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序章(プロローグ)
第54話 用があるならそっちが来い
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人に話を聞かれずに、落ち着いて話ができる場所……
…そんなの俺が知るわけがない。俺がこの街で行きつけの店は、今居る【青空亭】だけだ。
実は商業ギルドで会議室を借りるという手もあったのだが、この時は思いつかなかった。
後で知ったのだが、商業ギルドには盗聴防止の魔導具が備えられた会議室があるのだそうだ。
まぁ、仮に、商業ギルドの会議室に盗聴防止装置があるにしても、それを設置した商業ギルド側なら、その気になれば盗聴は可能だろう。(俺はまだそこまで無条件に商業ギルドを信頼してはいないからな。)
その前に、このグリスという人物の話がそこまでセキュリティを気にする必要がある話なのかどうかも分からないのだが。
グリス達も、隣国から来たばかりの外国人なので、当然この街でセキュリティが確保された場所など用意できないのであった。
「仕方ないにゃ…」
・
「…さぁ、ここなら誰にも邪魔はされないにゃ」
俺は、転移魔法でグリスとその仲間達もろとも、森の中にある自分の屋敷の庭に戻ってきた。
いつの間にか周囲の景色が変わっており、グリス達は混乱したようだが。
ヤライ「さっきまで街の中に居たのに……?」
「そこに座るといいにゃ」
庭の真ん中にテーブルと椅子を出してやった。
「ここは街から離れた森の奥にゃ。それに俺が結界を張ってるから誰も入れないし誰にも話を聞かれる心配はないにゃ」
「お茶飲むにゃ?」
グリス「これはこれは…頂きます」
俺はお茶を出してやる。時間停止の亜空間収納にお茶を入れたポットをしまってあるので、いつでもすぐにお茶が飲めるのだ。
グリス「改めまして、私はグリスです。この二人はヤライとアマリ。隣国ガレリアで騎士をしています。私は文官ですけどね」
「…カイトにゃ」
ヤライとアマリは挨拶もそこそこに、キョロキョロ周囲を見回している。
グリス「あの、屋敷はあなたの…?」
「そうにゃ。俺が自分で作ったにゃ。格好いいにゃろ?」
グリス「自分で…というと土魔法を使って、と言う事ですか?」
「そうにゃ」
今出している屋敷は石作りなので、つまり土魔法で作ったものとなる。
「他に木造の屋敷もあるにゃ」
俺は屋敷を収納し、渋い木造の和風建築を出して見せる。趣味でいろいろな家を作ってみたが、なかなか人に見せて自慢する機会はないので、つい色々見せたくなって、何種類かとっかえひっかえ出して見せた。
それを見て目を白黒させているグリスとその仲間二人。
グリス「これは…収納魔法、です、かね? こんな大きな屋敷をいくつも収納しているのですか?」
「そうにゃ。まだまだあるにゃ。中も見るにゃ?」
グリス「いえ屋敷はもう結構ですー! ああいえ、時間があればじっくり中も見せて頂きたいところなのですが…」
「そうにゃ? じゃぁまた今度見せてやるにゃ」
グリス「は…はい…是非……」
ヤライ「あの…。これらの屋敷は、誰かに依頼して作らせたのですか?」
「違うにゃ。全部一人で作ったにゃ」
グリス「あなたお一人で? すべて? 他に手伝ってくれる方とかは居ないのですか?」
「居ないにゃ」
グリス「一人で……というと魔法で、ですよね?」
「そうにゃ。石造りの家は土魔法があれば簡単にゃろ? 土を高圧縮して固めてブロックにして積み上げるにゃ。え? そんな事普通はできない? そうにゃ? 人間は魔法が得意ではないんにゃな。木造のほうは、木を風刃を使ってカットするにゃ。木はそこら中にいくらでもあるしにゃ。あ、木でできていても、魔法で強化してあるから壊れないし火もつかないにゃよ」
グリス「なるほど……。これは、間違いないですね…」
グリスと仲間二人は目を合わせて頷いた。
グリス「私達はどうやら勘違いしていたようです」
「?」
グリス「実は……
…私から説明する予定ではなかったのですが、ここまで来て話さないのもおかしいのでお話しますが、我が国の賢者であるメイヴィス・アダラール師が国の認定占い師のアルバ様とともに予知をされたのです。この国マニブールに【賢者】が現れると。
我々はメイヴィス様の命で、その新たな賢者様を探しに来ていたのです」
「それが俺にゃと?」
グリス「それは分かりません」
俺は少しずっこけた。
グリス「いえ、すみません、なにせ、我々は人間の賢者を探していたので…」
「あーそれが猫だったので困っていると…」
グリス「…最初は、あなたに影で指示している人物が居て、その人物が賢者なのではないかと思ったのです…」
「俺はずっと一人にゃ、仲間は居ないにゃ」
グリス「ええ。あなたと騎士達の戦いを影から見させて頂きましたが、あなたは一人で騎士達を圧倒していました。しかも魔法を使っていた。獣人は魔法を使えないはずなのに…」
「ああ、その辺のカテゴリ分けは良く分からんにゃ。俺は【妖精猫】って種族らしいけど、それも獣人の一種だと思っていたにゃ。けど、妖精族は獣人とは違う種類だってロデスに言われたにゃ」
グリス「商業ギルドのグランドマスターですね? なるほど…やはり。【妖精猫】は別名【賢者猫】と呼ばれますからね。まさか、人間ではなく伝説の種族だったとは…見つからなかったわけです」
ヤライ「俺はイマイチ納得していないが……まぁグリスが確定だと言うのならそれでいい。違っていてもグリスに責任をとってもらえばいいんだからな」
ヤライ「というわけで、ガレリア帝国まで来てもらおうか!」
「んー…?」
いつもなら即答で断るところだが、俺はちょうど街を離れようかと考えていたところだったので一瞬だけ考えてしまった。
アマリ「賢者様からのご指名だ。これは、ガレリア帝国の皇帝の呼び出しと思ってもらって構わん。断ることは許されないぞ」
グリス「あ、こらお前達! そんな態度は…」
「お断りにゃ!」
結局即答する事になった。
グリス「あちゃー」
アマリ「!」
ヤライ「なんだと?!」
「そんな言い方されたら、行く気が失せるに決まってるにゃ。何でそんな高圧的にゃ? 俺は偉そうな奴は嫌いにゃ!
【賢者】っていうのにちょっとだけ興味があったから話を聞いてみたが、貴族とか王族とか出てくるなら、きっと偉そうな勘違い野郎ばっかりだろうから、関わりたくないにゃ」
ヤライ「お、おい、賢者メイヴィスは、会いたいと言って会えるお方じゃないんだぞ?」
アマリ「その……言い方は悪かったが、大変名誉な事なんだぞ? 普通は喜んで行くものなのだぞ」
「別に、俺は賢者に用はないにゃ」
ヤライ「賢者様にはあるのだ!」
「何の用があるにゃ?」
アマリ「…それは……言えないが…」
「そんなんでついていく奴はいないにゃ」
グリス「お前達! いい加減にしろ! メイヴィス様からは、くれぐれも丁重に招待するよう言われていただろうが! 忘れたのか?!」
アマリ「う、そうだった……」
ヤライ「す、すまん……」
グリス「カイト様! 申し訳ありませんでした、二人の無礼をどうかお許し下さい」
「俺は行かない。『お前達の無礼な態度が気に入らなかったので行かない』そう皇帝? 賢者? に伝えるといいにゃ」
ヤライ「それは……」
アマリ「そんな事言えるわけないだろう…」
グリス「分かりました、確実に、そのように報告いたしますので」
アマリ・ヤライ「「おい」」
グリス「こうなってしまっては仕方ないでしょう」
「だいたい、皇帝とか賢者とかも、俺を呼びつけて『家来にしてやる』とでも言うつもりなんじゃにゃいのか?」
グリス「いえ、決してそのような事はないです!」
「じゃぁ何の用があるにゃ?」
グリス「それは……私の口からは言う事は禁じられておりまして…」
「やれやれにゃ…。なんか面倒くさそうだから、帝国とは違うとこへ行くかにゃ」
グリス「お待ち下さい! 後日改めて賢者様より謝罪があると思いますので!」
「いらんにゃ。話は終わりにゃ? 特に面白い話はなかったにゃ。帰るなら送ってやるにゃよ」
グリス「……はい。では、今日のところはこれにて……今日は申し訳有りませんでした」
「もう来なくていいにゃよ」
俺は転移魔法でグリス達を街に戻した。
+ + + +
グリス「まぁそうおっしゃらず、今度は何か手土産でも持ってまいりますので……
……あれ?」
グリス達は気がつけば、街の中であった。
グリス「これは……
…なんだか、白昼夢でも見ていたみたいですねぇ…」
…そんなの俺が知るわけがない。俺がこの街で行きつけの店は、今居る【青空亭】だけだ。
実は商業ギルドで会議室を借りるという手もあったのだが、この時は思いつかなかった。
後で知ったのだが、商業ギルドには盗聴防止の魔導具が備えられた会議室があるのだそうだ。
まぁ、仮に、商業ギルドの会議室に盗聴防止装置があるにしても、それを設置した商業ギルド側なら、その気になれば盗聴は可能だろう。(俺はまだそこまで無条件に商業ギルドを信頼してはいないからな。)
その前に、このグリスという人物の話がそこまでセキュリティを気にする必要がある話なのかどうかも分からないのだが。
グリス達も、隣国から来たばかりの外国人なので、当然この街でセキュリティが確保された場所など用意できないのであった。
「仕方ないにゃ…」
・
「…さぁ、ここなら誰にも邪魔はされないにゃ」
俺は、転移魔法でグリスとその仲間達もろとも、森の中にある自分の屋敷の庭に戻ってきた。
いつの間にか周囲の景色が変わっており、グリス達は混乱したようだが。
ヤライ「さっきまで街の中に居たのに……?」
「そこに座るといいにゃ」
庭の真ん中にテーブルと椅子を出してやった。
「ここは街から離れた森の奥にゃ。それに俺が結界を張ってるから誰も入れないし誰にも話を聞かれる心配はないにゃ」
「お茶飲むにゃ?」
グリス「これはこれは…頂きます」
俺はお茶を出してやる。時間停止の亜空間収納にお茶を入れたポットをしまってあるので、いつでもすぐにお茶が飲めるのだ。
グリス「改めまして、私はグリスです。この二人はヤライとアマリ。隣国ガレリアで騎士をしています。私は文官ですけどね」
「…カイトにゃ」
ヤライとアマリは挨拶もそこそこに、キョロキョロ周囲を見回している。
グリス「あの、屋敷はあなたの…?」
「そうにゃ。俺が自分で作ったにゃ。格好いいにゃろ?」
グリス「自分で…というと土魔法を使って、と言う事ですか?」
「そうにゃ」
今出している屋敷は石作りなので、つまり土魔法で作ったものとなる。
「他に木造の屋敷もあるにゃ」
俺は屋敷を収納し、渋い木造の和風建築を出して見せる。趣味でいろいろな家を作ってみたが、なかなか人に見せて自慢する機会はないので、つい色々見せたくなって、何種類かとっかえひっかえ出して見せた。
それを見て目を白黒させているグリスとその仲間二人。
グリス「これは…収納魔法、です、かね? こんな大きな屋敷をいくつも収納しているのですか?」
「そうにゃ。まだまだあるにゃ。中も見るにゃ?」
グリス「いえ屋敷はもう結構ですー! ああいえ、時間があればじっくり中も見せて頂きたいところなのですが…」
「そうにゃ? じゃぁまた今度見せてやるにゃ」
グリス「は…はい…是非……」
ヤライ「あの…。これらの屋敷は、誰かに依頼して作らせたのですか?」
「違うにゃ。全部一人で作ったにゃ」
グリス「あなたお一人で? すべて? 他に手伝ってくれる方とかは居ないのですか?」
「居ないにゃ」
グリス「一人で……というと魔法で、ですよね?」
「そうにゃ。石造りの家は土魔法があれば簡単にゃろ? 土を高圧縮して固めてブロックにして積み上げるにゃ。え? そんな事普通はできない? そうにゃ? 人間は魔法が得意ではないんにゃな。木造のほうは、木を風刃を使ってカットするにゃ。木はそこら中にいくらでもあるしにゃ。あ、木でできていても、魔法で強化してあるから壊れないし火もつかないにゃよ」
グリス「なるほど……。これは、間違いないですね…」
グリスと仲間二人は目を合わせて頷いた。
グリス「私達はどうやら勘違いしていたようです」
「?」
グリス「実は……
…私から説明する予定ではなかったのですが、ここまで来て話さないのもおかしいのでお話しますが、我が国の賢者であるメイヴィス・アダラール師が国の認定占い師のアルバ様とともに予知をされたのです。この国マニブールに【賢者】が現れると。
我々はメイヴィス様の命で、その新たな賢者様を探しに来ていたのです」
「それが俺にゃと?」
グリス「それは分かりません」
俺は少しずっこけた。
グリス「いえ、すみません、なにせ、我々は人間の賢者を探していたので…」
「あーそれが猫だったので困っていると…」
グリス「…最初は、あなたに影で指示している人物が居て、その人物が賢者なのではないかと思ったのです…」
「俺はずっと一人にゃ、仲間は居ないにゃ」
グリス「ええ。あなたと騎士達の戦いを影から見させて頂きましたが、あなたは一人で騎士達を圧倒していました。しかも魔法を使っていた。獣人は魔法を使えないはずなのに…」
「ああ、その辺のカテゴリ分けは良く分からんにゃ。俺は【妖精猫】って種族らしいけど、それも獣人の一種だと思っていたにゃ。けど、妖精族は獣人とは違う種類だってロデスに言われたにゃ」
グリス「商業ギルドのグランドマスターですね? なるほど…やはり。【妖精猫】は別名【賢者猫】と呼ばれますからね。まさか、人間ではなく伝説の種族だったとは…見つからなかったわけです」
ヤライ「俺はイマイチ納得していないが……まぁグリスが確定だと言うのならそれでいい。違っていてもグリスに責任をとってもらえばいいんだからな」
ヤライ「というわけで、ガレリア帝国まで来てもらおうか!」
「んー…?」
いつもなら即答で断るところだが、俺はちょうど街を離れようかと考えていたところだったので一瞬だけ考えてしまった。
アマリ「賢者様からのご指名だ。これは、ガレリア帝国の皇帝の呼び出しと思ってもらって構わん。断ることは許されないぞ」
グリス「あ、こらお前達! そんな態度は…」
「お断りにゃ!」
結局即答する事になった。
グリス「あちゃー」
アマリ「!」
ヤライ「なんだと?!」
「そんな言い方されたら、行く気が失せるに決まってるにゃ。何でそんな高圧的にゃ? 俺は偉そうな奴は嫌いにゃ!
【賢者】っていうのにちょっとだけ興味があったから話を聞いてみたが、貴族とか王族とか出てくるなら、きっと偉そうな勘違い野郎ばっかりだろうから、関わりたくないにゃ」
ヤライ「お、おい、賢者メイヴィスは、会いたいと言って会えるお方じゃないんだぞ?」
アマリ「その……言い方は悪かったが、大変名誉な事なんだぞ? 普通は喜んで行くものなのだぞ」
「別に、俺は賢者に用はないにゃ」
ヤライ「賢者様にはあるのだ!」
「何の用があるにゃ?」
アマリ「…それは……言えないが…」
「そんなんでついていく奴はいないにゃ」
グリス「お前達! いい加減にしろ! メイヴィス様からは、くれぐれも丁重に招待するよう言われていただろうが! 忘れたのか?!」
アマリ「う、そうだった……」
ヤライ「す、すまん……」
グリス「カイト様! 申し訳ありませんでした、二人の無礼をどうかお許し下さい」
「俺は行かない。『お前達の無礼な態度が気に入らなかったので行かない』そう皇帝? 賢者? に伝えるといいにゃ」
ヤライ「それは……」
アマリ「そんな事言えるわけないだろう…」
グリス「分かりました、確実に、そのように報告いたしますので」
アマリ・ヤライ「「おい」」
グリス「こうなってしまっては仕方ないでしょう」
「だいたい、皇帝とか賢者とかも、俺を呼びつけて『家来にしてやる』とでも言うつもりなんじゃにゃいのか?」
グリス「いえ、決してそのような事はないです!」
「じゃぁ何の用があるにゃ?」
グリス「それは……私の口からは言う事は禁じられておりまして…」
「やれやれにゃ…。なんか面倒くさそうだから、帝国とは違うとこへ行くかにゃ」
グリス「お待ち下さい! 後日改めて賢者様より謝罪があると思いますので!」
「いらんにゃ。話は終わりにゃ? 特に面白い話はなかったにゃ。帰るなら送ってやるにゃよ」
グリス「……はい。では、今日のところはこれにて……今日は申し訳有りませんでした」
「もう来なくていいにゃよ」
俺は転移魔法でグリス達を街に戻した。
+ + + +
グリス「まぁそうおっしゃらず、今度は何か手土産でも持ってまいりますので……
……あれ?」
グリス達は気がつけば、街の中であった。
グリス「これは……
…なんだか、白昼夢でも見ていたみたいですねぇ…」
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