なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第一章 始まりの章

第8話 マドリー&ネリーの家

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翌日、コジローはマドリー&ネリーの家の裏庭で剣を振っていた。

剣の基本は素振りであると「小次郎が行く」にも書いてあった。

この危険な世界では剣の腕が命を左右する。少しでも剣に慣れておく必要があるだろう。

新しい体に入れらたコジローであったが、動かせば動かすほど、体のコントロールがよくなっていくのを感じる。

地球でも、何をやっても凡才でしかなかったコジローである。この世界にも、凡才であるから適合したと言われたわけである。

しかし、凡才は "非才・無才" というわけではない。訓練すれば、凡才なりにちゃんと成長する。短期間に常識はずれな成長をするような才能はないというだけのこと。

才能が人並みということは、やればやっただけ "人並みに" 成長するという事だ。いくら努力してもまったく成長がないというわけでもない。努力はした分だけ、相応に成長はするのだ。

コジローは、これから毎日、何千回、何万回と素振りを繰り返そうと思った。小次郎が行くにもそれが大事だと書いてあった。

この世界でも、別に、最強の剣士を目指すなどというつもりはない。そもそも、「魔道士の弟子」なのだ、目標は大魔法使いだろう。

しかし、とりあえずは、身を守るための剣術が必要だ。攻撃や防御の魔法は得意ではないのだから。。。



最初は剣を長くし、長剣にして素振りを行ってみる。自分の知識の中にある剣の振り方の知識を思い出しながら振ってみるが、読むとやるのは大違い。全然わからない。とにかく、何回でも振り続けて、コツを掴んでいくしか無い。

次に、剣を小刀のように短くして片手で振ってみる。実戦であれば、長刀が振り回せない状況は必ずあるはずである。むしろ、小刀を振るう機会のほうが多い可能性すらある。

様々な角度で振りながら、同時に足捌きも加えていく。

たしか、小太刀の技術というのは、体術も合わせて使うことが多いと書いてあった。それいじょう詳しくは書いてなかったので、思いつくままに適当に体を動かしてみるが、どうもギクシャクして様にならないのは仕方がないだろう。これから繰り返し続けていけば、いずれ、もう少しマシな形になると信じよう。

さらに、鞘に収めた状態から抜く練習もしてみる。抜刀術?居合?剣の世界ならば、いざという時の抜刀の速度が生死を分けることもあるはずだ。

抜きながら斬る・・・その動作は、しかし、危うく自分の腕を切ってしまうところだったので、すぐやめた。

そういえば、居合道で同様の失敗があると聞いたことがあるのを思い出した。

特に、コジローの剣は長さが変わるのだ。自分の体に剣を向けたまま伸ばしてしまえば自分に刺さってしまう。とりあえず、剣を伸ばすのは、ちゃんと構えてからにする事にしよう。



昼食にしようとネリーが呼びに来てくれた。

コジローは

「大病をして療養していたが、治ったのでリハビリしながら復帰を目指している」

という事になっていた。

マドリーとネリーは、ゼフトがアンデッドであるという事は知っていたが、コジローが違う世界から転生してきたという事までは知らないらしい。ただ、ゼフトが連れてきたという事で、訳アリなのは察しているという雰囲気だった。



体力が戻るまでいつまででも居てくれてよい、食費生活費については、ゼフトに日頃からそれなりに貰っているので気にする必要はないというので、しばらく厄介になることにした。

あまり長く居るわけにもいかないだろうが、とりあえず、今の体に馴染む事、そして、自分の中にあるこの世界についての知識をきちんと整理して理解しておく事、もう少し剣術に慣れておく事、そのための準備の時間が欲しいと思ったのである。



マドリー&ネリーの家は、山間部に少し開けた草原の端にポツンと一軒だけ建っており、背後には深い森が広がっている。

そして家の前から一本の道が造られている。10数キロ先にある街まで続いているそうだ。見える範囲に他の建物はないので、この道は、マドリー&ネリーの家まで(そして森まで?)の専用道として造られているようだ。

マドリー&ネリーの家は、家族が住む部分以外に、客室が10室もある。コジローが大学の時、合宿で泊まった事があるペンションを思い出した。

周囲は畑になっており、マドリーが畑仕事に精を出していた。結構広い畑であるが、木の柵が周囲を完全に囲むように建てられている。

この世界にはモンスターが居る。特に森には危険なモンスターも多い。しかし、この家は、ゼフトが結界を張ってくれているのだそうで、ゼフトの禍々しい魔力を感じる事ができるモンスターは近寄っては来ないのだそうだ。

それでも、たまに空気が読めない知能の低いモンスターが出てくる事があるのだそうだが、家を囲う柵には電撃魔法が仕込まれており、柵を越えようとした動物や魔物は酷い目にあう。

電撃は人間に対しては発動しないようになっているが、盗賊なども多いので、人間が柵を超えた場合には室内に警報が鳴るようになっているのだとか。知らずにコジローが柵に腰掛けたところ、ネリーが様子を確認しに出てきて教えてくれた。

種別を識別できるセキュリティ、地球より進んでいるとコジローは思ったが、実はゼフトの魔法が突出して優れいてるのであり、一般的な魔法ではないのであったが。



昼食の後は、庭のベンチに座り、瞑目する。マロは、コジローの横でのんびり昼寝をしている。

自分の中にある知識を引き出し、自分のものにしていく。自分の脳に刻まれている知識を、自分のモノにしていく必要がある。



そんな事を繰り返していた三日目のこと、昼寝をしていたマロが、突然起き上がり、森を見て低く唸り声をあげた。

「どうした、マロ?」

そうしているうちに、ゴギャゴギャと鳴き声がが聞こえた。聞き覚えのある鳴き声だ。

マロの目線を追い、森のほうへ目をやると、ゴブリンの群れこちらに向かってくるのが見えた。

マロは人間よりも聴覚も嗅覚も鋭い。コジローより先に異変に気付いたようだ。

マドリーも既に気付いていて柵に向かって走っていた。


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