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王家
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「う~ん……うわあっ!」
ヴァルカンは自分の声で飛び起き、その拍子にベットから転げ落ちてしまった。
「いてて……」
ヴァルカンは腰をさすりながらゆっくりと立ち上がる。
そして辺りを見渡した。
どうやらここは自室のようだが、何故ここにいるのかが分からない。
仲間達と稽古をしていたところまでは思い出せるのだが、ゼウスと戦い終わった後から記憶がない。
一体自分の身に何が合ったのだろうか?
一人でそう考えていると、部屋のドアが開き、テティスが入ってきた。
テティスはヴァルカンの姿を見るなり口を開く。
「目を覚ましてよかった~…とっても心配したのよ?体は大丈夫?」
どうやら彼女はヴァルカンがベッドから落ちた音を聞きつけてやってきたらしい。
「うん、体はもう平気だよ。でも、昼にゼウスと稽古した辺りから記憶が飛んでいてね…僕、一体どうなってたの?」
テティスは言いにくそうに答えた。
「そのお…ゼウスの手加減無しの攻撃を食らって…それで、気絶していたの…」
「ああ…なるほどね…どおりで…」
ヴァルカンは難しい顔をして納得する。
「全く…少しくらい手加減をしてほしいよ……それで、僕はどれくらいの間気を失っていたの?外を見るに、もう夜遅いみたいだけど…」
「あなたが気絶してから既に十時間以上が経過しているわ」
その言葉を聞いたヴァルカンに、一つの疑問が頭をよぎる。
「え~っと…こんな夜遅くに君は何をしているの?」
「もちろん、あなたがいつ目覚めても対応できるように部屋の前にいたわ。安心して。誰もこの部屋に入れてないから」
「……」
言葉を失うヴァルカン。
言っておくが、この二人を含めた王位継承者である五人は、まだ十歳程度である。
そんな子供にとって、この時間まで起きているのはかなりの苦痛だ。
テティスがどれだけヴァルカンの事を心配していたのかがよく分かる行動だった。
「そんなことより、あなた何度か苦しそうに唸っていたけど本当に大丈夫?部屋の外にまで苦しそうな声が聞こえたわよ」
自分の声で起きたのだから、自分が声を発していたのは分かっていた。
だが、それほど大きな声を出していたとは、自分でも驚きだった。
「少し…嫌な夢を見てね」
そうはぐらかした。
どんな夢かは答えたくない。
しかし、ヴァルカンを心配するテティスは、当然のように聞いてくる。
「どんな夢?」
テティスは勘がいいので、嘘をついても意味がなく、すぐに真実を看過されてしまう。
仕方なくヴァルカンは真相を話す。
「みんなが死ぬ夢を見たんだ……何故かは分からないけど、すごくリアルな夢で、とても怖かった…」
テティスは申し訳なさそうにする。
「それは…なんというか…本当に嫌だね……」
話題が話題なだけに、雰囲気は最悪だった。
ヴァルカンは立っているのが疲れたのか、ベッドに座り込んだ。
「君も座ったら?立ちっぱなしは大変でしょ?」
「………」
テティスは沈黙し、頬を赤らめた。
この部屋には椅子というものは存在しない。
王になるための必要な勉強は、城の中にある図書館で、親の目があるところでやる事になっている。
食事もみんなで集まり、大広間で集まって食べるため、個人の部屋に机や椅子は必要ないのだ。
テティスはしばらく逡巡した後、無言でヴァルカンの隣に座った。
テティスはほんの僅かにヴァルカンに体重を預けるよう座る。
「…何でそんな夢を見たんだろうね…」
気まずい沈黙を打破するために、テティスは必死に言葉を絞り出す。
「分からない……でも、現実になりそうで、すごく嫌だったんだ…今夜はもう眠れそにない」
テティスは元気のないヴァルカンをどうにか慰めようとする。
しかし、どんな言葉を投げかけていいか分からなかった。
「あれからもう三年……か」
無意識に言葉を発していた。
「えっ…?」
当然のようにヴァルカンは反応した。
自分で振っておいてなんだが、今この場で話題にするにはとても重過ぎる話題だった。
ヴァルカンは自分の声で飛び起き、その拍子にベットから転げ落ちてしまった。
「いてて……」
ヴァルカンは腰をさすりながらゆっくりと立ち上がる。
そして辺りを見渡した。
どうやらここは自室のようだが、何故ここにいるのかが分からない。
仲間達と稽古をしていたところまでは思い出せるのだが、ゼウスと戦い終わった後から記憶がない。
一体自分の身に何が合ったのだろうか?
一人でそう考えていると、部屋のドアが開き、テティスが入ってきた。
テティスはヴァルカンの姿を見るなり口を開く。
「目を覚ましてよかった~…とっても心配したのよ?体は大丈夫?」
どうやら彼女はヴァルカンがベッドから落ちた音を聞きつけてやってきたらしい。
「うん、体はもう平気だよ。でも、昼にゼウスと稽古した辺りから記憶が飛んでいてね…僕、一体どうなってたの?」
テティスは言いにくそうに答えた。
「そのお…ゼウスの手加減無しの攻撃を食らって…それで、気絶していたの…」
「ああ…なるほどね…どおりで…」
ヴァルカンは難しい顔をして納得する。
「全く…少しくらい手加減をしてほしいよ……それで、僕はどれくらいの間気を失っていたの?外を見るに、もう夜遅いみたいだけど…」
「あなたが気絶してから既に十時間以上が経過しているわ」
その言葉を聞いたヴァルカンに、一つの疑問が頭をよぎる。
「え~っと…こんな夜遅くに君は何をしているの?」
「もちろん、あなたがいつ目覚めても対応できるように部屋の前にいたわ。安心して。誰もこの部屋に入れてないから」
「……」
言葉を失うヴァルカン。
言っておくが、この二人を含めた王位継承者である五人は、まだ十歳程度である。
そんな子供にとって、この時間まで起きているのはかなりの苦痛だ。
テティスがどれだけヴァルカンの事を心配していたのかがよく分かる行動だった。
「そんなことより、あなた何度か苦しそうに唸っていたけど本当に大丈夫?部屋の外にまで苦しそうな声が聞こえたわよ」
自分の声で起きたのだから、自分が声を発していたのは分かっていた。
だが、それほど大きな声を出していたとは、自分でも驚きだった。
「少し…嫌な夢を見てね」
そうはぐらかした。
どんな夢かは答えたくない。
しかし、ヴァルカンを心配するテティスは、当然のように聞いてくる。
「どんな夢?」
テティスは勘がいいので、嘘をついても意味がなく、すぐに真実を看過されてしまう。
仕方なくヴァルカンは真相を話す。
「みんなが死ぬ夢を見たんだ……何故かは分からないけど、すごくリアルな夢で、とても怖かった…」
テティスは申し訳なさそうにする。
「それは…なんというか…本当に嫌だね……」
話題が話題なだけに、雰囲気は最悪だった。
ヴァルカンは立っているのが疲れたのか、ベッドに座り込んだ。
「君も座ったら?立ちっぱなしは大変でしょ?」
「………」
テティスは沈黙し、頬を赤らめた。
この部屋には椅子というものは存在しない。
王になるための必要な勉強は、城の中にある図書館で、親の目があるところでやる事になっている。
食事もみんなで集まり、大広間で集まって食べるため、個人の部屋に机や椅子は必要ないのだ。
テティスはしばらく逡巡した後、無言でヴァルカンの隣に座った。
テティスはほんの僅かにヴァルカンに体重を預けるよう座る。
「…何でそんな夢を見たんだろうね…」
気まずい沈黙を打破するために、テティスは必死に言葉を絞り出す。
「分からない……でも、現実になりそうで、すごく嫌だったんだ…今夜はもう眠れそにない」
テティスは元気のないヴァルカンをどうにか慰めようとする。
しかし、どんな言葉を投げかけていいか分からなかった。
「あれからもう三年……か」
無意識に言葉を発していた。
「えっ…?」
当然のようにヴァルカンは反応した。
自分で振っておいてなんだが、今この場で話題にするにはとても重過ぎる話題だった。
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