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第四話
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カチュアは商品整理を再開しながら、こっそり自嘲する。
自分から逃げておいて“切り捨てられた”とはずいぶん勝手な言い草だ。そもそも、逃げ出すあたり自分らしくない。
けれど、カチュアは学んでしまった。
世の中には道理や秩序というものがあること。人が礼儀作法を重んじるのは、相手を尊重するためだということ。いらぬ騒ぎを起こさず日々平穏に過ごすためには、自分を抑えなければいけない時もあること。手遅れになる前に、危機は回避すべきだということ。
もう以前のように、思ったことを考えなしに言い放つような真似はできない。それによって直接その言葉を投げかけた人だけでなく、自分の周りの人も傷つけてしまうことがあると知ってしまったから。
いろんな考えにかんじがらめになった自分に、カチュアはほとほと嫌気がさす。けれど以前のようには戻りたくない。ものを知らず無鉄砲なことばかりして、他人の矜持を傷つけ自分の立場を危うくし、自分に好意を抱いてくれている人々に心配をかけるような人間には。
兄たちが、まだ帰ってきてなくてよかった。兄たちと歳が離れ、幼い頃に母を亡くしたカチュアを、兄たちはこれでもかというくらい溺愛する。婚約を解消したと聞いたら、うっとおしいほど心配したはずだ。
父とともに無事帝国を脱出できた兄たちは、現在レシュテンを通過中だ。商隊を率いていることもあって、帰りつくのにもう一カ月くらいかかるだろう。
けれど、兄たちの代わりにしつこいくらい心配してくる人物がここに一人。
「カチュア、本当にいいの? デイン様との結婚をお断りして、後悔しない?」
フィーナが心配そうに後ろから声をかけてくる。カチュアは振り向かずに答えた。
「デインと結婚するほうが、よっぽどか後悔すると思うわ。デインと結婚したら嫌でも“平民である自分”を思い知らされるもの」
「カチュア」
たしなめるように名を呼ぶフィーナが話し始める前に、カチュアはふっきるようにして先を続ける。
「あたしはそれ自体平気なの。どんな嫌がらせにも負けるつもりはないし、黙って耐える忍耐力もついたわ。でもデインはわかってくれると思えない。あいつには平民の立場ってもんが理解できないのよ。貴族の血筋を一切引いてないあたしが王妃陛下や公爵様といつでもお話できる立ち位置にあったってこと自体、彼らのプライドを傷つけてたってことがわかんないの。それなのにあたしがデインに嫁いで伯爵夫人になって嫌がらせを受け始めたら、デインは相手と対立を始めちゃうわ。そんなことしたら自分の立場を悪くすることに、気付かないままね。──それか、“失敗した”って思うかも。何かの集まりの度に嫌がらせを受ける妻なんて、伯爵になりたいデインにとって足手まといだもの。本当に結婚したら、きっとデインは後悔するわ」
「──カチュア、自分を傷つけるのはやめて」
フィーナにしては珍しい、怒ったような低い声。滅多に聞くことのない不機嫌な声に、カチュアは反射的に硬直する。普段おとなしい分、怒るとすごく怖いのだ。
「デイン様が足手まといになるからってカチュアを持て余すような人じゃないことくらい、カチュアにもわかってるでしょ? カチュアを庇ってもめごとを起こされるかもしれないけれど、それはカチュアを愛してるからだわ。カチュアがもめごとを起こさないでってお願いすれば、デイン様だってきっとわかってくださるはず。なのに、カチュアは何を恐れているの?」
「恐れる? あたしが?」
振り向きながら、カチュアは馬鹿にしたように言う。
「あたしはね、せいせいしてるの。これでデインのせいで、はらはらしたりいらいらしたりしなくて済むわ。あいつってば十九歳になってもまだ、やることなすこと自分勝手なんだもん。密命のはずなのに騒ぎを起こすし、国王陛下のことを仇名で呼ぶし」
カチュアの嘲るような表情に、フィーナは眉をひそめながら反論した。
「密命のことは、そのおかげで国の正式な査察が入るよりいい成果が出てるって評判だわ。通達があってから行われる査察だと、上の人間が下の人間を脅して問題を隠す傾向があるもの。でも、査察の前に全ての問題が暴かれれば、隠しだてすることなんてできない。デイン様の勝手が止められようとしないのは、国王陛下がデイン様のその働きを認めているからだと思うの。デイン様が国王陛下をその……独自の名前でお呼びするのは、国王陛下がそういう気が置けないやりとりを望んでらっしゃるからだと思うの。わたしが城勤めをしていた頃から、デイン様が公とプライベートを使い分けていらっしゃるようだと感じていたわ。──けど、カチュアだってそれくらいのことは察していたでしょう? そんな話で本心を隠そうとするってことは、やっぱりカチュアはまだデイン様の事が好きなんじゃないの?」
カチュアが懸命に立ち直ろうとしているのに、フィーナは励ますどころか辛い現実に引き戻そうとする。
ひとの気も知らないで──
カチュアはかっとなって叫んだ。
「だからってどうしようもないじゃない! デインはあたしじゃなくて爵位を選んだのよ!? あたしとの約束を勝手に反故にして! 手紙で婚約解消を伝えたのに、三日経っても会いに来るどころか言伝一つもない! きっとほっとしてるんだわ。あたしから婚約解消を切り出されて。所詮デインも貴族の子ってやつよ。伯爵になるなら、平民の妻を持つのは、不利って、気付い……」
カチュアの声から、唐突に力が抜ける。
フィーナの肩越しに見えるのは、三日会えなかっただけでも辛くて辛くて、でも二度と会うわけにはいかない人。
「デイン様! まだ出ていくのは早いですって!」
ケヴィンの従者ロアルが、デインの袖を引っ張って止めようとしている。
どういう取り合わせ……?
二人が既知だとは知ってるけど、何故この二人でカチュアの実家に訪れるのかわからない。それに“まだ”って──
今の話を立ち聞きされていたと知って、カチュアはかっとなる。話を聞かれていたことへの憤り、きまずさ。三日も開けて現れたことへの怒りと戸惑い。それだけじゃない。ロアルの言葉から、フィーナがカチュアから言葉を引き出す役目を買って出たことにも気付く。
カチュアがきっとフィーナを睨みつけると、フィーナがデインに道を譲るところだった。
「もうわかりましたわ。どうぞデイン様、カチュアを連れていってください」
「フィーナっ! 何勝手なことを!」
「カチュア、あなたの気持ちはよくわかったわ。素直にならなきゃ駄目よ。デイン様の話をちゃんと聞いて、不安を解消してもらってきてね」
慌てるカチュアと対照的に、フィーナはにっこり笑って手を振る。
「あたしの気持ちって何!? 勝手に決めつけないで!」
カチュアはフィーナに文句を言いながら、腕を突っ張ってデインに抵抗した。が、デインはカチュアの二の腕をあっさりと掴むと、ずんずんと店内に向かって歩き出す。足を踏ん張って抵抗しようとすると、頭の上からデインの冷めた声が降ってきた。
「暴れると商品崩れるぞ」
それを聞いて、カチュアはぴたっと抵抗をやめる。
店の奥も店内も、商品が所狭しと置かれている。通路も狭くて、すれ違うのも一苦労だ。デインの手をもぎ離そうと暴れたら、何の拍子に商品に当たってしまうかわからない。
商売人にとって、商品は命の次に大事なものだ。デインにまんまと動きを封じ込められ、悔しく思いながらカチュアは言葉で抵抗した。
「離してよ! どこへ行くっていうの!? 三日も会いに来なかったくせに!」
「止められてたからだよ、みんなに。その間考えさせられた。カチュアにオレとの結婚を承諾してもらう方法をさ」
「手紙に書いたでしょ! あたしはあんたとは結婚できないって」
「“できない”っていうのは、“したくない”のと違うだろ?」
店内の客も従業員もやけにデインに協力的で、デインが通る狭い通路からみんな待避して拍手喝采でも送ろうとしているかのようなきらきらした目で見守っている。
ろくに抗議できないまま店の外に連れ出されたカチュアは、店の前にいた馬の上に押し上げられる。
「ちょっと! 王都内の騎乗は法令で禁止されてるんじゃないの!?」
「緊急事態ってことで、国王陛下に許可していただいた」
人前だからか、デインはシグルドに対し敬意を払った話し方をする。意外とわきまえてると感心すべきところだが、今はそんな場合じゃない。
「は!? あんた何国王陛下まで巻き込んでんのよ!」
「声大きいよ。馬がびっくりする」
通りを歩いてる人たちもいるし、馬が暴れ出したら大変だ。カチュアは慌てて口をつぐむ。するとその隙に、デインは鐙に足をかけてひらりとカチュアの隣に乗った。調査官の仕事の際にデインの従者をしているブリュール子爵からすかさず手綱を受け取ると、馬の背に横座りしているカチュアを手綱と自分とで囲った。
街の警備隊がばらばらと出てきて、通りを歩く人たちに道の隅に寄るように指示をする。その警備隊員たちを指揮するのが、フィーナの夫をはじめとした近衛隊士たち。
馬上のカチュアを見上げて、フィーナが笑顔で叫んだ。
「カチュア、しあわせになってね! もうデイン様から離れるなんて考えちゃ駄目よ!」
それで何が起こってるのか察したらしい道沿いの人たちは、口々に「おめでとう!」とか「しあわせになれよ!」とか言い出す。その中にはもちろん、見知った街の人たちもいた。
カチュアはものが言えないくらい真っ青になる。
デインはのんきなもので、「ありがとう」と笑顔で応えて馬を走らせ始める。
もう一頭の馬に乗ったブリュール子爵を引き連れて、デインはここから一番近い王都の出口を目指した。
自分から逃げておいて“切り捨てられた”とはずいぶん勝手な言い草だ。そもそも、逃げ出すあたり自分らしくない。
けれど、カチュアは学んでしまった。
世の中には道理や秩序というものがあること。人が礼儀作法を重んじるのは、相手を尊重するためだということ。いらぬ騒ぎを起こさず日々平穏に過ごすためには、自分を抑えなければいけない時もあること。手遅れになる前に、危機は回避すべきだということ。
もう以前のように、思ったことを考えなしに言い放つような真似はできない。それによって直接その言葉を投げかけた人だけでなく、自分の周りの人も傷つけてしまうことがあると知ってしまったから。
いろんな考えにかんじがらめになった自分に、カチュアはほとほと嫌気がさす。けれど以前のようには戻りたくない。ものを知らず無鉄砲なことばかりして、他人の矜持を傷つけ自分の立場を危うくし、自分に好意を抱いてくれている人々に心配をかけるような人間には。
兄たちが、まだ帰ってきてなくてよかった。兄たちと歳が離れ、幼い頃に母を亡くしたカチュアを、兄たちはこれでもかというくらい溺愛する。婚約を解消したと聞いたら、うっとおしいほど心配したはずだ。
父とともに無事帝国を脱出できた兄たちは、現在レシュテンを通過中だ。商隊を率いていることもあって、帰りつくのにもう一カ月くらいかかるだろう。
けれど、兄たちの代わりにしつこいくらい心配してくる人物がここに一人。
「カチュア、本当にいいの? デイン様との結婚をお断りして、後悔しない?」
フィーナが心配そうに後ろから声をかけてくる。カチュアは振り向かずに答えた。
「デインと結婚するほうが、よっぽどか後悔すると思うわ。デインと結婚したら嫌でも“平民である自分”を思い知らされるもの」
「カチュア」
たしなめるように名を呼ぶフィーナが話し始める前に、カチュアはふっきるようにして先を続ける。
「あたしはそれ自体平気なの。どんな嫌がらせにも負けるつもりはないし、黙って耐える忍耐力もついたわ。でもデインはわかってくれると思えない。あいつには平民の立場ってもんが理解できないのよ。貴族の血筋を一切引いてないあたしが王妃陛下や公爵様といつでもお話できる立ち位置にあったってこと自体、彼らのプライドを傷つけてたってことがわかんないの。それなのにあたしがデインに嫁いで伯爵夫人になって嫌がらせを受け始めたら、デインは相手と対立を始めちゃうわ。そんなことしたら自分の立場を悪くすることに、気付かないままね。──それか、“失敗した”って思うかも。何かの集まりの度に嫌がらせを受ける妻なんて、伯爵になりたいデインにとって足手まといだもの。本当に結婚したら、きっとデインは後悔するわ」
「──カチュア、自分を傷つけるのはやめて」
フィーナにしては珍しい、怒ったような低い声。滅多に聞くことのない不機嫌な声に、カチュアは反射的に硬直する。普段おとなしい分、怒るとすごく怖いのだ。
「デイン様が足手まといになるからってカチュアを持て余すような人じゃないことくらい、カチュアにもわかってるでしょ? カチュアを庇ってもめごとを起こされるかもしれないけれど、それはカチュアを愛してるからだわ。カチュアがもめごとを起こさないでってお願いすれば、デイン様だってきっとわかってくださるはず。なのに、カチュアは何を恐れているの?」
「恐れる? あたしが?」
振り向きながら、カチュアは馬鹿にしたように言う。
「あたしはね、せいせいしてるの。これでデインのせいで、はらはらしたりいらいらしたりしなくて済むわ。あいつってば十九歳になってもまだ、やることなすこと自分勝手なんだもん。密命のはずなのに騒ぎを起こすし、国王陛下のことを仇名で呼ぶし」
カチュアの嘲るような表情に、フィーナは眉をひそめながら反論した。
「密命のことは、そのおかげで国の正式な査察が入るよりいい成果が出てるって評判だわ。通達があってから行われる査察だと、上の人間が下の人間を脅して問題を隠す傾向があるもの。でも、査察の前に全ての問題が暴かれれば、隠しだてすることなんてできない。デイン様の勝手が止められようとしないのは、国王陛下がデイン様のその働きを認めているからだと思うの。デイン様が国王陛下をその……独自の名前でお呼びするのは、国王陛下がそういう気が置けないやりとりを望んでらっしゃるからだと思うの。わたしが城勤めをしていた頃から、デイン様が公とプライベートを使い分けていらっしゃるようだと感じていたわ。──けど、カチュアだってそれくらいのことは察していたでしょう? そんな話で本心を隠そうとするってことは、やっぱりカチュアはまだデイン様の事が好きなんじゃないの?」
カチュアが懸命に立ち直ろうとしているのに、フィーナは励ますどころか辛い現実に引き戻そうとする。
ひとの気も知らないで──
カチュアはかっとなって叫んだ。
「だからってどうしようもないじゃない! デインはあたしじゃなくて爵位を選んだのよ!? あたしとの約束を勝手に反故にして! 手紙で婚約解消を伝えたのに、三日経っても会いに来るどころか言伝一つもない! きっとほっとしてるんだわ。あたしから婚約解消を切り出されて。所詮デインも貴族の子ってやつよ。伯爵になるなら、平民の妻を持つのは、不利って、気付い……」
カチュアの声から、唐突に力が抜ける。
フィーナの肩越しに見えるのは、三日会えなかっただけでも辛くて辛くて、でも二度と会うわけにはいかない人。
「デイン様! まだ出ていくのは早いですって!」
ケヴィンの従者ロアルが、デインの袖を引っ張って止めようとしている。
どういう取り合わせ……?
二人が既知だとは知ってるけど、何故この二人でカチュアの実家に訪れるのかわからない。それに“まだ”って──
今の話を立ち聞きされていたと知って、カチュアはかっとなる。話を聞かれていたことへの憤り、きまずさ。三日も開けて現れたことへの怒りと戸惑い。それだけじゃない。ロアルの言葉から、フィーナがカチュアから言葉を引き出す役目を買って出たことにも気付く。
カチュアがきっとフィーナを睨みつけると、フィーナがデインに道を譲るところだった。
「もうわかりましたわ。どうぞデイン様、カチュアを連れていってください」
「フィーナっ! 何勝手なことを!」
「カチュア、あなたの気持ちはよくわかったわ。素直にならなきゃ駄目よ。デイン様の話をちゃんと聞いて、不安を解消してもらってきてね」
慌てるカチュアと対照的に、フィーナはにっこり笑って手を振る。
「あたしの気持ちって何!? 勝手に決めつけないで!」
カチュアはフィーナに文句を言いながら、腕を突っ張ってデインに抵抗した。が、デインはカチュアの二の腕をあっさりと掴むと、ずんずんと店内に向かって歩き出す。足を踏ん張って抵抗しようとすると、頭の上からデインの冷めた声が降ってきた。
「暴れると商品崩れるぞ」
それを聞いて、カチュアはぴたっと抵抗をやめる。
店の奥も店内も、商品が所狭しと置かれている。通路も狭くて、すれ違うのも一苦労だ。デインの手をもぎ離そうと暴れたら、何の拍子に商品に当たってしまうかわからない。
商売人にとって、商品は命の次に大事なものだ。デインにまんまと動きを封じ込められ、悔しく思いながらカチュアは言葉で抵抗した。
「離してよ! どこへ行くっていうの!? 三日も会いに来なかったくせに!」
「止められてたからだよ、みんなに。その間考えさせられた。カチュアにオレとの結婚を承諾してもらう方法をさ」
「手紙に書いたでしょ! あたしはあんたとは結婚できないって」
「“できない”っていうのは、“したくない”のと違うだろ?」
店内の客も従業員もやけにデインに協力的で、デインが通る狭い通路からみんな待避して拍手喝采でも送ろうとしているかのようなきらきらした目で見守っている。
ろくに抗議できないまま店の外に連れ出されたカチュアは、店の前にいた馬の上に押し上げられる。
「ちょっと! 王都内の騎乗は法令で禁止されてるんじゃないの!?」
「緊急事態ってことで、国王陛下に許可していただいた」
人前だからか、デインはシグルドに対し敬意を払った話し方をする。意外とわきまえてると感心すべきところだが、今はそんな場合じゃない。
「は!? あんた何国王陛下まで巻き込んでんのよ!」
「声大きいよ。馬がびっくりする」
通りを歩いてる人たちもいるし、馬が暴れ出したら大変だ。カチュアは慌てて口をつぐむ。するとその隙に、デインは鐙に足をかけてひらりとカチュアの隣に乗った。調査官の仕事の際にデインの従者をしているブリュール子爵からすかさず手綱を受け取ると、馬の背に横座りしているカチュアを手綱と自分とで囲った。
街の警備隊がばらばらと出てきて、通りを歩く人たちに道の隅に寄るように指示をする。その警備隊員たちを指揮するのが、フィーナの夫をはじめとした近衛隊士たち。
馬上のカチュアを見上げて、フィーナが笑顔で叫んだ。
「カチュア、しあわせになってね! もうデイン様から離れるなんて考えちゃ駄目よ!」
それで何が起こってるのか察したらしい道沿いの人たちは、口々に「おめでとう!」とか「しあわせになれよ!」とか言い出す。その中にはもちろん、見知った街の人たちもいた。
カチュアはものが言えないくらい真っ青になる。
デインはのんきなもので、「ありがとう」と笑顔で応えて馬を走らせ始める。
もう一頭の馬に乗ったブリュール子爵を引き連れて、デインはここから一番近い王都の出口を目指した。
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