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第一部 転生編
第35話 解錠
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応接室ではブランドが姉妹と黄金の風のメンバーに先程の奴隷商とのやりとりの顛末を話し、今後の対応について相談していた。
アレン 「閣下、発言よろしいでしょうか? 話を聞く限り、既に令嬢に嵌められた隷属の首輪の効力は発動してしまっているようです。幸い、命令を一切受けていない白紙の状態で救出できたので今は自由ですが、もし所有者である奴隷商が現れ直接命令されたら、令嬢は逆らえないと思われます」
ノウズ 「それこそ、その場で死ねと言われたら自ら命を断つしかない…」
パティ 「ケイト…お嬢様の命を、人質に取られているのと同じね」
ブランド 「つまり、ケイトを絶対に奴隷商人の声が届くところに行かせてはならないと言うことだ」
トニー 「ちょっといいですか? そもそも、ラーズ子爵が認めていないなら、その契約自体が違法なのではないですか?」
ブランド 「それは微妙なところだろうな。イザベラは一応、現在のラーズ子爵家の正妻という立場だ。当主が不在であれば、その代理として家を取り仕切る権限があると認められる可能性が高いだろう。そのイザベラと取引したのだから、正当な取引であったと奴隷商人も主張するだろう。
まぁ実の娘を継母が勝手に売り払うなど許されない事。争えば勝てなくはないだろうが、法的な手続きによる解決には時間が掛かるだろう。その間にケイトが奴隷商の手に渡ったら、どんな処遇を受けるか分からん。そうなる前に、金を払って買い戻すほうが現実的だろうな。
だが……普通ならば、買取金額に色をつけて払ってやれば商人も嫌とは言わないだろう。だが、先ほどの商人は王都の商人だと言っていた。わざわざ王都からここまで来たという事は、おそらく背後にはセヴラル侯爵が居るのだろう。そうなると、買い取ると言っても素直に応じるとは思えんな…」
アラン 「何にしても、ケイトの身柄を奴隷商人に渡さないほうが良さそうですね」
トニー 「この街の領主としての権限で、奴隷契約を無効にしてしまう事はできないのですか? この街にも奴隷商人は居ますよね? 領主命令って事で首輪を解錠させてしまえば…」
ブランド 「そんな権利が仮にあったとしても、それは難しい。なにせこの街には奴隷商は居ないからな。私の領地では、奴隷商売は禁止しているのだ」
アラン 「そうだったんですか…我々は最近この街に来たので知りませんでした」
パティ 「そういえば、街の中に奴隷が少ないなぁと思ったのよね。少ないんじゃなくて居なかったのね」
ブランド 「うむ。重罪を犯した者の刑罰としての奴隷落ちまでは禁じてはいないが、そのような者は多くはないから、見かける事はほとんどないだろうな。
奴隷も必要だと言う意見もあるが、あまりに違法奴隷が多い事を憂いて、祖父の代で禁止したのだ。
とは言え、国が認めている制度なので違法扱いまではできん。領内で奴隷の売買を禁じるのがせいぜいなのだがな」
その時、応接室の扉をノックする者が居た。
クレイ 「クレイです、入ってもよろしいですか?」
ブランド 「入れ…
…何をしていた? まぁお前が部屋に籠もっているのはいつものことだが…」
クレイ 「ケイトの首輪の魔法陣の解析を行っていました」
ブランド 「ほう? それで?」
クレイ 「試してみてもよいですか?」
クレイは応接室でも船を漕いでいたケイトに近づくと首輪に触れた。クレイにはあまり多くの魔力がないが、流す魔力は微量で十分である。それにより、首輪の魔法の鍵が解錠され、首輪はあっさりと外れてしまった。
アラン 「おお!」
ノウズ 「馬鹿な! 隷属の首輪は、解錠呪文を知らなければ外せないはずだぞ?」
クレイ 「多分、本物の古代遺物の隷属の首輪だったら、こうは簡単に外せなかったような気がする。でもこれは…」
ブランド 「ふん、王都の奴隷商人とか言っていたが、使っているのは安物か。程度が知れるな」
クレイ 「解読できたのは施錠部分だけ、契約魔法の内容については一切手つかずのままなんだけどね。まぁそれについては今後じっくり時間を掛けて解析してみるよ」
ブランド 「まさか……そのうちそれも、作れるようになるのか? 奴隷ギルドに苦情を言われそうだな」
クレイ 「うーん、あまり積極的に解析しようとは思えないんだけどね。マジックバッグと違って、役に立つ事はあまりなさそうだからね…」
アレン 「閣下、発言よろしいでしょうか? 話を聞く限り、既に令嬢に嵌められた隷属の首輪の効力は発動してしまっているようです。幸い、命令を一切受けていない白紙の状態で救出できたので今は自由ですが、もし所有者である奴隷商が現れ直接命令されたら、令嬢は逆らえないと思われます」
ノウズ 「それこそ、その場で死ねと言われたら自ら命を断つしかない…」
パティ 「ケイト…お嬢様の命を、人質に取られているのと同じね」
ブランド 「つまり、ケイトを絶対に奴隷商人の声が届くところに行かせてはならないと言うことだ」
トニー 「ちょっといいですか? そもそも、ラーズ子爵が認めていないなら、その契約自体が違法なのではないですか?」
ブランド 「それは微妙なところだろうな。イザベラは一応、現在のラーズ子爵家の正妻という立場だ。当主が不在であれば、その代理として家を取り仕切る権限があると認められる可能性が高いだろう。そのイザベラと取引したのだから、正当な取引であったと奴隷商人も主張するだろう。
まぁ実の娘を継母が勝手に売り払うなど許されない事。争えば勝てなくはないだろうが、法的な手続きによる解決には時間が掛かるだろう。その間にケイトが奴隷商の手に渡ったら、どんな処遇を受けるか分からん。そうなる前に、金を払って買い戻すほうが現実的だろうな。
だが……普通ならば、買取金額に色をつけて払ってやれば商人も嫌とは言わないだろう。だが、先ほどの商人は王都の商人だと言っていた。わざわざ王都からここまで来たという事は、おそらく背後にはセヴラル侯爵が居るのだろう。そうなると、買い取ると言っても素直に応じるとは思えんな…」
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トニー 「この街の領主としての権限で、奴隷契約を無効にしてしまう事はできないのですか? この街にも奴隷商人は居ますよね? 領主命令って事で首輪を解錠させてしまえば…」
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パティ 「そういえば、街の中に奴隷が少ないなぁと思ったのよね。少ないんじゃなくて居なかったのね」
ブランド 「うむ。重罪を犯した者の刑罰としての奴隷落ちまでは禁じてはいないが、そのような者は多くはないから、見かける事はほとんどないだろうな。
奴隷も必要だと言う意見もあるが、あまりに違法奴隷が多い事を憂いて、祖父の代で禁止したのだ。
とは言え、国が認めている制度なので違法扱いまではできん。領内で奴隷の売買を禁じるのがせいぜいなのだがな」
その時、応接室の扉をノックする者が居た。
クレイ 「クレイです、入ってもよろしいですか?」
ブランド 「入れ…
…何をしていた? まぁお前が部屋に籠もっているのはいつものことだが…」
クレイ 「ケイトの首輪の魔法陣の解析を行っていました」
ブランド 「ほう? それで?」
クレイ 「試してみてもよいですか?」
クレイは応接室でも船を漕いでいたケイトに近づくと首輪に触れた。クレイにはあまり多くの魔力がないが、流す魔力は微量で十分である。それにより、首輪の魔法の鍵が解錠され、首輪はあっさりと外れてしまった。
アラン 「おお!」
ノウズ 「馬鹿な! 隷属の首輪は、解錠呪文を知らなければ外せないはずだぞ?」
クレイ 「多分、本物の古代遺物の隷属の首輪だったら、こうは簡単に外せなかったような気がする。でもこれは…」
ブランド 「ふん、王都の奴隷商人とか言っていたが、使っているのは安物か。程度が知れるな」
クレイ 「解読できたのは施錠部分だけ、契約魔法の内容については一切手つかずのままなんだけどね。まぁそれについては今後じっくり時間を掛けて解析してみるよ」
ブランド 「まさか……そのうちそれも、作れるようになるのか? 奴隷ギルドに苦情を言われそうだな」
クレイ 「うーん、あまり積極的に解析しようとは思えないんだけどね。マジックバッグと違って、役に立つ事はあまりなさそうだからね…」
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