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第一部 転生編
第18話 「ありえない…」冒険者ギルドの壁が壊れました
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サイモン 「おいピカキン、的を準備しろ」
ピカキン 「俺がやるのかよ?」
サイモン 「他に誰が居る? 受付嬢にやらせるのか? 文句言わずさっさとやれ」
ピカキン 「くそ」
ピカキンによって訓練場の奥側に的が立てられた。
サイモン 「さぁクレイ、あの的を射ってみろ。当たらない時は問答無用で失格だ。当たるのは当然として、射的までの速度と破壊力も見る。的を少しでも傷つけられたら合格としよう。だが、あれには破壊防止の魔法が掛けてあるから、生半可な攻撃では傷一つ着かんから心して掛かれ」
クレイが的の前に立つが…
サイモン 「もっと後ろだ。ここまで下がれ」
サイモンが示したラインまで下がると、クレイは懐から一発弾を出した。
ライフルは、地球では珍しいリボルバー型の弾倉を持つタイプである。(これはクレイの個人的な趣味でこのようにした。何度もリテイクを出され、鍛冶職人のドワーフは文句を言っていたが、最終的にはなかなか良いものに仕上がった。)
クレイは弾倉から一発弾を抜くと、懐から出した弾を込めた。
壊れない的を壊せと言われたのなら、貫通力の高い弾丸を選択すべきなのだろうが、あえて派手な演出効果を狙ってクレイは弾丸に散弾※を選択したのだ。弾莢の中には鉄製の玉が16個ほど入っている。
クレイ 「始めていいか?」
サイモン 「いつでもいいぞ」
クレイ 「合図を出してくれるか?」
速度も見ると言われていたので、メリハリを着けるためにあえて訊いたのだ。
サイモン 「あ? ああ、よし、じゃぁ、始め!」
その瞬間、クレイは下げていたライフルを瞬時に構え引き金を引いた。狙いは一瞬だが外す事はない。そのために銃の練習は相当積んできたのである。
そして、発砲の瞬間、とんでもない大音量の炸裂音が響く。銃身から射出された音速を超えた弾丸が、銃口の前の空気の壁と激突し、ソニックブームが起きるのだ。
クレイ 「あ、ごめん、言い忘れてた。凄い音がするから気をつけろよ」
自分だけ耳栓をしていたクレイが言うが、みんなしばらく耳が麻痺してしまって口パク状態にしか見えないのであった。
実は、クレイは演出のためにわざと音を出したのだが。当然、音が大きい事などクレイは承知しており、銃には消音の魔法陣も組み込んであったのだ。だが、今回はわざとその機能だけ解除して発射したのである。
一歩間違えば、その場にいる全員、鼓膜が破れていたかも知れない。それほどの衝撃波であったのだが……そこはさすが魔法の世界、地球の人間とは違ってかなり頑丈なのである。鼓膜が破れたという者はおらずみなすぐに回復したようだ。
サイモン 「あー、あー、聞こえるようになってきた……って、的はどこへ行ったんだ?」
的は散弾によってミンチになって消えてしまっていた。しかも、散弾はそれだけでは勢いを失わず、的の後ろの壁に激突。壁には大穴が開いていたのであった。
サイモン 「まさか…壁を壊した、だと……?」
クレイ 「ああ、すまんな、壁の向こう側には何がある? 人が居たら大変だ」
サイモン 「ああ、壁の向こう側には城壁があるだけだから大丈夫だが…
城壁にも穴が開いてるな。これは、後で領主様に怒られるかもしれんが…
…お前なら大丈夫か」
クレイ 「……知ってたのか」
(ここでクレイは気づいた。どうやらこのギルドマスターは自分の正体を知っているのだ。この街の領主とは、つまりヴァレット子爵、クレイの父親である。それを知っているからクレイなら大丈夫と言ったのだろう。もちろん、城壁に穴を開けてしまったりしたら、大目玉を食らうのは間違いないのだが。身内であるがゆえに、むしろ厳しい対応をしそうな父親の性格を思い出し、ちょっと寒気がするクレイであった。)
幸い、城壁に大穴が開いてしまったという事はなく、散弾が当たった後の小さな穴が無数に開いていただけであった。さすがに城郭都市の壁は厚く、散弾の玉は壁の内部で止まり、貫通して外に出てしまう事はなかったようだ。そのため、外に居た人に当たるという事故もなかった。(そもそも壁の外は魔物が跋扈する世界なので、そうそう人が出歩いているわけはないのであるが。)
サイモン 「しかし…ありえんだろう……。的に張ってあった強化魔法は弱めだったが、訓練場の壁は最高強度で強化してあったんだぞ?! そこに穴を開けるなど、ギルド始まって以来、聞いたことがないぞ……」
クレイ 「だから言ったろう? で、コレを使って模擬戦をやるのか? 本当に?」
サイモン 「いや、悪いがソレは使用禁止だ、さすがに。他に武器はないのか?」
クレイ 「なくはないが……ってやっぱり模擬戦はやるのかよ?」
サイモン 「ああ、悪いがやってもらおう。お前の攻撃力はよく分かった、それだけでも十分合格だ。だが、一応念のため、近接戦の能力も確認しておきたいんだ」
実は、このギルドマスター・サイモンは、貴族であった。元ではない現役の男爵なのである。つまり、ヴァレット子爵の配下という立場なのだ。
子爵からクレイの事は聞いており、気にかけていたのだが。クレイは、冒険者になると言って出ていった割には、五年もの間冒険者ギルドに顔を出さなかったのだ。
やっと現れたクレイだが、どの程度の力があるか厳しく見極めて、無理なら不合格にするようヴァレット子爵に頼まれていたのである。
ピカキン 「俺がやるのかよ?」
サイモン 「他に誰が居る? 受付嬢にやらせるのか? 文句言わずさっさとやれ」
ピカキン 「くそ」
ピカキンによって訓練場の奥側に的が立てられた。
サイモン 「さぁクレイ、あの的を射ってみろ。当たらない時は問答無用で失格だ。当たるのは当然として、射的までの速度と破壊力も見る。的を少しでも傷つけられたら合格としよう。だが、あれには破壊防止の魔法が掛けてあるから、生半可な攻撃では傷一つ着かんから心して掛かれ」
クレイが的の前に立つが…
サイモン 「もっと後ろだ。ここまで下がれ」
サイモンが示したラインまで下がると、クレイは懐から一発弾を出した。
ライフルは、地球では珍しいリボルバー型の弾倉を持つタイプである。(これはクレイの個人的な趣味でこのようにした。何度もリテイクを出され、鍛冶職人のドワーフは文句を言っていたが、最終的にはなかなか良いものに仕上がった。)
クレイは弾倉から一発弾を抜くと、懐から出した弾を込めた。
壊れない的を壊せと言われたのなら、貫通力の高い弾丸を選択すべきなのだろうが、あえて派手な演出効果を狙ってクレイは弾丸に散弾※を選択したのだ。弾莢の中には鉄製の玉が16個ほど入っている。
クレイ 「始めていいか?」
サイモン 「いつでもいいぞ」
クレイ 「合図を出してくれるか?」
速度も見ると言われていたので、メリハリを着けるためにあえて訊いたのだ。
サイモン 「あ? ああ、よし、じゃぁ、始め!」
その瞬間、クレイは下げていたライフルを瞬時に構え引き金を引いた。狙いは一瞬だが外す事はない。そのために銃の練習は相当積んできたのである。
そして、発砲の瞬間、とんでもない大音量の炸裂音が響く。銃身から射出された音速を超えた弾丸が、銃口の前の空気の壁と激突し、ソニックブームが起きるのだ。
クレイ 「あ、ごめん、言い忘れてた。凄い音がするから気をつけろよ」
自分だけ耳栓をしていたクレイが言うが、みんなしばらく耳が麻痺してしまって口パク状態にしか見えないのであった。
実は、クレイは演出のためにわざと音を出したのだが。当然、音が大きい事などクレイは承知しており、銃には消音の魔法陣も組み込んであったのだ。だが、今回はわざとその機能だけ解除して発射したのである。
一歩間違えば、その場にいる全員、鼓膜が破れていたかも知れない。それほどの衝撃波であったのだが……そこはさすが魔法の世界、地球の人間とは違ってかなり頑丈なのである。鼓膜が破れたという者はおらずみなすぐに回復したようだ。
サイモン 「あー、あー、聞こえるようになってきた……って、的はどこへ行ったんだ?」
的は散弾によってミンチになって消えてしまっていた。しかも、散弾はそれだけでは勢いを失わず、的の後ろの壁に激突。壁には大穴が開いていたのであった。
サイモン 「まさか…壁を壊した、だと……?」
クレイ 「ああ、すまんな、壁の向こう側には何がある? 人が居たら大変だ」
サイモン 「ああ、壁の向こう側には城壁があるだけだから大丈夫だが…
城壁にも穴が開いてるな。これは、後で領主様に怒られるかもしれんが…
…お前なら大丈夫か」
クレイ 「……知ってたのか」
(ここでクレイは気づいた。どうやらこのギルドマスターは自分の正体を知っているのだ。この街の領主とは、つまりヴァレット子爵、クレイの父親である。それを知っているからクレイなら大丈夫と言ったのだろう。もちろん、城壁に穴を開けてしまったりしたら、大目玉を食らうのは間違いないのだが。身内であるがゆえに、むしろ厳しい対応をしそうな父親の性格を思い出し、ちょっと寒気がするクレイであった。)
幸い、城壁に大穴が開いてしまったという事はなく、散弾が当たった後の小さな穴が無数に開いていただけであった。さすがに城郭都市の壁は厚く、散弾の玉は壁の内部で止まり、貫通して外に出てしまう事はなかったようだ。そのため、外に居た人に当たるという事故もなかった。(そもそも壁の外は魔物が跋扈する世界なので、そうそう人が出歩いているわけはないのであるが。)
サイモン 「しかし…ありえんだろう……。的に張ってあった強化魔法は弱めだったが、訓練場の壁は最高強度で強化してあったんだぞ?! そこに穴を開けるなど、ギルド始まって以来、聞いたことがないぞ……」
クレイ 「だから言ったろう? で、コレを使って模擬戦をやるのか? 本当に?」
サイモン 「いや、悪いがソレは使用禁止だ、さすがに。他に武器はないのか?」
クレイ 「なくはないが……ってやっぱり模擬戦はやるのかよ?」
サイモン 「ああ、悪いがやってもらおう。お前の攻撃力はよく分かった、それだけでも十分合格だ。だが、一応念のため、近接戦の能力も確認しておきたいんだ」
実は、このギルドマスター・サイモンは、貴族であった。元ではない現役の男爵なのである。つまり、ヴァレット子爵の配下という立場なのだ。
子爵からクレイの事は聞いており、気にかけていたのだが。クレイは、冒険者になると言って出ていった割には、五年もの間冒険者ギルドに顔を出さなかったのだ。
やっと現れたクレイだが、どの程度の力があるか厳しく見極めて、無理なら不合格にするようヴァレット子爵に頼まれていたのである。
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