なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第四章 マドネリ村

第85話 村創立→早速トラブル襲来2

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「お、姉ちゃんいい尻してんな!」

「俺達と遊ぼうぜぇ」

手下4もモニカ近づいていき、モニカの腕を掴んだ。

「娘に近づ~「モニカさんに触るんじゃない!!」」

マドリーが怒鳴るより早く、モニカと男たちの間に割って入ったのは、先日から働いていたマルス少年だった。

「レディに失礼なことをするんじゃない!みっともないぞ!」

マルスは腰に差していた短剣を抜いた。

割って入ったのは立派だったが、先に剣を抜いたのは失敗であった。

「なんだぁ、やるのか坊主?」

そう言った手下3はいきなりマルスに向かって蹴りを放った。まともに食らって壁まで飛ばされて倒れるマルス。

手下3:「客に向かって剣を抜くとか、ダメじゃないの~?」

手下4:「従業員だろ?教育がなってないようだな?」

だが次の瞬間、手下3は襟首を掴まれ後ろへ引き倒された。

「大丈夫か、マルス?!」

マルスに駆け寄るコジロー。マルスは大丈夫ですと言いつつも、口から血を流していた。

それを見た瞬間、コジローは加速を発動、手下3の背後まで駆け抜け襟首を掴み、走った勢いを利用してそのまま手下3を玄関の方向に放り投げた。

そして、次の瞬間には、コジローは手下4の横に移動、モニカの手首を掴んでいる手下4の腕を掴んでいた。

コジロー:「手を離せ・・・」

コジローは相手の手を握りながら加速を発動する。2倍速、4倍速、8倍・・・

加速の魔法によってコジローは単位時間当たりにできる仕事が増えていく。8倍速で10秒間握れば、80秒間握ったのと同じ「仕事量」が10秒の間に作用する計算となるのだ。つまり、実質的に握力が8倍になったのと同じ効果があるのである。

「痛ぇっ、はなせ・・・この!」

手下は堪らずモニカの手首を離す。その瞬間にコジローは手下4の襟首を掴み、玄関の外に放り投げた。

コジローには人並みの膂力しかないのだが、加速による高速移動の運動エネルギーをうまく利用しているため、勢いに抵抗できるわけもなく、手下4も一瞬で庭に放り出される。

コジローが静かに、だが激しい怒気を込めて言う。

「出ていけ」

モニカに手を掛けられて、コジローは怒っているのだった。

「あんだてめぇ!」

一瞬遅れて残りの手下が騒ごうとするが、ボスがそれを制した。

「やめねぇか!!」

ボスはマドリーに向かって

「すまない、手下どもが迷惑を掛けた。」

と侘びた。

「今度はちゃんと予約を取ってこさせてもらうとしよう。」

しかし、マドリーは言い放った。

「予約もとらんでいい、お前らは出禁だ。」

ボス:「随分強気な商売だな。繁盛してるからって調子に乗り過ぎじゃないのか?」

マドリー:「誰が客かは俺が決める。気に入らない奴は客として扱うつもりはない。」

ボス:「だが、先に剣を抜いたのはそっちだ、こちらの正当防衛だと思うが?まずいんじゃなないのか?」

手下1:「妙な噂が街に広がるってこともあるかもしれんな(笑)」

マドリー:「言ったろ、誰が客かは俺が決める。お前らは客じゃない、金払ってないだろ。それと、知らんようだから教えてやるが、この村と死霊の森は人の法の外にあるという事になっている。人の法は当てはまらんよ。」

ボス:「面白い!つまり、俺達がここで誰かを殺しても、人の法で裁かれる事はないわけだな?」

マドリー:「人の法で裁けなくとも、別の法で報いを受ける事になるがな?」

手下2:「やるってのかコノヤロウ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

ボス:「やめろ!」

ボスは手下を制すると、不敵に笑い、騒がせて悪かったとだけ言って出て行こうとした。しかし、コジローに放り出された手下達が収まらず、剣を抜いた。

それを見てコジローも外に出る。

ボスはやめろと言うが、手下は聞かない。

しかたねぇなぁと言いながらボスはコジローのほうを向き

「こいつらも収まらねぇみてぇだから、ちょっと相手してやってくれるか?」

と言った。

コジローは次元剣の柄に手を掛けながら言った。

「俺は手加減ができない。剣を抜いたら相手が死ぬ可能性が高い。それでもやるのか?」

ボス:「たいした自信だな。おめえらどうする?殺されてえのか?って言われてるぞ?」

手下3・4:「「ヌッコロシテヤル」」

コジローは次元剣を抜き、刀身を伸ばし構えた。それを見た手下3・4は一瞬、逡巡したが、すぐに襲いかかってきた。

だが、既に加速を発動しているコジロー。途端に、コジローの視野の中で、相手の動きが超スローモーションになる。

現在のコジローの加速魔法は40倍速まで到達している。百メートルを0.5秒以下で走り抜ける速度である。

コジローの剣術の腕の良し悪しに関わらず、この速度差ではコジローに剣が当たるわけがない。つまり、コジローには剣の技術そのものがもはや不要なのである。

コジローはゆっくり落ち着いて斬り掛かってくる二人の側面に回り込み、次元剣で腕を打った。次元剣は峰打ちであるが、高速の一撃で二人の腕は簡単に折れてしまった。

加速を解除して、コジローは言った。(加速を解除しないで話すと早回しのようになってしまうのである。)

「まだやるのか?」

二人の腕は途中からぽっきり90度に折れ曲がっていた。周囲で見ていた者からすれば、恐ろしい速度でコジローが動き、一瞬で二人の腕を折ってみせたという事になる。

少しおくれて手下達の悲鳴があがる。

ボス:「・・・殺さないでくれでくれて礼を言うべきか。騒がせたな。」

男達はそのまま素直に引き下がって行った。

次元剣を鞘に収めたコジローが振り返ると、目を輝かせたマルスが居た。

「弟子にはしないぞ・・・」



手下1:「ボス・・・どうしやす・・・?」

ボス:「あの男はやっかいだな・・・」



コジローの力を見せつけられて、もう来ないだろうとマドリーは思ったのだが・・・

呆れた事に、男達は翌日にはまた現れたのである。


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