異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
123 / 184
第二部 ダンジョン攻略編

第123話 噂のクレイ

しおりを挟む
冒険者ギルドの受付カウンター。

冒険者 「なぁ、よぉ…」

受付嬢 「はい? なんですかツトゾさん」

ツトゾ 「最近ダンジョンをすごいスピードで攻略してる新参の冒険者クランがあるそうじゃないか?」

受付嬢 「…ええ。でも新参ではないですよ、クランのリーダーのクレイさんはこの街の生まれだそうですから」

ツトゾ 「ほんとか? 聞いたことねぇ名だが?」

受付嬢 「本当ですよ。クレイさんから見たら、五年前にこの街に来たあなたのほうが新参ですね」

ツトゾ 「ぼっ、冒険者としては新参だろうが」

受付嬢 「ツトゾさんはいつ冒険者になられたんでしたっけ?」

ツトゾ 「七年前だ」

受付嬢 「じゃぁ冒険者としてもクレイさんのほうが先輩ですね。クレイさんが冒険者に登録したのは十年近く前だそうですから」

ツトゾ 「十年も冒険者やってるのに名前を聞いた事がねぇのはおかしいだろうが」

受付嬢 「他の街に…迷宮都市ダンジョンシティリジオンに居たらしいですよ? ランクもそこでCまで上がったとか」

ツトゾ 「リジオン……古代遺物アーティファクトが出る事があるが、上級者でないと帰ってこられないという超難関の古代遺跡ダンジョンがあるという…」

クレイ 「あまりペラペラと人の情報を吹聴するなよ?」

受付嬢 「あ、すいません、クレイさん。喋りすぎてしまいましたか?」

クレイ 「いや、問題ないが…、情報は小出しにしていくのがってもんだ」(笑)

実は、クレイについての情報はある程度流して良いとサイモンギルマスに話してある。何故なら、まったく情報がない得体の知れない者は、警戒され、疑われるからである。

相手の出自や背景を知っているだけで人間というのは安心するものなのだ。そこで、なるべく自然に思えるような当たり障りのない情報についてはある程度流してもらう事にしたのである。


―――――――――――――――――――――――
これは、クレイが日本で仕事をしていた時の経験による。クレイの働いていた会社で中途採用で入ってきた同僚に、謎の人物が居たのだ。学歴は義務教育のみ、職歴は中年になるまでゼロ。その理由を尋ねても、「いや、得には…なんとなく…」と不明瞭。いわゆるニートという奴なのかも知れないが、実際に目の前にするととても奇異に映った。その男は普通の社員と行動も異なっているところが多く、謎の経歴とあいまって得体が知れない印象を与えてしまったのであった。

その男の能力は絶賛するほど高くなかったが、ギリギリ及第点をクリアする程度には仕事もでき、特に大きな瑕疵はなかった。だが、不気味に感じた者が多かったのか、試用期間終了前に『正式採用すべきではないのでは?』と言う意見が会議が出るほどであった。(特に、その後入ってきた新人が優秀で、あけすけに故郷の話などもするので、違いが際立ってしまったのもあった。)

その男は単に “変わり者” なだけかも知れないが…。

その人物も、もっと自分の過去についてちゃんとオープンに話してくれていれば(話して納得できるような当たり前の事情・理由があれば)、すぐに馴染む事ができたんじゃないかとクレイは思ったのだ。

その経験から、早く馴染むためには、背景や出自、過去をオープンにしていったほうがよいとクレイは考えたのである。早く馴染んで違和感がなくなれば、余計な情報の拡散も抑える事ができるだろうとクレイは考えたのである。
―――――――――――――――――――――――


ツトゾ 「お前がクレイか…? とても凄腕の冒険者には見えないが?」

すると、クレイの後ろからひょっこり出てきた猫娘が言った。

ルル 「見た目で人を判断するんじゃないにゃ」
リリ 「仕方ないにゃ、この人はきっと低ランク冒険者にゃ。見た目に騙されるのはレベルが低い冒険者の特徴にゃ」

ツトゾ 「てってめぇ、俺はこれでもCランク冒険者だぞ!」

ルル 「最近のランクは昔に比べてレベルが下がったってギルマスも言ってたにゃ」

ツトゾ 「てんめぇ、喧嘩売ってんのか?」

サイモン 「いや、その娘の言う通りだぞ、ツトゾ」

通りかかったギルドマスターのサイモンが口を突っ込んできた。

サイモン 「お前、最近あまり仕事してないそうじゃないか? 昼間っからギルドで酒のんでクダ巻いてる事が多いと聞いているぞ?」

ツトゾ 「おっ、俺は、そんなにあくせく働かなくても食っていけるからいいんだよ。それが高ランク冒険者ってもんだろうが」

サイモン 「ランクの審査基準が甘くなりすぎてるって指摘を受けてな。基準を見直そうかと思っているところだ」

ツトゾ 「…俺はCランクの実力がないって言ってるのか?」

サイモン 「さあ、どうだろうな? そうでないことを祈ってるが?」

ツトゾ 「そりゃねぇぜ、俺のCランク昇格を認めたのはギルマスだろうが」

サイモン 「そうなんだがな、ちょっと甘かったかなと反省しているところだ」

ツトゾ 「そりゃねぇぜ……今更ランク降格なんて言っても承諾はしねぇぞ?」

ツトゾ(クレイの方を振り返り) 「おい、お前! 俺と模擬戦をやれ! 俺がCランクの実力があると示してやる!」

クレイはジト目でサイモンを見る。

サイモン 「…スマン。相手してやってくれないか? ラルクに勝ったお前なら問題ないだろう?」

ツトゾ 「ラルクに?!」

サイモン 「ああそうらしい。俺が居ない間の事なんで俺は直接見ていないが、ラルク自身からそう報告を受けた。あの負けず嫌いのラルクが負けを認めるとは俺も驚いたよ」

ツトゾ 「…っ、ラルクはAランクだろうが! それに勝つって事はCランクの実力なんかじゃねぇだろう! なんでそんな奴がまだCランクなんだよ!」

サイモン 「ああ、そうだな。クレイが相手ではさすがに気の毒か。なら、そっちの猫娘が相手ならどうだ? 二人はまだEランクだしな」

二人を見るツトゾ。

ツトゾ 「…いいだろう、Eランクの嬢ちゃん達に、Cランクの実力ちからを教えてやろうじゃないか」

ツトゾはニヤリといやらしく笑った。可憐な猫娘と遊べると勘違いしているのかも知れない。

サイモン 「クレイ、いいか?」

クレイ 「断る」


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...