なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第四章 マドネリ村

第79話 千客万来 マドリー&ネリーの家3

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ケチャップの作り方は、コジローは知らなかった。そこで地球の資料を調べた。最初の資料だけでは分からない事も多く、ゼフトに頼んで他の本屋や図書館から新たな料理関係の本棚をコピーしてもらった。

どうやら、ケチャップの自作は意外と簡単そうであった。極端に言うと、トマトと調味料をミキサーに掛け煮込んだあと酢を入れればOKのようであった。

早速コジローは市場でトマトを大量に買ってきて試してみた。トマトによく似た野菜を既に見つけてあった。酢も市場でみつけた。(酒があるのだから、そこから派生してみりんや酢といったものも作られていくのであろう。)
他に、玉ねぎ・ニンニク・唐辛子・砂糖・塩・胡椒も少量ずつ入れる。

例によってベストな配合はまたネリーとモニカに試行錯誤してもらおう。

一応、基本的な配合(レシピ)は地球の料理本で分かって入るが、使っている材料がどれも、「似たような食材」でしかないので、味が結構違ってくるのである。



問題は、ミキサーがない事だったが・・・最初はスリコギをつかって食材をすり潰すという力技でなんとかした。その後、ネリーが魔法でどうにかできるんじゃないかと提案してくれた。
コジローの魔法は時空系のみに極端に偏っているため役に立たないが、ネリーは多少風系の魔法が使えたのである。

壺の中に材料を入れ、その中にトルネードを起こす魔法とウィンドカッターを数個投入して急いでフタをする。少し飛び散りながらも、なんとかそれっぽくなった。

その後、コジローがちょっと工夫して、壺の中に亜空間を作成し入口を一方通行にすることで、フタをしなくても中身が漏れないミキサーにすることができた。

ただ、風系の魔法が使えない(正確に言うと使えるがショボイ)コジローには、一人で使えない。そのうち、どこか道具屋でミキサーがないか、なければ作れないか、ちょっと考えてみようと思うコジローであった。

とりあえず、ケチャップもできた。
モニカはともかく、ネリーの料理のカンはかなり良く、食材と調味料の適切なバランスもすぐに見つけ出してくれた。(モニカは日本に居た時は料理をした事がなくセンスもない少女だったそうだ。)
もちろん、ケチャップにもコレという正解はない。今後は後は作る人によっていろいろなバリエーションができていくのだろう。

そう言えば、地球のケチャップも、メーカーによって味が違っていたのをコジローは思い出していた。コジローの家族は、フィンツのケチャップが好きだと言っていたのだが、コジローは少し甘めの味がするカモメのケチャップが好きだったのだ。



さて、ケチャップができると、食べたくなるのはソーセージやハンバーグ。
そう、挽き肉という概念が、この世界にはなかったのである。

風魔法を使ったミキサーもどきが使えるようになったので、肉をミンチにしてしまう事ができたので、コジローは次にハンバーグを作ってみた。
ツナギの卵・パン粉も既にある。

果たして、これも大好評であった。

ちなみに、モニカはハンバーグにはソース派であったが、コジローはケチャップ+マヨネーズ派であった。

もちろんソース+マヨネーズという組み合わせも悪くない。

肉の素材が良ければ、塩だけでも美味いかも知れない。

客に出す時は、いろいろな方法を試して好みを選んでもらえば良いだろう。



さらに、ハンバーグにケチャップを掛けて、野菜と一緒にパンで挟む、「ハンバーガーを」コジローは作ってみせた。

まさかハンバーガーが食べられるとはと、モニカも瞳を潤ませていたが・・・このハンバーガーは、コジローにはちょっと物足りなかったのである。

何が足りないのか考えたコジローはすぐに答えに思い至った。ピクルスとマスタードである。

ピクルスは、保存食としてこの世界にも似たようなものがあるらしいが、とりあえず、キュウリっぽい野菜を酢に有り合わせのハーブで漬け込んでもらった。使う酢やハーブの種類は、例によってネリーに頼って後々改良してもらう。



コジローはアイデアを提供するだけで、実際の試行錯誤はネリーに任せきりなので、ネリーの負担が大きくなっていくが大丈夫か?と思ったが、ネリーは喜々として料理の研究に没頭していたので問題なさそうであった。むしろ、自分からやらせて欲しいと言ってきたほどである。昔は冒険者をやっていたそうだが、実はネリーは料理人が案外向いているのかも知れない。



マスタードもコジロー的には欠かせない。

マスタードは、マスタードシードという辛い種をすり潰して、酢や砂糖、塩などと混ぜ合わせれば良いらしい。ブギルの街へ飛び、市場を物色するコジロー。似たような種子はすぐにみつかった。
すり鉢で潰し、少量の酢と混ぜる。微量の砂糖と塩で味を調整する。

マスタードができれば、少量マヨネーズに混ぜたりすると隠し味にもなる。
バターに混ぜて、食パンに塗ればサンドイッチもひと味違うものになる。

こうして、より完成度の高い「ハンバーガー」も、マドリー&ネリーの家の人気料理のひとつとなったのであった。



ここまでくれば、どんどん行くコジローであった。

トンカツとハンバーグができたのだから、当然「メンチカツ」ができる。ジャガイモっぽい野菜をすり潰して衣をつければコロッケである。

それらの料理を組み合わせて具材にして、新しいサンドイッチも作った。サンドイッチはこの世界にも既にあったが、具のアイデアが貧弱であったのだ。

ハンバーガーやサンドイッチは持ち帰り用の料理として、お土産に大人気となった。



こうして、この世界にはなかった調味料と料理が増えていった結果、一年経たずして、マドリー&ネリーの家は、予約が取れないオーベルジュと変貌していったのである。。。


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