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第四章 マドネリ村

第61話 転移ネットワーク計画1

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今回、レメキに恨みを持つ者が街を襲ったという事態を、クリス伯爵は大変重く受け止めていた。

レメキの過去の罪状については、できる限り調べ上げ、現在街に居る人間に関しては謝罪と賠償を行ったクリスであったが、まだまだ調べきれていない罪状がありそうだ。

特に、既に街を出てしまった者まではフォロー仕切れないものがある。

一応、そのような者達の情報についても再度調査するよう指示したが、限界があるだろう。

しかし、今後、そういった者が戻ってきて被害を訴えるという事が、またあるかも知れない。訴え出てくれるならまだ良い。レメキの身柄も確保してある、裏は取れるであろう。

だが、今回のように拙速に復讐などに走る人間が出る事もありうる。

あるいは、復讐までは考えていないにしても、出て行った先で、アルテミルの街について、良い噂を流してくれるとは考えにくい。風評被害は意外と大きな影響があるものである。



仮に、レメキが捕まって犯罪奴隷として労役をしているという噂を聞けば、戻ってくる者もいるかもしれない。そんな者が、奴隷として働いているレメキをみつけたら、襲い掛かってくるという可能性も考えられる。

クリスとしては、レメキについては、簡単に死刑にするよりも厳しい処罰をしたつもりなのであるが・・・恨みを抱いた者が直情的にやってしまうという可能性は否定できない。

レメキについては、特に、街の人目につく労役を行わせるよう指示してあるが、そのために、わざわざ護衛を付ける事も考える必要があるかもしれない。



いずれにしても、街を放置していた領主の不徳のいたすところである。
正直、領内にある街には、不正を働いている代官は思いのほか多いようなのである。

前領主が病気がちで目が届かなかったが故の事態であり、それをクリスは近年引き継いだだけなのだが、当主となった以上、親のせいだ言って責を逃れられるものでもない。

一刻も早く、各町の状況を把握し、是正すべきは是正していかなければならない。信頼できる者を選んで任せられれば良いのであるが、その結果がアルテミルの惨状なわけで。今のところはクリス自らが目を光らせておく必要があるのは致し方ない。

そのためにも、コジローの転移魔法が役に立つ。正直、コジローを専属秘書として使いたいくらいなのであるが・・・



コジローとしても、専属でずっとクリスに付き合わされ続けるのは、正直遠慮したいわけで。領主の屋敷を結ぶ転移魔法陣を設置する事を決心した。それがあれば、コジローの身が縛られずに済むし、クリスの人柄、クリスが領内を良くしようとしている事が理解できたので、信じても大丈夫であろうと判断したのである。

コジローはクリスに転移魔法陣が設置できることをカミングアウトした。隠していたわけではなく、自分の魔力の制御技術が上がった事が認められ、師匠から新たに伝授されたという事にした。

問題は料金である。

先日の契約では、転移魔法一回利用につき、10Gであった。
(※1G=1万円)
コジローとしては最初、高すぎる気がしていたのだが、転移魔法の価値を考えれば安すぎるという見方もあるようであった。たとえ地球であったとしても、要人が瞬時に都市間を移動できるとしたら、その移動費用を考えれば、妥当な線かも知れないとコジローは思い直した。

だが、転移魔法陣は、いつでも、何度でも繰り返し利用できるのである。タイムリミットを魔法陣に設定し、期限が迫る度に都度、契約更新をしていく事とした。

まずは一か月、お試し期間。

そして、利用料金としてコジローて提示したのは、期間内利用し放題で、一か月50G。

一回10Gだった事を考えれば、月に5回以上利用すれば元が取れる計算になる。クリスがアルテミル=サンテミル間を月に10回も移動するかどうか、コジローには分からなかったが。

さらに、利用者一人ごとに契約することとした。クリスとアレキシ、それに、クリスの娘のリヴロットとアナスタシアも利用するとしたら、月額200Gという事になる。

クリスは二つ返事でその条件を飲んだ。しかも、金額はその倍で良いと押し切られた。一人一ヶ月100G。とりあえず、クリスとアレキシの二人だけの利用登録で200Gとなった。

これまで、領内の移動は大勢の護衛を引き連れて十数時間掛けての移動が必要だったのである。領内の最も遠い都市間を移動しようとすれば、馬車で3~4日。護衛の旅費・給料まで考えれば、転移魔法陣の使用料はむしろ安すぎると言える。

コジロー側に不満があるようであれば、今後随時、賃上げ交渉は可、という条件をクリス側から提示した。ゼフトとの関係を良好に保っておく経費として、コジローにはそれなりに報酬を弾んでおく必要があるとクリスは考えたのである。

そして、コジローに、領内の他の都市へも転移魔法陣によるネットワークを構築してもらえるよう依頼した。もとよりコジローもそのつもりであったので、快く承諾したのだが、そうなると、コジローが領内の都市すべてに行く必要がある。その行脚に、クリス伯爵は娘のリブロットを同行させる事とした。

信頼できる者が居れば、各街の運営を任せられるのであるが、そういう人材はあまり多くないのが正直な現状である。その中で、クリスが一番頼りにしているのが、右腕として働いてくれているアレキシと、立派に成長したリヴロットなのであった。


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