なぜか剣聖と呼ばれるようになってしまった見習い魔法使い異世界生活(習作1)

田中寿郎

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第一章 始まりの章

第4話 時空系に才能を全振りしちゃう

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コジローは直接心の中に伝達された魔法についての知識を引き出してみる。記憶は自分の中に受け渡されて既に存在しているが、その記憶を一つ一つ自分で認識する作業は必要なのだ。

まずは、各属性の魔法についての情報を引き出し整理してみる。

火・水・風・雷・光・闇、さらにそれらに属さない特殊な魔法もあるようだ。

参考までに、ゼフト自身について尋ねてみた。ゼフトは、最初は闇属性に才能があったそうだ。その後研究を続け、現在はすべての魔法を高レベルで使えるが、中でも時空属性の魔法は重要な研究テーマでもあり、得意であると言えるとのこと。

時空系魔法について詳しく聞いて興味を惹かれたコジローは、結局それにすべての才能を割り振ってくれるよう希望した。



バランスも考えたほうが良いのではないかとコジローも最初は思った。しかし、思い直して、極端な特化型を選択する事にしたのだった。

どうせ最終的には全てを身につけるなら、最初は偏っていても "特化型" のほうがスタートダッシュはしやすいと考えたのだ。

一芸に秀でていれば、その他の芸を身につけるのにも優れるということもある。
まんべんなく、何でもできる者は「器用貧乏」になってしまう事が多い。

オールラウンドタイプというのは、あらゆるタイプにおいて平均点であり、最高得点を取る人は常に他にいる、という事になってしまうのだから。

コジローは、これまで常に平均点の男だった。ここで一つ、とんがった人生を歩んでみたくなったのであった。

コジローは時空系に才能を全振りする事で最終決定とした。




全ての調整が終わった後、その他の注意事項説明である。

とりあえず、コジローは「森の魔道師の弟子」と名乗ればよかろうと言う事だった。コジローはこの世界にいきなり成人として誕生してしまうため、架空の経歴が必要になったためである。

『森に捨てられた赤子が魔道師に拾われ、弟子として育てられた』

という設定にしておけばよいだろうと。

ただし、森の魔道士=ゼフトがアンデッドであること、そのゼフトがコジローの魂を異世界から呼び寄せたという事は、この世界では禁忌魔法に当たるので、秘密にしておいたほうが良いらしい。アンデッドと死霊術系の魔法というのは、この世界では相当に嫌われているのだとか。




それから、コジローは、何か特殊な才能があるから選ばれたという分けではない─────言ってみれば「平凡」こそが特徴であると。そして、用意された肉体も、健康ではあるが、極めて平凡なものであると注意を受けた。

引き寄せた魂にも、受け皿の肉体にも、「癖がない」ほうが調整しやすいのだとか。

コジローの与えられた肉体は健康ではあるが「平凡」、それはつまり、特殊な能力を持っているわけでもなく、強い力を持っているわけでもなく、強靭でもない。普通に怪我や病気などするし、簡単に死んでしまうので気をつけろ、との事だった。

なにせ、この世界にはモンスターが居るのである。襲われたら簡単に殺されてしまうということである。。。



そういう事は先に言ってほしかった・・・もしかして、魔法の才能の振り分けを極端にしたのは失敗だったかも・・・? とコジローは思ったが、調整は終わってしまったので、いまさらやりなおしは効かないとのこと。



時空系の魔法に才能を全振りしてしまったコジローは、当然、攻撃系の魔法も、防御系の魔法も、身体強化系の魔法も、治癒系の魔法も────いつか身につくにしても、最初のうちは────才能がないという事になってしまう。

時空系の魔法でも、攻撃や防御に使える魔法はあるし、治癒系の魔法さえもなくはないのだが、それらはすべて、最上級レベルになってからの話。最初は使えないとの事であった。

時空系で割と初期から使えるのは「転移」と「加速」。

転移が使えるので、危険な時は逃げ出してしまえばよいので、ある意味無敵だから大丈夫だろうとゼフトは言うが、さすがに逃げの一手だけだと不安だとコジローが考えていたら、ゼフトも思い直し、何か手を考えてくれるという事になった。この師匠、面倒見は良いらしい。

『とりあえず、以前造った剣があるからそれを使うと良い、コジロー用に調整してやろう。』

とゼフトはコジローに剣をくれたのだった。



  * * * *



それからしばらくは、魔力のコントロールについて訓練の日々を送った。

魔力は「量」と「密度」、「精度(コントロール)」があるそうで。まずは、魔力を増やす呼吸法、魔力を整える体操を教わり、毎日続けるように言われた。

教わったと言うか、知識はすべて脳内に記憶として既にある。それを引き出していくだけなのだが。

簡単に思い出せるのに、自分にとっては初めて知る記憶であるという、不思議な状態である。

知識は既にあるが、意識しなければ出てこない。どのような知識があろうとも、その知識がある事さえも認識していない場合は、その情報は思い出される事はないという事になる。そのため、まずは何を思い出せば良いのか、教わっていく必要があるのだった。。。

魔力の制御と魔法の使い方を練習すると同時に、自分の中のデータベースから知識を引き出し自分のモノにするのに2週間ほど、ゼフトのもとで訓練を受けた。


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