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第二章 街へ

第26話 療養中にレベルアップ!

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マドリーの家の裏庭に魔法陣が浮かぶ。

そこに倒れたままのコジローとマロが現れた。

「コジロー・・・?どうした?!あ、ゼフト様?!」

コジローに気付いたマドリーが声を上げると同時に、ゼフトも姿を表していた。

ゼフトは既にオーブのペンダントでコジローから話を聞いており、駆けつけてきたのである。

『ウム、大丈夫じゃ、この程度は簡単に治せる。』

コジローの体が光りに包まれ、やがてコジローは立ち上がった。



『矢に毒が塗ってあったようじゃが、それもすべて取り除いておいたからもう大丈夫じゃろう。』

ドジルが使ったのは毒消しが開発されていない種類の毒であった。

一度体内に入ったその毒は自然には除去する事ができないものであった。治療法も解毒剤もなく、自然治癒も望めない。数日間、のた打ち回って苦しみながら死ぬという、非常に悪質な毒物であった。

しかし、ゼフトは毒そのものを空間魔法を使ってコジローの体内から外に出してしまったのだった。細胞レベルまで入り込んだ微細な毒の粒子を、ひとつひとつ捉えて全て取り出していく大変な作業であるが、ゼフトにとっては造作も無いことであった。



『なるほど、恨みを買って、矢を受けたか・・・。しかし、その程度は察知して避けられないと、この世界では生き延びれんぞ?』

日本の侍は、背後からの殺気に反応して振り返る事ができた。できなかった者は戦国時代では生き残れなかった。そんな話はコジローの愛読マンガ「コジローが行く」にも書いてあったのを覚えている。

しかし、コジローは平和な時代に生きていた、平凡な人間に過ぎないのだ。

そもそも、凡人だからという理由で選ばれたはず。戦国時代の達人の超感覚を持ち合わせているはずがない。

コジローがそう訴えると、ゼフトは、それもそうかと、何か対策を考えてくれる事になった。

ちなみに、師匠は背後から撃たれても対処できるのか?尋ねてみたところ・・・

『そりゃもう!なにせワシは常時、探知・索敵魔法と防御魔法を展開しておるからの・・・』

防御魔法・・・

『────コジローにはできんか。上達すれば、時空系魔法で対応できるようになるじゃろうがの。それまでは、そうじゃな・・・アレが使えるか。よし、魔道具を造ってやろう!数日かかるが、それまで休んで待っているが良い。』

と言って消えていった。

師匠が何か作ってくれるようだ。



魔道具ができるまで、コジローはマドリー&ネリーの家に泊めてもらうことになった。

街でのあれこれを話すコジロー。

ドジルの話では、ギルドマスターに文句を言ってやるとマドリーとネリーは憤慨してくれたが、ギルドマスターも困っているのだ。

それから数日、コジローはマドリー&ネリーの家に滞在し、畑仕事を手伝ったり、魔法と剣の練習をしたりして過ごした。

その間にレベルアップして、加速 は8倍速に、転移 は魔法陣転移を使えるようになった。時空系魔法に関しては相変わらず上達が速いのであった。



「魔法陣転移」は、地面などに刻んだ魔法陣を使って、他者が転移を利用できるというもの。長距離転送時には足元に魔法陣が浮かぶが、それをその場に固定して残す事が可能になった、という感じである。

転移先の出口となる場所にも対となる魔法陣を設置する必要があるが、その魔法陣に魔力を込めると、転移先として刻んだ魔法陣の場所まで転移できる。

ただし、効果は一度のみ、一度使うと魔法陣は消えてしまうという制約があった。



とは言え、それでも、ゼフトの転移魔法は今のこの世界の常識ではありえないほどの高性能なのであるが・・・

ゼフトが人間だった頃、それは、失われた古代魔法文明の時代であり、その頃は転移を使って盛んに交易が行われていた。ゼフトはその次代の古代魔法言語を受け継ぎ、さらに研究・改良を続けてきたのである。その魔法は、今の世界の魔法使いのスケールをはるかに凌駕しているのである。。。



☆今の時代でも、王城などには都市間を移動できる転移装置が設置されている。

しかしそれは、たくさんの優秀な魔法使いが数ヶ月がかりでやっと設置できるものであり、使用に際しても、魔法使い200~300人が数週間魔力を注ぎ続け魔力を貯める必要がある代物である。

一時的にせよ、それだけの魔力を貯めるために、国家予算級の巨大な蓄積用の魔宝石が必要となる。

また、転移は、遠距離になるほど必要な魔力は多大になるし、発動させるまでに呪文詠唱も非常に長い。つまり、事実上、王族専用であり、緊急用であって、王族であっても気軽に使えるものではないのである。

そもそも、転移魔法の才能のある魔法使いは少なく、そのような魔法使いは高給で王宮や貴族に囲い込まれている。

もし、コジローが転移魔法を使えると知れ渡れば、スカウトが殺到するだろう。ましてやそれが、一人で一瞬で発動できるほど効率が高いものであると知れれば・・・

転移魔法は、もし簡単に使えるようになれば、交通事情の飛躍的改善になり、経済を破壊してしまう可能性がある。また、泥棒や暗殺も容易にできてしまうし、例えば戦争などで軍隊を好きなところに出現させるという使い方もできるのである。

もしそのような事を、一人の魔法使いだけで実行可能という事になれば、その魔法使いは危険過ぎる存在となる。捕らえてて閉じ込めておこうにも、転移を使う者を囚えておく事などできはしない。

もしそんな力をもった魔法使いが居たとしたら、最終的には暗殺者を差し向けられる可能性は高いだろう。今の時代にはそんな魔法使いは存在しない(事になっている)ので、問題になっていないが。

現実には、ゼフトという、自由自裁に転移魔法を使いこなせる魔法使いが存在しているのであるが・・・実は過去に、ゼフトのあまりに強大な力を知り、恐怖したとある国が、囲い込めないなら殺してしまおうとしたのだが失敗し、逆に滅ぼされたという話があるとか、ないとか・・・。

ゼフトの存在が、ある意味アンタッチャブルな存在となっているのは、色々と経緯があるようである。

ゼフトだけではない、他にも何人か、強大な力を持った大魔法使いが居ないわけではないのだが、ゼフトを含め、そのような大魔法使いは皆隠遁生活をしており、社会と関わりを積極的に持とうとはしないので、問題は起きていないのであった。



数日後、ゼフトが完成した魔道具を持ってやってきた。


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