異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
167 / 184
第三部 暗殺者編

第167話 ちょ待って!

しおりを挟む
王 「どうした、早く命令を伝えに行け」

マルス 「陛下……その…、学園の、人質の中にはアイラ姫もいらっしゃるとの事なのですが…」

クレイはアイラ姫の事は知らなかったが、姫というからには王族なのだろうとは想像できる。

王 「分かっておる……。それでもじゃ!」

宰相は、姫が居ると聞いても驚く事もなく、ただ口を結び目を閉じるだけだった。

姫が在学中である事は宰相ももちろん知っていたが、王の心痛を慮り、あえてその事には触れず、身代金を払ってでも人質の安全を優先しようと言ったのだ。

王が黙ってさえれば、そのまま押し切るつもりであった。

だが…ミト王はそれをよしとはしなかった…

王 「確か前回、同じような事件があった時、人質もろとも犯人を殺して解決したはずじゃ」

マルス 「ですが、前回の人質は平民でした。今回は…」

王 「バカモノ、平民なら殺しても良いなどと騎士が考えるな! 貴族・王族は国を守るためにその地位に居るのだ。いざという時には命を捨てるのが仕事だ。それを忘れるでない」

マルス 「…申し訳…ありません!」

王 「王の娘が居たからといって方針を違えるようでは、国を守る王として失格じゃろうて。

アイラも王族の端くれ、覚悟はできているじゃろう…」

ルル 「王道は非情なんにゃね…」
リリ 「立派な王様にゃ…」

王 「さぁマルス、早く行ってジャクリンに伝えよ」

マルス 「はっ!」

クレイ 「ちょ! 待って! 待って!」

堪らず、クレイは口を挟んでしまった。

ジャクリンの実力と性格を知っているクレイには、この後の結果が容易に想像できてしまったのだ。

ジャクリンは(もちろん騎士団の精鋭たちも)十分な実力がある。彼らにそのような命令を下せば、問題なく実行し、迅速に解決するであろう。

だが、命令を忠実に実行し、人質の事など考慮しない容赦ない攻撃で、大量の被害者が出るだろう。

テロには屈しない。例え人質もろともであっても、犯人を殺す。それが、この国としては正しいやり方かのかも知れないが……

クレイ 「……私に…やらせてもらえませんか?」

王 「……騎士団の代わりにお主が突入するというのか?」

クレイ 「正面からではありません。私ならおそらく、犯人に気付かれずに学園内部に侵入する事ができます」

王 「ほう?!」

クレイ 「政や戦争、事件などに首を突っ込むつもりはありませんが……私は冒険者ですから、依頼を出してくれれば引き受ける……事も検討いたします」

宰相 「どうやって侵入する? 実は学園の内部に転移ゲートを既に持ち込んであるなどとは言わんよな?」

クレイ 「それは…冒険者としての私の能力に関わる事なので、手の内を明かす気はありません。方法については一切問わない追求しない。それが依頼を引き受ける条件です。約束して頂けないなら引き受けられません」

王 「……本当にできるのだな? 生徒達を無事に救出する事が?」

ブランドとワルドマはハラハラしながらも、王とクレイのやりとりを見ているしかできなかった。確かにクレイならできるかも知れないが……二人共そこまでクレイの能力を把握しているわけではなく、何とも言えない。

クレイ 「あ~すいません、正直、どこまで上手くやれるかは保証はできかねます。ただ少なくとも、正面から騎士団を突入させて力尽くで解決を図るよりは、被害を少なく押さえられそうな気がしますが…」

ルル・リリ 「私も手伝うにゃ!」

クレイ 「いや、今回は俺一人でやる。大勢で行けば却って目立ってしまうだろう?」

ルル 「そ、そうにゃ?」
リリ 「大丈夫にゃ?」

クレイ 「大丈夫だ!」

王 「…よかろう。約束する。方法・能力については委細問わぬ。

…ゼロとは言わぬ、被害を少しでも減らしてくれればありがいたい。

――頼む、どうか子供達を、そしてこの国を救ってくれ」

深々と頭を下げるミト王。

クレイ 「引き受けました。報酬については後で相談という事で!」

クレイはそう言うと廊下に走り出した。



  * * * *



飛び出したはいいが、実はクレイは学園の場所を知らなかった。

だが問題ない。クレイは走りながらエリーに連絡をとり、王都の地図を左眼の義眼の視界に表示してもらったのだ。学園の場所を教えてもらい、さらには学園の内部の間取りについても表示してもらった。

※直近の事象の記録が取り出せない問題点が判明したザ・ワールドレコードであるが、建物が建ったのは昔の事なので情報を取り出す事が可能なのである。(直近に改装されたり破壊されたりしていた場合、その情報は表示されないが。)

身体強化を使い、猛スピードで走っていたクレイだったが、地図を見て冷静になり立ち止まった。

最初は学園まで【加速装置】を使って走って行くつもりだったのだが、【転移】を使ったほうが早い事を思い出したのだ。【加速装置】つまり魔導具フル稼働による高速移動も肉眼で見えないほど速いが、転移による移動はもっと速い。

クレイは、今度は “今現在、学園内部に居る人間の位置” をマップの上に表示させた。これはザ・ワールドレコードの情報ではない。物理的な物や人の位置関係を走査スキャンして表示させる事は、転移魔法の機能の一部として組み込まれているのである。(これができないと、転移先に何があるか分からず、壁や人と重なった位置に転移してしまいかねない。)

ただ、クレイが個人的に使える能力では転移先の周囲だけしか見えない。そこで、リルディオンに学園内全域の走査スキャンを行ってもらったのだ。

これらの情報を街や建物の地図マップと重ねれば、学園内部の人間達の位置もすべて分かる。

表示されたマップの中に生物が小さな丸印で表示される。統計情報も表示できるので、学園内に現在五百余人が存在しているのが分かる。テロリストは十数人、それ以外は生徒か学園職員であろう。

できればその全てを傷つけずに解決したい。クレイは奥の手を使う事にした。勝算が、それもかなり高い確率での勝算があったから、クレイもやれると名のりをあげたのだから…


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...