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第四章 マドネリ村

第71話 撃退1

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破壊された城門からギガンテスが侵入してくる。ギガンテスは再び大きく息を吸い、ファイアーブレスを吐き出す準備に入っていた。

このまま城内でファイアーブレスを吐かれたら、街は崩壊、そして大火災に見舞われるだろう・・・

だがその時、ギガンテスの後ろに一人の男が立った。コジローである。手には異様に長い長剣が握られている。

即座に振り下ろされる長剣

巨大な化け物は頭頂部から左右に真っ二つに斬り分けられて倒れていったのであった。



転移してきたコジローは、一瞬で状況を理解し、マロに場外から侵入してくる敵の掃討を指示、自分は即座にギガンテスの背後に転移し、次元剣による斬撃を浴びせたのである。

ギガンテスの身長は十七~十八メートルにもなるが、コジローは次元剣の刀身を二十メートルにも伸ばして斬り付けたのである。コジローも、これほど巨大な魔物を一気に両断するのは初めてであった。おそらく斬れるだろうとは思っていたが、予想通りの結果になって少しほっとした。

続け様、即座にコジローはサイクロプスの背後に転移し、同じように切り裂く。

加速を発動しているコジローは、さらに続けて街の内側に侵入したトロール達に攻撃を仕掛ける。コジローが疾風の速さでトロール達の間を駆け抜けた後、トロールたちは斬られた肉塊と化していた。

城門の外では、マロがトロール達を片付けていた。神速のマロに攻撃は当たらず、マロの角から連射されるサンダーブラストで、次々トロールは爆散していく。



一瞬で勝敗は決した、かに見えたが。

最初に真っ二つにしたはずのギガンテスはまだ死んでいなかった。両断されたはずの体は再びくっつき、再生していく。「大地の加護」と呼ばれる超強力な回復能力である。

だが、さすがに頭から真っ二つにされた事で、再生と状況認識に少しもたついているようであった。

この化け物の再生能力について不思議に思ったコジローは、即座に脳内百科辞典からフィードバックされた情報を確認した。

「大地の加護」は両足が地面に着いている時にしか発動しない、か。なるほど・・・

コジロは重力魔法を発動、ギガンテスに掛かっている重力を反転させる。コジローの重力魔法もさらに進歩していた。重力の方向を反転させることができるようになったのである。

重力が反転したことにより、ギガンテスは空に向かって落ちて行く。このまま放っておいたらどうなるのだろう?とコジローは不思議に思ったが、ある程度離れたところで魔法が切れたのか、再び地面に向かって落下し始めた。

再び、地面に叩きつけられるギガンテス。かなり痛そうである。うめき声を揚げるが、両足が地面についた途端、回復を始める。

「重力反転ではダメか・・・」

足を地面から浮かせてしまえばよいのであるが、実はまだコジローの重力魔法では、空中に物体を浮かせて静止させるという事ができないのであった。

「仕方がない、要は地面に接していなければよいのであろう?」

コジローは、ギガンテスを重力反転で一瞬浮かせると、足の下に亜空間操作で四角い箱状空間を作成する。

亜空間の中に足を突っ込んでしまおうかと思ったのだが、ふと、先日身につけた新しい能力をコジローは試してみた。

作成した亜空間を、入口を開かず閉じたままの状態で、通常空間から切り離して存在させる。そうすることで、通常空間からは絶対に侵入できない空間を作り出すことができるのである。

その上にギガンテスの両足が着地する。亜空間の上に乗ってしまったギガンテスは、大地から切り離されている状態となり、大地の加護が発動しない。

そして再びコジローによって真っ二つにされる。両足は亜空間の上に乗ったままのため、今度は再生しなかった。

よく考えたら、空間魔法で四苦八苦しなくても、足を切断してしまったほうが簡単だったかとコジローは後で気がついたのであったが・・・。



城壁の外部でも、マロによるトロール掃討は終了していた。

生き残った冒険者や騎士達から歓声があがる。

だが、すぐに、怪我人の手当と亡くなった仲間の遺体の処理しなければならない。皆、すぐに我に返り、沈痛な面持ちで作業に入った。



「あれが、噂の剣聖殿ですか・・・」

リエに近づいてきたネビルのギルドマスター、ヘデナが言った。

「ええ、到着を遅らせてでも、彼を呼んだ甲斐があったでしょう?」

とリエが言う。

二人はコジローに声を掛けた。

だが、ネビルのギルドマスターが過剰にコジローに感謝し「さすが剣聖様」を連呼するのでコジローは困惑してしまうのであった。

自分は剣聖などではないと言うが、全然聞いてくれないのである。

そもそも、実際にコジローの剣の腕は大したことはない。この世界に来てからコツコツ鍛錬は続けているので、素人よりは多少マシになったとは思うが、その実力はやはり剣術上級者には程遠いレベルだと言う自覚がある。

加速を使っているのでなんとかなっているが、コジローの剣の技量自体は、素の状態ではE~Dランク冒険者程度のものなのである。

結果を見れば凄い実力に見えるのかも知れないが、それはゼフトがくれた「次元剣」と鉄壁の防御である「マジックシールド」のお陰なのである。多分、同じ道具を使えば誰でも同じ結果が出せるだろう。そんな自分に剣聖などという噂が立っているのは、正直コジローにとってもマズイ事態なのではないかと思えるのであるが、噂はどんどん広がっていくのであった。。。

そもそも、自分は「戦士」や「剣士」ではなく、「見習い魔法使い」のはずなのだが・・・


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