なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
90 / 115
第五章 コジローの恋

第90話 新たな依頼ー初心者用ダンジョンで薬草採取の護衛1

しおりを挟む
ある日、ギルドからマドリー&ネリーの家のアルテミルの出店に、コジローに指名依頼が来ていると連絡があった。

以前は神出鬼没のコジローがどこに居るのか掴めず、連絡を取るのが難しかったという状況があったのだが、アルテミルの出店に伝言を残してもうらうようにした事で、連絡が取りやすくなっていた。

店に予約情報の確認と店で売るサンドイッチなどを届けるために一日2~3度、マドリー・ネリー・モニカの誰かが転移魔法陣を使って出店に顔を出している。コジローは村に居る時は食事はマドリー&ネリーの家で食べるので、その時に連絡がつくし、長期外出している場合でも行き先はマドリー&ネリーの家に伝えて行くので、行方が分からないという事は少なくなったのである。

最近はめっきりギルドに顔を出す頻度が減っていたコジローであったが、冒険者をやめたわけではない。当然、受けられる依頼があれば受ける。

コジローは伝言を聞いて、早速アルテミルに転移魔法陣で移動、ギルドを訪れた。受付嬢に言って指名依頼の内容を聞いてみると、以前護衛としてサンテミルの街まで送迎したことがある薬師ミルからという事であった。

ただ、ミルは、依頼の内容はコジローに直接説明したいとの事で、既にマドリー&ネリーの家に向かっているとのことだった。行き違いになってしまったようだ。



急ぎ村に戻ったコジローであったが、ちょうど、馬車に乗ったミルが到着したところであった。

最近、マドリー&ネリーの家とアルテミルの街を往復する定期馬車が走るようになった。

マドリー&ネリーの家が運営しているわけではないのだが、マドネリ村と行き来する客も多くなり、また郵便物や食材の仕入れなどでも多くなったため、馬車の運営が十分採算が取れると見込んだ業者が勝手に始めたのである。

実は村にはドワーフ達が住みつき、その数はどんどん増えていた。盗賊が移住希望で来てしまったこともあり、人間の移住希望者を受け入れるのは慎重になってしまったのだが、ドワーフの親方が信用できると認めた仲間であれば、ほとんど無条件で受け入れられていたためである。

ドワーフの大工の親方は、ドワーフ界では伝説的な職人で、その親方が保証してくれるドワーフ達が問題を起こすような事はなかった。

ドワーフといえば職人というイメージがあるが、まさにそのとおりで、親方を慕って集まってくるドワーフ達は、様々な職種の達人的職人ばかりだったので、気がつけば、マドネリ村は高度な技術を持つ職人の街となっていたのである。

ドワーフ達が直接店を構えることはあまりないが、アルテミルに店を出している各種店舗がマドネリ村の製品を仕入れたがり、そのための交渉でも、客が増えていたのである。

村人と従業員もマドリー&ネリーの家の食堂で食事をすることがほとんどであり、またアルテミルの出店で販売しているサンドイッチやハンバーガーも大人気で生産が追いつかないということもあり、大規模な厨房兼従業員・村人専用食堂として別棟が建設された。ドワーフの親方が自分たちの食事の問題もあるので気合を入れてあっという間に完成させてくれたのである。



「美味しい!」

マドリー&ネリーの家は予約でいっぱいで、なかなか客として料理を食べることは敵わないのであったが、従業員や家族の客であれば、従業員用の別棟の食堂で料理を食べることができる。

ミルはコジローの客として、そこで昼食を一緒に食べながら打ち合わせをする事になったのである。

「まさか、予約が取れない人気店の料理が食べられるなんて、来てよかった!!」

とミルは大喜びであった。

食事をしながら依頼内容を聞く。

アルテミルから60kmほどの場所にあるダンジョンの奥にだけ咲いているという、特殊な花を採取するために、一緒にダンジョンに潜ってほしいとのことだった。

その花からしか作れない薬があって、それを定期的に必要とする貴族から依頼を受けているのだとか。

そのダンジョンはモーボヤと呼ばれている。それほど難易度の高いダンジョンではない、どちらかと言うと初心者向けのダンジョンである。中にはパペットやゴーレムなどの無機物系モンスターが多い・・・と、コジローは脳内百科事典から情報を引き出した。

貴族の依頼なのでかなりの資金が提供されているが、依頼自体は難しい内容ではないのだが、以前、格安で依頼を引き受けてくれたコジローにお礼代わりに依頼を持ってきたのだと言う。

植物採集であればコジロー一人で行ってくると言ったのだが、せっかくなので、ミルは自分でもダンジョンに潜ってみたいと言うので、一緒に行くことになった。すると、近くで聞き耳を立てていたマルスが自分も行きたいと言い出した。

本当は自分とマロだけで行ったほうが転移なども使いやすいので都合が良いコジローなのであったが、初心者向けダンジョンでもあり、マルスの経験のためにもまぁ良いか・・・と思ったら、いつの間にか、モニカとジョニーも参加する事になっていた。

畑仕事のために雇われているジョニーとダニーの兄弟であるが、ダニーは堅実に畑仕事だけで食べていきたいという考えであったが、ジョニーはどうやら冒険者になって一攫千金に憧れる気持ちが捨てきれていないらしいのであった。

そして、最近モニカはイケメンのジョニーに興味を持って急接近しており、ジョニーが行くなら一緒に行くと言い出したのである。従来引きこもり気質であまり外に出たがらないはずのモニカが外に出ると言い出したのは、いよいよジョニーに対して本気になりつつあると言うことなのかも知れない。

ジョニーはというと、イケメンなので女性に言い寄られる経験は多く、女性の扱いは慣れているという感じで、女性からすると好感がモテる態度・言動ができる男である。ただ、客観的に見ると、女性に対するその愛想の良さは、本気なのかどうかはいまひとつはっきりしないところがあった。もしかしたら、ただの遊び人で、女性と本気で付き合うことはないタイプなんじゃなかろうかとも見えるのだが・・・

とは言え、コジローとしても、モニカと一緒にダンジョンに潜れるというのは、ちょっと楽しみな部分もあるのであった。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。 レベル、ステータス、その他もろもろ 最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。 彼の役目は異世界の危機を救うこと。 異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。 彼はそんな人生で何よりも 人との別れの連続が辛かった。 だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。 しかし、彼は自分の強さを強すぎる が故に、隠しきることができない。 そしてまた、この異世界でも、 服部隼人の強さが人々にばれていく のだった。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...