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反逆軍
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五人が闘技場の中にこっそりと忍び込む。
「本当にここでいいのか?見晴らし良すぎだろ」
「大丈夫。ここにいる全員の意識は中にいるアレスとヘカテーに向いている。誰もこんな場所は警戒してないよ」
そう話す声も最小限だ。
とは言っても、観客の声がそれなりに大きいので、話す時の声はどうしても大きくなってしまう。
故に、あまりたくさんの会話はできない。
すると、突然アレスが闘技場の真ん中で手を叩く。
雷が落ちたかの様な大きな音が鳴り、ざわついていた観客達の声が一瞬で静まる。
「これより!裏切者ヘカテーへの裁きを始める!」
アレスの声は闘技場全体に響く。
その声からもアレスの強さと迫力が伝わってくる。
「だが!我々も悪魔ではない!裏切りの疑いをかけられたヘカテーにもチャンスがある!もし!ヘカテーが裏切り者でなければ!無実の罪で裁かれようとする者を神が放っておくはずがない!もし!これからの戦いでヘカテーが勝利した場合!ヘカテーを無実とする!以上だ!」
言い終えたアレスはヘカテーの前へと向き直る。
向かい合う二人の間に一人のヴァルカン達と同じ年齢くらいの少女が入り込む。
「では、私が立会人を務めます。それでは!用意!」
アレスが拳を構え、ヘカテーは杖をほんの僅かに持ち上げる。
「始め!」
その声と同時に少女はすぐにその場から離れる。
その一瞬後、アレスがいきなり飛びかかる。
アルスの放つ突きを、ヘカテーは杖で受ける。
しかし、威力は殺し切ることが出来ず、後ろに大きく飛ばされてしまう。
ヘカテーは地面に杖を突き立て、ギリギリで体制を立て直す。
「まだまだだっ!」
片膝をついた状態のヘカテーに、アレスは更なる攻撃を仕掛ける。
アレスがヘカテーに二撃目を与えようとした瞬間、地面の魔法陣から白く光る鎖が現れ、アレスの体を捉える。
罠型の設置魔術である。
体制を立て直すために杖を突き立てた時に仕掛けたのだ。
ヘカテーはアレスの動きが止まったタイミングで大きく距離を取る。
「なんでヘカテーばあのまま攻撃しないの?今ならアレスは動けないんだから攻撃し放題なのに……」
試合を見ながらガイアが呟く。
「それは多分、ヘカテーがこの試合に勝つ気がないからだろうね……」
「えっ?それってどういう事?」
「ヘカテーの目的はアレスの全力を引き出させ、僕達にそれを伝えること。でも、もしここでアレスを攻撃してしまえば、その分体力を消費してしまう」
「でも、それで勝てるなら…」
「ヘカテーはアレスに自分の攻撃が効かないと考えてるんだよ」
ガイアが次の疑問を口に出し切る前にノトスが説明する。
「攻撃が効かないなら攻撃する理由がない」
「でも、そんなの私達がここにいなきゃ何の意味もないじゃん」
「いや、この戦いが終わった後、敵はすぐに僕らを探そうとするはずだ。もしそこで見つかれば、今度こそ全ての戦力を導入される可能性が高い。でも、この戦いでアレスに全力を出させれば……」
「疲れてまともに動けない、あるいは、普段の実力を引き出せないってことね…ヘカテーって本当にすごいね」
「おい、お前ら喋りすぎだぞ。見つかったらどうするつもりだ?それに、今はアレスの実力を見極める事の方が重要だ」
ノトスとガイアはゼウスの言葉に頷き、再びアレスとヘカテーの戦いに目を移す。
いつの間にか鎖の拘束を破ったアレスがヘカテーに近づこうとする。
ヘカテーは杖から光線を放って応戦する。
流石のアレスもその攻撃を受けはしなかったが、完璧に攻撃を避けながら距離を詰めていく。
すると、何故かヘカテーは攻撃を止めた。
よく見ると、ヘカテーの杖の先が少しずつ光出し、その光は少しずつ大きくなっていった。
アレスは何かに気付き立ち止まる。
しかし、時既にに遅し。
次の瞬間、限界までチャージされ、今までとは明らかに威力の違う光線がアレスを襲う。
「ぬああっ!」
アレスは叫びながら両手を広げ、全身でその攻撃を受けとめる。
受け止めた光線の軌道を上に向け、アレスは難を逃れた。
しかし、今までヴァルカン達が何をしても一切傷つく事のなかったアレスの体にほんの僅かな傷ができていた。
「おい…あれマジかよ…」
アレスの肉体の強さを身をもって実感しているヴァルカン達はその事実に驚愕する。
「流石…としか言いようがないね」
しかし、傷をつけたと言ってもそれはかすり傷程度のものでしかない。
対してヘカテーは今の一撃にほぼ全ての力を使ってしまっていた。
勝負はほとんど決してしまった様なものだった。
今のヘカテーにアレスをどうにかする手段はない。
「中々いい戦いだったぞ。俺に傷を負わせた人間は久しぶりだ」
アレスの拳がヘカテーの杖を折り、体を貫く。
意識を失ったヘカテーの体はぐしゃりと音を立てて地面に落ちる。
「決着!勝者!アレス!」
審判を務める少女の声に観客が沸き立った。
どうやら、裏切り者が消えた事を喜んでいる様だった。
「あいつ…やっぱ相当やべえな…」
「一応聞くけど、さっきのヘカテーより強い威力の攻撃出せる人っている?」
「いるわけないでしょ……あの攻撃でようやくかすり傷ってなら、私達には歯が立たないよ…」
今の試合を見た五人は、改めてアレスの圧倒的な強さを目の当たりにし、今後の戦いに大きな不安を抱えてしまった。
そのせいだろう。
背後から近付く人物に気づけなかったのは。
「おい!貴様ら何者だ!」
慌てて振り返ると、そこには例の甲冑を装備した人間が立っていた。
「本当にここでいいのか?見晴らし良すぎだろ」
「大丈夫。ここにいる全員の意識は中にいるアレスとヘカテーに向いている。誰もこんな場所は警戒してないよ」
そう話す声も最小限だ。
とは言っても、観客の声がそれなりに大きいので、話す時の声はどうしても大きくなってしまう。
故に、あまりたくさんの会話はできない。
すると、突然アレスが闘技場の真ん中で手を叩く。
雷が落ちたかの様な大きな音が鳴り、ざわついていた観客達の声が一瞬で静まる。
「これより!裏切者ヘカテーへの裁きを始める!」
アレスの声は闘技場全体に響く。
その声からもアレスの強さと迫力が伝わってくる。
「だが!我々も悪魔ではない!裏切りの疑いをかけられたヘカテーにもチャンスがある!もし!ヘカテーが裏切り者でなければ!無実の罪で裁かれようとする者を神が放っておくはずがない!もし!これからの戦いでヘカテーが勝利した場合!ヘカテーを無実とする!以上だ!」
言い終えたアレスはヘカテーの前へと向き直る。
向かい合う二人の間に一人のヴァルカン達と同じ年齢くらいの少女が入り込む。
「では、私が立会人を務めます。それでは!用意!」
アレスが拳を構え、ヘカテーは杖をほんの僅かに持ち上げる。
「始め!」
その声と同時に少女はすぐにその場から離れる。
その一瞬後、アレスがいきなり飛びかかる。
アルスの放つ突きを、ヘカテーは杖で受ける。
しかし、威力は殺し切ることが出来ず、後ろに大きく飛ばされてしまう。
ヘカテーは地面に杖を突き立て、ギリギリで体制を立て直す。
「まだまだだっ!」
片膝をついた状態のヘカテーに、アレスは更なる攻撃を仕掛ける。
アレスがヘカテーに二撃目を与えようとした瞬間、地面の魔法陣から白く光る鎖が現れ、アレスの体を捉える。
罠型の設置魔術である。
体制を立て直すために杖を突き立てた時に仕掛けたのだ。
ヘカテーはアレスの動きが止まったタイミングで大きく距離を取る。
「なんでヘカテーばあのまま攻撃しないの?今ならアレスは動けないんだから攻撃し放題なのに……」
試合を見ながらガイアが呟く。
「それは多分、ヘカテーがこの試合に勝つ気がないからだろうね……」
「えっ?それってどういう事?」
「ヘカテーの目的はアレスの全力を引き出させ、僕達にそれを伝えること。でも、もしここでアレスを攻撃してしまえば、その分体力を消費してしまう」
「でも、それで勝てるなら…」
「ヘカテーはアレスに自分の攻撃が効かないと考えてるんだよ」
ガイアが次の疑問を口に出し切る前にノトスが説明する。
「攻撃が効かないなら攻撃する理由がない」
「でも、そんなの私達がここにいなきゃ何の意味もないじゃん」
「いや、この戦いが終わった後、敵はすぐに僕らを探そうとするはずだ。もしそこで見つかれば、今度こそ全ての戦力を導入される可能性が高い。でも、この戦いでアレスに全力を出させれば……」
「疲れてまともに動けない、あるいは、普段の実力を引き出せないってことね…ヘカテーって本当にすごいね」
「おい、お前ら喋りすぎだぞ。見つかったらどうするつもりだ?それに、今はアレスの実力を見極める事の方が重要だ」
ノトスとガイアはゼウスの言葉に頷き、再びアレスとヘカテーの戦いに目を移す。
いつの間にか鎖の拘束を破ったアレスがヘカテーに近づこうとする。
ヘカテーは杖から光線を放って応戦する。
流石のアレスもその攻撃を受けはしなかったが、完璧に攻撃を避けながら距離を詰めていく。
すると、何故かヘカテーは攻撃を止めた。
よく見ると、ヘカテーの杖の先が少しずつ光出し、その光は少しずつ大きくなっていった。
アレスは何かに気付き立ち止まる。
しかし、時既にに遅し。
次の瞬間、限界までチャージされ、今までとは明らかに威力の違う光線がアレスを襲う。
「ぬああっ!」
アレスは叫びながら両手を広げ、全身でその攻撃を受けとめる。
受け止めた光線の軌道を上に向け、アレスは難を逃れた。
しかし、今までヴァルカン達が何をしても一切傷つく事のなかったアレスの体にほんの僅かな傷ができていた。
「おい…あれマジかよ…」
アレスの肉体の強さを身をもって実感しているヴァルカン達はその事実に驚愕する。
「流石…としか言いようがないね」
しかし、傷をつけたと言ってもそれはかすり傷程度のものでしかない。
対してヘカテーは今の一撃にほぼ全ての力を使ってしまっていた。
勝負はほとんど決してしまった様なものだった。
今のヘカテーにアレスをどうにかする手段はない。
「中々いい戦いだったぞ。俺に傷を負わせた人間は久しぶりだ」
アレスの拳がヘカテーの杖を折り、体を貫く。
意識を失ったヘカテーの体はぐしゃりと音を立てて地面に落ちる。
「決着!勝者!アレス!」
審判を務める少女の声に観客が沸き立った。
どうやら、裏切り者が消えた事を喜んでいる様だった。
「あいつ…やっぱ相当やべえな…」
「一応聞くけど、さっきのヘカテーより強い威力の攻撃出せる人っている?」
「いるわけないでしょ……あの攻撃でようやくかすり傷ってなら、私達には歯が立たないよ…」
今の試合を見た五人は、改めてアレスの圧倒的な強さを目の当たりにし、今後の戦いに大きな不安を抱えてしまった。
そのせいだろう。
背後から近付く人物に気づけなかったのは。
「おい!貴様ら何者だ!」
慌てて振り返ると、そこには例の甲冑を装備した人間が立っていた。
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