6 / 40
王家
6
しおりを挟む
「そうなんだ……もうそんなに時間が経つんだね……」
ヴァルカンはしみじみとそう呟いた。
再び気まずい沈黙が場を支配した。
「ごめんなさい……辛い出来事を思い出させて……」
テティスはすぐに謝罪するが、ヴァルカンに気にした様子はなかった。
「いや、いいよ。あの事は確かに辛かったけど、忘れたい記憶でもないし。あの子の事は忘れたくない……まあ、名前はもう忘れちゃったんだけどね……テティスは覚えてる?」
「もちろん。ずっと一緒に勉強して遊んでたから……名前は確かフローラ…?」
実は、テティスと一番仲の良かった仲間はそのフローラだった。
だから、ヴァルカンがここであまり気にしていないような事を言うのは当然なのだ。
何故なら、この話がより辛く感じるのは、テティスの方だから。
親友の死は、子供にとってはとてつもなく重い。
まあ、親友でなくとも、誰かの死の瞬間を見るのは、あまり気分の良いものではないのだが……
「私達は大丈夫だよ。あの時の事は、仕方のない事だって、もう割り切ってるたから」
その言葉には、中身とは裏腹に、猛烈な悲しみが込められていた。
「もしかしたら、三年前の事を無意識に思い出したせいでそういう夢を見たんじゃない?あの時はみんな泣いてたし…」
テティスは場の雰囲気をなんとかしようとするが、喋れば喋るほどに逆効果になっていた。
「ほら、最近だと『反逆軍』の動きも結構激しくなってるみたいだし……」
「そうだね……」
ヴァルカンには適当な相槌を打つ事しか出来なかった。
二人共が、なんとか話題をずらしたいと考えているが、それは中々難しい。
すると、テティスが大きなあくびをした。
やはり、相当疲れているのだろう。
「テティスも疲れてるでしょ?もう寝た方がいいよ。僕はもう大丈夫だから」
ヴァルカンはそれとなく話を打ち切った。
「うん、分かった。おやすみなさい」
テティスは何故かヴァルカンのベッドで横になると、そのまま寝てしまった。
「………」
ヴァルカンは言葉を失った。
部屋に戻るように促したつもりだったが、逆効果になってしまったらしい。
「よく人のベッドで寝れるなあ……」
皮肉でもなんでもなくそう思った。
昔から、ヴァルカンにはテティスの行動がよく分かっていない。
普段はきちんとしている少女なのだが、自分と一緒にいる時だけ、よく分からない行動を取るのだ。
他の人に聞いても、ヴァルカンが見ているような行動は確認されていないため、ヴァルカンはなんとなく自分が嫌われているのだと思っている。
しかし、そう考えても辻褄が合わない事が多いので、ここ最近はテティスの謎の行動については考えないようにしている。
「まあいいや…僕ももう寝……」
そう言ってベッドに寝転がろうとするが、よく考えてみれば、そこには一人の少女が眠っている。
さて、ここで寝ても良いのだろうか?
何故かは分からないが、物凄く不安な気分になる。
かといって、他にすることもないし、寝る場所もないので、仕方なくテティスの横に寝転がる。
最初は変な緊張で眠れなかったのだが、すぐに寝付く事が出来た。
夢のせいで寝れないとも思ったが、テティスが一緒のおかげか、案外すんなりと眠れた。
今度は変な夢を見ずに、ぐっすりと眠れた。
その翌日、目を覚ましたテティスが、顔を真っ赤にして、朝から大騒ぎをしていた事までは言う必要はないだろう。
ヴァルカンはしみじみとそう呟いた。
再び気まずい沈黙が場を支配した。
「ごめんなさい……辛い出来事を思い出させて……」
テティスはすぐに謝罪するが、ヴァルカンに気にした様子はなかった。
「いや、いいよ。あの事は確かに辛かったけど、忘れたい記憶でもないし。あの子の事は忘れたくない……まあ、名前はもう忘れちゃったんだけどね……テティスは覚えてる?」
「もちろん。ずっと一緒に勉強して遊んでたから……名前は確かフローラ…?」
実は、テティスと一番仲の良かった仲間はそのフローラだった。
だから、ヴァルカンがここであまり気にしていないような事を言うのは当然なのだ。
何故なら、この話がより辛く感じるのは、テティスの方だから。
親友の死は、子供にとってはとてつもなく重い。
まあ、親友でなくとも、誰かの死の瞬間を見るのは、あまり気分の良いものではないのだが……
「私達は大丈夫だよ。あの時の事は、仕方のない事だって、もう割り切ってるたから」
その言葉には、中身とは裏腹に、猛烈な悲しみが込められていた。
「もしかしたら、三年前の事を無意識に思い出したせいでそういう夢を見たんじゃない?あの時はみんな泣いてたし…」
テティスは場の雰囲気をなんとかしようとするが、喋れば喋るほどに逆効果になっていた。
「ほら、最近だと『反逆軍』の動きも結構激しくなってるみたいだし……」
「そうだね……」
ヴァルカンには適当な相槌を打つ事しか出来なかった。
二人共が、なんとか話題をずらしたいと考えているが、それは中々難しい。
すると、テティスが大きなあくびをした。
やはり、相当疲れているのだろう。
「テティスも疲れてるでしょ?もう寝た方がいいよ。僕はもう大丈夫だから」
ヴァルカンはそれとなく話を打ち切った。
「うん、分かった。おやすみなさい」
テティスは何故かヴァルカンのベッドで横になると、そのまま寝てしまった。
「………」
ヴァルカンは言葉を失った。
部屋に戻るように促したつもりだったが、逆効果になってしまったらしい。
「よく人のベッドで寝れるなあ……」
皮肉でもなんでもなくそう思った。
昔から、ヴァルカンにはテティスの行動がよく分かっていない。
普段はきちんとしている少女なのだが、自分と一緒にいる時だけ、よく分からない行動を取るのだ。
他の人に聞いても、ヴァルカンが見ているような行動は確認されていないため、ヴァルカンはなんとなく自分が嫌われているのだと思っている。
しかし、そう考えても辻褄が合わない事が多いので、ここ最近はテティスの謎の行動については考えないようにしている。
「まあいいや…僕ももう寝……」
そう言ってベッドに寝転がろうとするが、よく考えてみれば、そこには一人の少女が眠っている。
さて、ここで寝ても良いのだろうか?
何故かは分からないが、物凄く不安な気分になる。
かといって、他にすることもないし、寝る場所もないので、仕方なくテティスの横に寝転がる。
最初は変な緊張で眠れなかったのだが、すぐに寝付く事が出来た。
夢のせいで寝れないとも思ったが、テティスが一緒のおかげか、案外すんなりと眠れた。
今度は変な夢を見ずに、ぐっすりと眠れた。
その翌日、目を覚ましたテティスが、顔を真っ赤にして、朝から大騒ぎをしていた事までは言う必要はないだろう。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる