パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】(※タイトル変更-旧題「天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す」)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
71 / 85
第一章 帝都の賢者

第71話 帝都で紅茶を飲む

しおりを挟む
老人を森から連れ帰り保護者グリスに引き渡したわけだが…

メイヴィス「誰が迷子の徘徊老人じゃっ!」

「そこまでは言ってないにゃ。ちょっと思っただけにゃ」

メイヴィス「思ったんかーい」

「ところで…街に戻ってふと気付いたんにゃが……」

メイヴィス「?」

「魔石が足りないなら、街で買えばいいんじゃにゃいか?」

メイヴィス「いやぁ、チャージ用魔石は非常に希少で高価なものじゃ。帝国だから大量に備蓄できていたのじゃ。こんな辺境の街では手に入らんと思うぞ」

「聞いてみないと分からんにゃ」

だが、商業ギルドで訊いてみたところ、やはりすぐには用意できないと言われてしまった。時間を掛ければ少量なら手に入るだろうが、転移が可能なほどの質と量となると、事実上不可能だろうと。

この街ムサロは魔境と言われるような森が近いので、たまに高ランクの魔物の魔石が冒険者から持ち込まれる事はあるが、それもそう頻度の高い話ではないそうだ。

それに、魔石の原石そのままではリチャージブル魔石にはならないそうで、精製・加工が必要なのだが、それができる技術者はこの街には居ないらしい。

さらに、転移の魔道具を作動させられるほどの大量・高品質な魔力を保持できる魔石となると国宝級モノで、そう簡単に手に入らないのだそうだ。

「じゃぁ、空になった魔石に魔力をチャージしたらどうにゃ? チャージして再利用できるんにゃろ? 俺は結構魔力が多いから、入れてやるにゃ」

だが、俺が魔力を押し込んだところ、魔石は簡単に壊れてしまった。どうやら短時間に大量に魔力を入れると壊れてしまうらしい。

(一瞬、高価なレアものを壊してしまったと焦ったが、それは別に気にしなくて良いという。帝都でも、チャージに失敗してダメにしてしまう事はたまにあるのだそうだ。)

魔石の魔力チャージは、少しずつゆっくりやる必要があるようだ。だが、ちょぼちょぼと少しずつチャージしていたのでは、時間が掛かりすぎる。

メイヴィス「帝都でも、長い時間掛かって備蓄してきたのじゃよ。なにせ転移が可能になるまで魔力をチャージするのに、一つにつき二百人の魔法使いが半年掛かりじゃからの」

実は転移の魔道具は皇帝が管理しており、滅多に使用許可が出ないものなのだそうだが、今回はメイヴィスがどうしても必要だと言うので特別に使用許可を出してもらったのだそうだ。

そうまでして俺を補まえたかったのか…。

「じゃぁ王都から魔石を取り寄せれば良いにゃ。届くまで、街でゆっくりしてればいいにゃ」

メイヴィス「……実はな、帝都にももう備蓄がないんじゃ。先日この国を占領する時の奇襲作戦で全部使い切ってしまったからの。儂が持ってきたのが、本当に最後の魔石じゃったんじゃ」

「それじゃぁ、帝都でチャージして持ってきてくれるまで気長に待てば…」

メイヴィス「儂もそうしたいところなんじゃがな。皇帝陛下がすぐに戻って欲しいと言うのでなぁ…」

実は、時間が掛かってよいのなら、メイヴィス達も馬車で帝都に向かえばいいのである。馬車なら足の悪いメイヴィスでも問題はない。なんなら乗り心地の良い王家の馬車で迎えに来てもらえばいいのだ。賢者に返ってきて欲しい皇帝なら、すぐに迎えを寄越すだろう。

メイヴィス「まぁ、確かに、王家の馬車なら乗り心地はそれほど悪くはないがの。それでも、長時間の移動は腰に来るので嫌なんじゃよ。それに馬車での往復の日数も、皇帝陛下は短縮してほしいはずじゃ」

「皇帝の都合とか俺には関係ないけどにゃ…」






まぁ、グダグダ言ってはみたものの、俺が連れて行くつもりなのだが。ここで放りだしたら報酬も貰えなくなるしな。(メイヴィスが再現に成功したという地球の飲食物は確かに魅力的だ。)

メイヴィスに略地図を書いてもらった俺は、空を飛んで帝都まで行き、都の中には入らずトンボ帰りでムサロに戻り、メイヴィス達を転移で運んでやったのであった。

帝都までも空を飛んでしまえば1~2時間の行程である。途中、空を飛ぶ魔物に襲われたりもしたが、軽く一蹴して亜空間に収納した。古龍と互角に戦える俺には飛亜龍ワイバーンなど敵ではない。

そして……

……今は、帝都の屋敷に着き、メイヴィスが紅茶を淹れてくれるのを待っている。

待つ間、考えていたのだが……

どうも、このメイヴィスという人物、百五十年も生きているだけあって老獪な印象がある。

もしかしたら、魔石を使い果たしたという話も、帝都にももう在庫がもうないという話も、全部嘘だった可能性もあるかも?

本当にないと言ったのも、泣き落としにかければ断れないだろうと読んでの嘘だった可能性も?

この世界に来てから俺は、駆け引きが必要な相手とはほとんど出会った事がない。多少知恵の回る魔物はブラフや駆け引きもする事があるが、それでも人間の狡賢さには及ばない。

街に行ってからも、特に頭を使った交渉や駆け引きをした事はなかったしな。

だが…。人間は嘘をつく生き物だ。

中には、人を騙すことにかけては天才的に頭が切れる者も居る。

人間と付き合う時は気をつけなければいけないなと言うことを改めて思い出した。

ま、俺には高度な駆け引きなど元からできないがな。

だとすると、大事なのは、右往左往せず、自分を貫く事か…

などと考えていたが、出てきた紅茶を飲んで思考が止まった。

美味い……。

というか懐かしい……

そうそう、地球の紅茶ってこんな感じだったよねぇ。

メイヴィス「どうじゃ、よく再現できてるじゃろ?」

「確かに…!」



しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...