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第三章 アルテミルの街とその領主
第40話 クーデター勃発、付き合わされるコジロー1
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不正について問い詰められ、下手な言い訳を繰り返すレメキだったが、アレキシが、発見した不正の証拠を提示した事で万事休す・・・アレキシはレメキを拘束するよう部下に指示した。
しかしそこに報告が入った。
「武装した街の住民がこちらに向かってきています!」
「警備兵はどうした?!」
「止める者はおりません、それどころか、住民と一緒にこちらに向かってきている者も居ます。」
事態はそこまで進行してしまっていたか・・・
「遅かった」
リヴロットは頭を抱えた。
しかし、このまま屋敷を襲撃させるわけにも行かない。
リヴロットが先頭に立って対応するしかない。リヴロットは領主の娘であり、今は領主代理の権限を持って、この街に来ているのだ。
街の守備隊である警備兵もクーデターは黙認で止める者は居ない。領主の館の騎士も、昔から街に居た者たちは同様に黙認で、姿を消していた。
屋敷に残っているのは代官の連れてきた子飼いの騎士数名だけであり、その者達も既にアレキシの部下達によって拘束されていた。
そのため、領主の館はレジスタンスに取り囲まれたが、特に武力衝突が起きる事はなかった。
レジスタンスのリーダーは、まずは連れ去った娘たちの開放を要求した。
ちょうど、離れで軟禁されていた娘たちをアレキシの部下が発見し、開放したところだった。
娘たちと再開し喜ぶ住民達。
だが、それだけで済ませられない。レジスタンスは次に、これまで搾取した税金の返還と、代官のレメキの引き渡しを要求した。
リヴロットも、住民達の怒りはもっともだと思う。税金は返すべきだろう。
しかし、だからと言って、レメキを住民のリンチに掛ける事を容認するわけにはいかない。それを許すことは、住民たちを犯罪者にしてしまう事である。
リヴロットは、捕縛済みのレメキを住民たちの前に引き出して見せた上で、代官の無法を許してしまった事を謝罪し、悪事を行った者は適正に処罰を受けさせる、また間違った為政はすべて正すから許してほしいと訴えた。
集まった者の中には、悪代官が居なくなり元のような生活が戻るならそれで良いという者も多く、引き下がり始める者も居たのだが・・・
当然、それでは納得できない者もいた。
「部下の責任にしてクビを切って終わりか!?」
「トカゲの尻尾切りじゃないのか?」
「処罰と言ったって解任とか謹慎とかで済ますだけだろ!」
「俺の恋人は死んだんだぞ!そんなので許せるか!」
「死んだ娘を返せ!」
確かに、貴族はどんな悪い事をしても、政治的理由などで軽い処罰で済んでしまうというのは、よく聞く話である。そうはしないと言っても信じてもらうのは難しいだろう。
きちんと調べて悪事を働いた者は厳罰に処す。被害を受けた者には賠償もするとリヴロットは再度訴えたが、家族を殺された悲しみはそんな事では癒えるはずもない。
住民たちの気持ちも理解できる。リヴロットも、本当はレメキを嬲り殺しにしてやりたいくらいである。だが、法を無視した私刑を許すのは、レメキがやっていた事と変わらなくなってしまう。
そのとき、住民側の人間が一部、敷地内へ踏み込もうとし、それを見たリヴロットはやむを得ず剣を抜いた。
この屋敷はリヴロットが生まれ育った家でもあるのだ。家の中にはアナスタシアも居る。暴徒に荒らされるのは忍びなかった。
リヴロットの連れてきた護衛の騎士達も剣を抜く。
緊張が走る。
クーデターに参加していた住民を庇い、冒険者や警備兵達が前に出る。
うっかりレジスタンスに匿ってもらってしまったために、成り行きで参加することになってしまったコジローであったが、一応アルテミルの冒険者である。仕方なく一緒に前に出る事になってしまった。とは言え、この街に来たばかりで積極的に参加する強い動機はないので、なるべく後ろの方に居るようにしようと思っていたが。
対峙するリヴロットと冒険者達、そこに、ギルドマスターのリエが割って入った。
リヴロットは、血なまぐさい暴力沙汰は避けたかった。
リエも、冒険者達も、多くの住民も、それは同じだった。
しかし、家族を殺された者達も、後に引けなくなっていた。
少し頭を冷やす必要がある・・・
そこで、リエは、冒険者達とリヴロットで、レメキの身柄を賭けて模擬戦での勝負を提案したのだった。
もしリブロットが勝ったら、レメキは領主に任せ法に則って裁く。
もし住民側が勝ったら、レメキを引き渡す。
領主側は一人、リブロットだけ。住民側代表は何人出ても良い。
ただし、殺したり、重症を負わせるのは禁止。
リエの説得に、住民側も条件を飲んだ。
もともと一般住民はそれほど戦闘は得意ではない。いざとなれば、参加している冒険者を頼りにするしかない。
それに、条件的に、冒険者達が有利な条件に見える。
冒険者にも腕が立つ者は多い。華奢な体の領主令嬢に負けるはずがない。
しかし。
しかしそこに報告が入った。
「武装した街の住民がこちらに向かってきています!」
「警備兵はどうした?!」
「止める者はおりません、それどころか、住民と一緒にこちらに向かってきている者も居ます。」
事態はそこまで進行してしまっていたか・・・
「遅かった」
リヴロットは頭を抱えた。
しかし、このまま屋敷を襲撃させるわけにも行かない。
リヴロットが先頭に立って対応するしかない。リヴロットは領主の娘であり、今は領主代理の権限を持って、この街に来ているのだ。
街の守備隊である警備兵もクーデターは黙認で止める者は居ない。領主の館の騎士も、昔から街に居た者たちは同様に黙認で、姿を消していた。
屋敷に残っているのは代官の連れてきた子飼いの騎士数名だけであり、その者達も既にアレキシの部下達によって拘束されていた。
そのため、領主の館はレジスタンスに取り囲まれたが、特に武力衝突が起きる事はなかった。
レジスタンスのリーダーは、まずは連れ去った娘たちの開放を要求した。
ちょうど、離れで軟禁されていた娘たちをアレキシの部下が発見し、開放したところだった。
娘たちと再開し喜ぶ住民達。
だが、それだけで済ませられない。レジスタンスは次に、これまで搾取した税金の返還と、代官のレメキの引き渡しを要求した。
リヴロットも、住民達の怒りはもっともだと思う。税金は返すべきだろう。
しかし、だからと言って、レメキを住民のリンチに掛ける事を容認するわけにはいかない。それを許すことは、住民たちを犯罪者にしてしまう事である。
リヴロットは、捕縛済みのレメキを住民たちの前に引き出して見せた上で、代官の無法を許してしまった事を謝罪し、悪事を行った者は適正に処罰を受けさせる、また間違った為政はすべて正すから許してほしいと訴えた。
集まった者の中には、悪代官が居なくなり元のような生活が戻るならそれで良いという者も多く、引き下がり始める者も居たのだが・・・
当然、それでは納得できない者もいた。
「部下の責任にしてクビを切って終わりか!?」
「トカゲの尻尾切りじゃないのか?」
「処罰と言ったって解任とか謹慎とかで済ますだけだろ!」
「俺の恋人は死んだんだぞ!そんなので許せるか!」
「死んだ娘を返せ!」
確かに、貴族はどんな悪い事をしても、政治的理由などで軽い処罰で済んでしまうというのは、よく聞く話である。そうはしないと言っても信じてもらうのは難しいだろう。
きちんと調べて悪事を働いた者は厳罰に処す。被害を受けた者には賠償もするとリヴロットは再度訴えたが、家族を殺された悲しみはそんな事では癒えるはずもない。
住民たちの気持ちも理解できる。リヴロットも、本当はレメキを嬲り殺しにしてやりたいくらいである。だが、法を無視した私刑を許すのは、レメキがやっていた事と変わらなくなってしまう。
そのとき、住民側の人間が一部、敷地内へ踏み込もうとし、それを見たリヴロットはやむを得ず剣を抜いた。
この屋敷はリヴロットが生まれ育った家でもあるのだ。家の中にはアナスタシアも居る。暴徒に荒らされるのは忍びなかった。
リヴロットの連れてきた護衛の騎士達も剣を抜く。
緊張が走る。
クーデターに参加していた住民を庇い、冒険者や警備兵達が前に出る。
うっかりレジスタンスに匿ってもらってしまったために、成り行きで参加することになってしまったコジローであったが、一応アルテミルの冒険者である。仕方なく一緒に前に出る事になってしまった。とは言え、この街に来たばかりで積極的に参加する強い動機はないので、なるべく後ろの方に居るようにしようと思っていたが。
対峙するリヴロットと冒険者達、そこに、ギルドマスターのリエが割って入った。
リヴロットは、血なまぐさい暴力沙汰は避けたかった。
リエも、冒険者達も、多くの住民も、それは同じだった。
しかし、家族を殺された者達も、後に引けなくなっていた。
少し頭を冷やす必要がある・・・
そこで、リエは、冒険者達とリヴロットで、レメキの身柄を賭けて模擬戦での勝負を提案したのだった。
もしリブロットが勝ったら、レメキは領主に任せ法に則って裁く。
もし住民側が勝ったら、レメキを引き渡す。
領主側は一人、リブロットだけ。住民側代表は何人出ても良い。
ただし、殺したり、重症を負わせるのは禁止。
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もともと一般住民はそれほど戦闘は得意ではない。いざとなれば、参加している冒険者を頼りにするしかない。
それに、条件的に、冒険者達が有利な条件に見える。
冒険者にも腕が立つ者は多い。華奢な体の領主令嬢に負けるはずがない。
しかし。
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