知識チートなどできるわけもなく。魔法もないから魔法の知識があっても意味がないしな。)

ただ、こちらから戻れないし戻る気もないが、向こうから来る可能性はあるわけだ。メイヴィスと再会したのは奇跡的な偶然なのか、女神のイタズラなのか分からないが、もしかしたら他にも知り合いが転生している可能性はないとは言い切れない。

「もし……あの憎たらしい西谷が転生者として俺の前に現れたら…! 地獄に叩き落としてやるにゃ…!」

メイヴィス「気持ちは分かるがの、さすがに同じ会社から三人も同じ世界の同じ時代の同じ場所に転移するというのは、可能性としては低いんじゃないかのう…」

そのセリフはフラグですか? フラグ立てに行ってませんか?

まぁ、そうである事を祈りますが。

いや、来たなら来たで復讐できるのだから、俺としてはどちらでもいいな。

まぁとにかく、日本での話はほどほどにして、転生後の話をする事にした。

堀川部長は転生時に、“魔法に憧れていたので魔法のある世界がいい”、そして、“魔法がすべて使える人間にしてくれ” という条件を指定したそうだ。

そうして、【賢者】としてこの世界の人間(赤子)に転生したらしい。赤子スタートだが前世の記憶は生まれた時から残っていたそうで、神童ルートから賢者という王道人生を行ったらしい。

メイヴィスは幼い頃から着実にその才能を伸ばし、長じてからは仲間を得て、冒険者として世界中を旅したそうだ。

その後、一緒に旅した仲間の一人が実は自分は王子であるとカミングアウト。故郷に戻り王になると言うので、メイヴィスも冒険者を卒業、共に国に戻り、その国を発展させた。それがこの国、ガレリア帝国だそうだ。

もちろん国が一代で“王国”から“帝国”に成長できたのは賢者メイヴィスの助力が大きかったのだそうだ。

ただ、そのメイヴィスの親友だった皇帝も老いには勝てず。ここ数ヶ月は寝たきりの状態だそうだ。

ちなみに、この世界でも人間の寿命は五十年から百年くらいだそうだ。賢者メイヴィスと皇帝が百五十年も生きたのは例外的な長寿であり、ひとえにメイヴィスが高度な治癒魔法が使えたおかげである。

とは言え百五十歳ともなるとさすがに、そろそろ限界(寿命)だと言う。

メイヴィスはまだ動き回れているが、前皇帝はメイヴィスより少し歳上だそうで、肉体はもう限界を迎えているらしい。

皇帝はそう長くはないだろうとメイヴィスは言う。もし皇帝が亡くなれば、次の皇帝には皇帝の孫が即位する予定だそうだ。(皇帝の息子はだいぶん前に戦死してしまったそうだ。)

だが、この孫が心配の種で、皇帝は死ぬに死ねない状態なんだとか。孫は優秀ではあるそうなのだが、王となるには少々問題があるのだ。

だが、皇帝の跡継ぎはその孫一人だけだとの事であった。


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