龍の王国

蒼井龍

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全面戦争

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「ゼウスが…もう死んでる…?」

 アダマスの唐突な発言に四人はしばらくの間動く事が出来なかった。
 当然、敵はその隙を見逃さない。
 アダマスは四人の隙をついて『斬撃』を使って攻撃する。
 いち早く正気に戻ったガイアが地面に剣を突き立て、地面を迫り上げて壁を作り、攻撃を防ぐ。

「あはははっ!やるねやるねっ!これで全員殺すつもりだったのにねっ!あはははっ!」

 ようやく全員が正気を取り戻した。

「どうしてゼウスが…僕達の仲間が死んでるって断言できるんだ…?」

 ノトスが俯きながら問いかける。
 
「あはははっ!だってだってっ!僕の仲間と戦ってるからだよっ!アレスは反逆軍レジスタンスの中じゃ最強の戦士って言われてるからねっ!ちなみにこの僕でもアレスには傷一つ負わせられないよっ!僕に苦戦してる時点で君達じゃアレスには絶対に勝てないよっ!あはははっ!」

「……三人共…ここ任せていい?」

 アダマスの話を聞き終えたノトスがそう言った。
 何をしに行こうとしているのかは言われなくても理解できる。

「…私も行く。あいつの話が本当なら、一人で行くのはあまりにも危険過ぎる」

「なら、ここは私とヴァルカンが引き受けるわ。いいわよね?ヴァルカン」

「もちろん。二人共、ゼウスをよろしく」

 ガイアとノトスは互いに頷き合ってからその場を後にする。
 その様子を見届けてから、再びヴァルカンは炎を纏う。

「…行くよ!」

 ヴァルカンは遠距離から炎での攻撃を繰り出す。

「あはははっ!いいねいいねっ!さっきと全く同じ攻撃だねっ!分かりやすくて殺しやすいよっ!あはははっ!」

 アダマスはいとも簡単に炎を捌いてみせた。
 しかし、そんな事はヴァルカンの想定内。
 これで倒す気などさらさらない。
 いわばミスディレクション、ハッタリだ。
 炎に紛れて接近してきたテティスの攻撃こそが本命だ。
 この二人は事前に相談など一切してない。
 僅かな時間でアイコンタクトのみで意思疎通を図ったのだ。
 昔からずっと一緒に過ごしていたからこそできる芸当だ。

「これで…どうだ!」

 テティスも龍の力を解放し、突き技と同時に剣の先から水を放出する。
 言っておくが、これは水鉄砲の様な威力の弱いものではない。
 水の勢い、即ち、水圧を利用した超強力な攻撃。
 ダイヤモンドさえも砕くと言われる、ウォーターカッター。
 それに限りなく近い威力の攻撃だ。
 この攻撃を零距離で食らえば、まず間違いなく死ぬ。
 しかし、相手も強者。
 そんな攻撃を素直に食らうわけがない。
 アダマスはテティスの攻撃が届くギリギリのタイミングで横にずれて攻撃を回避する。
 攻撃体制だったテティスはまだ無防備な状態だ。

「あはははっ!まずは一人目っ!あはははっ!」

 アダマスはテティスの首をそのまま刎ねようとする。

「テティス!そのまま倒れて!」

 テティスは仲間の言葉を信じ、その場に倒れ込む。
 ヴァルカンは仲間を助けるため、今までよりも明らかに威力の高い炎を放つ。
 アダマスは大きく飛び上がり、屋根の上に避難する。

「……君達全然面白くないなあ…」

「⁉︎」

 二人は同時に驚いた。
 敵の気配が明らかに変わったからだ。
 ついさっきまではふわふわした雰囲気をだったのが、いきなり冷たく、鋭くなった。

「…僕はね…殺すのが好きなんだよ。でもね、殺されるのは嫌い。少しくらいなら抵抗してくれる方が面白いからいいんだよ。でも、君達は明らかにやり過ぎてる。全く楽しくないし面白くない。だから、遊びはやめるね」

 その刹那、アダマスは今までより更に早い速度で攻撃を仕掛けてくる。
 今までの笑顔も消えている。
 ヴァルカンはアダマスから距離を取る。
 直感で理解できる。
 今のアダマスには、炎での威嚇は通用しないことに。

「ヴァルカン!逃げて!」

 テティスは後ろから攻撃を仕掛ける。

「…最初からこうすればよかったよ」

 ヴァルカンを狙ったのはテティスを釣るための罠だと気付いた時にはもう遅く、アダマスの鎌がテティスの首に触れてしまっていた。
 

 
 
 

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