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薄幸の少女と森の賢者達
13-5:もう一度
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「お師匠みたいに、あんたに生きる希望を見出させてあげたかった。お師匠みたいに、あんたにこの世界で生きていける力をあげたかった……全部、お師匠の真似事だったんだ」
「ねえ様…」
「だけど…ごめんね。あんたは、望んでなかったのに……あたしだけ盛り上がって」
苦し気に顔を歪めるアザミに、シェラはぶんぶんと首を振る。
決して謝れるような事ではないのだとそう伝えたくて、しかしそれが声になってくれなくて、もどかしさにシェラの表情が歪む。
アザミは悲痛な顔のまま、再び決壊した涙を滴らせる。
「あんたのためにやってたつもりで…あんたの気持ちを考えてなかった。うん……お師匠の言う通りだった。ただのあたしの…自己満足だった。本当に…ごめんね」
「違う…! 違うの! ねえ様は悪くない、悪いのは……」
自分を責め続ける姉を止めようと、思わず縋りつき自身の首を横に振るシェラ。
そこで彼女も気づく。誰が最も間違っていたのか、そう考えたその時、何よりも先に自分自身の事が浮かんだことに。
ハッと息を呑んだシェラは、その場にへたり込み項垂れた。
「……この関係を壊したのは、私だ。私が疑ったから……こうなったんだ」
「…だめだめだねぇ、あたし達。変な意地張って怒り合って、家まで飛び出して……何やってんだろうね」
そう口にした瞬間、シェラの目からボロボロと涙があふれる。止める気にもなれず、自分の膝に堕ちていく雫を見つめる事しかできない。
アザミも同じく頬を濡らし、嗚咽を漏らし始めた妹分を胸元に抱き寄せる。お互いの抱いた公開を共有するかのように、血のつながらない姉妹が抱きしめ合う。
「…あの方は、そう伝えたかったのかな。言われた時は、すごく腹立たしかったのに…今はなんだか、納得出来そうな気がする」
「…賢者様だからねぇ、こうなるのもわかってたのかもしれないな~。わざわざ焚きつけて……悪役になって、自分を見つめ直させたんじゃないかなって、今はすごくそう思う」
「……戻っても、受け入れてくれるかな」
「……さすがにもう、見捨てられちゃったかな。でも…ケジメはちゃんとつけないとねぇ」
姉妹は苦笑しあい、互いの涙を拭い合うと、やや気まずげに師の家のある方角を見やる。
一方的に騒いで出ていった弟子、そしてその弟子が引き取った少女。引き受ける義理などほとんどない少女達を、今更また迎え入れてくれるだろうか。
そんな不安を抱きながら、姉妹は元来た道を一歩ずつ戻っていく。
そうして、途中何度も葛藤しながら歩き続け、見慣れた家の扉に辿り着いた二人。
そんな彼女達を、師は扉の前で仁王立ちし、待ち構えていた。
「…………」
「あ、あの…お師匠。その…」
「この度は……」
無言で見下ろしてくる師の視線が恐ろしく、うまく声をだせなくなるアザミとシェラ。
怒鳴りつけられ、追い返されてもおかしくなく、二人してびくびくと縮こまるばかりでうまく言葉が出てこない。
師は、そんな二人をしばらくの間見下ろし、やがてくるりと背を向け、告げる。
「……煮汁でも入れてやる。さっさと入れ」
背中越しにかけられた言葉に、アザミとシェラはほっと安堵の息を吐き、目を潤ませる。
姉妹はきつく手を握りながら、開かれた扉を潜り、温かい暖炉の火の前に腰を下ろしてから、互いに可笑しそうに微笑み合う。
その翌日、シェラは以前よりもはるかに深い眠りに就き、朝遅くまでぐっすりと眠り込んでしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回から、更新スピードが落ちます。
読んでくださっている方々には大変申し訳ありませんが、のんびり続きを待っていただけるとありがたいです。
「ねえ様…」
「だけど…ごめんね。あんたは、望んでなかったのに……あたしだけ盛り上がって」
苦し気に顔を歪めるアザミに、シェラはぶんぶんと首を振る。
決して謝れるような事ではないのだとそう伝えたくて、しかしそれが声になってくれなくて、もどかしさにシェラの表情が歪む。
アザミは悲痛な顔のまま、再び決壊した涙を滴らせる。
「あんたのためにやってたつもりで…あんたの気持ちを考えてなかった。うん……お師匠の言う通りだった。ただのあたしの…自己満足だった。本当に…ごめんね」
「違う…! 違うの! ねえ様は悪くない、悪いのは……」
自分を責め続ける姉を止めようと、思わず縋りつき自身の首を横に振るシェラ。
そこで彼女も気づく。誰が最も間違っていたのか、そう考えたその時、何よりも先に自分自身の事が浮かんだことに。
ハッと息を呑んだシェラは、その場にへたり込み項垂れた。
「……この関係を壊したのは、私だ。私が疑ったから……こうなったんだ」
「…だめだめだねぇ、あたし達。変な意地張って怒り合って、家まで飛び出して……何やってんだろうね」
そう口にした瞬間、シェラの目からボロボロと涙があふれる。止める気にもなれず、自分の膝に堕ちていく雫を見つめる事しかできない。
アザミも同じく頬を濡らし、嗚咽を漏らし始めた妹分を胸元に抱き寄せる。お互いの抱いた公開を共有するかのように、血のつながらない姉妹が抱きしめ合う。
「…あの方は、そう伝えたかったのかな。言われた時は、すごく腹立たしかったのに…今はなんだか、納得出来そうな気がする」
「…賢者様だからねぇ、こうなるのもわかってたのかもしれないな~。わざわざ焚きつけて……悪役になって、自分を見つめ直させたんじゃないかなって、今はすごくそう思う」
「……戻っても、受け入れてくれるかな」
「……さすがにもう、見捨てられちゃったかな。でも…ケジメはちゃんとつけないとねぇ」
姉妹は苦笑しあい、互いの涙を拭い合うと、やや気まずげに師の家のある方角を見やる。
一方的に騒いで出ていった弟子、そしてその弟子が引き取った少女。引き受ける義理などほとんどない少女達を、今更また迎え入れてくれるだろうか。
そんな不安を抱きながら、姉妹は元来た道を一歩ずつ戻っていく。
そうして、途中何度も葛藤しながら歩き続け、見慣れた家の扉に辿り着いた二人。
そんな彼女達を、師は扉の前で仁王立ちし、待ち構えていた。
「…………」
「あ、あの…お師匠。その…」
「この度は……」
無言で見下ろしてくる師の視線が恐ろしく、うまく声をだせなくなるアザミとシェラ。
怒鳴りつけられ、追い返されてもおかしくなく、二人してびくびくと縮こまるばかりでうまく言葉が出てこない。
師は、そんな二人をしばらくの間見下ろし、やがてくるりと背を向け、告げる。
「……煮汁でも入れてやる。さっさと入れ」
背中越しにかけられた言葉に、アザミとシェラはほっと安堵の息を吐き、目を潤ませる。
姉妹はきつく手を握りながら、開かれた扉を潜り、温かい暖炉の火の前に腰を下ろしてから、互いに可笑しそうに微笑み合う。
その翌日、シェラは以前よりもはるかに深い眠りに就き、朝遅くまでぐっすりと眠り込んでしまった。
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読んでくださっている方々には大変申し訳ありませんが、のんびり続きを待っていただけるとありがたいです。
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