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2【お気に召すまま吸血を】
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がらんと静かな屋敷の門を閉めて、玄関を通り過ぎて、更に奥にある別邸へと向かう。バーベナ家の敷地内には、表に構える屋敷と、裏に別邸がある。俺はそちらに幼い頃から住んでるから、屋敷で生活していない。家主であった祖父も亡くなったから、そちらには誰も住んでいない状態だった。
「ったく起きろよ……」
ほぼ一軒家の大きさのある別邸の玄関を開けて、立ち止まってチカの身体を揺らす。するとぶるりと震わせて薄く目を開いた。
「ヨウくん」
八重歯を覗かせて笑いかけられる。ヴァンパイアや人間よりも眷族になることの多い人狼の地位は低く、扱いは良くない。証拠品と一緒に証人として引き渡しても、政府に保護してもらえるわけじゃないし。今放り出したら、またヴァンパイアに擦り寄るのに腹を刺すんだろうか。地位が低い者が地位の高い者の家には基本的に招かれないと入れない。
ここで拒めば、バーベナ家から離れてくれるんじゃないかと考えた。
「……はぁ」
けど、寝惚けたままのじっと見つめられる熱っぽさが、なんだかずっと恋しかった気がする。ほんの少しだけなら、まだいいだろうか。何を目的としてあのヴァンパイアといたのかくらい。
「もう起きてるだろ、入っていいよ」
そうやって家の中に招いてやり、肩に回していた腕を離して玄関の灯りをつける。一人で住む分には十分な広さな家だし、チカをもてなすくらいは出来るだろう。
「ありがとヨウくん。お礼はするよ?」
そう言って後ろから抱き寄せられた。首筋をぬるく舌が這う。ぞくりとして身動ぎするも、腰を抱く拘束は強くて解いてくれそうにない。
「んっ、いや、ちょっ……」
埋めてくるとふわふわした髪が首筋にあたるから、犬がじゃれついてくるようにも思えた。なんだか邪険にしづらいから、跳ね除けられない。
「お礼はいらないって!」
「え~」
「お前のこと飼うつもりないからな、血にも困ってないから眷族はいらないんだ」
ヴァンパイアとの共存を昔からしてきたこの国には、支給されている輸血パックもある。
けれど、あれを飲むのは彼らにとっては携帯食を食べるようなもので、人から貰うことが一番食べてるって感じがするのだそうだ。半分ヴァンパイアの俺は、別に血自体を飲まなくても、肉をレアに焼いたものを食べるくらいで充分だった。
「でも寂しくない?」
「別に」
俺を抱き締めたまま、ぐりぐり肩に頭を埋めてきた。ヴァンパイアが人からの吸血を好むのは孤独を埋めるように触れ合えるからだと、書物で読んだことがある。けど俺はずっと一人だったから、そんな感情はとうに手放した。なくて困らなかったのに、わざわざ手にしようと思わない。
「じゃあ『血の契約』は?」
「余計にないわ」
顔を寄せてくるから、べちっと手で押し退けて避ける。するとそのまま、チカは俺の腕を掴んで指の腹を齧ってきた。ヴァンパイアの真似事のように、小さな傷から血を吸い出す。吸う間にじっと見つめてきて、なんだか妙に熱が籠っていて逸らせなくなる。
「……痛いんだけど」
「この傷のお詫びにオレの血飲んでいいよ」
「いらないから、離せって」
「『血の契約』を交わしてくれたら離す」
「は?」
瞳の奥が爛々と瞬いて差し迫るものがあった。正直なところ、ヴァンパイアが人狼を眷属にするよりも、『血の契約』の方が重たい縛りをどちらにも得ることになる。それを申し出てくるなんて思わなくて困惑した。流されてはいけないと、首を振る。
「そもそも俺はまだ二十歳じゃないからなれない!はい終わり!お疲れ!寝る!風呂とか好きにしていいから!」
「二十歳関係ある!?」
「知らん!」
鍛え上げた体幹と筋肉を上手く使い、奴の手を振り払う。家の外へと追い出して、鍵を渡して屋敷の方へと行くように指示した。向こうの方にも風呂あるし、埃被ってるだろうがベッドだってあるだろう。
そうして逃げるようにさっさと自室に戻ることにした。鍵をかけて安堵する。備え付けられたお風呂場に行き、シャワーを浴びながら指に立てられた傷を探して、自分で舐めると綺麗になる。
「……はぁ」
それでも舐る舌の体温は今でも肌に残る。
今日会ったばかりの相手に、まさか『血の契約』を求められるとは思わなくて、胸が苦しい。飼ってくれって、そこまでいくと人生に関わるだろうに。
ここに置くことはそれに比べたら別にいいんだけど、『血の契約』はまずい。簡単に交わしていいものじゃない。俺が半分なのと眷属になる人狼という低い立場だから、それほど重く捉えていないのだろう。
『血の契約』を交わすとヴァンパイアはその相手の血のしか飲めなくなるのだ。他の人間の血は不味く感じて受け付けずに吐いてしまうらしい。代わりに『血の契約』を交わした相手だけ、とびきり美味しく感じるとか、他の生きた人間の血を吸ったことがないから味の良し悪しは分からないけど。もちろん、お互いに利益があってこの『血の契約』は成立する。相手は血を与え続ける代わりにヴァンパイアに対して縛りを与えられる。
俺の生まれたこのバーベナ家はヴァンパイアハンターの家系だった。今夜始末した無差別で食い荒らすヴァンパイアのような政府から依頼を受けた犯罪者を、血で従えて同族狩りをさせていた。世間には空腹を制御出来ず、人を殺してしまうヴァンパイアが多くいるからハンターは必要だったけれど、『血の契約』を交わせば、血には困らない。人間とヴァンパイアの間の婚姻もあるけど、『血の契約』と同時に大体結ぶことが多い。
この国においては、人間が一番、次にヴァンパイア、続いて他の種族といったように価値がつけられている。その多くは人狼で滅多にいないけど。
『血の契約』を結んでいれば政府からも認められて、ヴァンパイアはごく普通に人権と地位を得られるし、契約相手の人間がいるから食事にも困らない。縛りによる絆を得たことにより、互いにより一層相手への情を持ち、愛するようになり、魂に執着するようになるという。互いを失わない為にどちらも尽くすから、生涯その身の安全を保証される。
耳触りがよい言葉は、お互いにとっていい事ばかりに聞こえるけど、できるかできないか分からないけれど、俺はどうしても『血の契約』をしたくなかった。
「はぁ~……」
着替え終えて髪を乾かして、ベッドに飛び込んでごろごろ寝転ぶ。そろそろ寝ないと。依頼されたヴァンパイアを追っている時は昼夜逆転生活になりがちだけど、終わったらさっさと戻さないといけない。瓶に詰めたヴァンパイアの報告書は、また起きたら書けばいいやと微睡む。
「……はぁ」
窓の外から、何の音もしないから本当に静かになってしまったなと枕を抱き締めた。
表にある広い屋敷に、三年前まではお爺様とお爺様と『血の契約』をしたヴァンパイアが住んでいた。結構な数に上ると思う。だから夜は屋敷の方の話し声を聴きながら、灯りを見て眠りについたものだ。
もういなくなってしまったけど。
「……、っ!?」
微睡み、眠りへと落ちる中で気配を感じた。
咄嗟に枕元に忍ばせてあった短剣を構えると、ベッド脇にチカが俺を覗き込むように座っていた。
「あれ、思ったより気付くの早い、ハンターだから危機管理能力高いの?」
「な、なにしてんだ」
「いや、話の続きをしようと思って」
遠慮なくテリトリーに入り込んで乗ってきて、ベッドの軋む音がする。屋敷の方の風呂には入ったのか、髪からシャンプーの甘い匂いが鼻腔をくすぐる。なんだろう、さっきのように流されてはいけないとまた違った身の危険を感じる。脅かされてるのは生命じゃない。もっと深いところに触れるやつだ。
「『血の契約』はしないからな」
「でもさぁ、一人でハンター業やっていけるの?半分なんて不確定要素抱えてて、眷属がいないって周りに気付かれるのも良くないっしょ?」
「……別にいいだろ」
「ヴァンパイアハンターのこの家系にとって、『血の契約』は箔が付くって聞くけど。それに、お手付きじゃないなら君を利用しようと近寄ってくる輩もいるっしょ、美人だし」
「余計な心配だ」
「正直、この国にいればバーベナ家なんてオレでも知ってる。じいさんの名も知られてる分、期待されて依頼は来るんでしょ?でもそれは従属するヴァンパイアが多くいるからだ。屋敷見てきたけど、もう誰もいないじゃんか」
バーベナ家が俺だけなのは祖父が死んだからだ。この家にいたヴァンパイアがいなくなったのも祖父が病気で死んだせいだ。契約していた主が死んだら、ヴァンパイアも死ぬしかなくなる。その人以外の血を飲めないのだから。
「蹴散らすからいい、俺一人でやっていける。大体今日会ったばかりのお前とわざわざ命懸けて縁を結ぶ義理もない」
「困ったなぁ」
「お前ならそのツラでいくらでも傍において貰えるだろ、ヴァンパイアなんでいくらでもいるし」
「うーん、この様子じゃ眷属にするのも首を縦には振ってくれなさそうだし、拷問紛いなことして死んじゃったら困るし、そもそも痛みには耐えられちゃうし、」
ここまで拒否してるのに、諦めないでぶつぶつと何か言っている。けど考えるのは苦手なのか、よし!と笑顔を向けてきた。
「それなら愛はどうだろ?」
「え……?」
「『血の契約』でヨウくんはオレの血じゃなきゃいけなくなるだけじゃなくて、他の部分もオレなしじゃ生きられなくしちゃお」
目の前にご馳走が並んだみたいに、恍惚とした表情でチカは牙を見せて笑った。鳴り続けていたサイレンが赤かったことをここに来てようやく、受け入れた。何を目的としているかも分からない上に、『血の契約』をそこまで求めてるとは思わなかったのだ。
「んっ!?」
頬に手を添えられたかと思うと優しく、口付けられた。啄みながら唇を合わせてどちらかのものか分からなくなるくらい、それは嵌っていく。呼吸のタイミングで開口すると逃さないと言わんばかりに、舌が侵入して絡め取られた。
「……っぁ、ん、」
薄くて長い舌が柔らかくて熱い。ゆっくりと唾液が混じり合い、舌先が軟口蓋をくすぐる。何がなんだか、わからない。やけに甘ったるい気がして、脳がとろけそうだった。
「すぐ良くなるから」
低く掠れた声で囁かれれば、強ばっていた身体の力が抜けた。ギラギラした瞳に、異様さを覚える。先程俺の血を少量だけど飲んでいたし、ヴァンパイアが血を吸う前に行うことが多い催淫にもしかしたらチカがかかってるのかもしれない。だとしたら俺のせいでもあるし、後ろに倒れるのを丁寧に枕を引いて頭を痛めないようにしてくれる。
こういうところが優しいから拒みきれない。そのまま舌を絡めながら、覆い被さる。気持ちがいい、と感応しているとチカの手が服の裾から潜り込んで、胸元に伸びているのに反応が遅れた。親指と人差し指の指間腔を薄い胸を柔く揉まれた。
「ぁ、あ……!?」
そうして制止も心許なく、シャツが捲れて露になった胸に甘く齧りついた。肌を吸われて跡を残される。乳首を口に含んで舐られるとびりびり痺れる。
「ちょっ、なんも出ないって」
「可愛い」
もう片方の張り始めていた乳首の先端を親指で撫でたり、弾いたりと弄り出す。膨らみを寄せては返してマッサージのように撫でられると、身体の芯に熱が篭もる。そうして反応して硬く突起していくのを爪で弾くだけじゃなくて、赤い舌でこねくり回して、時折甘噛みをした。
「ぅは?あ、んな格好してるけど、女じゃないって……」
「うん」
薄い胸で鼻先が潰れてるのがどうしてか寂しそうにも見えて、髪を指で梳く。急な触れ合いなのに嫌じゃない、嫌じゃない自分に驚いた。少し顔を上げて鎖骨にキスを落とす。
「ちゅー好き?もっかいしよ」
「ん、っ」
かぶりつくように唇を重ねて、強く角度を変えて触れるだけのはずが、求められる。酸素を求めて薄く口を開けると舌を吸われた。
口腔内に侵入し、歯列をなぞって舌を絡め合う。あったかくて気持ちよくて、嫌いじゃないかもしれない、とあたためた脳の裏でよぎる。少し視線をずらせば添えられたままのチカの指の間で、尖りを増していく乳首が見えて恥ずかしかった。
「っぁっ、」
するりとスウェットの中に降りた手が太腿を撫でながら、中途半端に脱がされる。その布の上に乗られて挟まれてしまっては、動けなくなり、標本の蝶のように留められる。苦しいし恥ずかしいし、本当にどうにかなりそうだ。なのに未知の快感を知りたいと好奇心に追い立てられる。
「ぁッ、待って」
「胸とキスで気持ちよくなっちゃったぁ?もう色変わってる」
持ち上げた両腿を広げられて、呆気なく晒されるのを抵抗しようにも負けてしまう。色の濃くなった下着を上から押されて、更にそそり勃つ。
「や、やだ……っ、」
「嫌なら縛りちょうだい」
乳首をじゅっと強く吸われる。空いた手で引っ張ったり弄られるのも堪らないのに、意地悪く笑う。
「……ってぅ!?」
「あは、パンパン」
そんな現実逃避みたいな思考をお構い無しに、下着越しに硬くなってる性器を揉んで、そのままずらした。残したい気分なのか、足から完全に下着を抜かずにそのまま玉袋を揺らす。
「っ、えっ、ちょっ」
感触は鈍くても、はぁと熱い息がかかって、じゅるじゅる唾液だけじゃない音に、口に含まれてるのが嫌でも分かる。鈴口から竿の部分が先走りと唾液で濡れていく様子がよく見えた。こちらの反応を伺うように唾液を含めてびちゃびちゃと舌で擦られる。顎が疲れたのか、離れても手でその部分をさする。
「待って、んなの……っ、」
「ヨウくんほんとになんも知らないって感じで、嬉しいなぁ」
己の性器が笑っているこの口に入っていたなんて思いもしなくて戸惑うのも束の間、ぐいっと股が広げられて太腿の内側に顔を落とされた。何してるのかと思うと、痕が残されていく。身体を少し起こすと、赤い花を咲かされる過程が視界に入る 。
「なにして、」
「俺のになってってお願いの証」
「は、はぁ、?」
「次何するか分かる?」
「ぇ」
知らない羞恥から逃げさせてもらえず、そこの延長で割れ目を多分舌が舐め始めた。まだ馴染まない快感が下腹部からせり上がってくる。暴くように伸びてきた舌が覆い、中の柔らかい肉を這う。こちらの反応を伺うように舌の先端で内側を突き、擦られる度に身体は跳ねた。じわじわくるのが変に怖い。
「ぅっあっ、ぅあぁ……っ」
するりと縁をなぞられて、すっかりふやけて柔くなった入口を両親指で開かれる。肉を掻き分けて内を擦り広げた。ぬちぬちと侵入しながら、指を増やしていく。甘く嬲られて感じたことの無い、知らない快感が着き登るかのように、血が沸騰するみたいだった。
「ゃぁ、っううぁん……」
聞いた事のない水音や嬌声が自身から発せられるかと思うと、羞恥に噛み締めるけどそれを許さずにチカの指が唇をなぞって無理に開かせる。
「我慢しちゃ駄目だって、噛んでいいから聞かせて」
「ぅひ、ぅっあっ、ぅあぁ……っ」
縁をなぞられて、すっかりふやけて柔くなった入口を両親指で開かれる。肉を掻き分けて中指の腹で内を擦り広げた。暫く愛撫されて濡れた箇所に、指が入り込んでくる。中の肉壁を進み異物感と圧迫感に腰が浮いた。
「もういけっかなぁ」
ぬちぬちと侵入しながら、指を増やしていって、奥から浅い所に抜き差しされる度に痙攣する。情けなく垂れる唾液を混ぜるように口内をも犯される。あつ、とチカはシャツを脱ぎ、細身ながら鍛えられた上半身に、疼いた。既に柔く勃ちあがってる性器を取り出す。目に入って、太さにこれからされるだろうことに慄いた。
「ひゃ……ぁ」
「いれるよ」
宣言通りにぬぷ、と入口に押し当てられて穴へと沈んでいく。指とは違う熱の塊が中心を貫いていて、裂けていく。
「カリ引っかかる……」
「ぁうん、……ぁはぁっ、あぁっ」
ゆっくり、みしみし肉壁を抉って拡げながら進んでいく。胸の尖りを抓られて仰け反った。が関係なくたっぷり中を楽しむように蹂躙していく。俺の腰を手形がつくんじゃないかってくらい、爪を立てて掴んでぐぬっと、浅くに抜いたと思えば奥へと突いてを繰り返す。
「ぁっ、ぅっ、ふ、やぁっ、あっぁっ」
「きつぅ……ん、」
肌と肌がぶつかりや、ベッドが軋む音と、奥に向かって擦り、腰が打たれると中がぎゅうぎゅうと悲鳴を上げる。お腹いっぱいで苦しくて、漏れてしまう感覚があった。自分の形が他人に触れられて分かるのがなんだか怖くて、目の前にチカへと手を伸ばした。
「ぅう、やだ……っ、へんになるって、へん……?」
「ん、よーしよし、変じゃないよ。上手にいけたね」
片足が上げられて、更に深く入れ込む。彼の首へと腕を回して触れるだけのキスをすると、安心して蕩けそうになる。チカが零れる生理的な涙を拭ってくれた。目的の為に手段を履き違えて行為に及んでいる、なのにどうしてこんなに優しく感じるのだろう。
「……っぁっ、ぅふ、うっ、ん!」
「ごめん、」
チカがずるりと自身のものを抜くとぐっとお腹にあった圧迫感が収まる。
「はぁ……、ぁ……」
「……終えたかったらここで『血の契約』を結んで欲しいんだけどなぁ」
「やだ……」
力なく、首を横に振ると俺の腕を引っ張って起き上がらせた。支えるようにし膝立ちの体勢になり、視線を寄越すとかち合う。
「チカ……?」
「あ、やっと名前呼んでくれた」
腰を抱きながら指が穴の縁を撫でた、と思いきや掴んだままの腰を落とされた。
「っぁううっ……?ん、ぁっぁぁ、」
「そんなん嬉しくて我慢できなくなっちゃう」
拡がっていた穴にゆっくり突き上げるように進み、押し出すように抵抗する肉壁を越えてすんなりおさまったかと思ったところで最奥に容易く届いた。
「っ?ぁっんぐ、んんっ、ああ……っ」
「名前だけじゃなくて、他のオレも覚えて」
すぐに動かずに、そのままの形になるようにチカは耳元で囁く。けれど、入ったというのに中で肥大するから驚く。
「ここまで入ってるの、分かる?」
無邪気にそうお腹を押されて、余計に苦しい。とんとんと軽く叩かれる刺激にも、ゆったり中を堪能するような動きにも、外と中からの快感に崩れそうになるけど、許してくれない。腰を動かすと更にいいところに当たってよがいてしまう。
「っはぁ、……ぁっあぁ……やだっ……」
先端に押されて内臓潰れちゃいそうで、怖くて震えると同時にイッてしまう。さっき覚えた感覚に溺れそうになる。
「上手」
それを窘める声で俺の腰を寄せるようにして、すっかり濡れきった布越しにも伝わる玉袋が打ち付けた。オオカミ特有のものだと、後で書物で知るのだけれど亀頭球が肥大して、つっかえとなってどれだけ動いても抜かれることはない。
「うん……、キュって締まるからオレも気持ちいーよ」
「ぁっぁ、ぅん!あっ!……っ」
汗ばんだ肌に体液が薄らと垂れる。与えられ続ける快楽で身体も脳も、追いついていかない。何度もイッてチカの背中を引っ掻いて傷を増やすと、嬉しそうに口付けてくる。
「……っ、ん……」
そうしてるうちにチカが震えて、中に注がれる熱さが持続する。オオカミの射精は基本的に長くて、液体に満たされてお腹が膨れていく。そのまま蠱惑的に言葉を紡いだ。
「今ダメなら、ヨウくんが二十歳なったら、『血の契約』しようよ」
「嫌だ……」
「うーん、大分理性剥ぎ取ったのにだめか。利用してくれたって構わないよ。縛りがあればずっと一緒にいられるから」
また出し続けたままチカが動き出して、ぐちゅぐちゅと中が掻き回されて、どうにかなりそう。甘くて優しいだけの言葉は思考を溶かしていく。ずっと一緒という言葉は、孤独を抱えた俺にとってはあまりにも甘美な毒だった。
「ぁっ……」
なんとなく、ヴァンパイアを愛して『血の契約』を結んだ祖父の気持ちが分かった気がする。自分よりもはるかに寿命が長く、怪我をしても血を飲めば回復する。
「……ぁ、ふ、っうぅ、でも、やだ」
そう遠くない記憶の中の祖父はずっと俺に冷たかった。十数年前、俺の両親と祖母は事故で亡くなった。祖父からすれば愛する妻と息子夫婦を一気に失ってしまったのだ。
当時の俺は死んだことをちゃんと理解出来ていなかったけれど、祖父は違う。多分、失った時に悲しみたくないからすぐに死ぬ人間の俺は遠ざけて、屋敷からこの別邸に追いやった。姿を見せないように命じて、俺の存在をなかったように扱った。もうあんな思いはしたくないから、喪失感を埋めるように身を削るように多くのヴァンパイアと『血の契約』を交わしたのだろう。
祖父がどんな気持ちか考えないままだったけど、キスをされて、単純にもう本当にどうでも良くなって、埋まってしまいそうな錯覚を覚えた今になってわかる。その空虚の名前はきっと。
「ヨウくん、ヨウくん……」
「んっ、ぅ」
蜂蜜色の瞳に自分が映っている。真っ直ぐ見つめられて、晒されているのが気持ちいいなんて知らなかった。腕の中に抱き締められるなんて、いつぶりだろうか。両親が亡くなって、唯一の肉親のお爺様からは愛情を貰えず、必死にハンターとして腕を磨く日々は虚しかった。でも幼い俺のそばに居てくれたのは皮肉にもヴァンパイア達だった。気にかけて世話をして貰っていたおかげで有難いことに衣食住に困ることはなかったけど、それでも足りなかった。家族同然だけど、血の繋がった家族じゃない。利害の一致で、『血の契約』を交えた主従関係。
「ん、」
本当はずっと寂しかった。愛を受け取って欲しかったし、貰いたかった。改めて涙が流れる。混ざりあった水音も、部屋に満ちる甘い香りも、今そばにある体温も、狂気も、全部欲しいと望んだら、『血の契約』で簡単にものにしてしまえる。まだ出会って間もない、俺の為に都合よく現れたようなチカのことでさえ、一生を縛れる。
「ヨウくん」
甘ったるく思考を溶かしてくる優しさに、心を預けてしまえば楽だろう。けれど、『血の契約』がどういうものかをきっと知らないから、人生の賭けに持ち出せるのだ。縛りの重みを分かっていない。
あの日の光景を今生きている俺だけが知っている。祖父が亡くなって、屋敷にいたヴァンパイアもいなくなったあの日。
飢餓させるよりも責任を取って殺してやるのがヴァンパイアも一番苦しまないから、祖父は自分の死期を悟って、そこで契約終了の為に彼らを自分の手で殺したのだ。必ずもそうするわけではないけど、『血の契約』は彼らへ死を与えられる。彼らの死ぬ時を選べてしまう。
「……っ、ごめん……」
自分の孤独の為に、『血の契約』などと陳腐なもので、誰かを縛りたくなかった。
ヴァンパイアハンターであるこの家にいるなら、公国のルールを守っていない犯罪者の烙印を押されたヴァンパイアと、もしかしたらそれに仕える人狼を、同族を殺さないといけない。もしかしたらちゃんと分かり合える、仲間に、家族になれるかもしれない相手を、犬だと貶されながら殺さないといけない。首輪なんて、枷なんてなくていい。
こんな家に生まれた俺と違って、チカはどこにでもいける、時間がある分、多くのものを見て、好きなように生きていける。不自由のない翼を持つ者みたいなチカには、何にも縛られずにそう存って欲しかった。
「……、っ」
視界が白黒になり、一瞬飛びかけた。慣れない行為に緊張がしていて、疲れたのかもしれない。察したチカが、俺の身体を寝かせて抜いて離れた。それから、持ってきた清潔な布で身体のあちこちを拭う。ぐったりとした俺に脱ぎ捨てられてた服を被せて着せてくれた。
「『血の契約』、一方的に交わせたら楽なんだけどな」
俺の横に寝転んで、チカは頬を撫でたり髪を梳いたりと触れている。俺はその優しい手つきを、ぐったりと抵抗することなく甘んじて受け入れた。
「しない」
「ケチ」
「……諦めろよ、もっと相手選べって」
少なくともこんな初対面の相手に持ちかける話ではない。何度目かの断り文句には不服そうにされた。
「諦めないよ、どうすれば伝わるのかなぁ」
唇に小さな感触。柔らかくて、くすぐったくてただ優しいそれは、子供の頃にあった宝物のようだった。瞼の裏にいつでも張り付いてる、思い出のようなあたたかさ。なんだろう、これ。微睡んでいると、チカは手に取った俺の薬指の根元を強く齧り、肉を抉る。痛くて甘い愚かな契約を望んでくれるけれど。何故か俺を選んでくれているのだけれど。
「ん……」
「寝る?おやすみヨウくん」
その瞳は獲物を捉える為、その牙は肌を貫く為、その耳は声を聞く為に、俺とは何もかも違う生き物。でも言葉は交わせる、触れ合える、想いを交わせる。
本当に変な奴、と目を瞑った。
「ったく起きろよ……」
ほぼ一軒家の大きさのある別邸の玄関を開けて、立ち止まってチカの身体を揺らす。するとぶるりと震わせて薄く目を開いた。
「ヨウくん」
八重歯を覗かせて笑いかけられる。ヴァンパイアや人間よりも眷族になることの多い人狼の地位は低く、扱いは良くない。証拠品と一緒に証人として引き渡しても、政府に保護してもらえるわけじゃないし。今放り出したら、またヴァンパイアに擦り寄るのに腹を刺すんだろうか。地位が低い者が地位の高い者の家には基本的に招かれないと入れない。
ここで拒めば、バーベナ家から離れてくれるんじゃないかと考えた。
「……はぁ」
けど、寝惚けたままのじっと見つめられる熱っぽさが、なんだかずっと恋しかった気がする。ほんの少しだけなら、まだいいだろうか。何を目的としてあのヴァンパイアといたのかくらい。
「もう起きてるだろ、入っていいよ」
そうやって家の中に招いてやり、肩に回していた腕を離して玄関の灯りをつける。一人で住む分には十分な広さな家だし、チカをもてなすくらいは出来るだろう。
「ありがとヨウくん。お礼はするよ?」
そう言って後ろから抱き寄せられた。首筋をぬるく舌が這う。ぞくりとして身動ぎするも、腰を抱く拘束は強くて解いてくれそうにない。
「んっ、いや、ちょっ……」
埋めてくるとふわふわした髪が首筋にあたるから、犬がじゃれついてくるようにも思えた。なんだか邪険にしづらいから、跳ね除けられない。
「お礼はいらないって!」
「え~」
「お前のこと飼うつもりないからな、血にも困ってないから眷族はいらないんだ」
ヴァンパイアとの共存を昔からしてきたこの国には、支給されている輸血パックもある。
けれど、あれを飲むのは彼らにとっては携帯食を食べるようなもので、人から貰うことが一番食べてるって感じがするのだそうだ。半分ヴァンパイアの俺は、別に血自体を飲まなくても、肉をレアに焼いたものを食べるくらいで充分だった。
「でも寂しくない?」
「別に」
俺を抱き締めたまま、ぐりぐり肩に頭を埋めてきた。ヴァンパイアが人からの吸血を好むのは孤独を埋めるように触れ合えるからだと、書物で読んだことがある。けど俺はずっと一人だったから、そんな感情はとうに手放した。なくて困らなかったのに、わざわざ手にしようと思わない。
「じゃあ『血の契約』は?」
「余計にないわ」
顔を寄せてくるから、べちっと手で押し退けて避ける。するとそのまま、チカは俺の腕を掴んで指の腹を齧ってきた。ヴァンパイアの真似事のように、小さな傷から血を吸い出す。吸う間にじっと見つめてきて、なんだか妙に熱が籠っていて逸らせなくなる。
「……痛いんだけど」
「この傷のお詫びにオレの血飲んでいいよ」
「いらないから、離せって」
「『血の契約』を交わしてくれたら離す」
「は?」
瞳の奥が爛々と瞬いて差し迫るものがあった。正直なところ、ヴァンパイアが人狼を眷属にするよりも、『血の契約』の方が重たい縛りをどちらにも得ることになる。それを申し出てくるなんて思わなくて困惑した。流されてはいけないと、首を振る。
「そもそも俺はまだ二十歳じゃないからなれない!はい終わり!お疲れ!寝る!風呂とか好きにしていいから!」
「二十歳関係ある!?」
「知らん!」
鍛え上げた体幹と筋肉を上手く使い、奴の手を振り払う。家の外へと追い出して、鍵を渡して屋敷の方へと行くように指示した。向こうの方にも風呂あるし、埃被ってるだろうがベッドだってあるだろう。
そうして逃げるようにさっさと自室に戻ることにした。鍵をかけて安堵する。備え付けられたお風呂場に行き、シャワーを浴びながら指に立てられた傷を探して、自分で舐めると綺麗になる。
「……はぁ」
それでも舐る舌の体温は今でも肌に残る。
今日会ったばかりの相手に、まさか『血の契約』を求められるとは思わなくて、胸が苦しい。飼ってくれって、そこまでいくと人生に関わるだろうに。
ここに置くことはそれに比べたら別にいいんだけど、『血の契約』はまずい。簡単に交わしていいものじゃない。俺が半分なのと眷属になる人狼という低い立場だから、それほど重く捉えていないのだろう。
『血の契約』を交わすとヴァンパイアはその相手の血のしか飲めなくなるのだ。他の人間の血は不味く感じて受け付けずに吐いてしまうらしい。代わりに『血の契約』を交わした相手だけ、とびきり美味しく感じるとか、他の生きた人間の血を吸ったことがないから味の良し悪しは分からないけど。もちろん、お互いに利益があってこの『血の契約』は成立する。相手は血を与え続ける代わりにヴァンパイアに対して縛りを与えられる。
俺の生まれたこのバーベナ家はヴァンパイアハンターの家系だった。今夜始末した無差別で食い荒らすヴァンパイアのような政府から依頼を受けた犯罪者を、血で従えて同族狩りをさせていた。世間には空腹を制御出来ず、人を殺してしまうヴァンパイアが多くいるからハンターは必要だったけれど、『血の契約』を交わせば、血には困らない。人間とヴァンパイアの間の婚姻もあるけど、『血の契約』と同時に大体結ぶことが多い。
この国においては、人間が一番、次にヴァンパイア、続いて他の種族といったように価値がつけられている。その多くは人狼で滅多にいないけど。
『血の契約』を結んでいれば政府からも認められて、ヴァンパイアはごく普通に人権と地位を得られるし、契約相手の人間がいるから食事にも困らない。縛りによる絆を得たことにより、互いにより一層相手への情を持ち、愛するようになり、魂に執着するようになるという。互いを失わない為にどちらも尽くすから、生涯その身の安全を保証される。
耳触りがよい言葉は、お互いにとっていい事ばかりに聞こえるけど、できるかできないか分からないけれど、俺はどうしても『血の契約』をしたくなかった。
「はぁ~……」
着替え終えて髪を乾かして、ベッドに飛び込んでごろごろ寝転ぶ。そろそろ寝ないと。依頼されたヴァンパイアを追っている時は昼夜逆転生活になりがちだけど、終わったらさっさと戻さないといけない。瓶に詰めたヴァンパイアの報告書は、また起きたら書けばいいやと微睡む。
「……はぁ」
窓の外から、何の音もしないから本当に静かになってしまったなと枕を抱き締めた。
表にある広い屋敷に、三年前まではお爺様とお爺様と『血の契約』をしたヴァンパイアが住んでいた。結構な数に上ると思う。だから夜は屋敷の方の話し声を聴きながら、灯りを見て眠りについたものだ。
もういなくなってしまったけど。
「……、っ!?」
微睡み、眠りへと落ちる中で気配を感じた。
咄嗟に枕元に忍ばせてあった短剣を構えると、ベッド脇にチカが俺を覗き込むように座っていた。
「あれ、思ったより気付くの早い、ハンターだから危機管理能力高いの?」
「な、なにしてんだ」
「いや、話の続きをしようと思って」
遠慮なくテリトリーに入り込んで乗ってきて、ベッドの軋む音がする。屋敷の方の風呂には入ったのか、髪からシャンプーの甘い匂いが鼻腔をくすぐる。なんだろう、さっきのように流されてはいけないとまた違った身の危険を感じる。脅かされてるのは生命じゃない。もっと深いところに触れるやつだ。
「『血の契約』はしないからな」
「でもさぁ、一人でハンター業やっていけるの?半分なんて不確定要素抱えてて、眷属がいないって周りに気付かれるのも良くないっしょ?」
「……別にいいだろ」
「ヴァンパイアハンターのこの家系にとって、『血の契約』は箔が付くって聞くけど。それに、お手付きじゃないなら君を利用しようと近寄ってくる輩もいるっしょ、美人だし」
「余計な心配だ」
「正直、この国にいればバーベナ家なんてオレでも知ってる。じいさんの名も知られてる分、期待されて依頼は来るんでしょ?でもそれは従属するヴァンパイアが多くいるからだ。屋敷見てきたけど、もう誰もいないじゃんか」
バーベナ家が俺だけなのは祖父が死んだからだ。この家にいたヴァンパイアがいなくなったのも祖父が病気で死んだせいだ。契約していた主が死んだら、ヴァンパイアも死ぬしかなくなる。その人以外の血を飲めないのだから。
「蹴散らすからいい、俺一人でやっていける。大体今日会ったばかりのお前とわざわざ命懸けて縁を結ぶ義理もない」
「困ったなぁ」
「お前ならそのツラでいくらでも傍において貰えるだろ、ヴァンパイアなんでいくらでもいるし」
「うーん、この様子じゃ眷属にするのも首を縦には振ってくれなさそうだし、拷問紛いなことして死んじゃったら困るし、そもそも痛みには耐えられちゃうし、」
ここまで拒否してるのに、諦めないでぶつぶつと何か言っている。けど考えるのは苦手なのか、よし!と笑顔を向けてきた。
「それなら愛はどうだろ?」
「え……?」
「『血の契約』でヨウくんはオレの血じゃなきゃいけなくなるだけじゃなくて、他の部分もオレなしじゃ生きられなくしちゃお」
目の前にご馳走が並んだみたいに、恍惚とした表情でチカは牙を見せて笑った。鳴り続けていたサイレンが赤かったことをここに来てようやく、受け入れた。何を目的としているかも分からない上に、『血の契約』をそこまで求めてるとは思わなかったのだ。
「んっ!?」
頬に手を添えられたかと思うと優しく、口付けられた。啄みながら唇を合わせてどちらかのものか分からなくなるくらい、それは嵌っていく。呼吸のタイミングで開口すると逃さないと言わんばかりに、舌が侵入して絡め取られた。
「……っぁ、ん、」
薄くて長い舌が柔らかくて熱い。ゆっくりと唾液が混じり合い、舌先が軟口蓋をくすぐる。何がなんだか、わからない。やけに甘ったるい気がして、脳がとろけそうだった。
「すぐ良くなるから」
低く掠れた声で囁かれれば、強ばっていた身体の力が抜けた。ギラギラした瞳に、異様さを覚える。先程俺の血を少量だけど飲んでいたし、ヴァンパイアが血を吸う前に行うことが多い催淫にもしかしたらチカがかかってるのかもしれない。だとしたら俺のせいでもあるし、後ろに倒れるのを丁寧に枕を引いて頭を痛めないようにしてくれる。
こういうところが優しいから拒みきれない。そのまま舌を絡めながら、覆い被さる。気持ちがいい、と感応しているとチカの手が服の裾から潜り込んで、胸元に伸びているのに反応が遅れた。親指と人差し指の指間腔を薄い胸を柔く揉まれた。
「ぁ、あ……!?」
そうして制止も心許なく、シャツが捲れて露になった胸に甘く齧りついた。肌を吸われて跡を残される。乳首を口に含んで舐られるとびりびり痺れる。
「ちょっ、なんも出ないって」
「可愛い」
もう片方の張り始めていた乳首の先端を親指で撫でたり、弾いたりと弄り出す。膨らみを寄せては返してマッサージのように撫でられると、身体の芯に熱が篭もる。そうして反応して硬く突起していくのを爪で弾くだけじゃなくて、赤い舌でこねくり回して、時折甘噛みをした。
「ぅは?あ、んな格好してるけど、女じゃないって……」
「うん」
薄い胸で鼻先が潰れてるのがどうしてか寂しそうにも見えて、髪を指で梳く。急な触れ合いなのに嫌じゃない、嫌じゃない自分に驚いた。少し顔を上げて鎖骨にキスを落とす。
「ちゅー好き?もっかいしよ」
「ん、っ」
かぶりつくように唇を重ねて、強く角度を変えて触れるだけのはずが、求められる。酸素を求めて薄く口を開けると舌を吸われた。
口腔内に侵入し、歯列をなぞって舌を絡め合う。あったかくて気持ちよくて、嫌いじゃないかもしれない、とあたためた脳の裏でよぎる。少し視線をずらせば添えられたままのチカの指の間で、尖りを増していく乳首が見えて恥ずかしかった。
「っぁっ、」
するりとスウェットの中に降りた手が太腿を撫でながら、中途半端に脱がされる。その布の上に乗られて挟まれてしまっては、動けなくなり、標本の蝶のように留められる。苦しいし恥ずかしいし、本当にどうにかなりそうだ。なのに未知の快感を知りたいと好奇心に追い立てられる。
「ぁッ、待って」
「胸とキスで気持ちよくなっちゃったぁ?もう色変わってる」
持ち上げた両腿を広げられて、呆気なく晒されるのを抵抗しようにも負けてしまう。色の濃くなった下着を上から押されて、更にそそり勃つ。
「や、やだ……っ、」
「嫌なら縛りちょうだい」
乳首をじゅっと強く吸われる。空いた手で引っ張ったり弄られるのも堪らないのに、意地悪く笑う。
「……ってぅ!?」
「あは、パンパン」
そんな現実逃避みたいな思考をお構い無しに、下着越しに硬くなってる性器を揉んで、そのままずらした。残したい気分なのか、足から完全に下着を抜かずにそのまま玉袋を揺らす。
「っ、えっ、ちょっ」
感触は鈍くても、はぁと熱い息がかかって、じゅるじゅる唾液だけじゃない音に、口に含まれてるのが嫌でも分かる。鈴口から竿の部分が先走りと唾液で濡れていく様子がよく見えた。こちらの反応を伺うように唾液を含めてびちゃびちゃと舌で擦られる。顎が疲れたのか、離れても手でその部分をさする。
「待って、んなの……っ、」
「ヨウくんほんとになんも知らないって感じで、嬉しいなぁ」
己の性器が笑っているこの口に入っていたなんて思いもしなくて戸惑うのも束の間、ぐいっと股が広げられて太腿の内側に顔を落とされた。何してるのかと思うと、痕が残されていく。身体を少し起こすと、赤い花を咲かされる過程が視界に入る 。
「なにして、」
「俺のになってってお願いの証」
「は、はぁ、?」
「次何するか分かる?」
「ぇ」
知らない羞恥から逃げさせてもらえず、そこの延長で割れ目を多分舌が舐め始めた。まだ馴染まない快感が下腹部からせり上がってくる。暴くように伸びてきた舌が覆い、中の柔らかい肉を這う。こちらの反応を伺うように舌の先端で内側を突き、擦られる度に身体は跳ねた。じわじわくるのが変に怖い。
「ぅっあっ、ぅあぁ……っ」
するりと縁をなぞられて、すっかりふやけて柔くなった入口を両親指で開かれる。肉を掻き分けて内を擦り広げた。ぬちぬちと侵入しながら、指を増やしていく。甘く嬲られて感じたことの無い、知らない快感が着き登るかのように、血が沸騰するみたいだった。
「ゃぁ、っううぁん……」
聞いた事のない水音や嬌声が自身から発せられるかと思うと、羞恥に噛み締めるけどそれを許さずにチカの指が唇をなぞって無理に開かせる。
「我慢しちゃ駄目だって、噛んでいいから聞かせて」
「ぅひ、ぅっあっ、ぅあぁ……っ」
縁をなぞられて、すっかりふやけて柔くなった入口を両親指で開かれる。肉を掻き分けて中指の腹で内を擦り広げた。暫く愛撫されて濡れた箇所に、指が入り込んでくる。中の肉壁を進み異物感と圧迫感に腰が浮いた。
「もういけっかなぁ」
ぬちぬちと侵入しながら、指を増やしていって、奥から浅い所に抜き差しされる度に痙攣する。情けなく垂れる唾液を混ぜるように口内をも犯される。あつ、とチカはシャツを脱ぎ、細身ながら鍛えられた上半身に、疼いた。既に柔く勃ちあがってる性器を取り出す。目に入って、太さにこれからされるだろうことに慄いた。
「ひゃ……ぁ」
「いれるよ」
宣言通りにぬぷ、と入口に押し当てられて穴へと沈んでいく。指とは違う熱の塊が中心を貫いていて、裂けていく。
「カリ引っかかる……」
「ぁうん、……ぁはぁっ、あぁっ」
ゆっくり、みしみし肉壁を抉って拡げながら進んでいく。胸の尖りを抓られて仰け反った。が関係なくたっぷり中を楽しむように蹂躙していく。俺の腰を手形がつくんじゃないかってくらい、爪を立てて掴んでぐぬっと、浅くに抜いたと思えば奥へと突いてを繰り返す。
「ぁっ、ぅっ、ふ、やぁっ、あっぁっ」
「きつぅ……ん、」
肌と肌がぶつかりや、ベッドが軋む音と、奥に向かって擦り、腰が打たれると中がぎゅうぎゅうと悲鳴を上げる。お腹いっぱいで苦しくて、漏れてしまう感覚があった。自分の形が他人に触れられて分かるのがなんだか怖くて、目の前にチカへと手を伸ばした。
「ぅう、やだ……っ、へんになるって、へん……?」
「ん、よーしよし、変じゃないよ。上手にいけたね」
片足が上げられて、更に深く入れ込む。彼の首へと腕を回して触れるだけのキスをすると、安心して蕩けそうになる。チカが零れる生理的な涙を拭ってくれた。目的の為に手段を履き違えて行為に及んでいる、なのにどうしてこんなに優しく感じるのだろう。
「……っぁっ、ぅふ、うっ、ん!」
「ごめん、」
チカがずるりと自身のものを抜くとぐっとお腹にあった圧迫感が収まる。
「はぁ……、ぁ……」
「……終えたかったらここで『血の契約』を結んで欲しいんだけどなぁ」
「やだ……」
力なく、首を横に振ると俺の腕を引っ張って起き上がらせた。支えるようにし膝立ちの体勢になり、視線を寄越すとかち合う。
「チカ……?」
「あ、やっと名前呼んでくれた」
腰を抱きながら指が穴の縁を撫でた、と思いきや掴んだままの腰を落とされた。
「っぁううっ……?ん、ぁっぁぁ、」
「そんなん嬉しくて我慢できなくなっちゃう」
拡がっていた穴にゆっくり突き上げるように進み、押し出すように抵抗する肉壁を越えてすんなりおさまったかと思ったところで最奥に容易く届いた。
「っ?ぁっんぐ、んんっ、ああ……っ」
「名前だけじゃなくて、他のオレも覚えて」
すぐに動かずに、そのままの形になるようにチカは耳元で囁く。けれど、入ったというのに中で肥大するから驚く。
「ここまで入ってるの、分かる?」
無邪気にそうお腹を押されて、余計に苦しい。とんとんと軽く叩かれる刺激にも、ゆったり中を堪能するような動きにも、外と中からの快感に崩れそうになるけど、許してくれない。腰を動かすと更にいいところに当たってよがいてしまう。
「っはぁ、……ぁっあぁ……やだっ……」
先端に押されて内臓潰れちゃいそうで、怖くて震えると同時にイッてしまう。さっき覚えた感覚に溺れそうになる。
「上手」
それを窘める声で俺の腰を寄せるようにして、すっかり濡れきった布越しにも伝わる玉袋が打ち付けた。オオカミ特有のものだと、後で書物で知るのだけれど亀頭球が肥大して、つっかえとなってどれだけ動いても抜かれることはない。
「うん……、キュって締まるからオレも気持ちいーよ」
「ぁっぁ、ぅん!あっ!……っ」
汗ばんだ肌に体液が薄らと垂れる。与えられ続ける快楽で身体も脳も、追いついていかない。何度もイッてチカの背中を引っ掻いて傷を増やすと、嬉しそうに口付けてくる。
「……っ、ん……」
そうしてるうちにチカが震えて、中に注がれる熱さが持続する。オオカミの射精は基本的に長くて、液体に満たされてお腹が膨れていく。そのまま蠱惑的に言葉を紡いだ。
「今ダメなら、ヨウくんが二十歳なったら、『血の契約』しようよ」
「嫌だ……」
「うーん、大分理性剥ぎ取ったのにだめか。利用してくれたって構わないよ。縛りがあればずっと一緒にいられるから」
また出し続けたままチカが動き出して、ぐちゅぐちゅと中が掻き回されて、どうにかなりそう。甘くて優しいだけの言葉は思考を溶かしていく。ずっと一緒という言葉は、孤独を抱えた俺にとってはあまりにも甘美な毒だった。
「ぁっ……」
なんとなく、ヴァンパイアを愛して『血の契約』を結んだ祖父の気持ちが分かった気がする。自分よりもはるかに寿命が長く、怪我をしても血を飲めば回復する。
「……ぁ、ふ、っうぅ、でも、やだ」
そう遠くない記憶の中の祖父はずっと俺に冷たかった。十数年前、俺の両親と祖母は事故で亡くなった。祖父からすれば愛する妻と息子夫婦を一気に失ってしまったのだ。
当時の俺は死んだことをちゃんと理解出来ていなかったけれど、祖父は違う。多分、失った時に悲しみたくないからすぐに死ぬ人間の俺は遠ざけて、屋敷からこの別邸に追いやった。姿を見せないように命じて、俺の存在をなかったように扱った。もうあんな思いはしたくないから、喪失感を埋めるように身を削るように多くのヴァンパイアと『血の契約』を交わしたのだろう。
祖父がどんな気持ちか考えないままだったけど、キスをされて、単純にもう本当にどうでも良くなって、埋まってしまいそうな錯覚を覚えた今になってわかる。その空虚の名前はきっと。
「ヨウくん、ヨウくん……」
「んっ、ぅ」
蜂蜜色の瞳に自分が映っている。真っ直ぐ見つめられて、晒されているのが気持ちいいなんて知らなかった。腕の中に抱き締められるなんて、いつぶりだろうか。両親が亡くなって、唯一の肉親のお爺様からは愛情を貰えず、必死にハンターとして腕を磨く日々は虚しかった。でも幼い俺のそばに居てくれたのは皮肉にもヴァンパイア達だった。気にかけて世話をして貰っていたおかげで有難いことに衣食住に困ることはなかったけど、それでも足りなかった。家族同然だけど、血の繋がった家族じゃない。利害の一致で、『血の契約』を交えた主従関係。
「ん、」
本当はずっと寂しかった。愛を受け取って欲しかったし、貰いたかった。改めて涙が流れる。混ざりあった水音も、部屋に満ちる甘い香りも、今そばにある体温も、狂気も、全部欲しいと望んだら、『血の契約』で簡単にものにしてしまえる。まだ出会って間もない、俺の為に都合よく現れたようなチカのことでさえ、一生を縛れる。
「ヨウくん」
甘ったるく思考を溶かしてくる優しさに、心を預けてしまえば楽だろう。けれど、『血の契約』がどういうものかをきっと知らないから、人生の賭けに持ち出せるのだ。縛りの重みを分かっていない。
あの日の光景を今生きている俺だけが知っている。祖父が亡くなって、屋敷にいたヴァンパイアもいなくなったあの日。
飢餓させるよりも責任を取って殺してやるのがヴァンパイアも一番苦しまないから、祖父は自分の死期を悟って、そこで契約終了の為に彼らを自分の手で殺したのだ。必ずもそうするわけではないけど、『血の契約』は彼らへ死を与えられる。彼らの死ぬ時を選べてしまう。
「……っ、ごめん……」
自分の孤独の為に、『血の契約』などと陳腐なもので、誰かを縛りたくなかった。
ヴァンパイアハンターであるこの家にいるなら、公国のルールを守っていない犯罪者の烙印を押されたヴァンパイアと、もしかしたらそれに仕える人狼を、同族を殺さないといけない。もしかしたらちゃんと分かり合える、仲間に、家族になれるかもしれない相手を、犬だと貶されながら殺さないといけない。首輪なんて、枷なんてなくていい。
こんな家に生まれた俺と違って、チカはどこにでもいける、時間がある分、多くのものを見て、好きなように生きていける。不自由のない翼を持つ者みたいなチカには、何にも縛られずにそう存って欲しかった。
「……、っ」
視界が白黒になり、一瞬飛びかけた。慣れない行為に緊張がしていて、疲れたのかもしれない。察したチカが、俺の身体を寝かせて抜いて離れた。それから、持ってきた清潔な布で身体のあちこちを拭う。ぐったりとした俺に脱ぎ捨てられてた服を被せて着せてくれた。
「『血の契約』、一方的に交わせたら楽なんだけどな」
俺の横に寝転んで、チカは頬を撫でたり髪を梳いたりと触れている。俺はその優しい手つきを、ぐったりと抵抗することなく甘んじて受け入れた。
「しない」
「ケチ」
「……諦めろよ、もっと相手選べって」
少なくともこんな初対面の相手に持ちかける話ではない。何度目かの断り文句には不服そうにされた。
「諦めないよ、どうすれば伝わるのかなぁ」
唇に小さな感触。柔らかくて、くすぐったくてただ優しいそれは、子供の頃にあった宝物のようだった。瞼の裏にいつでも張り付いてる、思い出のようなあたたかさ。なんだろう、これ。微睡んでいると、チカは手に取った俺の薬指の根元を強く齧り、肉を抉る。痛くて甘い愚かな契約を望んでくれるけれど。何故か俺を選んでくれているのだけれど。
「ん……」
「寝る?おやすみヨウくん」
その瞳は獲物を捉える為、その牙は肌を貫く為、その耳は声を聞く為に、俺とは何もかも違う生き物。でも言葉は交わせる、触れ合える、想いを交わせる。
本当に変な奴、と目を瞑った。
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