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反逆軍
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「これが私の身に起こった全ての話。『反逆軍』が本格的な行動を起こす前の私の物語だよ」
ガイアの話を聞き終えたメンバーはしばらくの間声を出すことができなかった。
周りの草木がカサカサと音を立てる
ガイアの話はあまりにも壮絶だった。
ガイアはたった一人で王家を守ろうとしていたのだ。
仲間のために。
流石のゼウスも疑ったことを後悔していたようで、無言でガイアの大剣を返却した。
「悪かったな…」
「別にいいよ。私が暗躍してたのは事実だし、疑われても仕方のないことをしたっていう自覚もあるから」
ガイアは特に気にした様子もなく返答する。
五人の間に前と同じ空気が流れ始める。
しかし、ここで一つの疑問が浮かび上がる。
それを指摘したのはノトスだった。
「ヘカテーは君が裏切り者だと知っていたのかい?」
「多分知らなかったと思う。もし知っていたら、あんなまどろっこしいことはしなかったと思う」
「逆にガイアはヘカテーがこっちの味方だって知ってたの?」
ノトスからの問いにガイアは静かに首を振る。
「いいえ、知らなかった」
「もし二人で連携出来ていれば、今の状況も少しはマシになってたのかな…」
ヴァルカンが相変らず俯きながら後ろ向きな反応を示す。
確かに、彼の言うとおり、ガイアとヘカテーで協力出来ていれば入ってくる情報量は桁違いなものとなっていただろう。
だが、現実的に考えてそれは不可能だ。
何故なら、スパイ同士でも、相手の素性を知らなければ、警戒対象にしかならないからである。
「過ぎたことやあり得ない可能性の事を考えても仕方ないよ。今大事なのはこれからどうするかだ」
ノトスがヴァルカンのことを窘めるように言う。
実を言うと前までのヴァルカンは今ほど後ろ向きな考えをする性格ではなかった。
自分は龍の末裔で、国民を導いていくという熱意に満ち溢れていた。
しかし、『反逆軍』との戦闘を通して、敵との圧倒的な実力の差を実感し、その自信は消え失せようとしていた。
これはほかのメンバーにも言えることである。
いかに特別な力を持っていようと、彼らはまだ十五歳の子供。
それに加え、今まで城の中で過ごしていたため、まだ外の世界について理解しきっていないのだ。
故に、少しずつ彼らは自分たちが弱いのではないかと考え始め、もし敵の幹部たちと同じくらいの強さを持つ者がこの世界にたくさん存在していたらという最悪なケースを想像してしまっていたのだった。
実際には、彼ら龍の末裔に勝てる人間はごく少数なのだが、敵の第一印象があまりに強すぎてしまったのだ。
再びこの場に沈黙が生まれ、草木の音がいつも以上に聞こえてくる。
いち早くこの異変に気付いたのはテティスだった。
テティスは静かに空を見つめ、神経を研ぎ澄ましている。
その様子の変化に気付き、ノトスが声を掛けようとするが、テティスはそれを手で制す。
ここでようやく他のメンバーもこの状況の異変に気付く。
明らかに草木のかさかさという音が多いのだ。
その元凶を探るべく、五人は周囲を注意深く観察する。
「これは…蛇?」
最初にその正体を特定したノトスが小さな声で呟く。
すると、その途端に周りにいた数十匹の蛇が同時に動きを止め、頭を持ち上げて五人のことを直視する。
その数秒後、数十匹の蛇たちが一斉に襲い掛かる。
「ヴァルカン頼む!」
ノトスが大声で指示をする。
ヴァルカンは即座にそれに応え、剣を抜くと、五人を中心とした火柱を生み出す。
凄まじい轟音とともに蛇たちは一匹残らず丸焼きになる。
ホッとしたのも束の間、森の奥からさらに大量の蛇が出現する。
ヴァルカンは再び剣を構える。
しかし、その行為はノトスに止められてしまう。
「恐らく無駄だろうね…。この数と僕たちを狙っていることを考えると、この蛇たちは恐らく敵の使いだろう。敵が近くにいることを考えるのなら、一刻も早く離れた方がいい」
「それに、この蛇が敵の使いだというのなら、情報は共有されるはず。場所がばれている以上、ここにとどまることはもうできないわ。私もノトスに賛成よ」
頭脳派であるノトスとテティスの二人の意見に押され、ヴァルカンは大人しく剣をしまい、五人は一斉に走り出す。
「相手が蛇なら木を登って逃げるのがいいけど、流石に今から木登りしたる時間はなさそうね…」
蛇の数は地面を埋め尽くすほどに増殖しており、あと数十秒で五人に追いつくというところまできていた。
「それならいい案があるよ。みんな下手に動かないで…ね!」
テティスの発言を聞いたノトスは自らの双剣を抜き、風龍の力で上昇気流を発生させ、全員を太い木の枝の部分に着地させる。
それから五人は枝の上を飛びながら逃げ回った。
追ってきている蛇の数がかなり少なくなり、あと少しで逃げ切れる。
五人全員がそう思っていた。
しかし、ここで最悪の事態が五人を襲う。
最初は気が付かなかったが、確実に地鳴りが聞こえてくるのだ。
それも、少しずつ大きくなって。
「いや…違う…大きくなってるわけじゃねえ…近づいてきてるのか…まさかあいつが…」
独り言を言い始めたゼウスを気にかけてノトスが声をかける。
「どうかした?」
「なんか少し嫌な予感がする。最悪のケースに備えておいた方がいいかもしれねえ」
『最悪のケースって何?』とノトスが聞き返すことはできなかった。
何故なら、五人の進行方向の先に大きな音と振動とともに、大量の砂が舞い上がったからだ。
五人は何が起きたか分からず、ただ呆然としていた。
「ようやく追いつけたか…。久しぶりだな」
砂埃の中から声が聞こえてきた。
そしてその姿を捉えた五人は絶望に打ちひしがれることになる。
そこにいたのは以前、王家の複数人で戦っても一切歯が立たなかった最強の軍人、アレスだった。
ガイアの話を聞き終えたメンバーはしばらくの間声を出すことができなかった。
周りの草木がカサカサと音を立てる
ガイアの話はあまりにも壮絶だった。
ガイアはたった一人で王家を守ろうとしていたのだ。
仲間のために。
流石のゼウスも疑ったことを後悔していたようで、無言でガイアの大剣を返却した。
「悪かったな…」
「別にいいよ。私が暗躍してたのは事実だし、疑われても仕方のないことをしたっていう自覚もあるから」
ガイアは特に気にした様子もなく返答する。
五人の間に前と同じ空気が流れ始める。
しかし、ここで一つの疑問が浮かび上がる。
それを指摘したのはノトスだった。
「ヘカテーは君が裏切り者だと知っていたのかい?」
「多分知らなかったと思う。もし知っていたら、あんなまどろっこしいことはしなかったと思う」
「逆にガイアはヘカテーがこっちの味方だって知ってたの?」
ノトスからの問いにガイアは静かに首を振る。
「いいえ、知らなかった」
「もし二人で連携出来ていれば、今の状況も少しはマシになってたのかな…」
ヴァルカンが相変らず俯きながら後ろ向きな反応を示す。
確かに、彼の言うとおり、ガイアとヘカテーで協力出来ていれば入ってくる情報量は桁違いなものとなっていただろう。
だが、現実的に考えてそれは不可能だ。
何故なら、スパイ同士でも、相手の素性を知らなければ、警戒対象にしかならないからである。
「過ぎたことやあり得ない可能性の事を考えても仕方ないよ。今大事なのはこれからどうするかだ」
ノトスがヴァルカンのことを窘めるように言う。
実を言うと前までのヴァルカンは今ほど後ろ向きな考えをする性格ではなかった。
自分は龍の末裔で、国民を導いていくという熱意に満ち溢れていた。
しかし、『反逆軍』との戦闘を通して、敵との圧倒的な実力の差を実感し、その自信は消え失せようとしていた。
これはほかのメンバーにも言えることである。
いかに特別な力を持っていようと、彼らはまだ十五歳の子供。
それに加え、今まで城の中で過ごしていたため、まだ外の世界について理解しきっていないのだ。
故に、少しずつ彼らは自分たちが弱いのではないかと考え始め、もし敵の幹部たちと同じくらいの強さを持つ者がこの世界にたくさん存在していたらという最悪なケースを想像してしまっていたのだった。
実際には、彼ら龍の末裔に勝てる人間はごく少数なのだが、敵の第一印象があまりに強すぎてしまったのだ。
再びこの場に沈黙が生まれ、草木の音がいつも以上に聞こえてくる。
いち早くこの異変に気付いたのはテティスだった。
テティスは静かに空を見つめ、神経を研ぎ澄ましている。
その様子の変化に気付き、ノトスが声を掛けようとするが、テティスはそれを手で制す。
ここでようやく他のメンバーもこの状況の異変に気付く。
明らかに草木のかさかさという音が多いのだ。
その元凶を探るべく、五人は周囲を注意深く観察する。
「これは…蛇?」
最初にその正体を特定したノトスが小さな声で呟く。
すると、その途端に周りにいた数十匹の蛇が同時に動きを止め、頭を持ち上げて五人のことを直視する。
その数秒後、数十匹の蛇たちが一斉に襲い掛かる。
「ヴァルカン頼む!」
ノトスが大声で指示をする。
ヴァルカンは即座にそれに応え、剣を抜くと、五人を中心とした火柱を生み出す。
凄まじい轟音とともに蛇たちは一匹残らず丸焼きになる。
ホッとしたのも束の間、森の奥からさらに大量の蛇が出現する。
ヴァルカンは再び剣を構える。
しかし、その行為はノトスに止められてしまう。
「恐らく無駄だろうね…。この数と僕たちを狙っていることを考えると、この蛇たちは恐らく敵の使いだろう。敵が近くにいることを考えるのなら、一刻も早く離れた方がいい」
「それに、この蛇が敵の使いだというのなら、情報は共有されるはず。場所がばれている以上、ここにとどまることはもうできないわ。私もノトスに賛成よ」
頭脳派であるノトスとテティスの二人の意見に押され、ヴァルカンは大人しく剣をしまい、五人は一斉に走り出す。
「相手が蛇なら木を登って逃げるのがいいけど、流石に今から木登りしたる時間はなさそうね…」
蛇の数は地面を埋め尽くすほどに増殖しており、あと数十秒で五人に追いつくというところまできていた。
「それならいい案があるよ。みんな下手に動かないで…ね!」
テティスの発言を聞いたノトスは自らの双剣を抜き、風龍の力で上昇気流を発生させ、全員を太い木の枝の部分に着地させる。
それから五人は枝の上を飛びながら逃げ回った。
追ってきている蛇の数がかなり少なくなり、あと少しで逃げ切れる。
五人全員がそう思っていた。
しかし、ここで最悪の事態が五人を襲う。
最初は気が付かなかったが、確実に地鳴りが聞こえてくるのだ。
それも、少しずつ大きくなって。
「いや…違う…大きくなってるわけじゃねえ…近づいてきてるのか…まさかあいつが…」
独り言を言い始めたゼウスを気にかけてノトスが声をかける。
「どうかした?」
「なんか少し嫌な予感がする。最悪のケースに備えておいた方がいいかもしれねえ」
『最悪のケースって何?』とノトスが聞き返すことはできなかった。
何故なら、五人の進行方向の先に大きな音と振動とともに、大量の砂が舞い上がったからだ。
五人は何が起きたか分からず、ただ呆然としていた。
「ようやく追いつけたか…。久しぶりだな」
砂埃の中から声が聞こえてきた。
そしてその姿を捉えた五人は絶望に打ちひしがれることになる。
そこにいたのは以前、王家の複数人で戦っても一切歯が立たなかった最強の軍人、アレスだった。
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