生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎

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第一章 再会

第17話 ジャック回想

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俺の名はジャック。

「勝利の足音」というパーティのリーダーだ。

俺のパーティのメンバーは……

そんなものは紹介する必要はないか、雑魚ザコばかり、使えない連中だ。

ただ、一人だけ使える奴がいる。ポーリンという女だ。

この女、剣の腕がなかなかのもので、この街の上位冒険者達にも並ぶ実力だと言われている。だがそれよりも特筆すべきはその外見だ。色白・身長高めに美しい顔立ちで、たくさんの男に言い寄られている。そんな女が俺のパーティに居るというのは俺も鼻が高い。

だが、理想が高いのだろうか、あの女が誰かと付き合ったという話は聞かない。

かくいう俺も、何度も誘っているのだが、今の所、色良い返事を貰えていないのだが。

まぁ、今の所、だ。同じパーティのメンバーだし、ましてや俺はリーダーだ。他の連中とは立場が違う。あの女もおそらく照れて遠慮しているのだろう、他の誰とも付き合わないのはきっと俺の事が気になっているからに違いない。素直になればいいのにな。

誰も良い返事を貰えないので、自分より腕が立つ者でないと付き合わないんじゃないか? という噂も流れていた。なるほど、その鼻をへし折ってもらえるのを待っているという事か。

それを聞いた俺は、パーティリーダーの権限でメンバー全員で訓練を実施、その中で、あの女に挑んだ。

いくら腕が立つと言ってもしょせんは女だ。男の俺が本気になれば敵わないだろう、そう思っていた。俺に負けて、やっと素直に俺の女になれるというわけだ。面倒くさい奴だが、そんなところも可愛いじゃないか。

そして始まった模擬戦。最初は互角に思えた。だが、徐々にあの女が本気を出してくるのが分かった……

…結果は散々だった。

俺だってそれなりに剣術には自信があったのに……。あの女は、倒れている俺を見下ろしながら、『まぁまぁ良い腕だった、軽い肩慣らしをしたい時に丁度よいからまたやろう』などと抜かしやがった。屈辱だった。プライドはズタズタだ。

俺より腕が立つ女が居るなんて許せない。それからは、その女が憎たらしくて仕方がなくなった。

大勢のギャラリーの居る前で女に打ちのめされてしまった俺の評判はガタ落ちだ。

パーティの中でも微妙な空気が流れるようになってしまった。

俺は挽回しようと焦った。ランクの高い難しい依頼を受けて、リーダーシップを発揮して立場を取り戻そう。剣の腕だけが冒険者の実力ではない。冒険者は総合力だ。強いリーダーシップこそが男の魅力というもんだ。

そうして俺が選んだ依頼は、毒の沼に生息するポイズンリザードの皮の採集だ。強力な毒を持ち、かなり危険な魔物だが、その皮を使ってバッグを作ったりすると、金持ちや貴族が高く買うらしい。

だがあの女はその依頼に反対した、自分たちのレベルではまだ毒の沼は無理だと。

俺はその意見を一蹴し、リーダー権限で無理やり依頼を強行した。

……結果は散々だった。

毒の沼の魔物は思いのほか強く、数も多かった。しかも、毒が蒸発して空気に混ざっているのか、少しずつ身体の動きが鈍っていく。

結局、あの女の撤退指示にみな従って退却しはじめた。俺がリーダーなのに、お前ら勝手に逃げるなよ、まだ始まったばかりだろうが、依頼はどうするんだ?

結果、全員無事に退却する事ができたが。

女の判断が早かったおかげだなどと他のメンバーは褒めていたが、あんな早々と逃げ出せば無事で当たり前だろう。おかげで依頼クエストは失敗だ。違約金が発生する、どうするんだ。

街への帰路についた俺達。

あの女は殿シンガリを買って出た。まだ毒の沼に近いので、背後から危険な魔物が来るかもしれないと言うのだ。

あの女は後方を気にしながら最後尾を歩いている。俺は女の一つ前を歩いていた。

その時、ふと、俺は近くの木に蛇がぶら下がっているのを見つけた。

あの女は何か気になる事があったのか、完全に後ろを向いて立っていた。この絶好の機に、つい悪戯心が出てしまった。

俺は刀の鞘でその蛇を引っ掛け、あの女の方に放ってやったのだ。


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