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第一章 再会
第32話 ルーク VS バッケン
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だが、ルークの攻撃はバッケンの剣で受け止められていた。バッケンはルークがファントムフリックを使ってくる事を読んでいたのだ。
だが、バッケンとて余裕ではなかった、ギリギリかろうじて受けとめられたというところである。
バッケンはルークの剣撃の速さに驚愕し、受け止めた手は少し痺れていた。
バッケン「驚いた。思ったより速いな。本当はお前の剣が抜かれるより速くカウンターで仕留めるつもりだったんだがな」
ルークも少し驚いていた。たとえ受け止められても、鬼斬丸の切れ味を生かしてその剣ごと断ち斬ってしまうつもりだったからだ。今まで、オークの剣程度だったら余裕で断ち切れていたからである。
だが、バッケンの剣を断つ事はできなかった。バッケンの剣もただの剣ではないようだ。
飛び退き、距離をとったバッケンが言った。
バッケン「その剣には欠点がある。鞘の向きで次の攻撃の方向が分かってしまうんだよ」
ルークの剣“鬼斬丸”は、実は鞘と柄に秘密がある。魔力を込めると、鞘から剣が激しい勢いで“射出”されるのである。さらに、剣が鞘から抜けきったところで鞘と連動した“柄”が勝手に回転し、刃が相手に向かっていく。このギミックに逆らわずに上手くコントロールしてやれば、誰でも高速の抜き斬りができるのである。フィル爺が若い頃、遠い国のドワーフに作らせたアイデア品であった。
バッケン「その鞘は面白い魔道具ではあるが、所詮は小細工に過ぎん。そんな道具に頼っているようでは剣の実力もたかが知れている、降参したほうがいいんじゃないか?」
ルーク「たかが知れてるかどうか、試してみろ」
バッケン「居合ではなく、抜いた状態からの戦いで、どこまでやれるのかな?」
ルークが剣を振りかぶり、バッケンに襲いかかる。
バッケンも応戦する。
だが、またしてもバッケンは驚かされる事になる。ルークの実力はバッケンの予想をはるかに超えていたのだ。
ルークの動きは変幻自在であった。
右へ左へ、前へ後ろへ、自由自在に移動しながら剣を振るう。
実は、フィル爺の教えてくれた剣技は、その“足捌き”に極意がある。
剣の振り方は基本的な素振りばかりさせられていたルークであったが、それとは別に、変幻自在のフットワークを鍛えられていたのだ。
足のマークを彫った石を庭に不思議な配列で埋め込み、ルークはそのとおりに足を運ぶ練習をさせられた。その動きは縦横無尽・多岐に渡る。やがて高度になっていくにつれ、人間の動きとしては不自然に思えるような変態的な足運びも増えていくが、それらをすべて、高速・なめらかに行いながら走り抜けられるように繰り返し練習させられた。
それが上達してくると、今度は高さの違う杭や丸太を設置、それを避けたり上に乗ったりしながら同様の訓練を続けさせられた。
実は最初、ルークはこれを爺ちゃんの教えてくれる楽しい遊びだと思っていたのだが、それが森の中で自在に走りまわるのに役に立つと気づくのにそう長くは掛からなかった。
なるほど、爺ちゃんは森の中で生きて行くため、魔物や動物に負けずに走り回る方法を遊びながら教えてくれていたんだとルークは思った。
だが、それらの訓練は、すべて剣技の基礎であり、極意でもあったのた。
やがて成長したルークは、その変幻自在の足捌きに剣を振る動作を追加する事を教えられた。
これらが高度に結び付き、結実したとき、かつて【剣聖】と呼ばれたフィル爺こと、フィルモア・レインクラッドの剣術が完成する。
それを、ルークは剣聖の剣術などとは思わず、森を駆け回り魔物や動物と戦うための技術としてすべて受け継いでいたのである。
だが、バッケンとて余裕ではなかった、ギリギリかろうじて受けとめられたというところである。
バッケンはルークの剣撃の速さに驚愕し、受け止めた手は少し痺れていた。
バッケン「驚いた。思ったより速いな。本当はお前の剣が抜かれるより速くカウンターで仕留めるつもりだったんだがな」
ルークも少し驚いていた。たとえ受け止められても、鬼斬丸の切れ味を生かしてその剣ごと断ち斬ってしまうつもりだったからだ。今まで、オークの剣程度だったら余裕で断ち切れていたからである。
だが、バッケンの剣を断つ事はできなかった。バッケンの剣もただの剣ではないようだ。
飛び退き、距離をとったバッケンが言った。
バッケン「その剣には欠点がある。鞘の向きで次の攻撃の方向が分かってしまうんだよ」
ルークの剣“鬼斬丸”は、実は鞘と柄に秘密がある。魔力を込めると、鞘から剣が激しい勢いで“射出”されるのである。さらに、剣が鞘から抜けきったところで鞘と連動した“柄”が勝手に回転し、刃が相手に向かっていく。このギミックに逆らわずに上手くコントロールしてやれば、誰でも高速の抜き斬りができるのである。フィル爺が若い頃、遠い国のドワーフに作らせたアイデア品であった。
バッケン「その鞘は面白い魔道具ではあるが、所詮は小細工に過ぎん。そんな道具に頼っているようでは剣の実力もたかが知れている、降参したほうがいいんじゃないか?」
ルーク「たかが知れてるかどうか、試してみろ」
バッケン「居合ではなく、抜いた状態からの戦いで、どこまでやれるのかな?」
ルークが剣を振りかぶり、バッケンに襲いかかる。
バッケンも応戦する。
だが、またしてもバッケンは驚かされる事になる。ルークの実力はバッケンの予想をはるかに超えていたのだ。
ルークの動きは変幻自在であった。
右へ左へ、前へ後ろへ、自由自在に移動しながら剣を振るう。
実は、フィル爺の教えてくれた剣技は、その“足捌き”に極意がある。
剣の振り方は基本的な素振りばかりさせられていたルークであったが、それとは別に、変幻自在のフットワークを鍛えられていたのだ。
足のマークを彫った石を庭に不思議な配列で埋め込み、ルークはそのとおりに足を運ぶ練習をさせられた。その動きは縦横無尽・多岐に渡る。やがて高度になっていくにつれ、人間の動きとしては不自然に思えるような変態的な足運びも増えていくが、それらをすべて、高速・なめらかに行いながら走り抜けられるように繰り返し練習させられた。
それが上達してくると、今度は高さの違う杭や丸太を設置、それを避けたり上に乗ったりしながら同様の訓練を続けさせられた。
実は最初、ルークはこれを爺ちゃんの教えてくれる楽しい遊びだと思っていたのだが、それが森の中で自在に走りまわるのに役に立つと気づくのにそう長くは掛からなかった。
なるほど、爺ちゃんは森の中で生きて行くため、魔物や動物に負けずに走り回る方法を遊びながら教えてくれていたんだとルークは思った。
だが、それらの訓練は、すべて剣技の基礎であり、極意でもあったのた。
やがて成長したルークは、その変幻自在の足捌きに剣を振る動作を追加する事を教えられた。
これらが高度に結び付き、結実したとき、かつて【剣聖】と呼ばれたフィル爺こと、フィルモア・レインクラッドの剣術が完成する。
それを、ルークは剣聖の剣術などとは思わず、森を駆け回り魔物や動物と戦うための技術としてすべて受け継いでいたのである。
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