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序章(プロローグ)
第33話 指名手配? そんなの関係にゃー!
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モイラーは街を出て、再び猫獣人の屋敷へと向かった。
護衛もつけず、馬にも乗らず、徒歩である。
崖崩れの土砂をよじ登りなんとか乗り越えると、カイトの屋敷があった場所まで歩いて行ったが……
そこには森があるだけで、屋敷などどこまで行っても見つからない。
モイラー「まさか……領主様の言うとおり、本当に幻覚であったのか?」
モイラーは街に戻り、領主のワッツローヴ伯爵に事実をありのまま報告した。モイラー自身は未だ半信半疑ではあったのだが、伯爵は見立て通り、幻覚の類であったと結論付けた。
+ + + +
実は、ゆっくり本を読みたかったカイトは、屋敷の場所を森のもっと奥に移動したのである。
いつもカイトは屋敷を置くために切り開いた森の木々は、そっくり亜空間に収納している。破格の亜空間収納を持っているカイトにとっては、木を切り倒すよりもはるかに効率が良いからである。そして、撤収するときには収納した木は元の場所に戻している。亜空間の収納空間はまだまだ余裕があるとは言え、無限というわけではないので、必要ないものは出しているだけである。そしてどうせ出すなら、収納した時の状態のまま出してしまうったほうがいい。バラバラに出して崩してしまう理由もない。
というわけで、カイトが撤収した時には森は大体元通りになっており、そこに家や屋敷が置いてあったなどとは誰も思わないわけである。
実は、カイトの熱線で抉られてできた森の道は近くに存在していたのだが、場所が分からなかったため、モイラーはその場所に辿り着けていなかったのである。
+ + + +
ワッツローヴ伯爵は、再び件の猫人の討伐命令を出した。
実は、最近街で獣人達の間に不穏な動きがあるという情報が入ってきていた。自分達の扱いに不満を持った獣人達が、待遇改善を訴える動きがあるとの事。これまでガッチリ押さえつけてきた獣人達に反発する力などないはずなのだが、どうやら最近、外からやってきた獣人が街の獣人達を助けるために動いているという噂が流れているのだ。実際、スラムの獣人達に金銭的支援が行われているという。もちろんそれが、件の猫獣人である事は間違いない。
このまま増長させれば、獣人達がいずれ反乱を起こす可能性もある。徹底的に締め付けて心を折っておく必要がある。そのためには、獣人を支援し、獣人を焚き付けていると思われるその、外から来たという獣人を潰してしまう必要がある。
今回は少数精鋭ではなく、街の主力兵力をほとんど連れての大軍である。
国でも一、二を争う精鋭であったシックス達は死んだ――――かどうかは死体もないので分からないが、彼らが帰ってこないのは事実であった――――ため、残った兵力を動員するしかない。シックス達には劣るが、数で圧せばどうにかなると踏んだのである。
それに、幻覚やトリックの類ならば、数が多ければ、嵌めるのは困難になると予想したのである。
ただ、件の猫獣人は行方不明である。
ただ、定期的に街に買い出しに来るという事であった。その時を狙って、いつでも仕掛けられるよう準備して待ったのである。
そしてひと月後……
ふたたびカイトが街にやってくる。
+ + + +
■カイト
ヨニール「カイト様、ご注意下さい」
いつも通り、狩った魔物の素材を商業ギルドに卸した俺は、ギルドマスターの○○○に応接室に呼ばれてそう言われた。
ちなみに今日はグランドマスターのロデスは不在だそうだ。
「注意って何のことにゃ?」
ヨニール「はい、なんでも、領主のワッツローヴ伯爵が、騎士を殺した猫人を指名手配いたしました。どうも、討伐のために軍隊の出動まで準備しているとの噂でして…」
ヨニール「商業ギルドにも領主から呼び出しがありましたよ」
「へぇ、大丈夫だったにゃ?」
ヨニール「ええ、領主邸には私ではなくロデス様が行ってくださいましたので。領主からはカイト様の居場所を訊かれたそうですが、もちろん、顧客の情報を売る事はできないとキッパリ突っぱねたそうです」
「領主に逆らって、街で商売ができなくされたりしにゃいのか?」
ヨニール「ふふふ、大丈夫です。実は、商業ギルドは街の運営のためにワッツローヴ伯爵に多大な資金援助を行っているのですよ。ロデス様は、場合によっては商業ギルドはこの街から撤退する。その場合、事業の資金はすべて引き上げ、さらに伯爵が借りている金もすぐに全額返済してもらうと言ったそうです」
ヨニール「商業ギルドが居なくなったら街の運営で困る事になりますしね。伯爵は諦めるしかなかったようで」
ヨニール「以前も言いましたが、そもそも、商業ギルドは国とは無関係の組織ですから。数多の国を跨ぐ巨大組織でもあります。その商業ギルドを敵に回す事など、小国の一伯爵にできるわけもないというわけです」
ヨニール「とは言え、獣人達を焚き付けている首謀者である猫獣人を殺す事を諦めさせる事はできませんでしたので…申し訳有りません」
ヨニール「伯爵は、総力を注いでカイト様を殺す腹積りだと思います」
ヨニール「カイト様は森の奥に住んでいらっしゃったのですよね? この街をしばらく離れたほうがよろしいかと思います」
「別に、気にしないにゃ。俺は、居たい場所に居るし、行きたい場所に行く」
誰かに気を使わず自由に生きる。それができるだけの力を望み、その願いが叶えられてこの世界に来たはずなのだから。俺はもう権力者の身勝手に振り回される生き方はしたくない。
「誰かに脅されて何かを強要されるのは嫌いにゃ。それなら逃げないでその相手を潰すにゃ」
護衛もつけず、馬にも乗らず、徒歩である。
崖崩れの土砂をよじ登りなんとか乗り越えると、カイトの屋敷があった場所まで歩いて行ったが……
そこには森があるだけで、屋敷などどこまで行っても見つからない。
モイラー「まさか……領主様の言うとおり、本当に幻覚であったのか?」
モイラーは街に戻り、領主のワッツローヴ伯爵に事実をありのまま報告した。モイラー自身は未だ半信半疑ではあったのだが、伯爵は見立て通り、幻覚の類であったと結論付けた。
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実は、ゆっくり本を読みたかったカイトは、屋敷の場所を森のもっと奥に移動したのである。
いつもカイトは屋敷を置くために切り開いた森の木々は、そっくり亜空間に収納している。破格の亜空間収納を持っているカイトにとっては、木を切り倒すよりもはるかに効率が良いからである。そして、撤収するときには収納した木は元の場所に戻している。亜空間の収納空間はまだまだ余裕があるとは言え、無限というわけではないので、必要ないものは出しているだけである。そしてどうせ出すなら、収納した時の状態のまま出してしまうったほうがいい。バラバラに出して崩してしまう理由もない。
というわけで、カイトが撤収した時には森は大体元通りになっており、そこに家や屋敷が置いてあったなどとは誰も思わないわけである。
実は、カイトの熱線で抉られてできた森の道は近くに存在していたのだが、場所が分からなかったため、モイラーはその場所に辿り着けていなかったのである。
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ワッツローヴ伯爵は、再び件の猫人の討伐命令を出した。
実は、最近街で獣人達の間に不穏な動きがあるという情報が入ってきていた。自分達の扱いに不満を持った獣人達が、待遇改善を訴える動きがあるとの事。これまでガッチリ押さえつけてきた獣人達に反発する力などないはずなのだが、どうやら最近、外からやってきた獣人が街の獣人達を助けるために動いているという噂が流れているのだ。実際、スラムの獣人達に金銭的支援が行われているという。もちろんそれが、件の猫獣人である事は間違いない。
このまま増長させれば、獣人達がいずれ反乱を起こす可能性もある。徹底的に締め付けて心を折っておく必要がある。そのためには、獣人を支援し、獣人を焚き付けていると思われるその、外から来たという獣人を潰してしまう必要がある。
今回は少数精鋭ではなく、街の主力兵力をほとんど連れての大軍である。
国でも一、二を争う精鋭であったシックス達は死んだ――――かどうかは死体もないので分からないが、彼らが帰ってこないのは事実であった――――ため、残った兵力を動員するしかない。シックス達には劣るが、数で圧せばどうにかなると踏んだのである。
それに、幻覚やトリックの類ならば、数が多ければ、嵌めるのは困難になると予想したのである。
ただ、件の猫獣人は行方不明である。
ただ、定期的に街に買い出しに来るという事であった。その時を狙って、いつでも仕掛けられるよう準備して待ったのである。
そしてひと月後……
ふたたびカイトが街にやってくる。
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■カイト
ヨニール「カイト様、ご注意下さい」
いつも通り、狩った魔物の素材を商業ギルドに卸した俺は、ギルドマスターの○○○に応接室に呼ばれてそう言われた。
ちなみに今日はグランドマスターのロデスは不在だそうだ。
「注意って何のことにゃ?」
ヨニール「はい、なんでも、領主のワッツローヴ伯爵が、騎士を殺した猫人を指名手配いたしました。どうも、討伐のために軍隊の出動まで準備しているとの噂でして…」
ヨニール「商業ギルドにも領主から呼び出しがありましたよ」
「へぇ、大丈夫だったにゃ?」
ヨニール「ええ、領主邸には私ではなくロデス様が行ってくださいましたので。領主からはカイト様の居場所を訊かれたそうですが、もちろん、顧客の情報を売る事はできないとキッパリ突っぱねたそうです」
「領主に逆らって、街で商売ができなくされたりしにゃいのか?」
ヨニール「ふふふ、大丈夫です。実は、商業ギルドは街の運営のためにワッツローヴ伯爵に多大な資金援助を行っているのですよ。ロデス様は、場合によっては商業ギルドはこの街から撤退する。その場合、事業の資金はすべて引き上げ、さらに伯爵が借りている金もすぐに全額返済してもらうと言ったそうです」
ヨニール「商業ギルドが居なくなったら街の運営で困る事になりますしね。伯爵は諦めるしかなかったようで」
ヨニール「以前も言いましたが、そもそも、商業ギルドは国とは無関係の組織ですから。数多の国を跨ぐ巨大組織でもあります。その商業ギルドを敵に回す事など、小国の一伯爵にできるわけもないというわけです」
ヨニール「とは言え、獣人達を焚き付けている首謀者である猫獣人を殺す事を諦めさせる事はできませんでしたので…申し訳有りません」
ヨニール「伯爵は、総力を注いでカイト様を殺す腹積りだと思います」
ヨニール「カイト様は森の奥に住んでいらっしゃったのですよね? この街をしばらく離れたほうがよろしいかと思います」
「別に、気にしないにゃ。俺は、居たい場所に居るし、行きたい場所に行く」
誰かに気を使わず自由に生きる。それができるだけの力を望み、その願いが叶えられてこの世界に来たはずなのだから。俺はもう権力者の身勝手に振り回される生き方はしたくない。
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