なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第六章 ミト

第109話 盗賊退治

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コジローが魔物の討伐依頼で歩きまわっている時も、時々、盗賊を発見して撃退することがあった。

盗賊達が、本当に盗賊かどうかの確認は一応していたが、黒確定となったときには、コジローは盗賊達を情け容赦なくどんどん斬り捨てていった。

盗賊は捕らえて街で突き出せば、裁判の後だが多少の金は貰えるし、街としても犯罪奴隷として労働力が確保できるので、コジローもできれば殺さないで捕らえようと以前はしていたのだが・・・

最近のコジローは、モニカの件で気持ちが荒んでしまっていたため、盗賊達を生け捕りにせず、どんどん斬り殺してしまっていた・・・。

半ば八つ当たりのように殺されてしまった盗賊達だったが、街道を通る旅人や商人を残忍に殺してしまうのが盗賊なのである。殺してしまったとしても、褒められこそすれ文句を言われる事はない。

襲われている馬車にも護衛に雇われた冒険者が居たはずであるが、多勢に無勢で苦戦しているかもしれない。コジローは馬車が襲われている地点に向かって走り出した。もちろんマロも追従している。ミトは待っているように言われたが、同じく馬車に向かって走っていた。



コジロー達が駆け付けた時、キャラバンはかなり劣勢であった。一番うしろの馬車は乗合馬車であったが、乗客は外に引きずり出されて暴行されていた。

コジローは馬車の後方で戦っていた冒険者に声をかけた。念の為、強盗であることの確認と、助けが居るかどうかの確認である。

どう見ても強盗であり、劣勢であるのは間違いなかったが、以前、間違って盗賊を助けてしまった経験から、念の為である。

冒険者も仕事として護衛を引き受けているのであり、勝手に手助けすると報酬を払う必要が出てくるので、手出しをすると怒るケースもあるのである。

コジローが確認している間にも、馬車に乗っていた子供たちが強盗に殴られて血を流していた。それを見たミトが怒気を発し、子供を襲っていた盗賊に襲いかかり、瞬殺してしまった。

冒険者の返答はどちらもイエスという事であったので、コジローとマロも参戦した。マロに馬車後方を任せ、コジローは馬車の前方に転移する。

加速を発動したコジローが盗賊を次元剣で瞬殺する。馬車後方にいる盗賊達はマロが降らせたファイアーアローの雨で殲滅された。

コジローは強盗のうち一人だけ、殺さずに気絶させて街道脇の森に転がしておいた。(ピコピコハンマーがこんな時も役に立つ。)

盗賊を襲った時は、一人ないし数人は生かして逃がすようにしている。そして、逃げる盗賊達を離れて追跡し、アジトを突き止めるのである。

馬車の周囲に敵がいなくなったのを確認して、コジローは護衛の冒険者に声を掛ける。

護衛の冒険者:「助かった、ありがとう!」

コジロー:「なに、無事でよかった。無事、ではないか?」

何人か、冒険者にも乗客にも怪我人が出ているようである。

護衛の冒険者:「いや、怪我人は出たが、誰も死んでない、上出来だ。怪我はみんなポーションで治る程度のもんだったしな。」

そこに、雇い主と思われる商人が近づいてきた。

助けてくれたお礼を言われ、もし予定がないならこの後護衛として雇われてほしいという。強い冒険者と知り合えたなら、関係を構築・強化しておきたいというのは商人の本能である。

だが、コジローは断った。なぜなら、盗賊のアジトを探索して、残党を潰すつもりだったからである。

商隊(キャラバン)としても盗賊団は壊滅させておきたいが、キャラバンの護衛は護衛対象から離れる事ができないので、フリーのコジローに任せるということで合意した。先程の活躍を見れば、コジローなら一人で十分と判断したのである。

また、盗賊達の死体を集めて燃やすか埋める必要がある。放置しておくと血の匂いで他の魔獣が寄ってきたり、アンデッド化したりするので、始末していくのがマナーとなっているが、それもコジローが引き受ける代わり、謝礼を少し多めにもらう事と、ミトをアルテミルまで乗せてくれる事で交渉は成立した。謝礼はミトに渡しておいてくれるようにコジローは言った。商隊としても、なるべく早く街に着いてしまいたいので、好都合な話であった。

ミトに、すぐに追いつくからキャラバンと一緒に先に行ってるように言い、マロには逃げた盗賊を追跡するように指示した。

気絶させて逃げやすい場所にわざと置いてやった盗賊は、コジロー達が話しているうちに意識を回復してコソコソ逃げていった。護衛のリーダーはそれに気付いて声を上げようとしたが、コジローがそれを止め、泳がせると説明したのであった。

先にマロを行かせたコジローは、亜空間に盗賊の遺体をすべて収納した。コジローは亜空間をいくつでも作成できるので、死体などは専用の亜空間を作成し収納する。普段使う道具や食材もすべて専用の亜空間収納を作成しているので混ざる心配はない。

収納魔法を見てキャラバンの人間達が驚きの声をあげていたが、あっという間に収納を終えたコジローはすぐにマロの後を追った。

逃げた盗賊を追跡し始めたコジロー。

ゼフトに貰った索敵魔法のブレスレットがあるし、加速も転移もあるので、離れていても追跡は容易である。

盗賊の残党は2時間ほど山の中を進み、アジトにしている洞窟に辿り着いた。アジトにはまだ数人残っていたが、戻った盗賊が状況を報告する間もなく、加速(50倍速)を発動したコジローが全員瞬殺した。

洞窟の中にあった牢は空であった。

さらに洞窟の奥に進むと、倉庫にしている空間があり、旅人から奪ったのであろう食料や金銀財宝が保管されていた。それらは全て亜空間に収納しておく。大人数の盗賊団だっただけあり、結構溜め込んでいたようである。

盗賊の所持品や溜め込んだ金品は、殲滅した人間が貰ってよいことになっている。これだけで結構な稼ぎになるのである。

洞窟の前に結構な広場があったため、そこに亜空間に収納していた盗賊の遺体をすべて出し、装備している剣や財布などをを再び収納していく。粗悪な武器や防具でも、売ればいくらかにはなるし、何かの役に立つこともある。

荷物を回収し終えた死体は山に積んでいく。一旦亜空間に収納し、山を作る場所で再び出すだけなので体力は要らない。

最後に山積みになった遺体はマロの炎の魔法で焼却してもらった。

盗賊のアジトの殲滅・お宝の回収は何度もやっていて、もはやルーティーンワークという感があるコジローであった。



すべての作業を終え、コジローはマロとともにアルテミルの近くの森の中に転移した。馬車が到着するまでにはまだしばらく時間が掛かる事を計算して、コジローは久々にマドネリ村の自宅に帰り、風呂に入ることにしたのだ。盗賊退治で汚れた身体を流したい。

風呂は、この世界ではなかなか自由に入れない。風呂がない宿も多い。タライに水やお湯を用意してもらい、体を拭くだけで済ませるのが一般的である。(もちろんお湯やタオルは有料である。)公衆浴場がある街もあるが、ない街も多い。あっても、湯船というのはないところがほとんどであった。

コジローの自宅の風呂には、死霊の森の奥深くにある温泉を転移魔法陣で引いてある。

長くマドネリ村を留守にしていたコジローであったが、実は時々、風呂に入るためだけに家に帰っていたのであった。
直接家の中に転移し、また転移で出ていっていたので、村の人間に気付かれる事はなかったのであるが。。。

いずれ、マドネリ村以外にも、風呂に入れる拠点を作るのも良いかもしれないなどと考えながら急ぎ体を洗い流したコジローは、再びアルテミルの近くの森に転移し、馬車の到着を待つことにした。


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