異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
11 / 184
第一部 転生編

第11話 学園に行かされる

しおりを挟む
クレイ 「完全に忘れてたわ…」

就職し、フリーのツールはほとんど使う機会がなくなっていたし、さらには、隣家の飼っていたクロネコの印象のほうが強く記憶に残っていた。

※仕事に忙殺される中で、いつも玄関の脇で待っているクロだけが唯一の癒やしだったのだ。奏は猫と会いたいがために、猫が大好きなチューブ入りのおやつを用意して手なづけていたのである。そのため、奏が帰る頃の時間になると、おやつのチューブ目当てにクロはいつも玄関脇で待っていたのだ。勝手にオヤツをやって、隣家の飼い主がどう思っていたかは知らない。)

そんなこんなで、デバッグツールの名称が「クロネコ」であった事についてはすっかり忘れていたのだ。

記憶を辿り、クロネコツールの起動コマンドをステータスボード=コマンド入力画面に入力してみる。(念じるだけで入力された。)

すると、クロネコツールが起動したのである。なるほど、クレイが持つシステムが地球のものであるなら、地球のアプリケーションは実行可能というわけか。

そして、クレイはクロネコ上から “デコンパイル” を実行してみた。

対象を指定してください:

と表示され、入力待ちのカーソルが点滅している。目の前にあった照明器具の魔道具に刻まれた魔法陣を指定してみると……

ステータスボードの画面に膨大な文字が高速に流れ始めたのであった。






ただ、そこからまた、長い研究の時間が必要であった。

ステータスボードに表示されたソースコードは古代魔法言語で書かれていた。デコンパイルする事でそれが見えるようになったものの、その内容を解析する必要があるわけで。幸い、これまでの成果で言語プログラムの構文ルールはかなり解析ができていたので、今度はプログラムの内容の解析に集中できた。

それでも気が遠くなるような作業であったが、プログラマであるクレイは、それをやり続けた。まずは簡単な魔道具の魔法陣から始まり、解析がある程度できたら(完全でなくとも)別の魔法陣をデコンパイルして解析してみる。研究は、いくら時間があっても足りなかった。。。




  * * * *




そしてさらに何年かが過ぎ、クレイはついに十二歳になった。

この国の貴族の子女は、十二歳になると王都の貴族の学校に6年間通う事になっている。

ブランドはクレイを学校に通わせるか迷った。

ヴァレット家の三男は、魔なしの不良品という噂は既に貴族社会に広まっている。学校に行ってもイジメが待ち受けているのは間違いないだろう。

だが、貴族学園を卒業していなければ、貴族社会ではまともな貴族とみなされない。

ただ、この段階で、クレイは既にいくつか魔道具の制作に成功していた。なにせ、生まれてすぐに言葉を喋り始めたクレイである、その優秀さを理解しつつあった父ブランドは、魔法言語の研究成果や魔道具制作の技術を持ってすれば、もしかしたら、貴族として生きる事も可能ではないかと思い始めていたのである。

仮に表舞台には立てずとも、長男のワルドマに領主の座を譲った後、その補佐としての仕事は任せられるかも知れない。学校で勉強しておくことは、その時にも役に立つはずだ。

ただ、本人は学校に興味はないというのだが。クレイはいずれ(そう遠くない将来には)家を出ていくと言う。

まぁそれならそれで良い、本人の意志を尊重するつもりのブランドであったが、一応念のため、見学には行かせてみることにしたのだ。

王都の学校には既に長男のワルドマと姉のステラが通っている。ブランドは二人にクレイを連れて学校の中を見せてやるように言った。

だが、そこで(予想通り?)事件が起きた。

学校に通っているのは貴族の子女ばかりである。その中に、以前流れたヴァレット家の三男の噂を知っていた者が居たのだ。

最初、誤魔化そうとしたワルドマとステラであったが、意地の悪い同級生に捕まり、せっかく見学に来たのだから、魔力を測定してみようと言うことになってしまったのだ。

そしてクレイが魔なしであることはバレてしまった。

ヴァレット家に魔なしの子が生まれたという噂は一時期貴族の間に流れたものの、クレイはその後屋敷に籠もって一切外に出なかったため、その存在の噂は忘れられていた。何せ姿を見た者が居ないので、やはり単なる噂で実在しないのではないかと思われていたのだ。(あるいは実在していて、既に処分されているのではないかと貴族達も考えないではなかったのだが、実は、多かれ少なかれ生まれた子を処分した過去がある貴族は多く、皆ブーメランを恐れてその事には貴族達はあまり言及しないのであった。)

だが、その噂の三男は実在したのだ。どうやら処分も放逐もされていなかったというではないか。

そして、魔なしが貴族の学校に来てどうするのだと生徒たちに嘲笑された。

クレイは、自分が馬鹿にされるだけならば気にしなければ良いと思っていた。

だが、意地悪な貴族の子弟達は、クレイだけでなく、兄のワルドマと姉のステラまで侮辱したのである。

クレイを庇い、馬鹿にされても兄姉を見て、自分のために兄姉に辛い思いをさせる必要はないと、クレイは結局、学校へは行かない事にしたのであった。

ただ、学園に見学に言った事が思わぬ余波を生む。クレイを嘲笑した貴族の子息子女達が、ヴァレット家の三男が実在したという話を家に帰った折に親に話したのである。

口さがない貴族達の間でその噂はすぐに広まり、やがて、王都東騎士団長である叔母ジャクリンの耳にも入ったのである。

女だてらに騎士団長などしていた叔母のジャクリンには敵が多かった。そして、そんな貴族達は、ジャクリンの足を引っ張ろうとここぞとばかり、甥の事を騒ぎ立てたのであった。

行く先々で貴族達に嫌味を言われる事になった叔母は、ブチ切れて、クレイを始末しに兄の屋敷へ突撃してきたというわけである。



しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...