45 / 115
第三章 アルテミルの街とその領主
第45話 領主の招待1
しおりを挟む
「それで、礼を言うために彼を呼びに行かせたのに、牢に入れたというのか・・・?!」
街道でリザードマンに襲われた時に助けてくれた青年コジローに、とりあえずは娘から礼を伝えてくれるようにクリスは頼んでいたのだが、いまだに礼を伝えられていないと聞き、クリス伯はさっそくコジローを連れてくるよう指示を出そうとしたのだが、リヴが慌ててそれを止め、レメキがコジローを呼びつけた時の顛末を伝えたのだった。
クリスは頭を抱えてしまった。そんな事が日常茶飯事に行われていたのだとしたら・・・
つくづく、レメキは代官として、どれだけウィルモア家の名前を汚してくれたのか・・・汚名返上には相当な時間がかかるかも知れない。。。
「それでは、また呼びつける、というわけにはいかんか・・・」
とはいえ、慣例上、伯爵ほどの爵位の貴族がわざわざ礼を言いに行くわけにも行かない。クリスは貴族が平民より偉いなどと思い上がっているタイプではないが、それでも、この世界の貴族や王族の慣習というのは厳しいのである。
代わりにリヴロットとアナスタシアの姉妹が直接出向くと言いだした。
だが、それはそれで、許容できないものがクリスにはあった。
前代官の被害者に伯爵が直接謝罪に出向いたのは、例外中の例外である。それだけ伯爵が誠意を見せたからこそ、領民にとりあえず許してもらえたのである。
しかし、妙齢の貴族の令嬢が、男性を自ら迎えに行くとなると、世間には違った意味を持ってしまう。
そこで、妥協案として、クリスの右腕の領政官であるアレキシに行ってもらうという事になった。
しかしその前に、クリスはコジローがどのような人物なのか、アレキシに調べるように命じた。
そして、報告を聞いて、また頭を抱えてしまった。
よりによって、あの、死霊の森の魔術士の弟子とは・・・
実は、ウィルモア伯爵家にとって、死霊の森の魔術士は禁忌であった。
その森は立入禁止、魔術士には触れてはならない、関わってはならない。
森と魔術士は人間の法の外にあるものである。
何代前からか分からないが、絶対のルールが伝えられているのだ。
クリスの祖父がまだ若い頃、そんな言い伝えは迷信・悪しき慣習だとして、死霊の森に手を出そうとした事があると聞いた。じゃまな魔術師など排除し、開拓しようとしたのだ。
ところがその後、祖父は恐ろしい目に遭い────何があったのかは分からないが────計画を断念。死霊の森は立入禁止、決して近づいてはならないと、これまで以上に強く子孫に伝えられるようになったのだった。
そもそも、何代も前からの言い伝えであるとしたら、森に魔術士が本当に存在したとしても、とうに寿命で死んでいるはずである。だが弟子が居て、街に出てきたとなると、魔術士は実在することになる。
もちろん、魔術師が人間ではなくエルフなどの長命な種族であるという可能性もあるが・・・。
魔術士が実はアンデッドであるという噂もあるが、さすがにそれは迷信であろうとクリスは思っていた。
もしかしたら、魔術士は何代か、代替わりしながら引き継がれているのではなかろうか?
だとすると、次の代の魔術士になるべく、弟子がいたとしても不思議ではない。
絶対に触れてはならないと言われているが、向こうから出てきた弟子については接触しても構わないのか?
しかし、禁忌についてはかなり厳しく言われてきている。下手に関わって怒らせてしまったら危険かも知れない・・・どうしたものか。
そもそも、本当にその男は死霊の森の魔術士の弟子なのか?
嘘をついている可能性もあるかも知れない。
とはいえ、助けてもらったのは事実である、礼儀として、礼と謝罪はするべきだろう。
とりあえず、アレキシに、くれぐれも丁重に彼を招待するようにと指示を出した。
そんな訳で、コジローの元に、領主の使いとしてアレキシが訪ねてきたのであった。
コジローが宿に戻ると、昼間、領政官と名乗る男がコジローを訪ねてきて、伝言を残していったと宿の女将に言われた。要件は、コジローを領主の館に招待したいとの事だそうだ。
またか?と一瞬コジローは思った。
領主の館に連れて行かれいきなり牢に入れられたのは記憶に新しい。
また面倒に巻き込まれるのか?さっさと無視して逃げてしまおうか・・・
街道でリザードマンに襲われた時に助けてくれた青年コジローに、とりあえずは娘から礼を伝えてくれるようにクリスは頼んでいたのだが、いまだに礼を伝えられていないと聞き、クリス伯はさっそくコジローを連れてくるよう指示を出そうとしたのだが、リヴが慌ててそれを止め、レメキがコジローを呼びつけた時の顛末を伝えたのだった。
クリスは頭を抱えてしまった。そんな事が日常茶飯事に行われていたのだとしたら・・・
つくづく、レメキは代官として、どれだけウィルモア家の名前を汚してくれたのか・・・汚名返上には相当な時間がかかるかも知れない。。。
「それでは、また呼びつける、というわけにはいかんか・・・」
とはいえ、慣例上、伯爵ほどの爵位の貴族がわざわざ礼を言いに行くわけにも行かない。クリスは貴族が平民より偉いなどと思い上がっているタイプではないが、それでも、この世界の貴族や王族の慣習というのは厳しいのである。
代わりにリヴロットとアナスタシアの姉妹が直接出向くと言いだした。
だが、それはそれで、許容できないものがクリスにはあった。
前代官の被害者に伯爵が直接謝罪に出向いたのは、例外中の例外である。それだけ伯爵が誠意を見せたからこそ、領民にとりあえず許してもらえたのである。
しかし、妙齢の貴族の令嬢が、男性を自ら迎えに行くとなると、世間には違った意味を持ってしまう。
そこで、妥協案として、クリスの右腕の領政官であるアレキシに行ってもらうという事になった。
しかしその前に、クリスはコジローがどのような人物なのか、アレキシに調べるように命じた。
そして、報告を聞いて、また頭を抱えてしまった。
よりによって、あの、死霊の森の魔術士の弟子とは・・・
実は、ウィルモア伯爵家にとって、死霊の森の魔術士は禁忌であった。
その森は立入禁止、魔術士には触れてはならない、関わってはならない。
森と魔術士は人間の法の外にあるものである。
何代前からか分からないが、絶対のルールが伝えられているのだ。
クリスの祖父がまだ若い頃、そんな言い伝えは迷信・悪しき慣習だとして、死霊の森に手を出そうとした事があると聞いた。じゃまな魔術師など排除し、開拓しようとしたのだ。
ところがその後、祖父は恐ろしい目に遭い────何があったのかは分からないが────計画を断念。死霊の森は立入禁止、決して近づいてはならないと、これまで以上に強く子孫に伝えられるようになったのだった。
そもそも、何代も前からの言い伝えであるとしたら、森に魔術士が本当に存在したとしても、とうに寿命で死んでいるはずである。だが弟子が居て、街に出てきたとなると、魔術士は実在することになる。
もちろん、魔術師が人間ではなくエルフなどの長命な種族であるという可能性もあるが・・・。
魔術士が実はアンデッドであるという噂もあるが、さすがにそれは迷信であろうとクリスは思っていた。
もしかしたら、魔術士は何代か、代替わりしながら引き継がれているのではなかろうか?
だとすると、次の代の魔術士になるべく、弟子がいたとしても不思議ではない。
絶対に触れてはならないと言われているが、向こうから出てきた弟子については接触しても構わないのか?
しかし、禁忌についてはかなり厳しく言われてきている。下手に関わって怒らせてしまったら危険かも知れない・・・どうしたものか。
そもそも、本当にその男は死霊の森の魔術士の弟子なのか?
嘘をついている可能性もあるかも知れない。
とはいえ、助けてもらったのは事実である、礼儀として、礼と謝罪はするべきだろう。
とりあえず、アレキシに、くれぐれも丁重に彼を招待するようにと指示を出した。
そんな訳で、コジローの元に、領主の使いとしてアレキシが訪ねてきたのであった。
コジローが宿に戻ると、昼間、領政官と名乗る男がコジローを訪ねてきて、伝言を残していったと宿の女将に言われた。要件は、コジローを領主の館に招待したいとの事だそうだ。
またか?と一瞬コジローは思った。
領主の館に連れて行かれいきなり牢に入れられたのは記憶に新しい。
また面倒に巻き込まれるのか?さっさと無視して逃げてしまおうか・・・
0
お気に入りに追加
239
あなたにおすすめの小説
前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~
櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。
道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。
名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。
こういうのでいいんだよおじさん、伝説になる ~元パーティーメンバーが俺を殺しに来るんだけど、実はこれ求婚だったってマ?~
祝井愛出汰
ファンタジー
元冒険者ケント・リバーは森の奥で「こういうのでいいんだよ」と思えるような小さな幸せを見つけながら一人穏やかに暮らしていた。
そんな彼の前に、かつて危険に巻き込んでしまった女冒険者 セオリア・スパークが現れ依頼を告げる。
依頼の内容は「冒険者の復興」と「魔物大量暴走(スタンピート)」の調査。
街に戻ったケントは依頼に取り組むかたわら、小さな「こういうのでいいんだよ」を見つけていく。
街の人々はそんなケントの姿を見て「粋を極めた賢者様に違いない」と噂しはじめた。
おまけにケントを恨んでるはずの元パーティーメンバー三人までグイグイくる始末。
小市民的な価値観と卓越した剣の腕を持つケントと、彼を慕う三人の元パーティーメンバーによる「こういうのでいい」バトル&ほっこりな物語。
転生メスガキ、苦手な食べ物を克服させるだけで勇者を最強に育てる!
椎名 富比路
ファンタジー
魔法使いに転生した主人公(メスガキ)は、勇者と共に魔王討伐へ向かう。
だが、勇者は極度の偏食家だった。
御礼の品にさえ口をつけられない。
それも、富を独占するため勇者にぜいたくを悪だと教えた教会のせい。
そんな勇者を不憫に思った女神は、主人公に「勇者を強化する」魔法を授けた。
その名も【合成レシピ】
勇者のスキキライを克服させて、勇者に魔力付与・身体強化を施す。
ついでに「請求は教会に強制」という最強スキルだ!
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
「私のために死ねるなら幸せよね!」と勇者姫の捨て駒にされたボクはお前の奴隷じゃねえんだよ!と変身スキルで反逆します。土下座されても、もう遅い
こはるんるん
ファンタジー
●短いあらすじ。
勇者のイルティア王女の身代わりにされ、魔王軍の中に置き去りにされたルカは、神にも匹敵する不死身の力にめざめる。
20万の魔王軍を撃破し、国を救ったルカは人々から真の英雄とたたえられる。
一方でイルティアは魔王の手先と蔑まれ、名声が地に落ちた。
イルティアは、ルカに戦いを挑むが破れ、
自分を奴隷にして欲しいと土下座して許しをこう。
ルカは国王を破って、世界最強国家の陰の支配者となる。さらにはエルフの女王にめちゃくちゃに溺愛され、5億人の美少女から神と崇められてしまう。
●長いあらすじ
15歳になると誰もが女神様からスキルをもらえる世界。
【変身】スキルをもらったボクは、勇者であるイルティア王女に捨て駒にされた。
20万の魔王軍に包囲された姫様は、ボクを自分に変身させ、身代わりにして逃げてしまったのだ。
しかも姫様は魔王の財宝を手に入れるために、魔族との戦争を起こしたと得意げに語った。
魔法が使えないため無能扱いされたボクだったが、魔王軍の四天王の一人、暗黒騎士団長に剣で勝ってしまう。
どうもボクの師匠は、剣聖と呼ばれるスゴイ人だったらしい。
さらに500人の美少女騎士団から絶対の忠誠を誓われ、幻獣ユニコーンから聖なる乙女として乗り手にも選ばれる。
魔王軍を撃破してしまったボクは、女神様から究極の聖剣をもらい真の英雄として、人々から賞賛される。
一方で勇者イルティアは魔王の手先と蔑まれ、名声が地に落ちた。
これは無能と蔑まれ、勇者の捨て駒にされた少年が、真の力を開放し史上最強の英雄(♀)として成り上がる復讐と無双の物語。
勇者姫イルティアへのざまぁは16話からです。
イルティアを剣で打ち負かし、屈服させて主人公の奴隷にします。
彼女は主人公に土下座して許しをこいます。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~
大豆茶
ファンタジー
『魔族』と『人間族』の国で二分された世界。
魔族を統べる王である魔王直属の配下である『魔王軍四天王』の一人である主人公アースは、ある事情から配下を持たずに活動しいていた。
しかし、そんなアースを疎ましく思った他の四天王から、魔王の死を切っ掛けに罪を被せられ殺されかけてしまう。
満身創痍のアースを救ったのは、人間族である辺境の地の貧乏貴族令嬢エレミア・リーフェルニアだった。
魔族領に戻っても命を狙われるだけ。
そう判断したアースは、身分を隠しリーフェルニア家で使用人として働くことに。
日々を過ごす中、アースの活躍と共にリーフェルニア領は目まぐるしい発展を遂げていくこととなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる