なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第一章 始まりの章

第10話 コジロー活躍!

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「ゴブリンアーチャーは俺に任せてくれ」

コジローが言った。

「どうやっ・・・」

マドリーが言い終わる前に、コジローは剣を抜き、転移を発動した。

コジローの使える転移魔法はまだレベルが低いが、見える範囲であれば転移可能であり、魔力消費も少ない。

コジローは3匹のゴブリンアーチャーの背後に現れる。ゴブリンはまだ気付いていない。

左と真ん中のゴブリンアーチャーの中間あたりの後方に出現したコジローは、次元剣で左のゴブリンアーチャーを斬る。ゴブリンアーチャーの上半身が簡単に刎ね飛ばす。

コジローはさらに剣を長く伸ばしながら、右へ水平斬り一閃、真ん中と右端のゴブリンアーチャー二匹もまとめて上半身を斬りとばした。

コジローは戦闘時は加速の魔法も常時発動しているため、動きはかなり素早い。(現在のコジローの加速は2倍速である。)ゴブリンアーチャーはコジローに気づく事なく瞬殺されたのだった。



これでゴブリン側の飛び道具はなくなった、電撃柵がある限り、後はネリーの弓でも対処可能だろうが、どうせなら残りのゴブリンも仕留めてしまおう。

コジローは、ゴブリンに向かって走り、剣で薙ぎ払っていく。
3メートル以上まで伸ばした長剣は、かたまっている獲物なら2匹・3匹まとめて斬り捨てられる。

「おお!」
「すごい!」

コジローがゴブリンを蹂躙していく様子を見ていたマドリーとネリーが驚嘆の声をあげた。

しかし、その時、激しい炸裂音とともに、柵の障壁が砕け散った。



何が起きた!?

一瞬動きをとめて周囲を見回したコジローは、反対側の柵から、巨大な熊が侵入してきているのを発見した。

大きい、普通の熊ではない。魔獣の熊、魔熊だ。頭部に青い角がある。

「サンダーベア!!」

マドリーが叫ぶ。

たとえ魔熊であっても電撃柵は破れないはずだった。しかし、サンダーベアは電撃攻撃を放つ、雷属性の魔獣である。つまり、電撃が効かないのだ。

サンダーベアは、電撃をまとわせた爪の一撃、サンダークローで、柵を魔法障壁ごとを破壊してしまったのだった。

まずい。

まだマドリー達の前には十数匹のゴブリンが居る。
そのゴブリン達が、柵がなくなった事に気付けば、マドリーとネリーに襲いかかるだろう。

コジローは周囲のゴブリンを斬り伏せながら助けに向かうが、加速を併用していても、邪魔なゴブリンを斬り伏せながらでは数秒はかかってしまう。

僅かの時間ではあるが、その一瞬の遅れが生死を分けるかもしれない。背後にはサンダーベアも迫ってきているのだ。

実は、転移魔法を使えば即座にネリー達の元へ移動できたのだが、焦っていたコジローは気づかなかった。

柵に向かっておそるおそる手を伸ばし、電撃がなくなっている事に気づいたゴブリンは、ネリーに向かっていく。

「ゴガァァァァァァ!」

その時、大きな咆哮が響き渡り、ゴブリン達が動きを止めた。

ネリー達の後ろに居たマロが吠えたのだ。

マロは子犬ではなく、大型犬ほどの大きさになっている。後でマロに聞いたところ、戦闘体型なのだとか。成長すればもっと大きくなれるのだそうだ。

そして、子供であっても魔狼である、しかも、最上位種のフェンリルである。その咆哮には力がある。ゴブリン程度であればビビって動けなくなってしまう。

より近くに居たゴブリン、つまり、ネリーとマドリーに襲いかかろうとしていたゴブリンは膝を突き、動けなくなっていた。

これなら間に合うか?

しかし、今度は背後からサンダーベアが迫ってきている、そちらを優先すべきか?

迷ったコジローだったが、サンダーベアの前に一足飛びにマロが立ちふさがった。

突然現れた魔狼に、サンダーベアの足が止まる。

凶暴なランクAモンスターであるサンダーベアであっても、魔狼の存在は脅威なのだ。魔狼は一匹だけならランクBだが、数頭集まればランクA扱いになる。そして、マロはただの魔狼ではなく、最上級種のフェンリルなのである。「神獣」とまで言われるフェンリルは一頭だけでランクはSである。そして、まだ子供であってもマロはそのフェンリルである。その存在感はサンダーベアを怯まる力があった。

サンダーベアは一瞬、逡巡した後、一対一なら勝てると踏んだのか、角から雷撃(サンダーブラスト)を放ってきた。サンダーベアの必殺の攻撃である。

しかし、同時に、マロの頭部の小さなツノからも光が放たれていた。サンダーブラストがマロのツノからも放たれる。

マロの雷撃はサンダーベアの雷撃と激突、そのまま中間地点で爆発四散した。

激しい爆発の衝撃でサンダーベアは後ろに倒れた。マロも転がったがすぐに起き上がった。



ネリー達を襲おうとしたゴブリンは、ネリーの矢に射抜かれ、マドリーの火球で火だるまになり、コジローの刀で首を刈り取られていた。

コジローは周囲に残ったゴブリンの殲滅を完了したあと、即座にサンダーベアの背後に転移・・・起き上がって再びマロを威嚇していた雷熊は、コジローの長剣で魔熊を真っ二つになっていた。



すべて片付いたかと周囲を見回したコジロー。

だが、これで終わりではなかった。

森からコボルトの集団が向かってくるのが見えた。その数100以上?!

さらに、サンダーベアも一頭見える。

コボルトとサンダーベアはお互いを気にしている様子はなく、まっすぐにマドリー&ネリーの家に向かっている。

電撃柵が壊れてしまった状態であり、魔獣達の侵入を防ぐ手立てはない。

コジローは迷った。

転移でマドリーとネリーを連れてどこかへ逃げたほうが良いか?どこへ?ゼフトの隠れ家に飛ぶか?

その時・・・マロが吠えた。


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