異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
104 / 184
第二部 ダンジョン攻略編

第104話 なんでお前が居るんだよ?

しおりを挟む
棍棒を振りかぶり襲いかかってきたゴブリンを軽快なフットワークで躱し、すれ違いざまに小太刀で斬り捨てるリリ。だが、小太刀を持つ手に手応えがまるでない。斬られたゴブリンはまるでプリンを斬るようにプルリとふたつに分かれて地に落ちた。

リリ 「! これは…すごい切れ味にゃ!」

それを見たルルも、自分もと即座に走り出す。後ろにいた数匹のゴブリンの中へ走り込み、縫うように走り抜けながらすれ違いざま猫パンチ? を放って行く。

ルルが走り抜けた後、ゴブリンは全て輪切りになって崩れていく。

ルル 「おおー、これ、凄いにゃ、最高にゃ!」

リルディオンで作ってもらったのはミスリルを混ぜた合金製の刃を使った爪と小太刀である。

ミスリルは魔力を非常によく通す。ミスリルを使った武器や防具は、魔力を通す事で様々な効果を付与する事ができるのだ。(もし街の鍛冶屋で同じものを作ってもらおうとしたら、目玉が飛び出るほどの金額になるのは間違いない。)

刀身に魔法陣を刻み付与した効果は、まず刀身の強化。これはミスリルを使った武器防具では基本である。ミスリルは鉄より軽量でかつ強度も強いが、そこへ魔力を流す事でさらに頑強になるのだ。

そしてもう一つ、魔力の刃を形成する魔法陣も加えた。剣の実刃の上にさらに魔力によって鋭い刃が形成され、恐ろしい切れ味となるのだ。

ただし、魔力を通して強化される武器や防具は、通常は使用者の魔力を吸って効果を付与するため、使用者の魔力が消費されてしまうのだ。魔力が少ない者だとあっという間に魔力が底をついてしまう場合もある。

だが今回製作したブレードは柄の部分(手甲部分)に装着された魔力を充填した魔石を動力源となっているので、使用者の魔力を消費しない。

使われている魔石も、以前クレイが使っていた魔石バッテリーとは違う、リルディオンで作られた超高圧縮魔石である。容量が以前とは段違いに多く、丸一日程度は連続使用が可能となっている。

使用時には魔石に充填された魔力が消費されるが、未使用時には使用者と周囲の空気中にある魔力を少しずつ吸い込んで自動的に魔力が回復する自動充電式となっている。あまり長期間連続して使用し続ける状況でもない限りは、魔力が切れることはないだろう。(仮にバッテリー切れを起こしても、充填済みの魔石と交換すれば使い続ける事が可能となるのだが。)

新しい武器が気に入ったようで、ブンブンと素振りをするルルとリリ。

ただ…

二人とも高速で駆け抜けながら斬ったので返り血を浴びる事はなかったのだが、当然、斬られたゴブリンの死体から血が流れ、辺りに広がっていく。

クレイ 「…臭いから、違う階層に移動しようか…」

ルル 「それがいいにゃ」
リリ 「そうするにゃ」

獣人は人間より鼻が良いので、臭いもなおさら辛いのであった。

さらにクレイは転移を発動し、階層を移動した。段階を踏まず、いきなりオークが居る階層に転移である。

オークの皮は強靭で、初心者と安物の鉄の剣の組み合わせでは斬れない事もあるのだが……

鬼に金棒・ルルに爪刃・リリに小太刀。二人の身体能力と合わせて、オーク程度であれば無双できる。調子にのって遭遇したオークを次々と蹂躙していく二人の猫娘。さすがに魔導銃乱射とは違って階層のオークを根絶やしにしてしまう事はなかったが、切りがないので適当なところで二人を止め、帰る事にしたクレイ。

だが…そこでなんと、予想外の人物と遭遇してしまった。

クレイ 「なんでお前が居るんだよ?」

ラルク 「…って! 原因はお前だよな?! お前が! 飛ばしたんだろう?! ダンジョンに! 俺を!!」

クレイ 「ああ? …ああ、まぁそうだが…送ったのはダンジョンの一階層だったはずだが? なんで三階層に居るんだ?」

ラルク 「それはなぁ…」

クレイ・ルルリリ 「?」

ラルク 「俺が方向音痴だからだ!!」(どやっ)

ずっこけるルルとリリ。

クレイ 「…いくら方向音痴でも、上下くらい分かるだろうに…」

ラルク 「知らん、適当に歩いてたらここに来た」

ルル 「Aランクなのに方向音痴にゃ?」
リリ 「方向音痴でもAランクになれるにゃ?」

クレイ 「いや…Aランクだからこそ、方向音痴でも今まで生き残ってこれた、というべきかもな…」

ラルク 「いつもはパーティの仲間メンバーと一緒だから迷う事はないんだよ。というか…

…ここで会ったのも運命だよな、お前もそう思うだろうクレイ? 今度は逃さない、模擬戦の続きと行こうぜ!」

クレイ 「ことわ……いや、待てよ、ここでちょっと練習台になってもらうか! いやでもさすがにソレ・・じゃ厳しいか…」

ラルクが手に持っていたソレ・・は、おそらく魔物が持っていたであろう錆だらけの鉄の剣であった。

ラルクほどの剣士であれば木剣でも魔物を両断できる。だが、何匹も魔物を斬り裂いているうち、さすがに木剣は持たず、折れてしまったのだ。仕方なく、ラルクは倒した魔物が持っていた剣に持ち替えたのである。

ラルク 「俺はコレで構わんぞ? 優れた剣士は剣を選ばんのだよ」

クレイ 「いや、それじゃ多分無理だろう、試しにちょっとリリ、ちょっと軽く打ってみろ?」

クレイの目で促され、リリがラルクの剣に向かって小太刀を振るう。慌てて受ける姿勢のラルク。だが、ラルクの持っていた剣は一合で刀身の中程から切り飛ばされてしまった。

ラルク 「おお、すごい切れ味の剣だな…」

クレイ 「斬れ過ぎる―――それで模擬戦はさすがにちょっと危ないな。じゃぁ…コレを使え」

クレイはマジックバッグから大小の木剣を取り出した。長い方をラルクに、短い方をルルに渡す。

ラルク 「おいおい、(猫娘では)相手にならのは先刻分かったろう?」

クレイ 「それはどうかな……? リリ、ルル、これを装着しろ」

リリ 「なんにゃ? 新しい装備?」
ルル 「新しいアクセサリにゃ?」

クレイ 「新しい装備だ」


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...