172 / 184
第三部 暗殺者編
第172話 一人でおさらい
しおりを挟む
城を辞し、帰路についたクレイ。とりあえず、今回は王都内にあるヴァレット家の屋敷に泊まっているので、そこに帰る事にする。
もう用は済んだので、ここで解散でも問題ないだろうが、そうするにしても一応ブランドとワルドマには断っておく必要があるだろう。
それに、ルルとリリを回収する必要もある。(もう二人もクレイの奴隷ではないのだから、自由にさせても構わないのだが、ついつい二人の保護者的振る舞いがクレイは癖になっているであった。)
王城で馬車を用意してくれると言われたが断った。【転移】を使えば一瞬で帰れる、というわけではなく徒歩である。
そもそも【転移】は秘密にしているのだ、人の目がある場所では使いたくない。王宮内では恐らく監視がついていると思われるし、街中でも偶発的に人に見られてしまうと可能性もないとは言えない。
なにより、クレイは前世時代から散歩が好きだった。なぜなら、考え事をするのには、散歩しながらのほうがよい。これは前世の地球時代からの癖であった。コードがうまく動かない時、散歩しながら考えると、ふと原因に気付いたりするのだ。
のんびり歩きながら、クレイは自分の能力についておさらいしてみる。今回の件は、反省点も多かったが収穫もあった。
クレイは今でも魔法を使えない(体内に魔力を生成する臓器がない)のだが、外からみれば普通に生活魔法は使っているように見える。それは、光を発生する魔法陣とクレイの生来のスキルが合わさって成立している。
クレイの職能名は【魔法プログラマー】である。(※最初はただの【プログラマー】、それが後に進化して【魔法陣ハッカー】となり、現在は【魔法プログラマー】となったのだ。)具体的に何ができるかというと、脳内に【開発環境】を持っていて、魔法術式のプログラミングと魔法陣へのコンパイルが可能である。また、既存の魔法陣をデコンパイルしてソースコードに戻す能力もある。ただし、戻したコードは自力で解析する必要があるのだが。
そして、そのコードの量はとてつもなく膨大である。魔法のプログラミング言語である【古代魔法言語】にはもう慣れたが、それにしても、魔法という現象は簡単には理解はできない。
クレイは主に、【亜空間収納】や【転移】などの空間魔法について解析を行ってきたが、実は解析し多少なりとも理解できたのはその外縁部の一部だけなのである。空間魔法の根幹部分に関しては未だブラックボックスのままであった。(※空間魔法とは、この世界そのものの成り立ちにも関わっている、言ってみれば神の領域であり、一人の人間の脳力では全てを理解するなど不可能なのである。)
とは言え、核心部分はブラックボックスであっても、それを活用する事はできる程度には解析に成功した。そして、魔法の動力源である魔力の供給元を書き換え、再コンパイルできるようになったのである。
そして、クレイのスキルには、コンパイル済みの魔法陣をライブラリに【ストック】しておく能力も含まれている。ストックした魔法陣はいつでも呼び出す事ができる。光魔法が使えるようになった事で、それを出力する事が可能になったのである。
また、自分でコンパイルしていない魔法陣もストックできる。これは魔導具に魔法陣を刻むスキルと近似した能力である。(魔導具は、器具に魔法陣を刻みつける事で製造される。)
光を発生する魔法陣。この魔法陣との出会いがクレイを救ったとも言える。この魔法陣は、暗い場所なら見える程度の淡い光を発生させる魔法陣である。そしてクレイにとって有り難いことに、この魔法陣は動力源を必要としないのであった。空気中にある微量な魔力を使って半永久的に発光するのだ。
ただ、光が弱いので(太陽光の下など明るい場所では光が弱くて見えない)、夜間にだけ見えるような限定的な装飾にしか使われていなかった。
※この世界には照明器具の魔導具が普及しているが、それは魔力の消費がかなり多めで、頻繁に動力源の魔石を交換する必要がある。
使用者本人の魔力を使う携帯型照明器具もあるし、道具なしに光を発生させるという魔法もある。だが、いずれもそれなりに魔力が必要となるのだ。
何より問題なのは、光の照明器具ではクレイは魔法陣を映し出す事ができなかったのだ。その光は強く周囲を広範囲に照らすが、繊細な線を描くのには向いていなかったのである。
クレイが曽祖父の倉庫で発見した自立型の光発生魔法陣は、夜にだけ光って見える特殊な絵画に使われていたのだが、この光を使ってクレイのスキルでストックした魔法陣を映し出す事ができたのだ。このおかげで魔力がないクレイでも擬似的に魔法を使えるようになったのである。
クレイはこの魔法陣を体に刻み、それを使用してストックした魔法陣を投影させる事で、魔導具という器なしに魔法陣だけでその現象を発現する事が可能になるのである。(ただし、魔法陣を投影するスクリーン代わりの何かしらは必要となるのだが。)
ただし、クレイが魔法を使えるようになるためにはもうワンステップ必要であった。それは、動力源の問題である。
もう用は済んだので、ここで解散でも問題ないだろうが、そうするにしても一応ブランドとワルドマには断っておく必要があるだろう。
それに、ルルとリリを回収する必要もある。(もう二人もクレイの奴隷ではないのだから、自由にさせても構わないのだが、ついつい二人の保護者的振る舞いがクレイは癖になっているであった。)
王城で馬車を用意してくれると言われたが断った。【転移】を使えば一瞬で帰れる、というわけではなく徒歩である。
そもそも【転移】は秘密にしているのだ、人の目がある場所では使いたくない。王宮内では恐らく監視がついていると思われるし、街中でも偶発的に人に見られてしまうと可能性もないとは言えない。
なにより、クレイは前世時代から散歩が好きだった。なぜなら、考え事をするのには、散歩しながらのほうがよい。これは前世の地球時代からの癖であった。コードがうまく動かない時、散歩しながら考えると、ふと原因に気付いたりするのだ。
のんびり歩きながら、クレイは自分の能力についておさらいしてみる。今回の件は、反省点も多かったが収穫もあった。
クレイは今でも魔法を使えない(体内に魔力を生成する臓器がない)のだが、外からみれば普通に生活魔法は使っているように見える。それは、光を発生する魔法陣とクレイの生来のスキルが合わさって成立している。
クレイの職能名は【魔法プログラマー】である。(※最初はただの【プログラマー】、それが後に進化して【魔法陣ハッカー】となり、現在は【魔法プログラマー】となったのだ。)具体的に何ができるかというと、脳内に【開発環境】を持っていて、魔法術式のプログラミングと魔法陣へのコンパイルが可能である。また、既存の魔法陣をデコンパイルしてソースコードに戻す能力もある。ただし、戻したコードは自力で解析する必要があるのだが。
そして、そのコードの量はとてつもなく膨大である。魔法のプログラミング言語である【古代魔法言語】にはもう慣れたが、それにしても、魔法という現象は簡単には理解はできない。
クレイは主に、【亜空間収納】や【転移】などの空間魔法について解析を行ってきたが、実は解析し多少なりとも理解できたのはその外縁部の一部だけなのである。空間魔法の根幹部分に関しては未だブラックボックスのままであった。(※空間魔法とは、この世界そのものの成り立ちにも関わっている、言ってみれば神の領域であり、一人の人間の脳力では全てを理解するなど不可能なのである。)
とは言え、核心部分はブラックボックスであっても、それを活用する事はできる程度には解析に成功した。そして、魔法の動力源である魔力の供給元を書き換え、再コンパイルできるようになったのである。
そして、クレイのスキルには、コンパイル済みの魔法陣をライブラリに【ストック】しておく能力も含まれている。ストックした魔法陣はいつでも呼び出す事ができる。光魔法が使えるようになった事で、それを出力する事が可能になったのである。
また、自分でコンパイルしていない魔法陣もストックできる。これは魔導具に魔法陣を刻むスキルと近似した能力である。(魔導具は、器具に魔法陣を刻みつける事で製造される。)
光を発生する魔法陣。この魔法陣との出会いがクレイを救ったとも言える。この魔法陣は、暗い場所なら見える程度の淡い光を発生させる魔法陣である。そしてクレイにとって有り難いことに、この魔法陣は動力源を必要としないのであった。空気中にある微量な魔力を使って半永久的に発光するのだ。
ただ、光が弱いので(太陽光の下など明るい場所では光が弱くて見えない)、夜間にだけ見えるような限定的な装飾にしか使われていなかった。
※この世界には照明器具の魔導具が普及しているが、それは魔力の消費がかなり多めで、頻繁に動力源の魔石を交換する必要がある。
使用者本人の魔力を使う携帯型照明器具もあるし、道具なしに光を発生させるという魔法もある。だが、いずれもそれなりに魔力が必要となるのだ。
何より問題なのは、光の照明器具ではクレイは魔法陣を映し出す事ができなかったのだ。その光は強く周囲を広範囲に照らすが、繊細な線を描くのには向いていなかったのである。
クレイが曽祖父の倉庫で発見した自立型の光発生魔法陣は、夜にだけ光って見える特殊な絵画に使われていたのだが、この光を使ってクレイのスキルでストックした魔法陣を映し出す事ができたのだ。このおかげで魔力がないクレイでも擬似的に魔法を使えるようになったのである。
クレイはこの魔法陣を体に刻み、それを使用してストックした魔法陣を投影させる事で、魔導具という器なしに魔法陣だけでその現象を発現する事が可能になるのである。(ただし、魔法陣を投影するスクリーン代わりの何かしらは必要となるのだが。)
ただし、クレイが魔法を使えるようになるためにはもうワンステップ必要であった。それは、動力源の問題である。
11
お気に入りに追加
1,172
あなたにおすすめの小説

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!
世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。
美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。
忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。
そこでひどい仕打ちを受けることになる。
しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。
魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。
彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。
感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。
深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。
一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。
さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。
彼らはどん底へと沈んでいく……。
フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》
魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます
こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。
こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる