異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
129 / 184
第二部 ダンジョン攻略編

第129話 高難度ダンジョンにビビるギルマスと領主嫡男

しおりを挟む
クレイ達が攻略を進めているダンジョン【ペイトティクバ】。

定期的にスタンピードが起きるのは他のダンジョンと変わらないが、その発生間隔は他のダンジョンよりはるかに長いため、安定しているダンジョンとも言われている。

また、長い間攻略されていない難易度の高いダンジョンであるにも関わらず、初心者から上級者まで冒険者が活動しやすいダンジョンとも言われていた。それは、出現する魔物が細かく段階的で、階層ごとの難易度の落差が小さいためである。階層も非常に深く、浅層ではあまり強い魔物も出現しないので、浅層のみに関して言えば、冒険者が活動しやすいダンジョンと言えるのである。

構成としては、初期の階層ではゴブリンやコボルト、オークなど、比較的弱い部類の魔物が出てくるが、同じような種類の魔物の亜種や上位種が段階的に出現してくるのが特徴である。

最初の階層は通常種のみ少数
次の階層は亜種のみ少数
次は通常種と亜種混合(少数)
次は上位種のみ(少数)
その次は通常種・亜種・上位種が揃って出てくる(少数)

という具合である。

少数しか出現しない階層をいくつか過ぎると、今度は構成パターンは同じだが、出現する数が増えていくようになる。最初は5~6体で出てきていたのが、次は十数体、次は三十~六十体という具合である。

そして同じく通常種~上位種まで回ると、今度は同じパターンで、途轍もなく膨大な魔物が出現する階層となる。

このパターンを繰り返しながら、およそ知られているあらゆる系統、あらゆる種類の魔物が出現してくるのだ。そのため、階層が非常に多くなっているわけである。(おそらく長い年月の間攻略されなかったためにダンジョンがかなり大きく成長したため、このような構成が可能になったのだろう。)

この世界の魔物は、大きく分けて、動物系、爬虫類系、鳥系、昆虫系、植物系、無機物系、アンデッド系と分かれている。さらに、レアであるが、巨人系、鬼系、怪物系、ドラゴン系、悪魔系、幻想系、神系というような危険度が高い種もいる。

各系統ごとに数十種類、それらの魔物がすべて、前述の出現パターンで階層を構成しているとなると、階層数がどれほどになるのか?

ある程度パターンが分かってきたクレイは推測してみたが……

魔物の種類が百あったとして、一種につき15階層あったとしたらそれだけで千五百階層。魔物の種類はおそらく百以上あるだろうし、魔物が複数種、混合で出てくるような階層もあるだろう事を考慮すれば、ペイトティクバの総階層数は少なくみつもっても二千を越えているのではないだろうか。

ただ、ペイトティクバは歴史の長いダンジョンである割に、あまり深い階層までは攻略されていない。出現する魔物が大量になる階層が厄介だからである。

例えば、最弱の魔物であるゴブリンであっても、その上位種であるゴブリンキングとなるとまったく侮れない。上級の冒険者でなければ危険な相手となる。それが、数百・数千と大量に現れて飽和攻撃を仕掛けてくるような階層があるのだ。これでは並の冒険者ではなかなか突破は難しい。突破できたとしても、そこでの消耗が激しすぎて、次の階層へと進む余力がなくなってしまうのだ。

さらに、深層まで行けば、見たことも聞いたこともないような強力な魔物も出現してくる。ドラゴンの上位種=危険度SSSランクが数百数千と束になって襲ってくるような階層があると考えると、完全攻略は無理だと言われるのも分からなくはない。

想像すると不可能とも思えてくるが、とにかくクレイは、行けるところまで行ってみる事にした。



  * * * *



サイモンとワルドマを連れてやってきたのは、ワイバーン(普通種)が大挙して出現するフロアである。

ワイバーンは竜種の中では最底辺に近い危険度ではあるが、それでも人間から見ればAランク級の大変危険な相手である。

まず、空を飛ぶので遠距離攻撃しか当てることができない。(基本的に、空を飛ぶ魔物は厄介である。)だが、外皮が頑丈で、弓矢や槍程度ではその外皮を貫通する事ができない。

空を飛ぶ(または高くジャンプできる)者が強力な剣を使えばダメージは与えられるが、そもそもワイバーンを一撃で切り裂く事ができる冒険者は少ない。

必然的に攻撃は高火力の遠距離魔法という事になるが、そのような攻撃力を持つ冒険者は意外と少ない。一撃でワイバーンを倒せるほどの威力のある魔法攻撃は、高ランクの冒険者でも数発撃てば魔力が枯渇してしまうのだ。

しかも、ワイバーンは火属性と風属性に強い耐性を持っている。火属性と風属性以外の魔法が使える者で、高火力の遠距離攻撃を持っている魔法職の冒険者はかなり少ないのである。

しかも、ワイバーンは龍種のはしくれであるため、龍種特有の高火力攻撃であるブレスを放ってくる。高空からブレス攻撃を放ってくるワイバーンに遭遇すると、攻撃手段を持たない冒険者パーティはブレスで全滅させられてしまう事も珍しくはないのだ。

そんなワイバーンが数百匹もウヨウヨ空を埋め尽くしている階層に降り立ち、サイモンとワルドマは真っ青になっていた。

サイモン 「おっ、おいっ、撤退だ! 逃げるぞ!」

クレイ 「何言ってるんだよ、この程度では雑魚だぞ?」

クレイ 「まぁ、ただの作業だけどねぇ」

そう、クレイ達の武器は空にいる魔物とは相性が非常に良いのだ。わざわざこの階層を選んだのは、その優位性を見せやすいからであった。

大量に並べられた魔法陣から射出されるレールガン。魔力を消費する事もなく、物理的な弾丸を超高速で射出するため魔法耐性のある敵も関係ない。

クレイ達を見つけたワイバーン達がこちらに向かってくるのが見えた。

サイモン 「おい!」

ワルドマ 「だっ、大丈夫なんだよな? 本当に大丈夫なんだよな?」

そう聞きながらも、ワルドマはすぐにも転移ゲートに飛び込める体勢である。

だが、クレイは殺到してくるワイバーンを見て、ニヤリと笑った。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...