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第五章 コジローの恋
第90話 新たな依頼ー初心者用ダンジョンで薬草採取の護衛1
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ある日、ギルドからマドリー&ネリーの家のアルテミルの出店に、コジローに指名依頼が来ていると連絡があった。
以前は神出鬼没のコジローがどこに居るのか掴めず、連絡を取るのが難しかったという状況があったのだが、アルテミルの出店に伝言を残してもうらうようにした事で、連絡が取りやすくなっていた。
店に予約情報の確認と店で売るサンドイッチなどを届けるために一日2~3度、マドリー・ネリー・モニカの誰かが転移魔法陣を使って出店に顔を出している。コジローは村に居る時は食事はマドリー&ネリーの家で食べるので、その時に連絡がつくし、長期外出している場合でも行き先はマドリー&ネリーの家に伝えて行くので、行方が分からないという事は少なくなったのである。
最近はめっきりギルドに顔を出す頻度が減っていたコジローであったが、冒険者をやめたわけではない。当然、受けられる依頼があれば受ける。
コジローは伝言を聞いて、早速アルテミルに転移魔法陣で移動、ギルドを訪れた。受付嬢に言って指名依頼の内容を聞いてみると、以前護衛としてサンテミルの街まで送迎したことがある薬師ミルからという事であった。
ただ、ミルは、依頼の内容はコジローに直接説明したいとの事で、既にマドリー&ネリーの家に向かっているとのことだった。行き違いになってしまったようだ。
急ぎ村に戻ったコジローであったが、ちょうど、馬車に乗ったミルが到着したところであった。
最近、マドリー&ネリーの家とアルテミルの街を往復する定期馬車が走るようになった。
マドリー&ネリーの家が運営しているわけではないのだが、マドネリ村と行き来する客も多くなり、また郵便物や食材の仕入れなどでも多くなったため、馬車の運営が十分採算が取れると見込んだ業者が勝手に始めたのである。
実は村にはドワーフ達が住みつき、その数はどんどん増えていた。盗賊が移住希望で来てしまったこともあり、人間の移住希望者を受け入れるのは慎重になってしまったのだが、ドワーフの親方が信用できると認めた仲間であれば、ほとんど無条件で受け入れられていたためである。
ドワーフの大工の親方は、ドワーフ界では伝説的な職人で、その親方が保証してくれるドワーフ達が問題を起こすような事はなかった。
ドワーフといえば職人というイメージがあるが、まさにそのとおりで、親方を慕って集まってくるドワーフ達は、様々な職種の達人的職人ばかりだったので、気がつけば、マドネリ村は高度な技術を持つ職人の街となっていたのである。
ドワーフ達が直接店を構えることはあまりないが、アルテミルに店を出している各種店舗がマドネリ村の製品を仕入れたがり、そのための交渉でも、客が増えていたのである。
村人と従業員もマドリー&ネリーの家の食堂で食事をすることがほとんどであり、またアルテミルの出店で販売しているサンドイッチやハンバーガーも大人気で生産が追いつかないということもあり、大規模な厨房兼従業員・村人専用食堂として別棟が建設された。ドワーフの親方が自分たちの食事の問題もあるので気合を入れてあっという間に完成させてくれたのである。
「美味しい!」
マドリー&ネリーの家は予約でいっぱいで、なかなか客として料理を食べることは敵わないのであったが、従業員や家族の客であれば、従業員用の別棟の食堂で料理を食べることができる。
ミルはコジローの客として、そこで昼食を一緒に食べながら打ち合わせをする事になったのである。
「まさか、予約が取れない人気店の料理が食べられるなんて、来てよかった!!」
とミルは大喜びであった。
食事をしながら依頼内容を聞く。
アルテミルから60kmほどの場所にあるダンジョンの奥にだけ咲いているという、特殊な花を採取するために、一緒にダンジョンに潜ってほしいとのことだった。
その花からしか作れない薬があって、それを定期的に必要とする貴族から依頼を受けているのだとか。
そのダンジョンはモーボヤと呼ばれている。それほど難易度の高いダンジョンではない、どちらかと言うと初心者向けのダンジョンである。中にはパペットやゴーレムなどの無機物系モンスターが多い・・・と、コジローは脳内百科事典から情報を引き出した。
貴族の依頼なのでかなりの資金が提供されているが、依頼自体は難しい内容ではないのだが、以前、格安で依頼を引き受けてくれたコジローにお礼代わりに依頼を持ってきたのだと言う。
植物採集であればコジロー一人で行ってくると言ったのだが、せっかくなので、ミルは自分でもダンジョンに潜ってみたいと言うので、一緒に行くことになった。すると、近くで聞き耳を立てていたマルスが自分も行きたいと言い出した。
本当は自分とマロだけで行ったほうが転移なども使いやすいので都合が良いコジローなのであったが、初心者向けダンジョンでもあり、マルスの経験のためにもまぁ良いか・・・と思ったら、いつの間にか、モニカとジョニーも参加する事になっていた。
畑仕事のために雇われているジョニーとダニーの兄弟であるが、ダニーは堅実に畑仕事だけで食べていきたいという考えであったが、ジョニーはどうやら冒険者になって一攫千金に憧れる気持ちが捨てきれていないらしいのであった。
そして、最近モニカはイケメンのジョニーに興味を持って急接近しており、ジョニーが行くなら一緒に行くと言い出したのである。従来引きこもり気質であまり外に出たがらないはずのモニカが外に出ると言い出したのは、いよいよジョニーに対して本気になりつつあると言うことなのかも知れない。
ジョニーはというと、イケメンなので女性に言い寄られる経験は多く、女性の扱いは慣れているという感じで、女性からすると好感がモテる態度・言動ができる男である。ただ、客観的に見ると、女性に対するその愛想の良さは、本気なのかどうかはいまひとつはっきりしないところがあった。もしかしたら、ただの遊び人で、女性と本気で付き合うことはないタイプなんじゃなかろうかとも見えるのだが・・・
とは言え、コジローとしても、モニカと一緒にダンジョンに潜れるというのは、ちょっと楽しみな部分もあるのであった。
以前は神出鬼没のコジローがどこに居るのか掴めず、連絡を取るのが難しかったという状況があったのだが、アルテミルの出店に伝言を残してもうらうようにした事で、連絡が取りやすくなっていた。
店に予約情報の確認と店で売るサンドイッチなどを届けるために一日2~3度、マドリー・ネリー・モニカの誰かが転移魔法陣を使って出店に顔を出している。コジローは村に居る時は食事はマドリー&ネリーの家で食べるので、その時に連絡がつくし、長期外出している場合でも行き先はマドリー&ネリーの家に伝えて行くので、行方が分からないという事は少なくなったのである。
最近はめっきりギルドに顔を出す頻度が減っていたコジローであったが、冒険者をやめたわけではない。当然、受けられる依頼があれば受ける。
コジローは伝言を聞いて、早速アルテミルに転移魔法陣で移動、ギルドを訪れた。受付嬢に言って指名依頼の内容を聞いてみると、以前護衛としてサンテミルの街まで送迎したことがある薬師ミルからという事であった。
ただ、ミルは、依頼の内容はコジローに直接説明したいとの事で、既にマドリー&ネリーの家に向かっているとのことだった。行き違いになってしまったようだ。
急ぎ村に戻ったコジローであったが、ちょうど、馬車に乗ったミルが到着したところであった。
最近、マドリー&ネリーの家とアルテミルの街を往復する定期馬車が走るようになった。
マドリー&ネリーの家が運営しているわけではないのだが、マドネリ村と行き来する客も多くなり、また郵便物や食材の仕入れなどでも多くなったため、馬車の運営が十分採算が取れると見込んだ業者が勝手に始めたのである。
実は村にはドワーフ達が住みつき、その数はどんどん増えていた。盗賊が移住希望で来てしまったこともあり、人間の移住希望者を受け入れるのは慎重になってしまったのだが、ドワーフの親方が信用できると認めた仲間であれば、ほとんど無条件で受け入れられていたためである。
ドワーフの大工の親方は、ドワーフ界では伝説的な職人で、その親方が保証してくれるドワーフ達が問題を起こすような事はなかった。
ドワーフといえば職人というイメージがあるが、まさにそのとおりで、親方を慕って集まってくるドワーフ達は、様々な職種の達人的職人ばかりだったので、気がつけば、マドネリ村は高度な技術を持つ職人の街となっていたのである。
ドワーフ達が直接店を構えることはあまりないが、アルテミルに店を出している各種店舗がマドネリ村の製品を仕入れたがり、そのための交渉でも、客が増えていたのである。
村人と従業員もマドリー&ネリーの家の食堂で食事をすることがほとんどであり、またアルテミルの出店で販売しているサンドイッチやハンバーガーも大人気で生産が追いつかないということもあり、大規模な厨房兼従業員・村人専用食堂として別棟が建設された。ドワーフの親方が自分たちの食事の問題もあるので気合を入れてあっという間に完成させてくれたのである。
「美味しい!」
マドリー&ネリーの家は予約でいっぱいで、なかなか客として料理を食べることは敵わないのであったが、従業員や家族の客であれば、従業員用の別棟の食堂で料理を食べることができる。
ミルはコジローの客として、そこで昼食を一緒に食べながら打ち合わせをする事になったのである。
「まさか、予約が取れない人気店の料理が食べられるなんて、来てよかった!!」
とミルは大喜びであった。
食事をしながら依頼内容を聞く。
アルテミルから60kmほどの場所にあるダンジョンの奥にだけ咲いているという、特殊な花を採取するために、一緒にダンジョンに潜ってほしいとのことだった。
その花からしか作れない薬があって、それを定期的に必要とする貴族から依頼を受けているのだとか。
そのダンジョンはモーボヤと呼ばれている。それほど難易度の高いダンジョンではない、どちらかと言うと初心者向けのダンジョンである。中にはパペットやゴーレムなどの無機物系モンスターが多い・・・と、コジローは脳内百科事典から情報を引き出した。
貴族の依頼なのでかなりの資金が提供されているが、依頼自体は難しい内容ではないのだが、以前、格安で依頼を引き受けてくれたコジローにお礼代わりに依頼を持ってきたのだと言う。
植物採集であればコジロー一人で行ってくると言ったのだが、せっかくなので、ミルは自分でもダンジョンに潜ってみたいと言うので、一緒に行くことになった。すると、近くで聞き耳を立てていたマルスが自分も行きたいと言い出した。
本当は自分とマロだけで行ったほうが転移なども使いやすいので都合が良いコジローなのであったが、初心者向けダンジョンでもあり、マルスの経験のためにもまぁ良いか・・・と思ったら、いつの間にか、モニカとジョニーも参加する事になっていた。
畑仕事のために雇われているジョニーとダニーの兄弟であるが、ダニーは堅実に畑仕事だけで食べていきたいという考えであったが、ジョニーはどうやら冒険者になって一攫千金に憧れる気持ちが捨てきれていないらしいのであった。
そして、最近モニカはイケメンのジョニーに興味を持って急接近しており、ジョニーが行くなら一緒に行くと言い出したのである。従来引きこもり気質であまり外に出たがらないはずのモニカが外に出ると言い出したのは、いよいよジョニーに対して本気になりつつあると言うことなのかも知れない。
ジョニーはというと、イケメンなので女性に言い寄られる経験は多く、女性の扱いは慣れているという感じで、女性からすると好感がモテる態度・言動ができる男である。ただ、客観的に見ると、女性に対するその愛想の良さは、本気なのかどうかはいまひとつはっきりしないところがあった。もしかしたら、ただの遊び人で、女性と本気で付き合うことはないタイプなんじゃなかろうかとも見えるのだが・・・
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