上 下
99 / 115
第五章 コジローの恋

第99話 コジローとモニカ結婚

しおりを挟む
コジローは、転移魔法陣を領主に提供したことで、年間3万Gもの収入を定期的に領主から得ている。

その資金から、マドリー&ネリーの家の改修・増築工事の費用まで出してくれていたのだが、あまり経営面では家の商売に関わってこなかったモニカはそれを知らなかった。

マドリーとネリーとしては、どちらかと言えば、出会ったばかりのジョニーよりは付き合いの長いコジローを推す気持ちはあった。だが、最後はモニカが決める事であるので、モニカがどうしてもジョニーが良いというのであれば、それも仕方がないかなと思っていた。

マドリーとネリーは、娘はおそらくジョニーを選ぶだろうと思い、ジョニーについて少し―――娘婿として―――興味をもって、ジョニーの弟のダニーに、兄について尋ねてみたのである。

ジョニーは、ゴーレムを作る魔法が使える。それを労働力として利用できるので、甲斐性はある。ただし、ジョニーはゴーレムを一体しか使役できず、あまり難しい事はさせられないという事だった。

だが、実は、ジョニーは金を持っていなかった。家を借りた金も、ここまでの旅費もすべて弟のダニーが出していたのである。

ダニーはゴーレムを三体使役でき、堅実な性格で金も無駄遣いせず貯めていた。だが、ジョニーはその顔から女にモテたためなのか、金があれば遊びに使ってしまうタイプだったのである。

それを知って、マドリーはダニーから話を聞いて少し心配になり、モニカに大丈夫なのか尋ねてみたのであった。

モニカも、ジョニーの金遣いが荒さについては、薄々気になっていた。何かというと街に行っては高価な買い物をしてしまい、支払いについてダニーによく怒られているのを何度もみかけていたのである。

ネリーとモニカは結婚相手について時々離すようになっていたが、ジョニーの金遣いについての話題から、ふと、モニカはコジローの経済力についてネリーに尋ねてみたのである。そこで初めて、コジローがこの村の出資者である事をモニカは知った。モニカはコジロー本人にも直接尋ね、年収が3万Gもあることを確認した。

3万Gというと、この世界の庶民の年収のおよそ十倍である。

それをコジローから聞いたモニカは、あっさりとジョニーを振り、コジローを選んだのである。



モニカにとって、経済力は重要だったのである。

モニカは、前世でニートだった影響なのか、引きこもり気味の性格をしていた。この世界ではなんとか、部屋に籠もり切りで出てこない完全ニートにはならずに済んでいたが、やはり、できれば家にこもってゴロゴロしていたい気持ちが強かったのである。

引きこもり生活をするのには、経済力が必要なのである。。。

ジョニーには

「一緒に畑仕事をがんばろう!」

と言われていた。

そこでモニカは、ジョニーに返事をするのを思いとどまった。

コジローとモニカは、前世の話という共通の話題もあり、なんでも正直に言いあえるような関係は築かれていた。コジローには、前世でモニカがニートであったことまで話していた。ジョニーには前世の事もニートだった事も一切話していない。

そこで、モニカは思い切って、あまり働きたくない、家でゴロゴロしてるのが好きだとコジローに告白してみたのだが、それに対してコジローは、金には困っていないから、もし結婚したら家で専業主婦してていいよ、と答えた。

それが決定打となった。



結局、女は最後は金のあるほうを選ぶのか、とコジローも思わないでもなかったが、容姿の美しさも人間の魅力なら、経済力もまた人間の魅力のひとつであろう。

どちらも空虚な魅力な気もするが・・・

ゼフトが言うとおり、恋などしょせんはお互いの欲望を満たすための利害の一致という側面もあるのだ。それが現実というものだろうとコジローは割り切ったのであった。



そうしてモニカはコジローの告白を受け入れたわけだが、それを知ったマドリーとネリーはどんどん話を進め、二人はあれよあれよと結婚まで追い込まれ、二人はコジローの家に一緒に住む事になったのであった。

実はコジローは、告白はしたものの、プロポーズまでしたつもりではなかったのだが・・・

まぁそれでも、断る理由もない、むしろ喜ぶべき事なので、二人は素直に結婚することとなった。



この世界での結婚は、特に役所に届けを出すというような制度はない。宗教も様々であり、結婚も様々である。宗教がある者は、信じる神に結婚を報告する、という儀式のようなものをするケースもあるが、お互いに相手を伴侶と認めて一緒に住み始めればそれで十分だと言う人も多い。

コジローとマドリーは、村の人達が集まって、ささやかな結婚の誓いの儀式とパーティを行って、結婚式としたのであった。



コジローは、予想外に結婚することになってしまったが、モニカと結婚できて幸せであった。

二人の関係は良好で、順調な結婚生活であった。






だが、やがて、その生活にも暗雲が垂れ込めてくる・・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

こういうのでいいんだよおじさん、伝説になる ~元パーティーメンバーが俺を殺しに来るんだけど、実はこれ求婚だったってマ?~

祝井愛出汰
ファンタジー
元冒険者ケント・リバーは森の奥で「こういうのでいいんだよ」と思えるような小さな幸せを見つけながら一人穏やかに暮らしていた。 そんな彼の前に、かつて危険に巻き込んでしまった女冒険者 セオリア・スパークが現れ依頼を告げる。 依頼の内容は「冒険者の復興」と「魔物大量暴走(スタンピート)」の調査。 街に戻ったケントは依頼に取り組むかたわら、小さな「こういうのでいいんだよ」を見つけていく。 街の人々はそんなケントの姿を見て「粋を極めた賢者様に違いない」と噂しはじめた。 おまけにケントを恨んでるはずの元パーティーメンバー三人までグイグイくる始末。 小市民的な価値観と卓越した剣の腕を持つケントと、彼を慕う三人の元パーティーメンバーによる「こういうのでいい」バトル&ほっこりな物語。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

「私のために死ねるなら幸せよね!」と勇者姫の捨て駒にされたボクはお前の奴隷じゃねえんだよ!と変身スキルで反逆します。土下座されても、もう遅い

こはるんるん
ファンタジー
●短いあらすじ。 勇者のイルティア王女の身代わりにされ、魔王軍の中に置き去りにされたルカは、神にも匹敵する不死身の力にめざめる。 20万の魔王軍を撃破し、国を救ったルカは人々から真の英雄とたたえられる。 一方でイルティアは魔王の手先と蔑まれ、名声が地に落ちた。 イルティアは、ルカに戦いを挑むが破れ、 自分を奴隷にして欲しいと土下座して許しをこう。 ルカは国王を破って、世界最強国家の陰の支配者となる。さらにはエルフの女王にめちゃくちゃに溺愛され、5億人の美少女から神と崇められてしまう。 ●長いあらすじ 15歳になると誰もが女神様からスキルをもらえる世界。 【変身】スキルをもらったボクは、勇者であるイルティア王女に捨て駒にされた。 20万の魔王軍に包囲された姫様は、ボクを自分に変身させ、身代わりにして逃げてしまったのだ。 しかも姫様は魔王の財宝を手に入れるために、魔族との戦争を起こしたと得意げに語った。 魔法が使えないため無能扱いされたボクだったが、魔王軍の四天王の一人、暗黒騎士団長に剣で勝ってしまう。 どうもボクの師匠は、剣聖と呼ばれるスゴイ人だったらしい。 さらに500人の美少女騎士団から絶対の忠誠を誓われ、幻獣ユニコーンから聖なる乙女として乗り手にも選ばれる。 魔王軍を撃破してしまったボクは、女神様から究極の聖剣をもらい真の英雄として、人々から賞賛される。 一方で勇者イルティアは魔王の手先と蔑まれ、名声が地に落ちた。 これは無能と蔑まれ、勇者の捨て駒にされた少年が、真の力を開放し史上最強の英雄(♀)として成り上がる復讐と無双の物語。 勇者姫イルティアへのざまぁは16話からです。 イルティアを剣で打ち負かし、屈服させて主人公の奴隷にします。 彼女は主人公に土下座して許しをこいます。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...