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序章(プロローグ)
第1話 妖精猫には嫌いなものがある
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『おい、ここは人間様の食堂だぞ? なんで猫が飯を食ってんだよ?』
店に入ってきた冒険者の男が、猫人である俺を見て、大声で文句を言い始めた。意地悪そうな薄笑いを浮かべながら…。
冒険者の男「獣が人間様のテーブルとイスで飯食ってんじゃねぇよ。獣は獣らしく、外で地べたで食ってろよ!」
・
・
・
俺には嫌いなものがある。
それは……
一、相手の都合を無視して上から偉そうに命じる奴
一、食事の邪魔をする奴
この男、ダブルでアウトだ。
…なのだが、その前に、その男の言い草・態度を見て俺は、なんだか既視感のあるやり取りだなぁと思ってしまった。
そう、数年前にも同じようなやり取りをした。しかも奇しくも場所も同じこの店でだ。
(あの時と店主は替わり、違う店になっているが。)
なんかここは俺には縁起が良くない場所なのか?
まぁそれはともかく。
俺は、もしかしたら人間専用の店と知らずに入ってしまったかも知れないと思い、一応念のため、店の人間に尋ねた。
「ここは人間専用の店にゃのか?」
店主「いえ…! そんな事はないです!」
店主は首を振って必死な様子で否定した。
なぜか焦ったような反応の店主。
そういえば、この国では、あの後、獣人差別を禁止する法律が作られたのだったな…。
獣人差別をしていると認定されたら厳しく罰せられてしまうのだ。
店主の焦りようからするに、その法律はまだ生きているのだろう。
――――俺は、そんな馬鹿な法律は作らんほうがいいと言ったんだがな?
だが、国王は『なんとしても差別をなくす! それも早急に』と言い張った。
そのためには、法律で厳しく強制する必要がある、それくらいしないと変わらないだろう! と言って聞かなかったのだ…。
差別など……したい奴にはさせておけばいいのに。どうせ差別は禁止したってなくなりはしない。人の心の自由は縛れはしない。平等・公平など幻想だ。
差別する者にも、される者にも、そうする、される、“理由”があるのだから。
どちらが正しいという話ではない。
理由があればしてもよいという話でもない。
仕方がないから諦めろなどという話でもない。
ただ、すべての物事には原因や理由がある、という事を言っているだけだ。
理不尽と感じる事は多いだろう。
だが、すべからく、理不尽であっても、何の理由もないという事はない。世の中の物事は全て、あるべくしてある。なるようになっているだけなのだから。
重力がある限り、りんごは地に落ちる。それが気に入らないという人間が居て、大騒ぎしたとしても、自然の法則を止める事などできはしない。
しかしまぁ、人間の国の事だ。勝手にすればいい。人間の国でどんな法律を作るも人間の自由だからな。
ただ俺は、俺のルールで生きるだけだ。
本当は、俺は人間とは関わらないつもりだった。だが、最近はそうもいかなくなってきた。人間の社会に近づいてしまった報いだな。そして、無関心・無関係で生きようとしても、長く生きるほど、少しずつ柵って奴ができてくるもんだ…。
だが……原則としては、生き方は変えるつもりはない。
俺は自由に生きるだけだ。その障害があれば、全力で抗う。その結果、色々壊してしまう事になったとしても。
――――かつてこの場所にあった国のように?
まぁそうされたくないから国王も焦って差別をなくすなどと言い出したらしいがな。
実は、国王は、俺へのゴマスリのために『獣人差別をなくす』などと言い出したらしい。
だけど、無意味な事だったと思うよ? なぜなら……俺は別に獣人の味方でもなんでもないのだから。
過去にまぁちょっとあって国がひとつなくなったりはしたが?(笑)
それもあくまで俺個人が攻撃されたから反撃しただけだ。別に『獣人差別をなくしたい!』などという志のために戦ったわけではない。俺にとっては、獣人が差別されていようと正直どうでもよかった。
つまり、(獣人差別禁止法は)王の勘違いによってできた法律と言えるが、どうでもいいので訂正に行く気もない。
まぁ何にせよ、法律は作られてしまった。
だが、法律で無理に人を縛ろうとすれば歪みが生じる。その法律のせいで、この国でも色々と問題が起きているという噂は聞いた事がある。
なにせ獣人というのは、脳筋の単細胞ばかりで、自分の欲望に忠実だからなぁ…。
(獣人は)頭が悪いわけではないのだが、頭を使う方向性が、自分の原始的な本能や欲望に忠実で、興味ない事には見向きもしない者が多いのだ。
そんな連中に妙な利権や特権を与えたらどうなる……?
まぁ、いよいよ問題となったら、また法律を変えればいいさ。王の一存で法律を変えられるのが専制君主制の良いところだ。
ただ、そうしてできた獣人差別禁止法だが、そんな法律ができたと知らないという者も多い。法律ができて何年もたっているが、なかなか浸透はしていないようだ。まぁ仕方がない。なにせ、国は広く、地球のように通信手段やメディアが発達しているわけではない世界なのだ。情報の伝達は遅いのだ。
中央はともかく、地方に行くほど、新しく法律など知らない者が多くなる。そしてこの街はかなり“辺境”である。
それに、法律はその国の中だけのものだ。周囲にある別の国の者ならば、知らなくて当然である。
絡んできた男も、田舎者で法律を知らないだけか、あるいは異国から流れてきた者なのかも知れない。
・
・
・
俺はその男に言ってやった。
「別に猿人専用の店ってわけじゃにゃいそうだぞ?」
冒険者の男「猿人…だと!! 貴様! 馬鹿にしてるのか?!」
店に入ってきた冒険者の男が、猫人である俺を見て、大声で文句を言い始めた。意地悪そうな薄笑いを浮かべながら…。
冒険者の男「獣が人間様のテーブルとイスで飯食ってんじゃねぇよ。獣は獣らしく、外で地べたで食ってろよ!」
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俺には嫌いなものがある。
それは……
一、相手の都合を無視して上から偉そうに命じる奴
一、食事の邪魔をする奴
この男、ダブルでアウトだ。
…なのだが、その前に、その男の言い草・態度を見て俺は、なんだか既視感のあるやり取りだなぁと思ってしまった。
そう、数年前にも同じようなやり取りをした。しかも奇しくも場所も同じこの店でだ。
(あの時と店主は替わり、違う店になっているが。)
なんかここは俺には縁起が良くない場所なのか?
まぁそれはともかく。
俺は、もしかしたら人間専用の店と知らずに入ってしまったかも知れないと思い、一応念のため、店の人間に尋ねた。
「ここは人間専用の店にゃのか?」
店主「いえ…! そんな事はないです!」
店主は首を振って必死な様子で否定した。
なぜか焦ったような反応の店主。
そういえば、この国では、あの後、獣人差別を禁止する法律が作られたのだったな…。
獣人差別をしていると認定されたら厳しく罰せられてしまうのだ。
店主の焦りようからするに、その法律はまだ生きているのだろう。
――――俺は、そんな馬鹿な法律は作らんほうがいいと言ったんだがな?
だが、国王は『なんとしても差別をなくす! それも早急に』と言い張った。
そのためには、法律で厳しく強制する必要がある、それくらいしないと変わらないだろう! と言って聞かなかったのだ…。
差別など……したい奴にはさせておけばいいのに。どうせ差別は禁止したってなくなりはしない。人の心の自由は縛れはしない。平等・公平など幻想だ。
差別する者にも、される者にも、そうする、される、“理由”があるのだから。
どちらが正しいという話ではない。
理由があればしてもよいという話でもない。
仕方がないから諦めろなどという話でもない。
ただ、すべての物事には原因や理由がある、という事を言っているだけだ。
理不尽と感じる事は多いだろう。
だが、すべからく、理不尽であっても、何の理由もないという事はない。世の中の物事は全て、あるべくしてある。なるようになっているだけなのだから。
重力がある限り、りんごは地に落ちる。それが気に入らないという人間が居て、大騒ぎしたとしても、自然の法則を止める事などできはしない。
しかしまぁ、人間の国の事だ。勝手にすればいい。人間の国でどんな法律を作るも人間の自由だからな。
ただ俺は、俺のルールで生きるだけだ。
本当は、俺は人間とは関わらないつもりだった。だが、最近はそうもいかなくなってきた。人間の社会に近づいてしまった報いだな。そして、無関心・無関係で生きようとしても、長く生きるほど、少しずつ柵って奴ができてくるもんだ…。
だが……原則としては、生き方は変えるつもりはない。
俺は自由に生きるだけだ。その障害があれば、全力で抗う。その結果、色々壊してしまう事になったとしても。
――――かつてこの場所にあった国のように?
まぁそうされたくないから国王も焦って差別をなくすなどと言い出したらしいがな。
実は、国王は、俺へのゴマスリのために『獣人差別をなくす』などと言い出したらしい。
だけど、無意味な事だったと思うよ? なぜなら……俺は別に獣人の味方でもなんでもないのだから。
過去にまぁちょっとあって国がひとつなくなったりはしたが?(笑)
それもあくまで俺個人が攻撃されたから反撃しただけだ。別に『獣人差別をなくしたい!』などという志のために戦ったわけではない。俺にとっては、獣人が差別されていようと正直どうでもよかった。
つまり、(獣人差別禁止法は)王の勘違いによってできた法律と言えるが、どうでもいいので訂正に行く気もない。
まぁ何にせよ、法律は作られてしまった。
だが、法律で無理に人を縛ろうとすれば歪みが生じる。その法律のせいで、この国でも色々と問題が起きているという噂は聞いた事がある。
なにせ獣人というのは、脳筋の単細胞ばかりで、自分の欲望に忠実だからなぁ…。
(獣人は)頭が悪いわけではないのだが、頭を使う方向性が、自分の原始的な本能や欲望に忠実で、興味ない事には見向きもしない者が多いのだ。
そんな連中に妙な利権や特権を与えたらどうなる……?
まぁ、いよいよ問題となったら、また法律を変えればいいさ。王の一存で法律を変えられるのが専制君主制の良いところだ。
ただ、そうしてできた獣人差別禁止法だが、そんな法律ができたと知らないという者も多い。法律ができて何年もたっているが、なかなか浸透はしていないようだ。まぁ仕方がない。なにせ、国は広く、地球のように通信手段やメディアが発達しているわけではない世界なのだ。情報の伝達は遅いのだ。
中央はともかく、地方に行くほど、新しく法律など知らない者が多くなる。そしてこの街はかなり“辺境”である。
それに、法律はその国の中だけのものだ。周囲にある別の国の者ならば、知らなくて当然である。
絡んできた男も、田舎者で法律を知らないだけか、あるいは異国から流れてきた者なのかも知れない。
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俺はその男に言ってやった。
「別に猿人専用の店ってわけじゃにゃいそうだぞ?」
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