異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
102 / 184
第二部 ダンジョン攻略編

第102話 すみませんでした!

しおりを挟む
通信が終わるなり、室内で成り行きを見守っていたサブマスのゴーンがクレイに駆け寄ってきた。

ゴーン 「すっ、すみませんでした! 知らなかったものですから!」

クレイ 「ああいいよ、仕方ない。黙ってた俺も悪いからな。俺はヴァレット家を出た人間だから、家に迷惑を掛けないよう事情を話したくなかったんだ。その辺、サイモンは全部事情を知っていたから話が早かったんだが…」

ゴーン 「サイモンが居らずとも、最初から言って下されば……。ロッテ、お前も失礼な事を言ってないだろうな?」

ロッテ 「はいっ、いえ、その、私も、知らない事とは言え、色々失礼なことを言ったような…」

クレイ 「いや、もういいよ。俺も留置場に一ヶ月も入れられるのも嫌だったので色々抵抗したが、冷静になって考えてみれば、疑うのも分からなくはない」

ゴーン 「留置場? ロッテ? どういうことだ???」

クレイ 「俺のギルドカードが本人確認でエラーになってな、不正使用を疑われたんだよ」

ゴーン 「まさか、魔力紋が一致しなかったのですか…? もしそうなら、いくらヴァレット家縁の方であっても無罪放免とは行かなくなりますが」

ロッテ 「いえ! 魔力紋は一致したんです。ただ、その後、魔導具に一部にエラー表示が出ていて…何か不正を働いた結果なのではないかと疑ってしまいまして、申し訳ありませんでした」

ゴーン 「エラーとは? 魔力測定推奨でそんな話は聞いた事ないが?」

クレイ 「ああいや、それもちょっと事情があってな。俺は生まれつき魔力がなくてな。それを補うために補助装置を使っているんだよ。だが、それがギルドカードを作った当時のものと今とは違うものに変わってるんだ。その辺で、何かしら不具合が起きたんじゃないかと思う」

ゴーン 「なるほど…本人の魔力には違いないので魔力紋は一致したわけですな」

クレイ 「その前に奴隷の冒険者登録でもあまりよい印象はなかったようだから、カードにエラーが出て警戒するのは当然だ」

ロッテ 「いえ、クレイ様の言う事をもっとちゃんと聞いて、臨機応変な対応をすべきでした」

ゴーン 「うむ。ロッテは融通がきかないところがある、そういうところは直したほうがいい。ギルマスが戻ってきたら報告させてもらう、何らかの処分があるかもしれない、それは覚悟しておけ」

ゴーンの言いぐさにちょっとムッとした顔のロッテ。
いいからという風に手をあげるクレイだったが、そこに横からポルトスが入ってくる。

ポルトス 「我々も……! 申し訳ありませんでした!」

近づいてきて膝をつくポルトス。一瞬遅れて衛兵達も全員膝をついた。

クレイ 「ああいいって。立ってくれ」

(※この世界ではあまり頭を下げるという習慣はなく、貴族など上位の者に対する場合は膝を付く事が多い。)

クレイ 「ただ、…ちょっと気になる事はあるけどな。随分無茶な取り締まりをしている様子だったが…?」

ヤーマ 「すっ、すみませんでしたっ! ポルトス班長は悪くないのです、ポルトス班長の担当する二班はそんな乱暴な取り締まりはしていません。さっきのは俺の独断で…俺はこの間まで一班だったのです…」

クレイ 「その一班というのはいつもそんな取り締まりを…?」

ヤーマ 「はい、割と強引に強気で行くのが一班のゲバン班長のやり方で。…ただ! 無理やり逮捕しても、その後ちゃんと調べて無罪の者はすぐに釈放してるのです、決して冤罪などは起こさないように注意しています」

ポルトス 「ゲバンも、いつもそんな取締方法をしてるわけではないのです。やるのは非常時、相手は裏社会の者など明らかに怪しい相手に対してだけです。善良な住民相手にそんな事はしない、…はずです」

クレイ 「それならまぁギリセーフ……なわけないだろうな。衛兵の狂言で逮捕というのはなぁ?

まぁ、ポルトスも言ってたが、治安維持のためには綺麗事も言ってられないというのも分かる。だが、度がすぎると衛兵が住民に嫌われるようになるぞ。

いくら相手が怪しかったにしても、公正なはずの衛兵が嘘をついて無理やり逮捕なんて行為が横行していると広まれば、信頼が失われる事になるだろう。ひいては領主家の監督責任にもなる。

家を出た身の俺が口を出す立場ではないが、それでも、あまり領主家が信頼を失う事はしないでほしいかなぁ…」

ポルトス 「はい! 申し訳ありませんでした。今後は隊長のダイスとも話し、信頼を失わないよう綱紀粛正に努めます!」

クレイ 「街を守る衛兵の仕事は大切だ、上手くやって下さい。

…さて、じゃぁ金を受け取って帰ろうかね…」

ロッテ 「あ、待って下さい、ギルドカードのランクを元のCランクに戻させて下さい」

クレイ 「ギルマスが居ないとできないんじゃなかったのか?」

ロッテ 「サブマスの権限で! 構わないですよね? 事情が事情ですから」

サブマス 「うむ、王都のギルマスに連絡を取っています、返事が来次第変更を…」

クレイ 「いや! やっぱりいいや。Fランクのままで…」

サブマス 「え? でも…いやそれは……困ります。クレイ様はAランクのラルクと互角の戦いをしたと報告を受けています。そんな実力のある者を最低ランクにしておくなど……」

クレイ 「ランクアップしてもあまり良い事なさそうだしな。必要になったら、またその時にランクアップ試験を受けるよ」

サブマス 「いや、そうおっしゃらずに…」

クレイ 「というか、様とか敬語とかやめてくれ。俺はただの平民の冒険者、そういう事でよろしく」

結局、クレイはランクはFのまま、金を受け取ってギルドを後にした。





ゴーン 「ったく。鉄の爪のくだらん報告を真に受けて失敗したな。ポルトスも? まさかダイスがそんなすぐに動くとは思わなかったぞ?」

ダイスとは衛兵東隊の隊長だが、ゴーンとは古くからの友人なのであった。知った間なので軽い気持ちで “鉄の爪” のキムが言った話を流してしまったのだが、それを聞いたダイスが部下にクレイを調べておくように指示を出したのだ。

ただ、ダイスとしても、さり気なく探りを入れておけという程度のつもりであったのだが…、部下たちはそうは受け取らず。特に、一班から二班に移籍したてだったヤーマは功績を焦り、一班譲りの強引な手法をとって早期解決を狙ってしまったのであった。

ゴーン 「後でちょっと鉄の爪の連中にも釘を刺しておくか」

ロッテ 「鉄の爪、ですか? ボーサ・ズウ・キムの三人組のパーティですね。ボーサとズウはともかく、キムについては少し良くない評判も聞こえてきているのですよね…」

ゴーン 「そうだったのか。ちょっと注意が必要だな…」



  * * * *



ギルドを出たクレイは、ルルとリリを連れて武器屋に向かう事にした。ルルとリリに近接戦闘用の武器を買ってやるためである。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...