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第二部 ダンジョン攻略編
第79話 古代の人類と現代人
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クレイは施設の中央管制室に案内され、リルディオンと対峙する事となった。
部屋の中には無数の魔法陣が描かれた制御台と、壁面には多数の大きなモニターが設置されており、昔、地球のSF映画で見たような宇宙船の艦橋のようだとクレイは思った。
クレイはエリーに促され、部屋の中央の制御台の前に立ち、コンソールに並ぶ魔法陣の一つに手を置く。すると、どこからともなく声が聞こえてきた。
音ではない、頭の中に直接響いている。言葉を介さないため、一瞬で意志の疎通が可能であった。どうやらその魔法陣はリルディオンと高速に通信が行えるインターフェースなのかとクレイは理解した。
その声はリルディオンであると名乗った。リルディオンという巨大施設は、それ自体が自立思考する巨大なゴーレムなのだ。
そして、クレイはリルディオンから予想外の提案を受けた。クレイにリルディオンの主となって欲しいという。
なんでも、自立思考するゴーレムとは言え、基本的には人間の命令を聞き、人間に奉仕するために作られている。そのため、命令を下す主である人間不在では動くようにはできていないのだ。そのため、5千年以上の間、ずっと命令を下す人間を待っていたという。
クレイ 「人間なら外にたくさんいるだろう? それを連れてくればよかったんじゃないか? ああ、ここに到達できる人間が居なかったとか?」
リルディオン 「いえ、現在外界にいる人間達は同じヒト科ヒウム属ではありますが、リルディオンを作ったアルケイデス種ではありません。その後に現れたヒウム・アルドノスという種になります」
クレイ 「……俺は、そのヒウム? アルドノス? とは違うのか?」
リルディオン 「クレイ様は治療の過程でヒウム・アルケイデス種と同じ身体構造をしている事が確認されております」
クレイ 「……ああ、もしかして、俺には魔力を生成する臓器が無いことと関係している、のか?」
リルディオン 「そうなります。ヒウム・アルケイデスとヒウム・アルドノスは魔力生成臓器を持つかどうかと魔力への適性が一番大きな違いとなります。
リルディオンを作った時代の人間は、体内に魔力生成器官を持ちませんでした。初期の時代は魔力を使わずに生活していましたが、エネルギーとしての魔力の存在が発見された後は、魔力を外部で作り出し、それを利用して大きく発展しました。そして、ヒウム・アルケイデスは、クレイ様と同じように、体に魔力を利用するための魔法陣を刻んで使用していたのです」
クレイ 「あーなるほど…だから俺がそのアルケイデスだと思われたわけか。だが…俺はこの時代の人間の両親から生まれたんだ。臓器が足りないのはたまたま奇形で生まれただけで、アルケイデスではないのではないか?」
リルディオン 「いえ、遺伝子レベルでアルケイデスである特徴を示しているのが確認されています。もともとアルケイデスとアルドノスは遺伝子的には99.99%以上同じなのです。クレイ様はおそらく突然変異の先祖返りのようなものかと」
クレイ 「おっと、遺伝子とかまで古代文明では判明していたのか。まぁこんな精巧な義手を作れるんだから、当然か…」
リルディオン 「と言う事で、クレイ様にはリルディオンの主として命令を下す義務があります。…拒否する事ももちろん自由ですが、死にかけていたクレイ様を治療し助けたのはこのリルディオンである事もお忘れなく?」
クレイ 「えーっと、なんだか有無を言わさぬ感じもするが、助けられた恩があるの事実だな。だが、俺でいいのか? 新たに突然変異した者が現れるかもしれないし、もしかしたら世界のどこかにそのアルケイデス種が生き残っている可能性だって…」
リルディオン 「そのような者は五千年間現れませんでした。このまま現状維持だけの状態であれば、やがて活動限界を迎え朽ち果てるだけとなります。それは、このリルディオンが作られた使命に反します」
クレイ 「うーん、なんか切羽詰まってる感があるなぁ、まぁ、断る理由もないか…」
すぐにでも登録させたいのか、リルディオンにせっつかれてクレイは手を指定された魔法陣に置くと、即座に登録完了と言われた。
クレイ 「じゃぁ、まずはこのリルディオンについてもう少し詳しく教えてもらえるか? というか、いちいち魔法陣に手をおいていないと話せないのは面倒だ。なんとかならないか? 伝達速度が速いのは分かるが…」
エリー 「管制室の外では私がご案内します。私もリルディオンですので」
この施設の内部には多数の自立思考する魔導人形が存在しているが、エリーはそれらを統括する存在であり、リルディオンの管理システムと直結している、いわばリルディオンの意識そのものと言えるらしい。
クレイ 「…施設全体を制御しているメインコンピュータと、そのインターフェースみたいなものか?」
エリー 「そのようなものと理解して頂ければ」
そして、クレイはリルディオンの中を案内してもらい、様々な事を学ぶ事になるのだが……古代文明の知識を習得するのに(主に魔法言語の学習と魔法陣のプログラミングに)夢中になり、気がつけば九年もの歳月が流れていたのだった……
部屋の中には無数の魔法陣が描かれた制御台と、壁面には多数の大きなモニターが設置されており、昔、地球のSF映画で見たような宇宙船の艦橋のようだとクレイは思った。
クレイはエリーに促され、部屋の中央の制御台の前に立ち、コンソールに並ぶ魔法陣の一つに手を置く。すると、どこからともなく声が聞こえてきた。
音ではない、頭の中に直接響いている。言葉を介さないため、一瞬で意志の疎通が可能であった。どうやらその魔法陣はリルディオンと高速に通信が行えるインターフェースなのかとクレイは理解した。
その声はリルディオンであると名乗った。リルディオンという巨大施設は、それ自体が自立思考する巨大なゴーレムなのだ。
そして、クレイはリルディオンから予想外の提案を受けた。クレイにリルディオンの主となって欲しいという。
なんでも、自立思考するゴーレムとは言え、基本的には人間の命令を聞き、人間に奉仕するために作られている。そのため、命令を下す主である人間不在では動くようにはできていないのだ。そのため、5千年以上の間、ずっと命令を下す人間を待っていたという。
クレイ 「人間なら外にたくさんいるだろう? それを連れてくればよかったんじゃないか? ああ、ここに到達できる人間が居なかったとか?」
リルディオン 「いえ、現在外界にいる人間達は同じヒト科ヒウム属ではありますが、リルディオンを作ったアルケイデス種ではありません。その後に現れたヒウム・アルドノスという種になります」
クレイ 「……俺は、そのヒウム? アルドノス? とは違うのか?」
リルディオン 「クレイ様は治療の過程でヒウム・アルケイデス種と同じ身体構造をしている事が確認されております」
クレイ 「……ああ、もしかして、俺には魔力を生成する臓器が無いことと関係している、のか?」
リルディオン 「そうなります。ヒウム・アルケイデスとヒウム・アルドノスは魔力生成臓器を持つかどうかと魔力への適性が一番大きな違いとなります。
リルディオンを作った時代の人間は、体内に魔力生成器官を持ちませんでした。初期の時代は魔力を使わずに生活していましたが、エネルギーとしての魔力の存在が発見された後は、魔力を外部で作り出し、それを利用して大きく発展しました。そして、ヒウム・アルケイデスは、クレイ様と同じように、体に魔力を利用するための魔法陣を刻んで使用していたのです」
クレイ 「あーなるほど…だから俺がそのアルケイデスだと思われたわけか。だが…俺はこの時代の人間の両親から生まれたんだ。臓器が足りないのはたまたま奇形で生まれただけで、アルケイデスではないのではないか?」
リルディオン 「いえ、遺伝子レベルでアルケイデスである特徴を示しているのが確認されています。もともとアルケイデスとアルドノスは遺伝子的には99.99%以上同じなのです。クレイ様はおそらく突然変異の先祖返りのようなものかと」
クレイ 「おっと、遺伝子とかまで古代文明では判明していたのか。まぁこんな精巧な義手を作れるんだから、当然か…」
リルディオン 「と言う事で、クレイ様にはリルディオンの主として命令を下す義務があります。…拒否する事ももちろん自由ですが、死にかけていたクレイ様を治療し助けたのはこのリルディオンである事もお忘れなく?」
クレイ 「えーっと、なんだか有無を言わさぬ感じもするが、助けられた恩があるの事実だな。だが、俺でいいのか? 新たに突然変異した者が現れるかもしれないし、もしかしたら世界のどこかにそのアルケイデス種が生き残っている可能性だって…」
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クレイ 「うーん、なんか切羽詰まってる感があるなぁ、まぁ、断る理由もないか…」
すぐにでも登録させたいのか、リルディオンにせっつかれてクレイは手を指定された魔法陣に置くと、即座に登録完了と言われた。
クレイ 「じゃぁ、まずはこのリルディオンについてもう少し詳しく教えてもらえるか? というか、いちいち魔法陣に手をおいていないと話せないのは面倒だ。なんとかならないか? 伝達速度が速いのは分かるが…」
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そして、クレイはリルディオンの中を案内してもらい、様々な事を学ぶ事になるのだが……古代文明の知識を習得するのに(主に魔法言語の学習と魔法陣のプログラミングに)夢中になり、気がつけば九年もの歳月が流れていたのだった……
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