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第二章 街へ

第23話 森2

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コジローはとりあえず、魔法の実験はこれまでにして、薬草摘みに行くことにした。

行ったことがない場所へは行けないが、見える範囲には転移可能。つまり・・・

コジローは見える範囲で転移を繰り返す事で、歩くよりずっと速く移動できる事に気がついた。

ただ、マロは連続転移につきあわされると周囲の様子を伺う事ができなくなるので、自分で走るということだった。マロの速度なら、コジローの短距離転移の繰り返しについていくのは何の問題もなかった。

その後、結局、コジローも転移を使わず歩くことにしたのであったが。

急ぐ場合でなければ、歩いたほうが、コジローも周囲の自然を感じられて気持ちが良い。それに、あまり転移に頼って歩かないと、運動不足になって太るんじゃないかと不安に思ったのだった。



森へ続く道は深く進んでいくとやがて、道なき道という状態になっていく。気をつけないと迷ってしまうこともありそうだったが、先人がつけたと思われる布の目印が木の幹に巻きつけられていたので大丈夫だろう。

まあ、マロもいるし、いざとなればコジローには転移もあるので問題ないだろう。

どんどん奥へと進んでいくと、やがて小川に遭遇し、その周辺に薬草が生えている場所を見つけた。

コジローは薬草の記憶を引き出し、照らし合わせながら薬草を採集していく。中には薬草というより毒草というべきものもあるのだが、それはそれで使いみちがあるそうなので、薬草と分けて採集していく。

植物の葉の形を見分けるのは初めてで少し難しかったが、記憶にある情報にちゃんと見分けるための特徴も書いてあったので、慣れればサクサクと進んだ。

脳内百科事典だな、とコジローは思った。



コジローの植物採集を興味深そうに見ていたマロが、ふと立ち上がり、走り出した。

「どうした、マロ?」

マロはすぐに戻ってきたが、口にはウサギを咥えていた。
昼ごはんに食べるらしい。
さすが魔狼、いやフェンリルか。
自分で食べるものは自力調達してくれるとありがたい。

コジローはマロを撫ででやる。

ちょうど昼時だし、昼メシにするかと、コジローは枯れ枝を集め焚き火の準備をした。
薪を集めて火球の魔法で火をつけようとしてみた。火属性の魔法が得意な人間なら焚き火など簡単なのだろうが、コジローの指先から出る小さな火球では、なかなか火がつかない。

それを見ていたマロが、火球を放ち一気に着火してしまった。
ドヤ顔をしながらマロが近づいてきたので撫でてやる。

「ありがとう、頼りになるな。ただ、あまりマロに頼っていると自分の魔法の練習にならないんだけどな・・・」

「わふ?」

まぁ、多少頑張ったところで、才能のない魔法はすぐに上達はしなさそうなので焦っても仕方ないが。

コジローは短剣を抜き、マロがとってきたウサギを捌く。捌き方は脳内百科事典から引き出せた。
次元剣の切れ味は相変わらずで、豆腐を切るように苦もなく捌く事ができた。

おそらくマロは獲物は生で食べるのが当然だろう。しかしせっかく火を起こしたので、試しに焼いて食べさせてみたら、気に入ったようだ。
もっと焼けとマロが言うので、結局ウサギの肉は全部焼いてやった。

コジローもうさぎ肉を少しもらって食べてみたが、不味くはないが、調味料がないとそのままでは少しつらいか。
収納魔法が使えるようになったのだから、あとで調味料を買いに行こう。

コジローは宿で別料金で用意してもらったサンドイッチを食べた。結構美味い。

マロの昼用の肉も持ってきていたのだが、マロがそれも食べると言うので出してやると、マロはそれも全部ペロリと食べてしまった。
育ち盛りだからな、どんどん食べさせないといけないな、とコジローは思った。

昼休憩を終えたら、どこかで少し剣のトレーニングもしたい。


◆ドジルと手下

「くそ、アイツ、どこに行った?」

森の中を歩く三人組。ドジルとその手下A・Bである。

こっそりコジローの後を尾行ていたのだが、森へ通じる道へ入ったところでコジローを見失ってしまった。

コジローが転移で移動してしまったためであった。

ドジル:「行く場所は分かってる、薬草の場所をギルドで聞いていたらしいからな。」

初心者向けの薬草の狩場は冒険者ならよく知っている場所である。

ドジル:「アイツのせいで借金まみれだ、しかも降格処分まで。ぜってぇ許さねぇ・・・。」

手下B:「森の中で冒険者が行方不明になるのはよくあることですからね、ククク」


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