135 / 184
第三部 暗殺者編
第135話 王への報告
しおりを挟む
王城、謁見の間。
部屋に案内されたブランドは部屋の中央に進み膝をついた。(初めて来た者には控室で作法の説明があるのだが、何度も来ているブランドには不要である。)
正面には空の玉座が一段高いところに据えられている。部屋の左右の壁際、玉座寄りの場所には護衛の騎士達が控えている。(その中には騎士団長であるジャクリン・ヴァレットの姿もある。)
壁際、玉座から遠い側には高位貴族達が並び立っている。
宰相が部屋に入ってきて、王の入場を告げると、その場に居る者全員が片膝を突き頭を垂れる。
玉座の背後にある扉が開き、王が出てきて玉座へと座わった。
王の名はミトビーツ。ミトビーツ・ラヘル王である。
国の名はラヘルブーレ王国と言うが、この国はその昔、ラヘル王国とブーレ王国というふたつの王国が合併してできた国なのである。そのため王家とその親族の家系(公爵家)はラヘル系とブーレ系の二系統が存在しており、現在の王はラヘル家から出ているというわけである。
とは言え、二つの王家の仲は悪くなく(円満合併であった)、今では両家の血はかなり混ざり合っており、明確に2つの系統を分けて考える意味はあまりなくなりつつあるのだが。
ミトビーツ王 「面をあげよ」
王の言葉に従い壁際の貴族達は立ち上がるが、ブランドは顔を上げるも跪いたままである。
王 「堅苦しくする必要はない、立つが良い」
だが、横壁に並ぶ貴族から横槍が入る。声を発したのはダイナドー侯爵である。
ダイナドー侯爵 「お待ち下さい、王よ。子爵ごときが王の御前で立って話すなど許すべきではありません。低位貴族は王城では常に平身低頭を守らせるべきでしょう」
本来、王の許可なく発言するのは本来無礼な行為なのだが、気さくな性格の王はあまり堅いことは言わず、周囲もそれに慣れてしまっている。(ある意味、舐められているとも言えるが。)
また、ダイナドー侯爵は隣国ダブエラを制圧し、鉱山を入手した事で国内貴族の中で権力を増し、強い発言力を強めてきている。そのため尊大な態度を取る事が多くなっていた。
ダイナドー 「王が気さくな方なのは存じておりますが、あまり低位の貴族を甘やかすと、勘違いして王家を軽んじ、そのうち反逆し始めるやも知れませぬぞ?」
王 「ヴァレット家は長らく王家のために働いてくれた忠臣、そのような心配は無用だ。それに、私が良いと言っているのだ。それとも…
…余の言葉が聞けぬと申すか?」
ダイナドー 「いえ、そのような事は…。まぁ良いでしょう」
珍しく王が厳しい言葉を口にしたので、ダイナドーは気圧され引くことにした。普段は気さくな王であるが、その気を出せば十分な威厳を放つ事ができるのである。
王 「さぁ、ヴァレット子爵、話しにくいから立ってくれ」
ブランド 「御意」(やっと立ち上がるブランド)
ミトビーツ 「おお……ヴァレット子爵、いやさブランドよ、久しいな。また元気な姿が見られて嬉しいぞ。先のスタンピードで大怪我を負ったと聞いたが、もう身体は良いのか?」
ブランド 「はい、もう大丈夫です。長らく動けなかったもので、ながらくの無沙汰、誠に申し訳有りませんでした」
王 「元気になったならば良い。して…
…ペイトティクバの攻略に成功したと聞いたが、真か?」
ブランド 「はい。そのように、冒険者ギルドからは報告を受けております」
ダイナドー 「報告? その話、本当なのか?」
ブランド 「冒険者ギルドがそのような嘘をつく理由もないでしょう」
ダイナドー 「確認したのか?」
ブランド 「いえ、まだ詳細には確認できておりませんが…」
ダイナドー 「そんな重大な事を確認もせずに報告しにきたというのか?!」
ブランド 「ダンジョンについては、今、息子のワルドマに確認させておりますが、確認には時間が掛かります故、報告が遅れるのも良くないかと思い、馳せ参じた次第です」
ダイナドー 「ペイトティクバはこの王国ができる前からあると言われている古いダンジョンだ。難易度はSSS級、攻略などできるわけが―」
宰相 「ダイナドー侯爵、少し黙られたほうが良かろう」
王の横に立っていた宰相がジロリとダイナドー侯爵を睨む。王ほどではないが、宰相もなかなかの威厳がある。
宰相 「いくら王が鷹揚な方だからとて、謁見の間で王を差し置いて勝手に発言し続けるのは如何なものか?」
ダイナドー 「これは…、失礼、致しました…」
宰相 「ヴァレット子爵、報告の続きを。冒険者ギルドから報告という事は、ギルドが冒険者を組織して大掛かりな作戦を行ったという事か?」
ブランド 「いえ…一人の優秀な冒険者が現れまして。その者が攻略に成功したと」
宰相 「ほう? その冒険者には会ったのか?」
ブランド 「報告を受けてからは、まだ会えておりませんが…」
王 「ほうつまり、その冒険者はそなたの知っておる者なのだな?」
ブランド 「はい。攻略を始める前に、攻略の許可を求められましたので」
王 「そちの見立てでは、その者は、難関ダンジョンを攻略できる実力のある冒険者であったか?」
ブランド 「…はい。ダンジョンの全容が分からなかったため確証はありませんでしたが、その者なら可能性はあるとは思っていました」
ダイナドー 「おい、国軍の総力戦でもなければ攻略できないと言われていたダンジョンだぞ? 本当ならその者は一人で国軍にも匹敵する力を持つという事になるが?」
ブランド 「ああ…一人ではないです」
ダイナドー 「先程一人と言ったではないか? 紛らわしい言い方をするな」
宰相 「なるほど、大勢の優秀な冒険者が集まって成し遂げたというわけか?」
ブランド 「いえ…その、総勢二十人ほどであったと聞いておりますが、リーダーの冒険者以外は全員、その冒険者が集めた奴隷だったようです」
王 「ほう…?」
ダイナドー 「なるほど! 奴隷を大量投入し、使い潰しながらダンジョンを攻略したというわけか? そして生き残れたのがたった二十人か、なかなか下衆な作戦だな?」
部屋に案内されたブランドは部屋の中央に進み膝をついた。(初めて来た者には控室で作法の説明があるのだが、何度も来ているブランドには不要である。)
正面には空の玉座が一段高いところに据えられている。部屋の左右の壁際、玉座寄りの場所には護衛の騎士達が控えている。(その中には騎士団長であるジャクリン・ヴァレットの姿もある。)
壁際、玉座から遠い側には高位貴族達が並び立っている。
宰相が部屋に入ってきて、王の入場を告げると、その場に居る者全員が片膝を突き頭を垂れる。
玉座の背後にある扉が開き、王が出てきて玉座へと座わった。
王の名はミトビーツ。ミトビーツ・ラヘル王である。
国の名はラヘルブーレ王国と言うが、この国はその昔、ラヘル王国とブーレ王国というふたつの王国が合併してできた国なのである。そのため王家とその親族の家系(公爵家)はラヘル系とブーレ系の二系統が存在しており、現在の王はラヘル家から出ているというわけである。
とは言え、二つの王家の仲は悪くなく(円満合併であった)、今では両家の血はかなり混ざり合っており、明確に2つの系統を分けて考える意味はあまりなくなりつつあるのだが。
ミトビーツ王 「面をあげよ」
王の言葉に従い壁際の貴族達は立ち上がるが、ブランドは顔を上げるも跪いたままである。
王 「堅苦しくする必要はない、立つが良い」
だが、横壁に並ぶ貴族から横槍が入る。声を発したのはダイナドー侯爵である。
ダイナドー侯爵 「お待ち下さい、王よ。子爵ごときが王の御前で立って話すなど許すべきではありません。低位貴族は王城では常に平身低頭を守らせるべきでしょう」
本来、王の許可なく発言するのは本来無礼な行為なのだが、気さくな性格の王はあまり堅いことは言わず、周囲もそれに慣れてしまっている。(ある意味、舐められているとも言えるが。)
また、ダイナドー侯爵は隣国ダブエラを制圧し、鉱山を入手した事で国内貴族の中で権力を増し、強い発言力を強めてきている。そのため尊大な態度を取る事が多くなっていた。
ダイナドー 「王が気さくな方なのは存じておりますが、あまり低位の貴族を甘やかすと、勘違いして王家を軽んじ、そのうち反逆し始めるやも知れませぬぞ?」
王 「ヴァレット家は長らく王家のために働いてくれた忠臣、そのような心配は無用だ。それに、私が良いと言っているのだ。それとも…
…余の言葉が聞けぬと申すか?」
ダイナドー 「いえ、そのような事は…。まぁ良いでしょう」
珍しく王が厳しい言葉を口にしたので、ダイナドーは気圧され引くことにした。普段は気さくな王であるが、その気を出せば十分な威厳を放つ事ができるのである。
王 「さぁ、ヴァレット子爵、話しにくいから立ってくれ」
ブランド 「御意」(やっと立ち上がるブランド)
ミトビーツ 「おお……ヴァレット子爵、いやさブランドよ、久しいな。また元気な姿が見られて嬉しいぞ。先のスタンピードで大怪我を負ったと聞いたが、もう身体は良いのか?」
ブランド 「はい、もう大丈夫です。長らく動けなかったもので、ながらくの無沙汰、誠に申し訳有りませんでした」
王 「元気になったならば良い。して…
…ペイトティクバの攻略に成功したと聞いたが、真か?」
ブランド 「はい。そのように、冒険者ギルドからは報告を受けております」
ダイナドー 「報告? その話、本当なのか?」
ブランド 「冒険者ギルドがそのような嘘をつく理由もないでしょう」
ダイナドー 「確認したのか?」
ブランド 「いえ、まだ詳細には確認できておりませんが…」
ダイナドー 「そんな重大な事を確認もせずに報告しにきたというのか?!」
ブランド 「ダンジョンについては、今、息子のワルドマに確認させておりますが、確認には時間が掛かります故、報告が遅れるのも良くないかと思い、馳せ参じた次第です」
ダイナドー 「ペイトティクバはこの王国ができる前からあると言われている古いダンジョンだ。難易度はSSS級、攻略などできるわけが―」
宰相 「ダイナドー侯爵、少し黙られたほうが良かろう」
王の横に立っていた宰相がジロリとダイナドー侯爵を睨む。王ほどではないが、宰相もなかなかの威厳がある。
宰相 「いくら王が鷹揚な方だからとて、謁見の間で王を差し置いて勝手に発言し続けるのは如何なものか?」
ダイナドー 「これは…、失礼、致しました…」
宰相 「ヴァレット子爵、報告の続きを。冒険者ギルドから報告という事は、ギルドが冒険者を組織して大掛かりな作戦を行ったという事か?」
ブランド 「いえ…一人の優秀な冒険者が現れまして。その者が攻略に成功したと」
宰相 「ほう? その冒険者には会ったのか?」
ブランド 「報告を受けてからは、まだ会えておりませんが…」
王 「ほうつまり、その冒険者はそなたの知っておる者なのだな?」
ブランド 「はい。攻略を始める前に、攻略の許可を求められましたので」
王 「そちの見立てでは、その者は、難関ダンジョンを攻略できる実力のある冒険者であったか?」
ブランド 「…はい。ダンジョンの全容が分からなかったため確証はありませんでしたが、その者なら可能性はあるとは思っていました」
ダイナドー 「おい、国軍の総力戦でもなければ攻略できないと言われていたダンジョンだぞ? 本当ならその者は一人で国軍にも匹敵する力を持つという事になるが?」
ブランド 「ああ…一人ではないです」
ダイナドー 「先程一人と言ったではないか? 紛らわしい言い方をするな」
宰相 「なるほど、大勢の優秀な冒険者が集まって成し遂げたというわけか?」
ブランド 「いえ…その、総勢二十人ほどであったと聞いておりますが、リーダーの冒険者以外は全員、その冒険者が集めた奴隷だったようです」
王 「ほう…?」
ダイナドー 「なるほど! 奴隷を大量投入し、使い潰しながらダンジョンを攻略したというわけか? そして生き残れたのがたった二十人か、なかなか下衆な作戦だな?」
12
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる