異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
9 / 184
第一部 転生編

第9話 創世神話

しおりを挟む
曽祖父は魔道具に興味を抱き、それをもっと効率化できないかと、魔道具に関する様々な資料を集めていたのだそうだ。魔道具を見下す風潮が強い貴族の中では変わり者だったらしい。

とは言え結局、曽祖父の研究は大きな進展を得られず終わったのだそうだが。

それは、実はこの世界で今使われている魔法というのは、前時代の文明によって創造されたものであり、その詳しい理論や技術は現在は失われてしまっているという事情があったからである。

今現在、この世界に居る者達は、魔法の使い方は知っているが、その理論や仕組みについては何も知らないのである。既存の魔法は使えるがそれだけで、新しい魔法を創造する事などはできなくなっているのだ。

確かに―――仮に、便利な電化製品がありその使い方を知っていても、その作り方まで知っているかと言われれば別である。もしその製品を作った文明が滅びれば、作り方をは失われてしまうだろう。

だが、文明が滅びても壊れない製品があり、後世に残ってしまったとしたら? それは、『使えるが作れない』古代遺跡から出た謎のアーティファクト状態になるのは想像に難くない。

この世界に今ある魔法(と魔道具)にはそのような位置づけのモノが多いのだ。

それを解析、解読しようという動きは当然あった。だが、謎の古代文明の遺跡から太古の文字で記された資料が出土しても、その文字を解読するのは容易では無いのは当然である。

事実、曽祖父の集めた資料は、今の時代の言語とは異なる文字で書かれており、ほとんど解読できていなかったようだ。

ただ、曽祖父の残した資料の中に、一冊だけ現代語で書いてある資料があった。それは魔法の解説書…とまでは言えないが、魔法とは何かを漠然とおとぎ話のように説明した、子供向けの絵本のようなものであった。

それは世界の創生期の神話。

はじめに言葉ありき。太古の昔、創造神達は魔神語という言葉を使い、世界を創造したのだという。

神々は魔神語を編み、大地を作り、植物や動物も作り、ついに人間も作り出した。

登場した人間達は神々に憧れ、神々の使う魔法を使いたがった。だが、魔神語は神にしか理解できず、人間達に扱えるものではなかった。

そこで神は、人間にも理解できる中間言語を作った。それが古代魔法言語であるという。

古代の人々は、古代魔法言語を使って魔法を創り出し、それを魔神語に変換して魔法を発動させたのだ。

クレイ 「魔神語……マシン語?」

単なる偶然であったのか、あるいは何らかの関連があったのか分からないが、たまたまこの世界の言葉と、前世の地球でのプログラミング言語の語呂が似ていた事から、クレイは古代魔法言語をプログラミング言語と仮定して考えるようになった。

神々が使ったという魔神語、これを、地球でいうコンピュータが直接処理するマシン語と仮定したら? そして古代魔法言語をプログラミング言語だと仮定したら……。

コンピュータが扱う膨大な数値の羅列であるマシン語は、人間が直接扱うのは(不可能ではないが)難しい。そこで、人間に理解しやすいプログラミング用の言語を使ってプログラムを書き、それをマシン語に変換コンパイルしてコンピュータに実行させる。

この世界というシステムをコンピュータのアーキテクチャ、あるいはOSのようなものと仮定すれば、そこで実行されるプログラムはマシン語(魔神語)である必要があり、それを人間がプログラミングできるようにしたのが古代魔法言語であるとしたら。

クレイは、何かストンと音を立てて全てがハマるような気がした。

魔法とは、OSに既に登録されているコンパイル済みのアプリケーションのようなモノ。

既に機能が世界システム実装インストールされている状態で、それを起動するコマンドを打ち込めば、アプリは実行される=魔法が発動する。

そのコマンドが、魔法を使う際に詠唱される呪文であるとしたら。

曽祖父の残した書物や資料は、古代魔法言語の資料がほとんどであったが、ありがたい事に古代魔法言語を解読しようとした資料があったのだ。

曽祖父は、極めて初歩的な内容でしかなかったが、自分なりの研究の結果をいつか後世の誰かが引き継いでくれる事を願い、自筆のレポートとして書き残していたのである。

当時は、曽祖父の研究の成果はそれほど評価される事はなかったのだが―――

―――それは前世のプログラミングの知識があったクレイには、非常に大きなヒントとなったのだ。



しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...