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反逆軍
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数時間後、ガイアはノックの音で目を覚ます。
「んん…はあい…」
「私。そろそろ食事の時間だから呼びにきたの。食べれそう?」
どうやらテティスがわざわざ食事に呼びに来てくれたらしい。
「分かった……すぐ行く…」
ガイアは寝ぼけた頭で返事をし、すぐに食事の準備をする。
「あれ?何で私寝てたんだっけ?」
ぼんやりした頭でガイアは記憶を辿っていった。
「そうだ…確か昨日……」
ガイアは昨日の事を思い出し、気分が重くなってしまう。
しかし、ある程度時間が空いた事で比較的気分は昨日の夜や朝よりもマシになっていた。
ガイアは気持ちを切り替え、ドアを開けた。
「わあっ⁉︎びっくりした……まだいたの?」
ドアの前にはテティスが立っていた。
「ただ立ってただけでしょ?何でそんなに驚くのよ……せっかく心配して待ってたのに……」
テティスはやや不満げに呟く。
「まあでも、ガイアが元気そうで良かったわ。……元気よね?」
「うん!もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「そう、なら良かったわ。早く食堂に行きましょ。みんな待ってるわよ」
「はーい」
それからテティスとガイアは一緒に食堂に向かった。
「ねえガイア…これ聞くべきかどうか迷っていたけど聞いてもいい?」
道中にテティスがそんな風に話しかけてくる。
「うん、もちろん。変な遠慮はしなくてもいいよ」
「なら遠慮なく聞かせてもらうけど、何か抱え込んでいない?昨日の処刑以外の事で」
「………」
ガイアは即答できなかった。
こういった質問で間を空けてしまえば、それは肯定を意味する。
「やっぱり……ガイア朝から少し様子が変だったから……」
「………」
ガイアはこの質問に対しどう答えればいいのかが分からない。
正直、ガイアとしてはまだ抱えている秘密はまだ教えたくなかった。
そのせいで仲間の身が危険に晒されるのは嫌だったからだ。
「別に言いたくないなら無理して言わなくてもいいのよ。私だって抱えてる事の一つや二つくらいはあるし。多分他のみんなも同じだと思うわ」
ガイアが何も喋らないのを見てテティスはそんな風に優しく声をかける。
「でも、これだけは覚えておいて。私達は何があっても仲間よ。だから、辛くなった時は素直に頼ってね。いい?」
ガイアは無理矢理笑顔を作って言う。
「うん!分かった!ありがとう、テティス」
元気でそう言うガイアの内側は、罪悪感と申し訳なさでいっぱいだった。
(ごめんね…テティス…本当にごめん…みんな)
こんなに優しい仲間を裏切る事が果たして正解かどうかを、ガイアは未だに悩んでいた。
そしてその夜。
ガイアは父に呼び出され、父の部屋へと足を運んだ。
暗い廊下を不安げに歩いて行き、ついに目的の部屋へと到達すると、緊張に満ちた面持ちで扉をノックする。
「入れ」
父の許しを得たガイアはゆっくりと部屋の中へと入って行った。
「今日は何の話を聞かせてくれるの?」
ガイアは明るい口調でそう言った。
敵の情報を得るためにはまず騙さなければならないのは父だ。
そのためにはまず、父の思想に共感したふりをしなければならない。
この話し方はガイアが父の話に興味をっている事をアピールするためのものなのだ。
「今日は彼らが具体的に今まで何を行ってきたのか、そして、これから何をしようとしているのかをお前に話そうと思う」
父はガイアの考えを知ってか知らずかやや上機嫌に『反逆軍』について熱弁を始める。
「どうだ?彼らの素晴らしさが分かったか?」
「うん!すごく面白かった!お父さんの言う通りすごい人達だね!そんな人達に協力してるお父さんもすごい!」
自分の子供にこんな風に褒められて嫌な気分になる親がいるわけもなく、さらに話を進めていく。
「……とまあ、こんな感じだな。こんな素晴らしい活動にお前も参加できるんだ。嬉しいだろう?」
「うん!本当に『反逆軍』ってすごいんだね!」
これはただ言っているだけだ。
本当は、ガイアは父親に対して怒っていた。
ガイアは今まで王家がやってきた事がいかに素晴らしいかを教わりながら育ってきた。
特に、今まで父がやってきた事は間近で見てきた。
それらは全て国のため、王家のためになるものばかりだった。
ガイアは父のことを心から尊敬していた。
そんな父から王家を裏切る話を聞かされ、ガイアは完全に裏切られた気持ちになってしまった。
今まで持っていた父の尊敬も既にない。
今ガイアの中にあるのは父に対する怒りと軽蔑だけだ。
しかし、今はそれを表に出さない。
今ガイアがすべき事は、父を騙し、敵の情報を手に入れ、仲間を守る事である。
「ねえねえ、その人達がすごいのは分かったけど、そんな人達に私が協力出来る事ってあるの?」
「勿論だ。むしろ、お前にしかできないと事がある」
「それって?」
「単刀直入に言おう。お前には内通者としての役割を果たしてもらいたい」
「内通者?」
「そうだ。俺は普段王家の当主同士でしか会わない上に仕事で忙しい。そこで、子供達の様子はお前が観察して彼らに伝えて欲しいんだ。できるか?」
「うん!もちろん!私にできる事があればなんでもするよ!」
「それは頼もしいな。では、早速明日彼らの幹部とあって情報交換の仕方について決めるとしよう。行けるか?」
「もちろん!」
こうして、ガイアの仲間を守るための裏切りが始まった。
「んん…はあい…」
「私。そろそろ食事の時間だから呼びにきたの。食べれそう?」
どうやらテティスがわざわざ食事に呼びに来てくれたらしい。
「分かった……すぐ行く…」
ガイアは寝ぼけた頭で返事をし、すぐに食事の準備をする。
「あれ?何で私寝てたんだっけ?」
ぼんやりした頭でガイアは記憶を辿っていった。
「そうだ…確か昨日……」
ガイアは昨日の事を思い出し、気分が重くなってしまう。
しかし、ある程度時間が空いた事で比較的気分は昨日の夜や朝よりもマシになっていた。
ガイアは気持ちを切り替え、ドアを開けた。
「わあっ⁉︎びっくりした……まだいたの?」
ドアの前にはテティスが立っていた。
「ただ立ってただけでしょ?何でそんなに驚くのよ……せっかく心配して待ってたのに……」
テティスはやや不満げに呟く。
「まあでも、ガイアが元気そうで良かったわ。……元気よね?」
「うん!もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「そう、なら良かったわ。早く食堂に行きましょ。みんな待ってるわよ」
「はーい」
それからテティスとガイアは一緒に食堂に向かった。
「ねえガイア…これ聞くべきかどうか迷っていたけど聞いてもいい?」
道中にテティスがそんな風に話しかけてくる。
「うん、もちろん。変な遠慮はしなくてもいいよ」
「なら遠慮なく聞かせてもらうけど、何か抱え込んでいない?昨日の処刑以外の事で」
「………」
ガイアは即答できなかった。
こういった質問で間を空けてしまえば、それは肯定を意味する。
「やっぱり……ガイア朝から少し様子が変だったから……」
「………」
ガイアはこの質問に対しどう答えればいいのかが分からない。
正直、ガイアとしてはまだ抱えている秘密はまだ教えたくなかった。
そのせいで仲間の身が危険に晒されるのは嫌だったからだ。
「別に言いたくないなら無理して言わなくてもいいのよ。私だって抱えてる事の一つや二つくらいはあるし。多分他のみんなも同じだと思うわ」
ガイアが何も喋らないのを見てテティスはそんな風に優しく声をかける。
「でも、これだけは覚えておいて。私達は何があっても仲間よ。だから、辛くなった時は素直に頼ってね。いい?」
ガイアは無理矢理笑顔を作って言う。
「うん!分かった!ありがとう、テティス」
元気でそう言うガイアの内側は、罪悪感と申し訳なさでいっぱいだった。
(ごめんね…テティス…本当にごめん…みんな)
こんなに優しい仲間を裏切る事が果たして正解かどうかを、ガイアは未だに悩んでいた。
そしてその夜。
ガイアは父に呼び出され、父の部屋へと足を運んだ。
暗い廊下を不安げに歩いて行き、ついに目的の部屋へと到達すると、緊張に満ちた面持ちで扉をノックする。
「入れ」
父の許しを得たガイアはゆっくりと部屋の中へと入って行った。
「今日は何の話を聞かせてくれるの?」
ガイアは明るい口調でそう言った。
敵の情報を得るためにはまず騙さなければならないのは父だ。
そのためにはまず、父の思想に共感したふりをしなければならない。
この話し方はガイアが父の話に興味をっている事をアピールするためのものなのだ。
「今日は彼らが具体的に今まで何を行ってきたのか、そして、これから何をしようとしているのかをお前に話そうと思う」
父はガイアの考えを知ってか知らずかやや上機嫌に『反逆軍』について熱弁を始める。
「どうだ?彼らの素晴らしさが分かったか?」
「うん!すごく面白かった!お父さんの言う通りすごい人達だね!そんな人達に協力してるお父さんもすごい!」
自分の子供にこんな風に褒められて嫌な気分になる親がいるわけもなく、さらに話を進めていく。
「……とまあ、こんな感じだな。こんな素晴らしい活動にお前も参加できるんだ。嬉しいだろう?」
「うん!本当に『反逆軍』ってすごいんだね!」
これはただ言っているだけだ。
本当は、ガイアは父親に対して怒っていた。
ガイアは今まで王家がやってきた事がいかに素晴らしいかを教わりながら育ってきた。
特に、今まで父がやってきた事は間近で見てきた。
それらは全て国のため、王家のためになるものばかりだった。
ガイアは父のことを心から尊敬していた。
そんな父から王家を裏切る話を聞かされ、ガイアは完全に裏切られた気持ちになってしまった。
今まで持っていた父の尊敬も既にない。
今ガイアの中にあるのは父に対する怒りと軽蔑だけだ。
しかし、今はそれを表に出さない。
今ガイアがすべき事は、父を騙し、敵の情報を手に入れ、仲間を守る事である。
「ねえねえ、その人達がすごいのは分かったけど、そんな人達に私が協力出来る事ってあるの?」
「勿論だ。むしろ、お前にしかできないと事がある」
「それって?」
「単刀直入に言おう。お前には内通者としての役割を果たしてもらいたい」
「内通者?」
「そうだ。俺は普段王家の当主同士でしか会わない上に仕事で忙しい。そこで、子供達の様子はお前が観察して彼らに伝えて欲しいんだ。できるか?」
「うん!もちろん!私にできる事があればなんでもするよ!」
「それは頼もしいな。では、早速明日彼らの幹部とあって情報交換の仕方について決めるとしよう。行けるか?」
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