なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第五章 コジローの恋

第92話 初心者向けダンジョンに潜る1

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翌朝、村の北側の門の前に集合したコジロー達。

村を出てしばらく北に進むと、高い塀で囲われた場所に到着する。ダンジョンの入口である。

ダンジョンからは魔物が出てくるので、それが周囲に広がらないように塀で囲ってあるのだ。更に中にもう一つ扉が設置されている、二重扉の構造になっている。ダンジョンからは魔物が出てくる事があるので、塞いでいるのだ。

当然、扉を開ければ内側で待っていた魔物が飛び出してくる可能性がある。そこで、一度中に入って外側の扉を閉じてから、中の扉を開けるのである。

ダンジョンは資源の宝庫である。人気のあるダンジョンであれば、入場待ちの列ができている事もあるが、ここはコジロー達の他には誰も入場者は居なかった。

初心者向けダンジョンであるので、冒険者になったばかりの新人が挑戦することが多いのだが、最近は新人が少ないのだろうか。

門番に開けてもらい、1つ目の扉の中に入るコジロー達。全員入ったら、一旦外の扉を閉める。

次に中の扉を開くが、外に出たがって扉の内側に潜んでいた魔物が、開けた途端に飛び出してくる事も多い。ダンジョンに挑戦する冒険者は、まずはその魔物を退治しなければならない。

内側の扉を開けるコジロー、すると、ゴブリンが数匹飛び出してきた。

しかし次の瞬間には、加速を発動したコジローの次元剣でゴブリン達はすべて斬り裂かれていた。

それを見ていたジョニーが

「凄いな・・・」

とジョニーが呟いた。

コジローの加速の魔法は既に四十倍速に到達している。移動速度は100メートルを0.5秒で駆け抜ける。その速度域で振るわれる剣の先端の速度は音速を超えた領域である。ゴブリンごときは何匹いようとも相手ではない。

中を伺うコジロー。索敵魔法を展開するが、近くにこれ以上モンスターは居ないようであった。

マロと子供達は殿(しんがり)を頼んだ。また、気配もなるべく発しないように指示した。マロ達は魔獣としては強すぎるので、そのような強者が居ることが分かれば、魔物が出てこなくなってしまうのである。どうせならモンスターもある程度狩りながら進みたい。

もし、初心者向けダンジョンでマロが威圧を発しながら進んだら、一切モンスターが出ることなく終わってしまう可能性すらある。

依頼はダンジョン奥に咲いている花を積んでくる事。依頼達成するだけなら、モンスターが出ないならそのまま奥に進んでしまえばよいのだが、ミルやモニカ、ジョニーやマルスにとっては、ダンジョンを 体験 ・学習と言う意味もあるのだ。モンスターが出ないのでは意味がない。



攻略済みの初心者向けダンジョンなので、内部の地図も宿屋で入手できている。さすがに知らないダンジョンを自力でマッピングしながら進むのは時間が掛かりすぎるので、マルスに地図を持たせルートを指示させながら進む。

最初の階は出てくる敵もゴブリン、モンスターバット、ホーンラビット、エッグプラント(魔茄子)と言ったごく弱いモンスターだけである。数が多すぎたり不意打ちを食らったりすると危険だが、コジローは索敵魔法で出てくる前に分かるので、待ち構えていて倒すことができる。

せっかくなので、コジローは後ろに下がり、ジョニーやモニカ、マルス、ミルに倒してもらうことにする。

ジョニーは自分で戦うのはあまり得意ではないが、ゴーレムを戦わせる事ができる。

マルスは剣と、先日買った弓も持ってきている。

モニカも幼い頃から母親に教わって弓が得意である。

ミルも、多少であれば魔法が使えるということだった。魔力量はそれほど多くないのであまり連発は無理だそうだが。

マロと子どもたちは退屈してしまいそうなので、別ルートでダンジョン内を自由に駆け回っていいと言って別行動になった。魔狼は圧倒的に強いモンスターなので何も問題はないだろう。他の冒険者が居たら攻撃される可能性はあるが、その前にマロ達が逃げれば問題ない。神速の魔狼を追いかけることができる冒険者はほぼ存在しない。

倒した魔物の解体もコジロー以外は初体験であったので、大騒ぎしながら、かなり時間もかかるが、それでも初心者ダンジョンなので奥も深くはなく、ほどなくして最初の階層の終点、次の階層へと続く階段のある部屋に行き着いた。

階段を降りると地下二階は少しだけ出てくるモンスターのレベルが上がる。地下一階と同様のモンスターに加え、モンスターキャンドル、オーニオン(魔玉葱)、リリパット、ウッドハンマンなどが出てくる。ただ、少し注意がいるのは、この階からは罠が仕掛けられるようになるのだ。リリパッドやウッドハンマンなどの小型の人型モンスターが生息しているからなのであろう、少しだけ知能のある彼らは罠を仕掛けたりするのだ。(※ウッドハンマンは木槌を持った小型の妖精型モンスター、進化の課程でドワーフになれなかった亜種ではないかとも言われている。)


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