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序章(プロローグ)

第44話 興味ないにゃ

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狼人カミタ「何も殺す事はなかっただろうが!」

「にゃにを言ってるにゃ。攻撃してきたのはそっちにゃ。攻撃して来るなら反撃するって言ったにゃ」

カミタ「トラオは力試しをしていただけだ、本気じゃなかった」

「んにゃ? その虎人は、俺を殺す気で攻撃してきてたにゃ。相手が俺じゃなかったら死んでたにゃ」

カミタ「それだけ強いのだったら手加減できたはずだ!」

「自分を殺しに来る魔獣相手に手加減してやらなければならない理由がまったく分からんにゃ。攻撃的な魔獣は危険にゃ。きっちり仕留めておかないと後で面倒にゃ」

カミタ「くそ…! トラオは魔獣じゃねぇっ!」

「…俺にとっては一緒にゃ」

牛人「…自業自得だ。トラオは強かったが、脳筋過ぎて問題行動が多かった。いずれ自滅すると思っていた」

カミタ「何の問題があったっていうんだよ! トラオは獣人達のためにずっと戦ってきただろうが」

牛人「トラオは弱い草食獣系の獣人を虐げていた。その姿勢は、まるで貴族が俺達獣人を蔑み虐待するのと変わらん」

カミタ「だが、トラオは騎士とも戦ってくれたじゃないか!」

牛人「戦闘狂で、強い奴と戦いたかっただけだったんじゃないか?」

カミタ「戦わなかった奴が戦った奴を笑うんじゃねぇよ!」

牛人「俺だって…俺達だって戦えるなら戦っていたさ。トラオは戦えるくらい食ってたからな。他の獣人達は、自分が食べる物を削って子供達に分け与えていたんだ。戦う体力など残っている者は居なかったんだよ」

そう言いながら牛人の男は服を捲くりあげて見せた。

カミタ「…!」

トラオはかなり筋骨逞しい体験であったが、牛人の体は骨と皮だけで突いたら折れてしまいそうであった。

牛人「最近は、彼の援助のお陰で、少しは体力を取り戻せたがな」

カミタ「……」

牛人「予定通り、彼に助力を頼もう」

「助力? 何の事にゃ?」

   ・
   ・
   ・

再び俺は獣人達に囲まれていた。最初と違うのは、獣人達が全員好意的で、感謝と称賛の言葉を述べている事である。

羊人「ありがとう、あんたには感謝してる!」
犬人「あんたは英雄だ!」
狐人「一緒に貴族を打倒し獣人達を解放しよう!」

牛人「私はスラムの獣人達のリーダー的な事をさせてもらってます、オリスンと言います」

「……カイトにゃ」

牛人オリスン「トラオの事は済みませんでした、どうか許して下さい。奴は殺されて当然です。あなたには以前からスラムに食料その他の支援をしてもらっていたのに…」

熊人「実は俺も半信半疑だったんだが、噂は本当だったんだな! 外からやってきた凄腕の獣人が、街の獣人達を救うために貴族を次々斃してくれているって…」

オリスン「あなたが作ってくれた好機をのがすまいと、実は、獣人達によるクーデターの計画があります。そのリーダーとして、どうか一緒に戦ってくれませんか?」

「ん? クーデター? リーダー? そんなの興味ないにゃ」

オリスン「…え?」

オリスン「…でもあなたは、獣人達を救うためにやってきたのですよね?」

「知らんにゃ、何の事にゃ?」

獣人達「「「「「…え?」」」」」

熊人「アンタは、獣人達を人間の貴族の支配から解放するために戦っているのではないのか?」

「だから知らんにゃ、何の事にゃ? 俺は攻撃されたから反撃してるだけにゃ? 獣人達が虐げられてるとかも最初は知らなかったし」

狼人カミタ「さ…、最初は知らなかったとしても、後で知って、助けてくれようとしたんじゃないのか?」

オリスン「そ、そうだ、だからスラムを支援してくれたのでしょう?」

「…別に? 国の経済に打撃を与えるから稼ぐばっかりじゃなく街に金を落とせって言われたからバラまいてただけにゃ。投資とかすると結局金が増えて戻ってきてしまうから、その点スラムなら、使うだけ浪費してくれるからちょうど良かったにゃ」

カミタ「…っ、結局トラオの言う通りだったわけかよ! こんな奴を頼ったってだめなんだ! 俺たちの自由は俺たちの手で取り戻すしかないんだ!」

「うん、そうしろにゃ」

オリスン「…でっ、でも…では! 改めて頼みます! 獣人達を苦境から救うため、どうか一緒に戦ってくれませんか?! 騎士達を退けたあなたが力を貸してくれればきっと領主、ワッツローヴ伯爵も打ち倒す事ができます!」

「おことわりにゃ。人間の街の事に口を出す気はないにゃ。支配されるも反抗するも好きにすればいいにゃ。俺を人間の街の争いごとに巻き込むんじゃないにゃ」

カミタ「もういい…コイツがどういうつもりだったかはともかく、騎士達が街から居なくなっているのは事実だ、今なら領主も討てる可能性が高い。無駄に時間を使って応援が来るとまずい! 好機を逃すな、すぐに攻撃を仕掛けるぞ!」

オリスンが縋るような目で俺を見てくるが…

「好きにすればいいにゃ。俺は知らんにゃ」

カミタ「行くぞ!」

残念そうな顔で獣人達は立ち上がり、カミタの後をついて行った。

「……ああ、そう言えば…」

カミタ「ああ?! 文句でもあんのか?!」

「領主のワッツローブ伯爵はもう死んでるにゃ」

獣人達「「「「「…え?」」」」」



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