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第三章 アルテミルの街とその領主
第53話 謎の魔道具
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数日後、コジローは領主の館に呼ばれた。大事な要件とのことだった。
執務室に案内されると、室内には領主のクリス伯の他にギルドマスターのリエの姿もあった。
リエ:「じゃぁ、やっぱりそれが?」
クリス:「ああ、間違いないそうだ。最近、襲われた商人の馬車からも発見されたと報告があった。」
コジロー:「?」
机の上に、オブジェのようなものが置いてある。
仏頂面のクリス。
リエ:「実はね、先日、馬車が街の近くで魔物に襲われてね、町に逃げ込んだんだけど・・・」
リエがコジローに説明してくれた。
馬車は病人を運んでおり、なんとか街まで逃げ込むことができたので、警備兵と近くにいた冒険者で魔物を撃退することができたのだが・・・
その馬車に乗っていた病人が持っていたのがこの魔道具だったという。
その病人は、ワマという若い冒険者であった。
医者に見せたが、体は特に何も異常はないとの事だった。しかし、心神喪失状態で、何日経っても回復する気配がない。心配した仲間が、ワマが握りしめていたその妙な道具について調べてもらえないかと、ギルドに持ち込んできたのだそうだ。
それを、リエは領主のところに持ち込み、お抱えの錬金術師に解析してもらったのであった。
結果は・・・
「ある種の魔物を呼び寄せる効果があるようだ」
との報告であった。
ある種のというのは、普通の魔物は反応しなかったためである。しかし、たまたま、最近やたらと街道で人を襲っている魔獣の一体を生け捕りにする事に成功しており、その魔獣に試してみたところ反応したらしい。
どうやら、反応する魔物は、有る種の催眠状態になっており、この魔道具のある場所に向かってひたすら襲いかかっていく事が確認されたそうだ。
そこに、アレキシが執務室に入ってきた。手には、机の上に置いてあるのと同じ魔道具を持っている。
アレキシ:「発見されました・・・馬車の下部に括り付けてあったそうです。」
クリス:「やはりか・・・」
どうやら、クリスの乗っていた馬車にも、この魔道具が取り付けられていたらしい。先日、大量のリザードマンに領主の馬車が襲われたのは、そのせいだったわけである。
クリス:「誰かが意図的に、アルテミルの街を攻撃している、という事になるか・・・?一体誰が?」
リエ:「それが・・・どうもワマは、死霊の森に入ったらしいのよ・・・。」
コジロー:「!」
クリスはため息をついた。
「あの森は立入禁止にしていたはずだがな。」
「あの森の高ランクの魔物を狙って、時々、無茶をする冒険者が居るのよ・・・若い者は無鉄砲なもの、あなただって経験があるでしょう?」
リエはクリスに流し目を送る。何か弱みでもあるのか、クリスは目を反らした。
ワマの仲間を問い詰めて聞き出したところにによると、どうやらワマは仲間が止めるのも聞かず、やんちゃな友人を何人か連れて死霊の森に向かったらしい。しかし、何日も帰ってこないので、心配した仲間が様子を見にいったところ、森の中で倒れていたワマを発見し、連れ帰ったとの事だった。その時、手にこの魔道具を握りしめていたらしい。
クリス:「この魔道具を作った者は、死霊の森に居る、と?」
リエ:「そうと決まったわけでもないでしょうけど・・・調べないわけにはいかないわよね。」
クリス:「死霊の森は立入禁止だ。たとえ調査でも・・・簡単に許可はできないのだが・・・。」
リエ:「でも、コジローなら、死霊の森に入る事は問題ないでしょう?」
リエはコジローに向き直り、言った。
「死霊の森の魔術師、つまり、コジローの師匠が犯人だと言う噂が冒険者の間に出始めているわ。」
馬鹿な・・・とコジローは言ったが、クリスも
「私も死霊の森の魔術師が犯人だとは思えないがな。死霊の森とこの街との関係は、良好であるかどうかは別として、長い歴史がある。今更そんな事をするメリットがない。」
と言った。
だが、たしかに、調査しないわけにもいかない。
とりあえず、師匠に訊いてみれば何か分かるかもしれない。
実はコジローは、オーブのペンダントを使えば、すぐこの場でゼフトと連絡がとれるのだが、連絡手段があるということも秘密にしておいたほうが良いだろうと思い、黙っていることにした。
とりあえず、死霊の森に行って話を聞いてくると言ってコジローは席を立とうしたが、その時、大慌てでアレキシの部下が走りこんできた。
「スタンピードです!!」
執務室に案内されると、室内には領主のクリス伯の他にギルドマスターのリエの姿もあった。
リエ:「じゃぁ、やっぱりそれが?」
クリス:「ああ、間違いないそうだ。最近、襲われた商人の馬車からも発見されたと報告があった。」
コジロー:「?」
机の上に、オブジェのようなものが置いてある。
仏頂面のクリス。
リエ:「実はね、先日、馬車が街の近くで魔物に襲われてね、町に逃げ込んだんだけど・・・」
リエがコジローに説明してくれた。
馬車は病人を運んでおり、なんとか街まで逃げ込むことができたので、警備兵と近くにいた冒険者で魔物を撃退することができたのだが・・・
その馬車に乗っていた病人が持っていたのがこの魔道具だったという。
その病人は、ワマという若い冒険者であった。
医者に見せたが、体は特に何も異常はないとの事だった。しかし、心神喪失状態で、何日経っても回復する気配がない。心配した仲間が、ワマが握りしめていたその妙な道具について調べてもらえないかと、ギルドに持ち込んできたのだそうだ。
それを、リエは領主のところに持ち込み、お抱えの錬金術師に解析してもらったのであった。
結果は・・・
「ある種の魔物を呼び寄せる効果があるようだ」
との報告であった。
ある種のというのは、普通の魔物は反応しなかったためである。しかし、たまたま、最近やたらと街道で人を襲っている魔獣の一体を生け捕りにする事に成功しており、その魔獣に試してみたところ反応したらしい。
どうやら、反応する魔物は、有る種の催眠状態になっており、この魔道具のある場所に向かってひたすら襲いかかっていく事が確認されたそうだ。
そこに、アレキシが執務室に入ってきた。手には、机の上に置いてあるのと同じ魔道具を持っている。
アレキシ:「発見されました・・・馬車の下部に括り付けてあったそうです。」
クリス:「やはりか・・・」
どうやら、クリスの乗っていた馬車にも、この魔道具が取り付けられていたらしい。先日、大量のリザードマンに領主の馬車が襲われたのは、そのせいだったわけである。
クリス:「誰かが意図的に、アルテミルの街を攻撃している、という事になるか・・・?一体誰が?」
リエ:「それが・・・どうもワマは、死霊の森に入ったらしいのよ・・・。」
コジロー:「!」
クリスはため息をついた。
「あの森は立入禁止にしていたはずだがな。」
「あの森の高ランクの魔物を狙って、時々、無茶をする冒険者が居るのよ・・・若い者は無鉄砲なもの、あなただって経験があるでしょう?」
リエはクリスに流し目を送る。何か弱みでもあるのか、クリスは目を反らした。
ワマの仲間を問い詰めて聞き出したところにによると、どうやらワマは仲間が止めるのも聞かず、やんちゃな友人を何人か連れて死霊の森に向かったらしい。しかし、何日も帰ってこないので、心配した仲間が様子を見にいったところ、森の中で倒れていたワマを発見し、連れ帰ったとの事だった。その時、手にこの魔道具を握りしめていたらしい。
クリス:「この魔道具を作った者は、死霊の森に居る、と?」
リエ:「そうと決まったわけでもないでしょうけど・・・調べないわけにはいかないわよね。」
クリス:「死霊の森は立入禁止だ。たとえ調査でも・・・簡単に許可はできないのだが・・・。」
リエ:「でも、コジローなら、死霊の森に入る事は問題ないでしょう?」
リエはコジローに向き直り、言った。
「死霊の森の魔術師、つまり、コジローの師匠が犯人だと言う噂が冒険者の間に出始めているわ。」
馬鹿な・・・とコジローは言ったが、クリスも
「私も死霊の森の魔術師が犯人だとは思えないがな。死霊の森とこの街との関係は、良好であるかどうかは別として、長い歴史がある。今更そんな事をするメリットがない。」
と言った。
だが、たしかに、調査しないわけにもいかない。
とりあえず、師匠に訊いてみれば何か分かるかもしれない。
実はコジローは、オーブのペンダントを使えば、すぐこの場でゼフトと連絡がとれるのだが、連絡手段があるということも秘密にしておいたほうが良いだろうと思い、黙っていることにした。
とりあえず、死霊の森に行って話を聞いてくると言ってコジローは席を立とうしたが、その時、大慌てでアレキシの部下が走りこんできた。
「スタンピードです!!」
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